エルダー2025年9月号
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エルダー23特集多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり更した。ポストオフ(役職定年)というと、モチベーションの低下も懸念されるところであるが、同社では複線型キャリアパス制度を採用しており、マネジメント職コースと専門職コースの処遇(給与・地位・評価等)に大きな差を設けない設計としていることから、役職定年を迎えた管理職が専門職へ移行した場合でも、処遇水準を維持することができるため、モチベーション低下を抑制できているという。シニア人材の活躍とシニア人材の活躍と健康管理の取組み健康管理の取組み長年の経験と専門知識を持つシニア社員は、設計の最終チェックを行う「レビューアー」として品質管理業務において非常に重要な役割をになっている。土木、建築、機械、電気の知識と、経験からくる「勘どころ」と呼ばれる直感的な判断力を活かし、設計の間違いや不具合防止に貢献するほか、新人や現役社員のサポート役として、つちかってきた技術を継承しつつ、後進育成に努めているシニア社員も多い。各分野で活躍するシニア社員が、長く安心して働き続けられる環境を整備するため、同社では健康管理にも力を入れている。2018年に健康宣言を発表して、社員の健康づくり強化に取り組み、2021年から2024年まで、健康経営優良法人(大規模法人部門)に毎年認定されている。具体的には、産業医、社内保健師による面談、社外のカウンセリング窓口の設置などを実施している。「健康管理に対する意識が低い傾向にある社員層の場合、健康診断の数値が悪化するケースが多く見られ、将来的な健康リスクを懸念しています。特に疾患の予備軍に対するアプローチが重要だと認識しており、健康保険組合と連携したコラボヘルスに取り組んでいます。例えば、健康診断後に二次受診が必要とされた社員の受診率を上げるために、積極的に受診勧奨を行ったり、健康診断結果をもとに、特定保健指導を健康保険組合の協力のもと手厚く行い、生活習慣病が原因となる疾病を未然に防ぐことを意識しています」(中塚課長)長く働くことで、その間に疾病にかかるリスクも上がることから、2025年3月からは、がんなどの三大疾病に備える団体生命保険を新たに導入している。また、病気の治療中の社員に対しては、保健師や上長が協力して「治療と仕事の両立プラン」を作成し、通院や服薬の時間を確保しながら仕事を続けられるようサポートしている。細谷部長は、シニア社員の活用・戦力化と、健康や働き方の問題について次のように話す。「シニア社員の専門知識と経験は、当社における重要な財産です。特に設計・計画分野での暗黙知を形式知化し、新たな事業領域に活用することが求められる現在においては、若手社員の新分野への挑戦に、ベテランの知見を組み合わせることで、競争優位性を確保していきたいと考えています。一方で、シニア社員が持続的に活躍するためには、健康面への配慮や、無理なく働ける仕組みづくりが不可欠です。健康経営を重要な経営戦略と位置づけ継続するとともに、シニア社員の体力やライフスタイルに応じた柔軟な働き方を引き続き推進して、シニア社員が専門性を発揮できる環境を整備し、組織全体のパフォーマンス向上を図っていきます」フレックスタイム制度、在宅勤務制度、契約社員への転換による短日・短時間勤務等の活用などの取組みにより、多様で柔軟な勤務制度を充実させ、シニア社員が個人の体調や家庭事情、ライフプランに応じて選択できる環境を整備した株式会社NJS。評価・処遇制度を含め制度の見直し・改定に取り組みながら、包括的に生涯現役にアプローチしている取組みは、多くの企業にとって大いに参考になるだろう。

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