エルダー2025年9月号
45/68

フリーランス保護法のおもな内容2フリーランス保護法において保護対象とされているのは、従業員を使用していない事業者を意味しています。65歳の定年後に業務委託契約に変更するような場合には、ほとんどの場合該当するはずです。また、適用対象となる委託業務の内容についても、役務の提供が含まれているため、65歳を迎えて退職する以前と類似または同種の業務を委託するような場合には、通常、該当することになります。フリーランス保護法の適用対象となる場合には、①業務委託の給付内容、報酬の額、役務の提供場所、報酬の支払い期日などの法定事項を記載した書面または電磁的方法による提供、②60日以内の報酬支払期限、③受領拒否、報酬の(一方的な)減額、買いたたき、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しなどの禁止、④育児・介護等と業務の両立に対する配慮義務、⑤ハラスメントに係る体制の整備義務などが定められています。通常、①の書面等による明示事項については、業務委託契約書を作成すれば、含まれるべき内容であり、②報酬支払期限についても、従前の賃金と同じような支給を想定すれば1カ月を超える期間にわたって報酬の支払いが留保されることはないはずです。また、④および⑤の育児介護への配慮、ハラスメントに係る体制については、労働者と同等の扱いを継続することによって実現することは可能となるはずです。問題は③の禁止行為の適用対象になるという意識をもって取り組む必要があるという点になるでしょう。下請法類似の規制が業務委託となった高齢者との間で適用される関係となりますので、特に、労働者との間のやり取りであれば業務理解や指導の範疇として許容され得るようなやり取りであっても、不当な給付内容の変更・やり直しに該当してしまうと、禁止行為となり、ハラスメント通報の端緒にもなるような事象となるでしょう。労働者性との関係3フリーランス保護法との関係では、業務委託契約書の法定記載事項を押さえておくことで遵守することができそうですが、他方で、雇用から業務委託への移行に関しては、不利益変更や偽装請負などの観点から労働者性が大きな問題となります。この点については、厚生労働省が改正法施行時に公表していたパンフレットなどが参考になります。まず、雇用以外の方法での就業機会の確保については、労使間で合意した創業支援等措置の実施に関する計画を定める必要があります。そのなかには、支払う金銭に関する事項、契約締結頻度、契約変更に関する事項、安全衛生に関する事項などを定めるものとされています。また、個別に締結する業務委託契約においては、労働者との相違が明確になるようにしておく必要があります。要素として、①依頼や業務の諾否の自由の有無、②指揮監督の有無、③時間的・場所的な拘束性の有無、④代替性の有無などが主要な要素としてあげられています。しかしながら、④については、従業員のいない個人への委託であれば代替性は認められにくいはずであり、③時間的・場所的な拘束性も、雇用していたときの業務経験などを活かしてもらうことを想定すると、ある程度の拘束性があることが多くなってしまいがちです。また、②指揮監督の有無というのは、契約上は直接の指揮監督はしないことを明示することになりますが、個人への委託であれば、発注とそれに付随する情報提供と指揮命令の区別は、客観的には必ずしも明確ともいいがたいこともあります。そうすると、①諾否の自由の有無が決め手になりやすいところになりそうです。業務委託契約の内容については、フリーランス保護法を遵守する内容としつつ、諾否の自由を確保しておくという点が、65歳以降の就業機会確保措置におけるおもな留意事項になるでしょう。エルダー43知っておきたい労働法A&Q

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る