エルダー2025年11月号
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2019年に職能等級制度を取り入れ、人事評価制度と賃金制度を新規に導入した。60歳以降70歳までは定年前と同様に人事評価を行い、定年前と同様の基本給、諸手当を支給し、人事評価結果に基づいて賞与に反映する仕組みとした。70歳到達後は、設計の職務は変わらないが役職を外れ、人事評価は引き続き行うが、70歳到達前とは異なる人事評価票による評価を行って賞与に反映していく制度にあらためた。人事評価の仕組みを整理し、ルールを開示したことにより、「役割が明確になり心身的な負担が軽減されたことで、いっそう長く仕事を続けられる」、「頑張って結果を出せば、給料が上がることがわかり納得できた」と社員からは好評である。③多様な勤務形態の実現2023年から、70歳を超える継続雇用については役職を外れるとともに、体力の低下や健康状態を考慮し、「週休3日」を原則とした。このことによって「家事、介護、通院など時間的余裕ができ、 心身ともに負担が軽減された」、「船舶設計についての最新技術や動向について、現役世代の社員と情報共有ができるのでより長く働き続けることができる」、「一人ひとりの生活に合わせた働き方や労働時間を自ら選択できるようになったことでワーク・ライフ・バランスの調和が図られるようになった」など社員の満足度は高い。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み①最新の船舶設計技術の習得支援若手社員には管理者の高齢社員がOJTで設計に関する関係法令・国際条約、船級協会基準改正および顧客情報等を指導し、三次元ソフト導入等最新設計情報・技術導入時には、部門別に外部研修等へ派遣している。研修終了後は取得した情報内容を会社内でそれぞれの部門別に情報共有化を図る打合せ会を開催し、技術資料の改定等を行っている。船舶に関する最新法令、国際条約、船級協会基準改正および顧客要請ならびに船舶設計に関する最新技術情報等の取得は船舶設計技術者にとって必要不可欠であり、高齢社員の自己研けん鑽さんへの意欲向上につながっている。②ボトムアップ型の職場風土の形成各部門で日常的に行う業務ミーティングのなかでは、生産性向上や業務改善などについて真摯に話され、課題解決や提案推進の機会となっている。高齢社員は熟練技術者として各部門におけるアドバイス役を果たしており、豊富な経験とノウハウなどを活かすことができる職務や役割をになうことで、やりがいを持って働けるだけでなく、経験やノウハウの伝承、若手社員の育成、会社の業績向上に貢献している。③マニュアル化とOJTによる継承ベテランの高齢社員をはじめ各部門の社員が中心となり、基本的な技術、最新の関係法令、国際条約、船級協会基準を各部門において、技術資料として取りまとめて標準化した。技術資料は社内サーバに保存し、だれでも閲覧できるようにしている。各部門の業務に必要な技術・技能のレベルを区分し、高い技術を持つ高齢社員は、若手のレベルに合わせたきめ細かいOJTを行っている。④高齢社員の活躍の場を広げるコンピューター化高齢化にともない、体力や技術的に、紙による設計図面作成が困難になった社員が急増したことから最新の三次元ソフトを導入し、高齢社員をはじめ全員が無理なく長く働き続けることができるよう、心身の負荷を軽減した設計業務を遂行できるようにした。あわせて、役割や責任のレベルを明確にするとともに、業務サポート体制を充実させた。若手社員も最新の設計手法を日々習得しており、業務の拡大や技術のレベルアップにつながっている。(3)雇用継続のための作業環境や作業の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①業務動線の整理設計図のコンピューター化により、手作業による図面作成がなくなったことと、ファイルなどの置場を整理し各部の職場から設計図面台をなくし、各社員の机上にコンピューターを設置するなど作業動線やレイアウトを変更した。こ株式会社 大鎧設計事務所2025.1130

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