エルダー2025年10月号
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態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること、といった方針も示されています。労働条件変更の提案自体が禁止されているわけではありませんが、継続雇用対象者に対して、合理的な裁量の範囲としてどの程度の提示が許容されるのかは悩ましい問題です。労働条件の提示に関する裁判例について2学究社事件(東京地裁立川支部平成30年1月29日判決)においては、継続雇用に関する条件の提示の仕方、それに対する返答などから、継続雇用が成立しているのか、成立しているとしていかなる労働条件となるのか、そ定年後再雇用時の労働条件について1定年後に継続雇用する制度を導入し、再雇用を行う場合、厚生労働省は、「合理的な裁量の範囲」の条件を提示していれば、高年齢者雇用安定法の違反にはならないとの見解を公表しています。ただし、継続雇用をしないことができるのは、解雇事由または退職事由と同一の範囲に限定されていることに留意する必要もあります(「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」参照)。同指針においては、継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高齢者の就業の実使用者には、同一労働同一賃金の規定に違反しないような合理的な裁量の範囲であれば、労働条件が下がるような提示が許されないわけではありません。ただし、大幅な引下げに対しては、引き下げることを正当化できる合理的な理由が求められる場合があります。A定年後再雇用契約時に就労条件を変更したうえで、賃金を減額することに問題はないのでしょうか?定年後再雇用の契約について、業務の内容や責任の程度を変更したうえで、それをふまえて賃金を減額する内容で定年後の労働条件を提示しました。労働者から、納得ができないという意見が出されたのですが、納得できるまで条件を引き上げる必要があるのでしょうか。Q1第88回 定年後再雇用時の労働条件変更、試し勤務における従業員の協力義務 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲/弁護士 髙木勝瑛2025.1050知っておきたい労働法A&Q

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