エルダー2025年10月号
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特集設備の導入(LEDの導入)、高齢社員が参加する場合は、プロジェクターの文字を大きくするなどの配慮を行っている。②多様な働き方の導入短時間正社員制度、勤務時間の短縮、フレックスタイム制度、1時間単位の有給休暇の制度を導入している。高齢社員からは、孫・家族の送迎、通院などのために短時間勤務を希望する者もおり、好評である。ある高齢社員は、孫の育児サポートのため、正社員から短時間正社員に雇用形態を変更し、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら仕事を続けている。また、リモートワークや副業を可能とするなど、多様な働き方を通じて高齢社員が安心して働ける職場環境が整備されている。現在リモートワークは約10人が活用しており、なかには大病を患った高齢社員もいるが、リモートワークの導入により通勤時の体力的な負担が軽減され、体調にあわせた働き方で勤務を継続している。③健康管理人間ドックを受ける社員には、55歳以降、5歳刻みで補助金を支給している。そのほか、ストレスチェックや、社員のメンタルヘルス状況の確認なども行っており、必要に応じて産業医や専門家を紹介している。(4)高齢社員の声営業・経営企画職として働く石いし井い哲てつ也やさん(61歳)は、定年制廃止について「過去につちかった人脈を活用でき、会社の業績に長く寄与できるようになりました。また自分の持っている知識などがそのまま役立ち、会社に貢献できています」と話す。開発・技術職として働く長おさ村むら博ひろしさん(60歳)は、「やや昔のスキルでも、必要としてくれる人がおり、自分の持っているスキルがそのまま活かせていると感じています」と手ごたえを語る。(5)今後の課題 今後は、退職金制度のさらなる充実、福利厚生制度の導入、定年制廃止にともなう役職任命制度のあり方改革、社内ベンチャー制度の創設、社員教育の充実などに取り組んでいく予定としている。同社では、大手コンピュータ会社の特約店での勤務経験があり人脈が豊富な高齢社員、食品流通システムに精通している高齢社員などが、長年の経験を武器に顧客先の課題を掘り起こし、顧客との信頼関係の構築、顧客満足度の向上などに積極的に取り組んでいる。定年制の廃止により、社員のつちかった経験を効果的に活かせており、売上高は経営危機時の2020年と比較して、3・3倍にまで伸長した。また、同社の取組みは地域にも大きなインパクトを与えている。2023年には長野県SDGs推進企業として登録され、持続可能な経営モデルの先駆例として認知された。IT業界ではきわめて稀な定年制廃止の実施は、地元メディアからも注目を集め大きく取り上げられた。これにより、長野県内の他企業にも高齢者活用の可能性を示すロールモデルとなっている。高齢社員はもちろん、だれもが働きやすい職場環境を構築し、経営理念である「お客様と共に夢への挑戦をします。信頼する会社づくりを目指します。公平・公正な職場づくりに努めます。」の具現化を目ざして、同社の取組みはこれからも続いていく。エルダー19令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト長村博さん(60歳)石井哲也さん(61歳)

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