2025.112聖心女子大学 現代教養学部人間関係学科 教授大槻奈巳さん それから社会学に興味を持ち、州立大学で学ぶために英語の勉強を始めて進学しました。約2年後に夫の帰国にあわせて日本に帰りますが、もう少し社会学を勉強したいと思い、大学院に進学しました。―現在、日本は「ジェンダーギャップ指数2025」で148カ国中118位と低迷しています。その背景には何があるのでしょうか。大槻 日本では正社員の働き方の拘束性が強いことがあげられます。長期雇用慣行のなかで残業時間も長く、転居をともなう転勤もあります。仕事以外のインフォーマルな場面でもなんらかの形で貢献が求められる場面があり、それができないと標準とは見なされず評価が低くなる傾向があります。例えば、育児休業や短時間勤務は女性が利用するケースは多いですが、標準から外れているために低評価になってしまうこともあります。 また、以前のような露骨な男女差別はなくなってきましたが、いまでも男女において職―大槻さんは、長年にわたってジェンダーの研究をされていますが、もともと民間企業に就職し、結婚後にアメリカで社会学を学ぶなど、ユニークなキャリアを歩まれているそうですね。大槻 私が若いころは大学でジェンダーを学ぶ時代ではありませんでした。ジェンダーの視点から行われていた講義はあったと思いますが、ジェンダーへの関心が薄い時代です。大学卒業後は一般企業に就職し、その後、結婚相手がアメリカに赴任し、仕事を辞めてアメリカで5年間暮らしました。アメリカ滞在中は専業主婦のかたわらボランティアなどをしましたが、「この先自分はどうなるのか」という漠然とした不安感はありました。そんなとき、知合いからコミュニティカレッジの存在を聞き、社会学の講座を受講したのですが、私が日ごろから考えていることや不満に思っていることをうまく説明してくれたのです。場での期待や求められているものが異なることは少なくありません。仕事の割りふりでは、男性はキャリアの階段につながる仕事を与えられるのに対し、女性はやりがいはあっても知識やスキルがつきにくい仕事を与えられる傾向があります。例えば、男性の正社員であれば、将来管理職になっていくことが期待されますが、女性は「いつまで勤められるのか」という扱いになり、上司からの声かけのあり方も違うことなどが指摘されています。―例えば伝統のある会社の人事部などの場合、人事制度企画や労使交渉対応の労政担当が男性で、採用や福利厚生の担当が女性というイメージはありますね。大槻 そうですね。女性は中核の仕事になかなか就けないというのがいまも続いていると思います。よく「女性の視点を入れて仕事をしてください」といういい方をします。そのこと自体は重要ですが、「男性の視点を入れて仕事をしてください」とはいいません。男性が中核で女性が周辺だからではないでしょうか。やはりジェンダー規範や男性の無意識の偏見があるのではないでしょうか。―女性の管理職比率もそれほど伸びていませんが、やはりいまおっしゃったことと関係国際的に低い日本のジェンダー指数正社員としての働き方がその要因に
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