2025.910では、短日・短時間勤務制度と組み合わせることで、従業員に柔軟な働き方を提供しています。体調面の変化や介護に対応するために、契約期間を1年単位にするなど短くし、臨機応変に短日・短時間勤務へとシフトできる仕組みを整えています。ほかの制度に関しては、管見のかぎり、高齢者に限定して導入状況を調べている調査はありません。年齢を限定しなければ、全企業の7・2%がフレックスタイム制(厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」)を、47・3%がテレワーク(総務省「令和6年通信利用動向調査」)を導入しています。実際の活用状況は仕事内容などに依存しますので、その点は留意しなければいけませんが、これらを導入している企業では、高齢者もその適用対象となっていることが予想されます。実際に定年後、職務内容や賃金などの労働条件を変更すると同時に、テレワークで働くことを条件に勤務先からの継続雇用の打診を受諾したという記者職の事例もあります。そのほかにも、高齢者の希望と受け入れる部署のニーズに応じて、自社内やグループ企業で人材の再配置を可能にする制度や、専門知識と経験を備えた人材を紹介・派遣する人材サービスの活用も、高齢者のキャリアや働き方の選択務制度について見ていきましょう。短日・短時間勤務制度、フレックスタイム制度、テレワーク、介護休暇制度などがこれに該当します。ただしこれらの制度は、一般的には高齢者のみに適用されているわけではなく、年齢にかかわらず利用可能な制度として設置されています。既存の制度の活用で高齢者のニーズが満たされるのであれば、それで問題ありません。実際に、介護と就労の両立に関して働き手が求めるニーズの多くは、一般的な有給休暇や短時間勤務制度で賄まかなえることが指摘されています(池田2023)。短日・短時間勤務制度は、フルタイム・週5日の勤務から、1日の勤務時間と週の勤務日数のいずれか、または両方を短くして働くことができる勤務制度です。(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「高齢期の人事戦略と人事管理の実態調査」※によると、58%の企業が65歳以降の社員を対象とした短日・短時間勤務制度を導入しています。そのなかには、勤務日数・勤務時間の上限や下限を定めている企業や、会社が勤務の仕方を複数設定している企業などがあります。ほとんどの企業は、勤務日・時間を高齢者と企業が調整して決定しています。また、再雇用制度を採用している多くの企業※ 同調査結果は、以下の冊子でご覧いただけます。 『JEED資料シリーズ6 高齢期の人事戦略と人事管理の実態-60歳代後半層の雇用状況と法改正への対応-』(2023年) https://www.jeed.go.jp/elderly/research/report/document/copy_of_seriese6.html肢を広げることにつながるでしょう。まとめまとめ4年齢が進むにつれて、健康状態の悪化や介護などの予測困難な事態に直面するリスクは高まります。同時に、働き方や生き方に対する志向の個別性が顕著になります。これらに起因する高齢者の多様なニーズに対応するために、日本では、企業自らが積極的に“日本型”の柔軟な雇用管理制度、勤務制度の構築を模索してきました。高齢化が進むなかで、年齢を問わず意欲と能力に応じて働き続けられる社会を実現した国は世界でも例がありませんので、試行錯誤はこれからも続くと考えられます。一つひとつの企業の試みが先進事例となり、それらの蓄積が、高齢者の多様で柔軟な働き方の実現には欠かせません。【参考文献】* 池田心豪 2023『介護離職の構造:育児・介護休業法と両立支援ニーズ』(独)労働政策研究・研修機構
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