エルダー2025年9月号
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2025.934設備面でも高齢従業員に負担がないよう、客席に返却口を設けてセルフスタイルに改善を図ったほか、手元ライトや明るいLEDで視認性を確保し、高齢従業員が働きやすい環境整備に取り組んでいます。さらに、現場の意見を吸い上げるため、月1回のミーティングを実施し、できるだけ要望に応えるよう努めています。当面の課題は、夏季の草刈りの体力作業。暑さによる負担が大きいため、業者への外部委託を検討中とのことです。國久プランナーは、同社のこうした取組みについて、「すでに高齢従業員が働きやすい工夫を随所に取り入れています。多様な施設を運営している分、適材適所の配置が可能だと思います」と評します。今回は、高齢従業員が活躍するレストランで店長を務めている方に、お話をうかがいました。名物店長が築く“食と観光一体”の店づくりレストラン「濱はまの四し季き」の店長を務める西にし本もと一いち郎ろうさん(71歳)は、大学卒業後、敦つる賀が市にある水産物加工メーカーから誘いを受けて就職し、35年にわたって勤めました。その後、ドライブインでの勤務を経て、2018年にまちづくり小浜に入社。同時に、現職に抜擢されました。希望、体力、得意分野をしっかりヒアリングし、適した部署、体力負担の少ない業務、勤務時間を考慮しているそうです。ただ、このように適正なマッチングを心がけても、次第に担当業務が負担になり退職を願い出る人がいます。そうした際は早々に面談のうえ、別施設の異業種に配置転換することで、いまも継続して勤務している人もいるそうです。ほかにも、レストランのメニューを変更してから、業務量が増え、従業員からさまざまな声が届くようになった時期がありました。「疲労が要因と考えられるミスの増加もあり、勤務シフトや体制を見直しました。人員を増やして、週4日勤務から週3日勤務に減らし、連続勤務を避け疲労を軽減する対策をとったところ、従業員の健康状態が改善され、ミスがなくなりました」と藤本さんは話します。これらの経験をふまえ、同社では2カ月に1回従業員にアンケートを実施しています。従業員の健康状態、仕事量に無理がないかを把握するためのもので、スマートフォンを使って数分で回答できる簡易なアンケートです。スマートフォンを使えない従業員には、直接対話で状況を確認しています。回答率は80%以上と高く、結果がよくない人には個別で声かけをするなどきめ細やかに対応し、必要に応じて仕事量を調整しています。トしました。歴史的町家が連なる西組地区のおよそ2kmの通り全体を市場に見立て、空き家や既存の店舗の軒先、建物の一部を活用し、地元はもちろん県内外から集まった出店者が雑貨や食べ物、工芸品などを販売するイベントです。毎年、紅葉が映える秋ごろに開催しており、参加者は古い町並みをそぞろ歩きしながら、ショッピングや旬のグルメ、交流を楽しみます。町全体を活用するこのイベントは、新たな店舗の出店につながっており、マルシェ出店をきっかけに常設のカフェや飲食店が誕生した事例もあり、観光と暮らしを結ぶ地域づくりの実践例として注目されています。2カ月に1回アンケートを実施し体調と業務負担感を把握同社の定年は60歳、希望者全員65歳までパートタイマーや契約社員として働くことが可能です。その後も運用で積極的に継続雇用する方針で、新規採用も行っています。「高齢従業員が特に活躍するレストランは、市が運営していたころから在籍している方や他施設からの引継ぎで、60歳以上のスタッフが自然と増えてきました。ベテランの方々は本当に作業の手が速くて驚きます。元気な方にはぜひ働き続けてほしいと思っています」(藤本さん)高齢者の新規採用では、面接時に一人ひとりの

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