高齢者に聞くエルダー59ことがドライバーの心得の第一条なのです。先代社長のトラックの美しさに惹かれたのが縁で入社させてもらったので、トラックの手入れには、いまでも心を込めています。65歳までは、大型トレーラーも動かしていました。トレーラーで名古屋や大阪まで行って、行く先々で仲間ができて楽しかったです。大型特殊免許は入社してから会社で取らせてもらいました。感謝しかありません。トラックの安全走行に心を配る加藤さん。トラックが出入りする際にご近所の樹木の枝にぶつかることがないように、木の枝の剪定をお願いしに行く加藤さんの姿を目撃した同僚もいる。加藤さんの存在そのものが若手を育てている。アイデアマンの二代目の挑戦大好きなトラックの仕事ですが、体力的にきついので、会社がドライバーの働き方改革に積極的に取り組まなければ、70歳まで働き続けてこられなかったかもしれません。先代亡き後、二代目を継いだ現社長は無類の車好きで、無類のアイデアマンです。現社長が開発した「乗務員時計」というスマートフォンのアプリがあります。あとどれくらい運転ができるのか、休憩時間がどれくらいあるのかがリアルタイムでわかります。お客さまから追加の仕事の依頼があってもアプリで表示される時間を根拠に断ることができます。現社長によれば、労働基準監督署から法令順守の一部ができていないことを指摘されたことがアプリの開発のきっかけになったそうです。業務中に守るべき情報を運転手と運行管理者にリアルタイムで表示できるこのアプリは、18年前から改良を重ね特許も取得しました。現社長は幼いころからよく知っていて、私のトラックの助手席に乗せたこともあります。ドライバーに寄り添う風土を先代から見事に受け継いでくれています。仕事を誇りに生涯現役を目ざしたい私たちは、かつて「運ちゃん」などと呼ばれたものです。最近では「ドライバーさん」とていねいに呼んでくれるお客さまも増えて、時代は変わるものだと思います。私の現在の勤務ですが、例えば午前4時から5時の間に会社を出発して、埼玉で時間指定の荷卸し。そこから群馬まで走って荷を積み、千葉で荷卸ししてから14時前後に退勤するといった具合です。昔のような待ち時間が解消されたのは、この業界の進歩なのでしょう。予定が無事こなせたときは達成感があり、これがモチベーションにつながっています。お客さまに喜んでいただいたときは、お役に立てたことがうれしくてたまりません。いつも朝が早いので、夜9時には睡魔に襲われます。安全運転のためには質のよい睡眠が欠かせないと考え、睡眠時間には気を遣っています。お酒はほとんど飲みませんし、たばこも若いころ吸っていましたがきっぱりやめました。体調管理が長く働き続けるコツだと思います。当社には、現在33人の従業員がいますが、私が最高齢で勤続年数も一番長いので、ほかの従業員のお手本にならなければと気を引き締めています。これといった趣味もないのですが、一つあげるとすればコンサートに出かけることです。サザンオールスターズのコンサートによく出かけていましたが、いまは矢や沢ざわ永えい吉きちにぞっこんです。彼がソロとして独立する前の時代から、大きなバイクに乗ってコンサート会場に駆けつけたものです。彼はたしか、現在76歳、まさに生涯現役で励まされます。オートバイの免許を取ったときから、いつも次の目標を決めて歩いてきたように思います。若い人たちには目標をしっかり持ってほしいと伝えたい。そして好きなことに夢中になってほしい。いまは、自分が働くことでだれかの役に立ちたいという気持ちが一番強いです。最近は高齢者の運転が何かと話題になることが多いですが、自分の運転がおろそかになり出したと感じたら、そのときが引退するときだと思っています。しかし、ハンドルを握った瞬間、もう少しがんばろうと思えるのですから、人生とは愉快なものです。
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