エルダー2025年9月号
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2025.940■勤務情報提供書(39ページ図表1)従業員本人と職場が共同で作成し、従業員の職種、業務内容、労働時間、職場環境などの情報を主治医に共有する様式です。厚生労働省のホームページ※1からダウンロード可能です。従業員本人の職務内容や勤務形態、勤務時間、利用できる制度に関してチェックします。「振動工具を使った作業はさせてよいのか」、「屋外での警備業務はさせて大丈夫だろうか」などの具■主治医意見書(図表2)勤務情報提供書に基づき、主治医が作成します。この意見書には、患者の病状や治療内容から、就業上の配慮が必要な事項(例えば、仕事が持病を悪化させるおそれがある場合の就業配慮や、事故・災害リスク予防の観点からの措置)や、望ましい就業上の措置に関する意見が記載されます。職場と共同で作成された勤務情報提供書に基づき、一定規模以上※2の職場に勤める患者さんについて、主治医意見書を記載もしくは診療時に同席した産業医などに医療情報を職場に提供すると、医療機関はその費用を診療報酬として請求できます。これは、2018(平成30)年度の診療報酬制度改定で新設された「療養・就労両立支援指導料」です。医療機関もしくは医師がこの制度を十分理解していない可能性もあります。職場に必要な情報ですので、職場側から積極的に働きかけを行うことをおすすめします。主治医意見書の内容をもとに、就業上の措置および治療に対する配慮に関する産業医等の意見聴取を行いましょう。産業医等がいない場合は、各都道府県の産業保健総合支援センターに相談することも可能です。仕事上の配慮を検討するためには、安全配慮義務と合理的配慮と治療を継続するうえでの配慮の三つの視点が重要です。体的な懸念がある場合には、その旨を記載してください。また、復帰直後に元の業務とは別の業務を担当させることを検討していたり、元の業務であっても負担を減らす配慮を検討していたりする場合もその旨を記載いただくと、主治医の判断を助けます。記載例……「デスクワークをメインに仕事をしてもらう予定です」、「元の業務ですが、定数外のスタッフとして業務に入ることは可能」など※1 https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/download/※2 衛生推進者が選任されている事業者……常時10人以上雇用している事業場では、労働安全衛生法により、衛生推進者または安全衛生推進者を選任する義務がある※厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」の様式例をもとに筆者作成図表2 主治医意見書と記載例治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式例(診断書と兼用)患者氏名○○ ○○生年月日 ○年  ○月  ○日住所○○ ○○病  名大腸がん現在の症状(通勤や業務遂行に影響を及ぼし得る症状や薬の副作用等) 上記病名に対し、手術を●月●日に施行した。術後の経過は順調で、現時点で症状はありません。治療の予定(入院治療・通院治療の必要性、今後のスケジュール(半年間、月1回の通院が必要、等)) 今後2週に1度の頻度で化学療法を外来にて、●月まで実施予定である。退院後/治療中の就業継続の可否□可      (職務の健康への悪影響は見込まれない)□条件付きで可(就業上の措置があれば可能)□現時点で不可(療養の継続が望ましい)業務の内容について職場で配慮したほうがよいこと(望ましい就業上の措置)例: 重いものを持たない、暑い場所での作業は避ける、車の運転は不可、残業を避ける、長期の出張や海外出張は避ける など  注) 提供された勤務情報を踏まえて、医学的見地から必要と考えられる配慮等の記載をお願いします。 薬剤の副作用は、冷たい物に触れると増強します。現在の化学療法を実施している間は、冷凍庫での作業は避けることが望ましいです。その他配慮事項例:通院時間を確保する、休憩場所を確保する など注)治療のために必要と考えられる配慮等の記載をお願いします。 2週に1度外来にて化学療法を予定しています。通院時間の確保を お願いします。上記の措置期間○○年  ○月 ○  日 ~ ○○ 年  ○月  ○日年  月  日   (本人署名) ●●  ●●       上記内容を確認しました。上記のとおり、診断し、就業継続の可否等に関する意見を提出します。(注)この様式は、患者が病状を悪化させることなく治療と就労を両立できるよう、職場での対応を検討するために使用するものです。この書類は、患者本人から会社に提供され、プライバシーに十分配慮して管理されます。     年   月   日(主治医署名)  ●●  ●●       

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