エルダー2025年9月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2025.948第61回今回は、「障害者※1雇用」について取り上げます。障害者雇用の理念は「共生社会」の実現障害者雇用に関する目的や基本理念、義務や責務などの内容は、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)に定められています。本法律の第一条の目的には、長文なので一部抜粋となりますが※2、「(省略)雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置(省略)、その職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。」とあります。また、基本的理念のうち第四条には、「障害者である労働者は、職業に従事する者としての自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない。」とあります。傍線を引いた部分を総合すると、法律の目ざすところは、障害者が能力を発揮し、職業生活で自立できる社会の実現にあることがわかります。そのためにも、障害の有無にかかわらず均等な雇用機会や待遇の確保、能力発揮のための訓練等が必要であるとし、実現するための雇用主や国・地方公共団体の義務や責務に基づく施策を定めています。障害者雇用というと、この施策にいかに対応するかが話題になりがちですが、視野を広げて、希望や能力に応じてだれもが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」への協働としてとらえ直すと、これから説明する障害者雇用の施策に対する理解が深まるのではないかと思います。障害者の法定雇用率遵守は事業主の義務では、障害者雇用に関する施策のポイントについてみていきたいと思います。まず、理解しておきたいのは障害者雇用率制度です。これは、従業員が一定数以上の規模の事業主に従業員の一定割合以上の障害者の雇用を義務づけるものです。ここでいう一定割合を法定雇用率と呼びますが、5年程度で労働状況等に基づき変更されることがあるため、定期的に確認していく必要があります。例えば、本稿執筆時点(2025〈令和7〉年7月)では、常時雇用する労働者のうち民間企業では2・5%、国・公共機関などは2・8%、都道府県などの教育委員会は2・7%が法定雇用率です「障害者雇用」※1 障害者には、「障がい者」、「障碍者」などの異なる表記方法もあるが、本稿では法律(障害者雇用促進法)の表記に合わせ「障害者」としている※2 傍線は筆者加工

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