エルダー7特集多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり総 論多様で柔軟な勤務制度が多様で柔軟な勤務制度が求められる背景求められる背景1高齢者が活躍できる場をよりいっそう広げるために、多様で柔軟な勤務制度が求められているとよくいわれます。「多様」ということは、フルタイムの正規雇用労働を典型的とすれば、それ以外の非典型的な働き方のニーズがいくつもあることを意味しています。どのようなニーズがあるのでしょうか。ニーズは、高齢者本人に起因するものと家族に起因するものに分けられます。前者でまずあげられるのは健康です。体力や精神力は年齢によって変わりますし、個人差もありますので、「高齢者」と一括りにすることはできません。内閣府の2026(令和4)年度「高齢者の健康に関する調査結果」によると、60代後半で健康状態が「あまり良くない」と認識しているのは2割に満たず、4人に1人は通院・往診を利用していません(8ページ図表1)。加齢とともに主観的健康は悪化し、病気症状の出現率も高くなりますが、いつどのような症状があらわれるかは、本人でさえも当然予測が困難です。したがって、働き続けるためには、この予測できないリスクに対応した働き方が必要になります。働くことに対する志向も、高年齢期には個人差が大きくなります。それまでは、生活のため、家族のために、より安定的に働けることや家事・育児とのバランスを重視して働いている人が多いのではないでしょうか。他方、高年齢期の就労理由として、60代前半は男性の8割、女性の6割が「収入」をあげていますが、年齢が上がるにつれて理由も多様化します(9ページ図表2)。特に「体によいから」働いている人の割合が増えています。働く理由は、資産や世帯全体の収入に依存すると考えられますが、すぐに収入が必要な人以外にも、老後の予測できない支出に対応したいと考えている人や健康維持のため、あるいは仕事を生きがいや社会との接点と考えている人もいるでしょう。若いころにできなかった仕事や地域貢献、社会的活動に従事している人もいると思います。多様なニーズの背景にある家族要因としては、まず介護があげられます。厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、60代の18・2%、70代の14・1%、80歳以上の8・6%が介護のにない手となっています。要介護者は、60代の8割は親・義理の親ですが、70代以上は大半が配偶者となり、ほぼ全員が老老介護の状況下にあります(9ページ図表3)。高齢者雇用における高齢者雇用における多様で柔軟な勤務制度の重要性多様で柔軟な勤務制度の重要性独立行政法人労働政策研究・研修機構 多様な人材部門 副主任研究員 森もり山やま智とも彦ひこ
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