エルダー2025年9月号
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2025.92本田技研工業株式会社 コーポレート管理本部 人事統括部長安田啓一さんを支援する環境を整えることを会社の重要な役割と位置づけ、そのなかの取組みのひとつとして人事制度の刷新を行いました。 人材の活用・処遇においては、さらなる変革やイノベーションの創出に向け、適材適所、実力主義をいままで以上に徹底していきます。具体的には「脱年功」、「脱一律」です。もちろん、これまでのホンダが年功的・一律的だったというわけではなく、一人ひとりの意欲や実力を尊重する仕組みを整えていましたが、経験の積上げで役職に就くために、どうしても一定の年数を要することになっていました。そこで新制度では、役割・実績を重視した脱年功・脱一律の制度へと見直しを行いました。―具体的にはどのような見直しを行ったのでしょうか。安田 役職者の評価・処遇制度を大きく見直しました。開発などの研究領域の役職者は「イノベーション職」(IN級)、それ以外の管理―貴社では、2025(令和7)年6月に、新たな人事制度を導入されたとうかがいました。人事制度改定のねらいについて教えてください。安田 大きな背景として、自動車業界は未曾有の競争環境にあることです。電気自動車など、さまざまな事業・製品の「電動化」とともに、「搭載されたソフトウェアが車の価値を決める」といわれるほど「知能化」が進んでいます。さらには電気と関連する周辺の充電ネットワークづくりに至るまで、これまで経験したことがない領域をも視野に入れざるを得ないほど、事業環境の変化が起こっています。こうした時代にホンダが新しい価値を提供できる存在になるためには、ホンダのカルチャーを含めて変革していく必要があると考えています。当然、その主体となるのは「人」です。社員一人ひとりの内発的動機の喚起や目標に向かって主体的に専門性を高める挑戦部門や営業、事業開発、生産部門は「トランスフォーメーション職」(TR級)とする二つの給与・評価体系を導入し、IN級は3段階、TR級は8段階に分かれています。TR級は役割と報酬がダイレクトに連動し、年齢や人ではなく、就いている役割で報酬が決まる脱年功・脱一律の仕組みです。当然ながらその役割を果たせない場合などは役割の変更によって処遇の見直しも発生します。スタートしたばかりの制度ではありますが、すでにそういったケースも生じています。 IN級は研究開発など成果が測りにくい業務が中心であり、役割よりも能力や専門性を重視した評価・処遇制度になっています。意識の変革という観点から、まずは役職者のみに適用している制度となりますが、今後非管理職層についても、検討していくことにしています。―2017(平成29)年に65歳までの選択定年制を導入するなど、早くから高齢社員の活躍推進に取り組まれています。貴社における高齢者雇用の取組みについてお聞かせください。安田 当社では、2010年に60歳定年後、希望者全員65歳まで再雇用する仕組みを整役職者の評価・処遇制度を見直し「脱年功」の人材活用、「脱一律」の処遇に

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