が企業などで導入され、一定の成果が報告されています。また、デジタル化の進展によりリモートワークや副業が広がるなかで、働き手が自ら仕事の枠組みを再設計する必要性はいっそう高まっています。ジョブ・クラフティングは、働く人が主体的に仕事を再構築し、よりよい働き方を実現するための営みです。その実践は、個人の幸福感や健康を高めると同時に、組織のパフォーマンス向上や持続的な成長にもつながります。そして何よりも、ジョブ・クラフティングは自分の経験や強みを再確認する貴重な機会となります。特にシニア社員にとっては、これまでの知識や人脈を活かしながら「いまの自分だからできる工夫」を見つけることが、これからのキャリアを前向きに築く礎となります。企業にとっても、シニア社員が活き活きと働き続けられる環境を整えることは、人材不足を補うだけでなく、多世代が学び合う豊かな組織文化の醸成につながります。ここまでお読みくださったみなさんも、ぜひ日々の仕事をふり返り、「小さな工夫」を一つ探してみてください。その一歩が、自分らしい働き方を形づくる第一歩になるはずです。ジョブ・クラフティングは、現場からの自発的な工夫を尊重し、多様な働き方を支える基盤として、今後ますます重要性を増していくでしょう。形成することも可能です。こうした取組みは、サステナブル・キャリア(持続可能なキャリア)の実現にもつながっていきます。ジョブ・クラフティングの実践は、定年後の活躍にも大きく貢献します。仕事に自ら工夫を加え、役割を再定義する経験を積むことは、定年後の転身や再雇用の場面で、新しい職場環境にスムーズに適応する力につながります。さらに重要なのは、ジョブ・クラフティングが「働く意味づけ」を変える点です。定年後には役職や肩書きが外れることで、自己の存在価値を見失うシニアも少なくありません。しかし、現役時代から「自分なりの仕事の意味」を見出してきた人は、再雇用後や転職先でも「ここでも自分らしい役割をつくり出せる」と前向きに適応できます。このように、ジョブ・クラフティングは単なる現役時代の工夫にとどまらず、セカンド・キャリアを活き活きと過ごすための基盤となるのです。おわりにおわりに8ジョブ・クラフティングは、個人の自発的な工夫だけでなく、組織が支援することでより大きな効果を発揮します。近年では、ジョブ・クラフティングをうながす研修やワークショップ【参考文献】★1 高尾義明(2024)『50代の幸せな働き方―働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法』ダイヤモンド社★2 Wrzesniewski,A.,&Dutton,J.E.(2001).Craftingajob:Revisioningemployeesasactivecraftersoftheirwork.AcademyofManagementReview,26(2),179–201.★3 高尾義明(2023)「ジョブ・クラフティングとは」『看護管理』,376,1052–1055.★4 一田憲子(2015)『「私らしく」働くこと―自分らしく生きる「仕事のカタチ」のつくり方』マイナビエルダー49ジョブ・クラフティング入門
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