エルダー2025年11月号
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する後継者育成も重要な役割として位置づけている。一方、65歳以降の再雇用時には、契約社員をベースとした再雇用契約を締結し、本人の能力や適性に応じた役割や役職を付与することで、業務内容に見合った給与を支給している。定年延長にともない導入した能力本位の抜擢人事は、若手従業員からも好意的に受けとめられている。実際に30代で課長職に就く従業員もおり、階層別教育の一環として年2回のオーダーメイド型OFF-JTを実施している。②透明性のある人事評価人事評価においては透明性と納得性を重視し、被評価者には人事考課表を完全に開示している。評価者は評価内容とその理由をていねいに説明し、従業員の強みや課題を共有することで、評価に基づいた適切な処遇を実施している。従業員自身が業務に対する考えや今後の目標を記載する欄も設けており、会社側はこれに対してフィードバックを行い、個々人の目標達成を支援している。この制度により従業員のモチベーション向上が促進され、企業全体の活力維持にも大きく寄与している。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み①生涯学習を推進自己啓発奨励制度を設け生涯学習を推進している。約200講座の通信教育を対象に、修了条件を満たせば受講料を全額会社が負担する。英会話やパソコンスキルの講座をはじめ、難関国家資格である通関士取得に向けた講座を受講する高齢従業員もいるなど、学習意欲のある高齢従業員が積極的に活用している。資格取得奨励制度では合格時に受験料を会社が負担し、会社が指定する32資格を取得すると、毎月1資格あたり500円の資格手当を支給するなど、スキル向上を促進している。②技術継承評価制度における目標管理シートにベテラン従業員の役割期待を記載し、後継者育成を重要な業務として位置づけたことで、育成へのモチベーションがアップしている。食品製造業という特性上、ベテラン従業員が長年つちかってきた「味、食感、味覚」といった製品の品質に直結する感覚や技術を若手従業員へ伝承することが、重要な「技術継承」の仕事としてとらえられている。③基幹システムの入れ替え基幹システムの入れ替えにより、従来の属人化された業務から脱却し、業務の標準化と効率化を図る計画を推進している。これまで使用していたオーダーメイド型のシステムから、レディメイド型のシステムへと移行することで、業務手順のマニュアル化が可能となり、異例対応時にベテラン従業員に依存していた属人化の課題も解消される見込みである。④高齢従業員の経験・能力の活用定年後の再雇用時には本人の能力や適性に応じて、監査役室、社長室、貿易実務担当、関連会社への出向・転籍など多様な職務を用意している。2020年には監査役室を設置し、配置した再雇用従業員2人(当時76歳・69歳)のうち一人を室長に任命、2024年には社長室を設置し67歳(当時)の再雇用従業員を社長室長に任命するなど、再雇用従業員でも役職者として登用される例もある。こうした配置により、高齢従業員の経験と能力を最大限活かす職場環境を整備しており、企業のガバナンス向上にも大きく寄与している。(3)雇用継続のための作業環境や作業の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①休憩時間の延長昼の休憩時間を45分から60分に延長(就業時間は変えず勤務時間を15分短縮)した。また、従来研修室だったスペースを休憩スペースに変更し、従来以上にゆったり休めるよう環境を改善した。体力が低下した高齢従業員からは「しっかり休めるようになった」と特に喜ばれている。②機械化の推進包装ラインでパッキングロボットを導入し原料投入や箱詰め工程を自動化した。今後も自動化ラインを増やしていく方針であり、機械による省力化によって高齢従業員に対する作業負担の軽減および労働災害の防止につながっている。③健康管理定期健康診断(年1回)に加え、人間ドック受診希望者には健保組合の補助に加えて会社補東洋ナッツ食品 株式会社2025.1122

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