エルダー2025年11月号
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務の一部を担当してもらう制度。約10年前から実施している。導入の背景には、慢性的な介護職員の人手不足や退職した高齢者の社会参加意欲の高まりがあった。現在は、70代のアクティブシニア10人が在籍している。この制度により介護職員は本来の介護業務に集中できると同時に、アクティブシニアは利用者への対応も優れていることから利用者にも好評で、職場の雰囲気づくりにも一役買っている。④「ばあちゃんの(じいちゃんも)出番休暇」2007年に「娘の子ども」、「息子の子ども」に関係なく孫が誕生した場合に、7日間の休暇が取得できる育児応援特別休暇制度を導入した。制度導入のきっかけは、ある高齢職員から「娘が里帰り出産するので長期間休みたいが、迷惑をかけるので退職も考えている」という相談が寄せられたことにある。現理事長は「退職せずに、気兼ねなく孫の面倒をみてもらいたい」と考え、この制度を導入した。導入当初は対象者を正規職員、利用条件を娘の出産に限定していたが、その後、非正規職員を加え、娘の出産だけではなく息子の妻の出産まで拡大した。制度を利用した職員は50人を超えており、安心して働ける職場づくりの構築につながっている。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み①「エルダー制度」の導入2010年に導入した「エルダー制度」は、新規採用した職員とベテラン職員がペアとなって3カ月間一緒に業務を遂行しながら指導する、OJTによる新人教育のこと。この制度により未経験者でも基礎から応用までのスキルを体系的に習得でき、安心して業務に取り組めるようになるとともに、職員間の知識と技術の共有が円滑に進んでいる。②無資格介護職員の採用介護職員の確保が困難な状況にあるため、無資格の人材を積極的に採用し、その人材に資格取得支援を行っている。具体的には、資格取得のための時間的・経済的な支援として、法人が必要と認める資格を取得する場合、必要な学費の全額(または一部)を負担している。また、「介護職員実務者研修」で資格取得を目ざす職員には、スクーリングや実習を受講しやすいように勤務シフトに配慮をしている。資格取得を目ざし努力し成長する中高年職員の姿が若年・中堅層の職員にもよい刺激となっている。 ③デジタルツール・完全調理食の導入高齢職員の活躍促進の一環として実施された取組みであり、施設全体の業務効率が向上している。例えば、タブレット、インカム等のデジタルツールの導入では、業務効率の向上はもとより、コミュニケーションの質を高め、職場全体の働きやすさを促進している。特に高齢職員にとって、業務の負担が軽減され、快適に働くことができる環境の整備につながった。温めたり、盛りつけをしたりするだけでよい「完全調理食」の導入は、精神的・体力的にも大きな負担がともなう調理作業の負担から解放され、高齢職員が長く活躍できるようになった。(3)雇用継続のための作業環境や作業の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み①健康管理施策の拡充定期的な健康診断に加えて、特定のがん検診の費用を法人負担で実施している。また、女性が多く働いていることや、近年、女性のがんの罹患者が増加していることをふまえ、マンモグラフィと子宮がん検診の費用を法人が負担している。②地域健康センター「元げん気き館かん」の開放住民参画型介護予防のための拠点施設である地域健康センター「元気館」には、複数の運動機器が整備され、常勤の理学療法士による利用者の体力評価、運動プログラムの実施などが行われている。毎週水曜日の業務終了後に職員に開放され、運動機器を自由に利用できる。高齢職員からは「体のリフレッシュに大いに役立っている」、「気持ちも前向きになれる」などの声が寄せられており、健康維持・向上だけでなく精神的なリフレッシュ効果や職員間のコミュニケーションを図る場となっている。③安全衛生活動の見える化高齢職員は、身体的な健康維持が仕事の継続に直結するため疾病予防策は必須であることか社会福祉法人 安岐の郷2025.1142

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