エルダー2025年9月号
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エルダー17特集多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり本人の希望も対象者の要件とします。円滑な運用とするためには、会社の許可がある場合にかぎって利用できるような制度の枠組み(許可制)としたうえで、事前の許可の期限とだれの許可が必要か(例えば、1週間前までに所属長の許可を要するなど)を決めておく必要があります。また、いったん許可を与えた場合でも、(不適切な利用をしている者などに)いつでも取消しなどができる旨の規定を設けておくほうがよいでしょう。(2)在宅勤務時の服務規律就業規則本文などに定められている遵守事項以外で、情報通信機器や情報そのものの取扱いに関する事項など、在宅勤務に必要な服務規律を定めます。ただし、職務専念義務(「勤務中は職務に専念すること」など)については、就業規則本文に定めがあっても、あえて在宅勤務規程にも職務専念義務について定めることで、注意喚起する効果を期待することができます。(3)在宅勤務時の労働時間通常の労働時間制度(毎日9時から18時までという定まった時間帯に業務を行う形)を在宅勤務に適用する場合には、在宅勤務者も通常のオフィスで業務を行うときと同じように勤務しですが、体力や身体機能の低下は避けては通れません。この点、在宅勤務制度の導入は、業務に熟練した優秀な人材をつなぎ止め、仕事と介護などとの両立を容易にするメリットがあります。高齢者の勤務形態の柔軟さや働き方の工夫は、全社員にとって働きやすい環境となり、若者や女性の人材確保にも大いに役立つでしょう。このように、在宅勤務制度は高齢者雇用にとってメリットをもたらす一方、懸念されるのが在宅勤務に欠かせない高齢者のITのリテラシーです。企業としても、在宅勤務制度の円滑な運用のために、デジタルスキル(ITを使いこなす知識・能力)向上に向けたシニア層の支援が求められます。在宅勤務制度を設計・運用していく在宅勤務制度を設計・運用していくうえでの留意点うえでの留意点4会社が在宅勤務制度を円滑に運用していくためには、以下の点に留意し、在宅勤務のルールを就業規則(「在宅勤務規程」など別規程として)に定め、周知することが必要です。(1)在宅勤務の対象者在宅勤務を適切に導入・実施するにあたっては、本人の意思を尊重することが重要ですので、就業場所とする働き方」のことです。在宅勤務制度の在宅勤務制度のメリット・デメリットメリット・デメリット3高齢者雇用において、今後活用が期待できる在宅勤務制度について、メリット・デメリットとして、次のようなことが考えられます。(1)在宅勤務制度導入のメリット・デメリット会社側からみた場合には、ワーク・ライフ・バランスが最適化されることによる生産性の向上や、優秀な人材の確保を期待できることがメリットとなります。社員側からみた在宅勤務のメリットは、通勤時間が発生しないことです。通勤ラッシュによる負担やストレスもありません。また、育児や介護をしながら仕事ができることも大きなポイントです。一方、デメリットとして、家庭内雑務に気をとられたり、ワークスペースが狭かったりといった条件が重なって、円滑な業務遂行への影響が考えられます。また、作業時の電気代をはじめとする業務上のコストと生活費とを切り分けづらいため、社員がコストを自己負担するケースもあります。(2)高齢者雇用における在宅勤務制度経験豊かな高齢者は企業にとって貴重な存在

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