エルダー2025年9月号
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2025.9381はじめに連載第1回では、がんの罹患率やがん治療の多様化、副作用について、第2回では、治療と仕事の両立しやすさの現状や具体的に企業に求められる取組みについて解説しました。最終回となる今回は、実際に従業員の方ががんに罹患したと報告があった場合の、両立支援の具体的な進め方とそのポイントをご紹介します★。2早期の退職を思いとどまらせ会社の制度などを紹介するがんと診断された従業員から、「治療のために退職を考えている」と伝えられた場合、上司や人事担当者の最初の対応が非常に重要です。連載第1回でご紹介したように、国立がん研究センターの調査によると、がん診断時に仕事をしていた人のうち、19・4%ががん治療のために退職・廃業しており、そのうち58・3%もの人が治療開始前に退職しています。これは、病★ 本連載の第1回から最終回まで、当機構(JEED)ホームページでまとめてお読みいただけます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/series.html気の受入れが不十分な状態や、周囲への迷惑を懸念する気持ちから、性急に離職してしまうケースです。病気が判明してすぐに退職を申し出てきた従業員に対して、まずは退職を保留し、治療を優先して、治療の目途が立ってから決めてほしいとお伝えすることが、本人にとってよりよい選択につながり、企業にとっても人材の確保につながると考えられます。本人には慰留するとともに、情報提供を行ってください。会社の制度などの私傷病による休業制度や両立支援に関連する制度(時間単位の年次有給休暇、短時間勤務制度、時差出勤制度、在宅勤務制度など)、復職の制度についてです。休業期間、休業期間の手当の有無、傷病手当金の手続きの方法を知ることで、本人は安心して治療に専念することができます。復職の制度をがんと就労ー治療と仕事の 両立支援制度のポイントー二人に一人が罹患するといわれる病気「がん」。医療技術の進歩や治療方法の多様化により、がんに罹患したあとも働きながら治療を続けている人は増えています。その一方で、企業には、がんなどの病気に罹患した社員が、治療をしながら働き続けることのできる環境や制度を整えていくことが求められています。本企画では、その治療と仕事の両立支援に向け、企業が取り組むべきポイントを解説してきましたが、今回が最終回です。産業医科大学 医学部 両立支援科学 准教授永なが田た 昌まさ子こ最終回従業員が、がんに罹患したら

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