エルダー2025年11月号
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エルダー57応え、各種規程の作成や書類様式の作成など、一から事業をつくり上げることにたずさわりました。「正直なところ、立上げ当初はプレッシャーもありました。しかし自分の思い通りに仕事を進められたことは大きなやりがいでした」と話す佐野さん。佐野さんの強みは、長年の経験からつちかわれた知識と、保護者から見て「おじいさん・おばあさん世代」という安心感です。「年齢を重ねているからこそ、深い悩みも打ち明けてもらいやすいです。視野を広く持って物事を考え、目先の支援だけでなく、将来的な悩みにも寄り添ったアドバイスをしています」と続けます。保護者が佐野さんの提案を実践し、子どもの変化を報告してくれることが一番の喜びだといいます。現在はフルタイムで勤務していますが、自身のペースで仕事ができる自由度があり、体調管理にも気をつけているとのこと。今後の抱負としては、後輩に徐々に仕事を任せていきたいと語りました。佐野さんの後継者に抜擢された政まん所どころ拓たく哉やさんは、佐野さんの豊富な知識量と面談時の話を引き出す技術について「保護者の緊張感を和らげ、心を開かせる技術は豊かな経験に裏打ちされたものです」と話し、感銘を受けていました。保育所等訪問支援事業を担当する二にの宮みや洋よう子こさん(68歳)は、特別支援学校の教員を35年間勤めた後、57歳で退職し、2年後に同園に入職しました。教員時代から渡邊園長と面識があり、その縁で声がかかったといいます。訪問支援事業には、保育園だけでなく学校への訪問も含まれるため、幼児期だけでなく学齢期の子どもたちの支援経験を持つ二宮さんが適任と判断されました。「福祉事業所の立場として学校に入っていくことに最初は苦労しました。保護者と学校、そして支援員(自身)が共通理解を持って支援策を考えていかなくてはいけません。子どもの状況は一人ひとり異なり、学校の先生が替わるだけでも状態が変化することもあります。保護者と学校の意見が食い違う際には、それぞれの思いを聞きながら調整役をになっています」(二宮さん)むずかしい事例に直面することも多いといいますが、子どもたちの行動を成長の表現としてとらえ、周囲と共有しながら、長期的な視点で支援を考えることを心がけているそうです。自身の働き方については、「仕事を任せてもらっていて、学校との連絡調整や訪問計画を自身の都合と学校の都合を合わせながら立てることができるので、融通が利く働き方ができています」と語りました。高齢職員が力を発揮できる居場所づくりに注力渡邊園長は今後の展望について、次のように語ります。「人材不足が深刻化するなかで、年齢にかかわらず、個々の意欲、能力、体力に応じて最大限に力を発揮できる居場所をつくり続けたいです。大先輩たちの活躍が園にとって不可欠ですから」とあらためて高齢職員への期待を語り、内田プランナーは「今後も同園に寄り添いながら、可能なかぎり支援していきたいです」と伝えていました。ひかりの家は、プランナーとの継続的な連携により実態に即した制度設計を実現し、高齢職員の豊富な経験と専門性を組織運営の核として活用していました。一人ひとりの職員を大切にする理念が、世代を超えた活躍の場を生み出し続けています。(取材・西村玲)学校と保護者へのメールを作成する二宮洋子さん

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