エルダー2025年10月号
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異なるので柔軟に対応している。③勤務形態定年後の再雇用に際しては「再就職希望申出書」を提出してもらい、本人の希望に沿った柔軟な働き方を可能なかぎり認めている。実際に、親の介護のために週3日勤務の選択、遠距離通勤にともなう時差出勤の選択、公的年金の受給に配慮した勤務日数の調整など、多様な働き方が実現しており、定年退職による知識や技能の流出を防ぐ効果を上げている。④役割の明確化定年年齢を引き上げたことによる60歳から65歳までの5年間に、役職者の役割として「後任への引継ぎ」や「後進の育成」を明確化し、技術・技能の確実な伝承を行うため役職名を変更し、後任者への確実な引継ぎを行っている。後進が育っていないからといって、役職を継続するのではなく、あえて役職名を変更することで、引き継ぐほうも引き継がれるほうもタイムリミットを把握し、確実に技術・技能を伝承できるようにしている。役職名の変更の例としては、「執行役員」⇒「ゼネラルマネージャー」、「取締役」⇒「参与」、「部長」⇒「シニアマネージャー」などがある。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み①国家資格取得の支援建設業では、高い品質を提供するために「有資格者」の存在が不可欠であり、実務経験を重ね、国家資格の取得を希望する従業員には受験費用や教材費、講習の費用を全額会社が負担して資格取得の後押しをしている。その結果、従業員の64%が有資格者となっている。継続学習制度(CPDS)も活用しており、技能の陳腐化を防ぎながら、実務に即した知識を継続的に習得できる仕組みは、特に中高年従業員にとって有効である。②表彰制度70歳以上の従業員を対象に、年間を通じて無事故・無違反で業務に精励した者を「優良従業員」として表彰する制度を設けている。さらに、70歳を迎えた従業員には「会長特別賞」を贈呈、これにより、高齢従業員の安全意識や法令遵守意識の向上を図るとともに、表彰を通じてモチベーションの維持・向上につなげている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①メリハリのあるICT、DX、BIM/CIM化国土交通省が推進する「i-Construction」や「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「BIM/CIM(3次元データを使った設計・施工)」といった最新の技術を活用し、現場の効率化や作業の高度化に取り組んでいる。特にBIM/CIMは、設計図をデジタル化し、それをもとに施工を機械で行う情報化施工である。しかし、現場の環境や条件は異なるため、細かな調整には熟練者の知識や経験が必要となる。施工そのものは、機械化により若手でも対応可能であるが、各工程や仕組みを理解しながら進める必要がある。このため、現場では高齢の熟練者が若手に指導を行いながら、ともに施工を進めている。高度な技術を活用したICT化などを進める一方で、同社は働き方改革の一環として、全従業員の残業時間や年次有給休暇の取得状況を一元的に管理できる電子出退勤システムを導入した。一般的に普及しているスマートフォンのアプリによる管理方法は、高齢従業員にとっては操作のハードルが高いと判断し、だれでも簡単にカードをかざすだけで出退勤情報が記録されるシステムを採用。さらに、このカードには社是や経営方針を印字し、従業員が日々の業務のなかで自然と企業理念にふれられるよう工夫されており、企業風土の醸成にも寄与している。②作業環境改善高齢従業員の安全と負担軽減を目的に最新技術を積極的に導入している。作業効率や利便性、安全性の向上を目的に導入したラジコン草刈機は、斜面作業の危険を回避することで身体的負担の大幅な軽減につながった。電動バックホウ(地面を掘削するために使われる建設機械)は、振動・騒音・排気ガスを抑え、高齢従業員の疲労軽減と環境負荷低減に寄与している。③安全衛生、健康管理高齢従業員の健康維持と安全確保を目的に、藤田建設工業 株式会社2025.1026

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