エルダー2025年10月号
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(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み①技能継承と職場定着の促進新人ドライバーの育成において、経験豊富な高齢ドライバーを「メンター」として配置する制度を導入している。メンターには、メンタリングやカウンセリング、コーチングに関する研修を受講する機会が設けられており、その費用は全額会社が負担している。この制度により、新人の早期戦力化が図られるとともに、高齢従業員にとっても自身の経験を活かす場が提供され、働きがいの向上にも寄与している。②無事故表彰による安全意識の向上安全運転を重要な評価基準として位置づけ、毎年の年頭式において「無事故表彰」を実施し、表彰対象者には、無事故の累積距離に応じた「金一封」が贈呈される。売上げを重視するばかりではなく、安全運転を行う従業員の努力を正当に評価することで、従業員の安全運転に対する意識の醸成にも大きく寄与している。③高齢者が活躍しやすい社内風土の醸成最高年齢者である82歳のドライバーをはじめとする高齢者が第一線で活躍しており、その姿はほかの高齢従業員にとっても大きな刺激となっている。50代や60代で入社して「自分はもう年寄りだから」と自己評価が低い従業員もいるが、周囲の高齢従業員の活躍を目の当たりにすることで励まされ、働く意欲の向上につながっている。このような相互の励まし合いや競争意識が、社内全体の活力を高める要因となっており、「高齢者だから特別扱いする」という考え方が自然と排除される風土が形成されてきた。高齢者の活躍を促進するだけでなく、年齢にとらわれない公平な職場環境の構築にも寄与している。④教育訓練制度による学びの支援従業員の能力向上とキャリア形成を支援するため、60歳以上の従業員を対象とした「高齢者意欲能力向上研修」を実施している。外部機関による研修を全額会社負担で受講可能とすることで、高齢従業員の役割意識やモチベーションの向上を図っている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①ICT導入による業務効率化業務の効率化とサービス品質の向上を目的として、キャッシュレス決済の導入や業務のデジタル化を積極的に推進している。これらの取組みは、売上げ向上にも寄与するため、ドライバーにとっても大きな意義を持つ。交通系電子マネーやスマートフォンを用いた決済に対応することで、利用者との降車時の対応時間も短縮されるなど、ドライバーの業務負担の軽減にもつながっている。こうした利便性の向上は、顧客満足度の向上とリピーターの獲得にも寄与し、結果として売上げの増加が期待される。2023年9月には、メーター連動式のクレジット決済端末を導入し、手入力による金額ミスや決済トラブルを防止した。スマートフォンを用いた決済も、従来の「お客さまが読み取る方式」から「ドライバーが読み取る方式」へ変更し、操作に不慣れな顧客への対応負担を軽減している。導入にあたっては、複数の端末を事前に用意し、ドライバーが実際に使用感を体験したうえで、最も使いやすい機種を選定するとともに、画像を多用したオリジナルマニュアルを作成して高齢ドライバーへも配慮している。当初、ICT導入は、高齢ドライバーにとっては高いハードルになると想定していたが、売上げ向上(=収入のアップ)につながるという明確なメリットがあることから、多くの高齢ドライバーが前向きに学び、積極的に取り組んでいる。②健康管理従業員の健康と生活の安定を支える福利厚生光タクシー 株式会社2025.1030画像を多用したオリジナルのマニュアルを作成

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