エルダー2025年11月号
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特集Ⅱ企業の沿革・事業内容合同会社和の会は、2012(平成24)年に山口県宇部市で創業した。創業者の久く保ぼ田たトミ子代表社員は、1987(昭和62)年の介護福祉法制定時から介護福祉士養成に従事し、長年にわたって大学で教鞭をとり地域福祉や福祉心理学の教育に力を注いできた。定年退職後は、教育現場でつちかった知識と経験を実践の場で活かしたいとの思いから、同社を設立した。創業当初から居宅介護支援事業、地域密着型通所介護事業、訪問介護事業を展開し、2013年にはサービス付き高齢者向け住宅事業も開始した。事業の安定化を図るため、2013年から2024年にかけて山口県内外4カ所で太陽光発電による売電事業も手がけている。特に研修事業に力を入れており、介護福祉士実務者研修や実務者研修教員講習会を実施し、介護人材の育成に貢献している。小規模ながら寺子屋式の研修により、受講生同士のネットワーク形成や職場の悩み相談の場としても機能している。2023年からは「ご近所福祉サロン『愛の家なごみ』」を開設し、地域住民との交流促進や介護相談会、認知症サポーター養成講座を開催するなど、地域貢献活動も積極的に展開している。Ⅲ高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方創業から13年を経て、社員の高齢化が顕著に進行している。社員数37人のうち60歳以上が25人(67・6%)で、70歳以上も14人と全体の37・8%に達している。最高年齢者は81歳で、平均年齢は63・6歳となっている。介護業界は慢性的な人手不足に悩まされており、同社でもハローワークに求人を出しても紹介を受けることができず、雇用確保が困難な状況が続いていた。配置基準や資格要件が厳格に定められている介護事業所にとって、働く人がいなければ事業の存続ができないという重大な課題に直面していた。このような背景から、現在勤務している高齢社員が経験や技能を活かし、生きがいを持って長く働き続けられる環境づくりに着目した。そこで、就業規則の見直しと改定を行い、柔軟で多様な働き方を可能にする制度整備に取り組むこととなった。制度改正にあたっては、顧問社会保険労務士と密に連携し、全社員を対象とした研修を実施した。定年・継続雇用延長の変更点を含む就業規則の理解促進、働くことの責務や意義、会社の理念・方針などをていねいに説明し、社員の理解と納得感の醸成に努めた。Ⅳ改善の内容(1)制度に関する改善①定年年齢の引上げと継続雇用制度の改定2024年に定年を60歳から65歳に、継続雇用制度の年齢上限を65歳から70歳に引き上げた。全社員に労働条件通知書の変更と個別説明を実施し、希望があれば70歳まで働ける体制を整備した。これまで制度はあっても賃金などの明確な基準が示されていなかったが、今回の見直しにより、経験や技能を活かして長く勤務できる制度や環境が明文化された。社員にとっては定年後も賃金等の処遇が下がることなく働けるため、生活基盤の安定が図られ、豊かで安心できる生活が実現できるようになった。②賃金制度・人事評価制度の改善従来は明確な基準がなく、定年後の賃金は昇給しなかったり、現役世代と異なる昇給率を適エルダー33令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト合同会社和の会が運営するサービス付き高齢者向け住宅《なごみ館》・デイサービス《なごみ》

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