エルダー2025年11月号
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高齢者に聞く第 回2025.1158大好きな世界に飛び込めた喜び私は千葉県八やち街また市の生まれです。4人兄弟の2番目で、母は女手一つで4人の子どもを育ててくれました。早く母を楽にさせたいという気持ちから、中学校を卒業すると水道工事会社に就職しました。幼いときから自動車が大好きで、自分もいつかは大きな自動車を乗り回してみたいという漠然とした夢がありました。まずはオートバイの免許を取り、自動車の普通免許が取れる年齢になるのをひたすら待ちました。18歳になって念願の自動車の免許を取得、当時は普通免許で4t車まで運転することができましたので、4t車に乗れたときはとてもうれしかったことを憶えています。次に目ざしたのは大型トラックの免許です。大型トラックの免許取得には普通免許を取ってから3年以上経過しなければなりません。私は22歳で大型免許を取得しましたが、ここが長いトラックドライバー人生の始まりです。すぐに個人経営の運送店にお世話になり長距離もこなすようになりました。人との出会いとは不思議なもので、荷卸しなどで何度か出会ったトラックの、手入れがあまりにも行き届いていたことに心が惹かれました。思い切ってたずねてみると、そのトラックのドライバーは菱木運送の先代社長でした。社長自らが大型トラックを乗りこなす姿にほれ込んで、菱木運送で働いていた知人に口を利いてもらい、めでたく菱木運送への入社を果たしました。八街市は日本を代表する落らっ花か生せいの生産地。その生産に適している火山灰地は粒子が細かく乾燥すると風で舞い上がる。砂ぼこりの中を走り抜けてきた加藤さんのトラックは美しく磨き抜かれていた。先代社長の教えが生きている。好きこそものの上手なれ25歳で菱木運送へ入社して、気がつけば45年が経ちました。入社したときは私が一番の若手で、先代社長からドライバーの心構えを教わりました。そして、先輩ドライバーたちの背中を追いかけながら夢中で腕を磨いたものです。時代は高度成長期に向かっていましたから物流業界も景気がよくとても忙しかったです。荷積みや荷卸しは機械化されていなかったので体はきつかったのですが、やりがいもありました。トラックドライバーは運転だけしていればよいわけではありません。安全運転のためにタイヤやオイルのチェックはもちろん、洗車するときも濡らしてはいけない部分に注意するなど、ハンドルを握っていないときにこなすべき作業は無数にあります。それをていねいに行うことが安全運転につながります。自分のトラックを大切に扱う菱ひし木き運送株式会社トラックドライバー加か藤とう 譲じょう二じさん 加藤譲二さん(70歳)は、22歳のときに大型自動車の運転免許を取得、  それから半世紀近く大型トラックのハンドルを握り続けてきた。手入れの 行き届いたトラックで安全運転第一を心に刻み、いまも現場の第一線で働く加藤さんが、ドライバーとして生涯現役を貫く心意気を語る。109

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