エルダー3た。入社1年目から5年目までの追跡調査ですが、入社1年目の管理職志向のある男性は約95%、女性は約68%。5年目になると男性約84%、女性が約44%と、女性の下落率が20ポイント以上となります。 その原因についてもう少し詳しく分析すると、男性の場合、「将来のキャリアにつながる仕事をしている」人は管理職志向にプラスの影響があり、女性の場合は「専門能力を高めたい」、「仕事満足度がある」人が管理職志向にプラスの影響がありました。一方で、「主に女性が担当する仕事についている」人はマイナスの影響があることも判明しました。つまり、管理職になりたい、なりたくないという志向は、になっている仕事や求められる期待が影響しているのです。企業全体や職場のあり方が大きくかかわっています。―ジェンダー格差を解消し、生涯現役を見すえた女性のキャリア形成支援のために、企業が取り組むべきことは何でしょうか。大槻 いまは多様な人材が活躍できることが重視され、多様な人材が活躍できない制度の見直しが求められています。これまでは基幹的業務の仕事には拘束性の強い制約のない社員を配置してきたわけですが、女性のように制約のある社員も基幹的業務に配置できるよう見直していく必要があります。基本的には、①人材育成における公正性を担保する、②自律的なキャリア形成が可能な仕組みをつくる、③スキル形成そのものを評価する仕組みをつくる、④無意識のジェンダーバイアスを解消することがあげられます。具体的には、正社員のなかで分かれている雇用管理区分を一つにすること、そして会社指示の転居をともなう転勤を廃止することなどが必要だと思います。また、短時間勤務を利用すると評価が下がる企業もありますが、そういった評価の仕組みを変えていくことが必要です。社員が自分でキャリアを考えるキャリアオーナーシップを発揮させるには、があるのでしょうか。大槻 女性の管理職の増加に向けて、これまでは「家事・育児といった家庭内の責任を負っているからむずかしい」という「家族重視モデル」をもとに、対策が実施されてきました。ですが私は、職場そのものに女性が仕事を続けていけない、あるいは管理職を志向しなくなる要因がある「職場重視モデル」から研究を続けてきました。私が参加した国立女性教育会館のプロジェクトで若年層の管理職志向の調査を行いまし就いている仕事や職場環境が女性の管理職志向に大きく影響
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