エルダー2025年11月号
23/68

特集Ⅱ企業の沿革・事業内容同社は1959年の創業で、日本で初めて世界の木の実の試作試売を開始。以降60年以上にわたり、日本初のナッツ専業加工事業者として輸入・加工販売を行い、業界をけん引してきた。ナッツの特徴に応じた異なる加工方法により、ナッツが持つ本来のおいしさを引き出して製品化している。1978年に現本社工場が竣工し、1986年から毎年開催している「アーモンドフェスティバル」は地域に根ざした恒例行事として定着。2001年には「第1回World Cashew Congress India」を受賞、2013年に「The US-Japan Agricultural Trade-Hall of Fame(日米農産物貿易殿堂入り)」、2019年に「第40回食品産業優良企業等表彰・農林水産大臣賞」を受賞するなど、国内外で高い評価を獲得している。品質管理体制も充実させ、2017年にFSSC22000認証を取得。創業当初からつちかった技術と品質へのこだわりが、同社の競争力の源泉となっている。Ⅲ高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方2025(令和7)年4月現在、従業員数227人のうち60歳以上が47人(20・7%)、65歳以上も22人(9・7%)在籍している。特に団塊ジュニア世代である50代従業員の人員構成がほかの世代より高く、役職者・技能者が集中している。現在の最高年齢者は84歳で、長年にわたって蓄積した技術と知識を活かして後進育成のための製造技術顧問として活躍している。定年延長の契機となったのは、年金受給開始年齢の引上げにともなう、従業員からの不安の声だった。同時に、後継者育成の遅れや技能の属人化という課題も顕在化していた。食品製造業という特性上、味覚や食感の判断など、ベテラン従業員から若手従業員へ教えることが技術伝承の仕事として重要な位置を占めていたが、複合的な課題に対応するため、技能を有する高齢従業員に長く活躍してもらう必要性が高まった。定年の延長にあたっては、社内から「若い世代のモチベーション低下」、「後継者問題の先送り」、「ライフプランへの影響」などの懸念が寄せられた。特に若手従業員からは「われわれの昇進が5年も遅れる」といった意見もあった。これに対して同社は、年功序列ではなく能力に基づいた人事制度への転換を決断。適格性・能力がなければ降職もある厳格な評価制度を導入し、メリハリのある制度運用を実施した。また、通信教育や資格取得支援による自己啓発の促進、人事評価面接におけるキャリア希望のヒアリングとアドバイスなど、個々の従業員に向き合った対応を行った。さらに退職金については、以前の定年年齢である60歳での退職でも全額支給(自己都合退職にしない)とし、退職金受給後に契約社員として継続雇用も可能とする配慮を行った。Ⅳ改善の内容(1)制度に関する改善①定年年齢の引上げ2019年に定年年齢を60歳から65歳へ引き上げるとともに、継続雇用制度の上限を70歳までとした。さらに70歳以降についても、半年ごとの面談を通じて本人の意思や気力・体力を確認し、健康であれば希望者のほぼ全員が継続雇用される運用を行っている。また、65歳まではポストオフを行わず、高齢従業員に引き続き業務の中核をになう役割を期待している。豊富な経験と知識を次世代へ継承エルダー21令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト東洋ナッツ食品株式会社

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る