夫できる雰囲気をつくる必要があります。これには、年齢や立場にかかわらず多様な工夫を認めるインクルーシブ・リーダーシップというスタイルをとるといいでしょう。実務的にいえば、「まずやってみよう」といえる上司がいる職場ほど、シニア社員のジョブ・クラフティングは広がりやすいのです。ジョブ・クラフティング研修ジョブ・クラフティング研修3シニア社員にとって、ジョブ・クラフティング研修は「新しい挑戦を始める場」であると同時に、「これまでの経験を整理して次に活かす場」でもあります。若手向けの研修がスキル習得や行動変容に重点を置くのに対し、シニア向けの研修では「自分の強みや価値観をどう活かすか」、「役割の縮小をどう受け入れ、意味づけを変えるか」といった視点が重視されます。一般的な研修の流れは共通しています。まず導入では、ジョブ・クラフティングの考え方や事例を紹介します。「小さな工夫で仕事の意味が変わる」ことを理解することで、受講者は安心して学びに取り組めます。続いて自己診断の時間を取り、日々の業務や人とのかかわり方をふり返りながら、「ここは自分に合っている」、「ここにストレスがある」と棚卸しします。いシステムの導入を受け入れられず、組織の指示に従わないことがありました。その結果、チーム全体の生産性が下がり、職場に不協和音が生じました。「抱え込みすぎ」のケースでは、後輩を思いやるあまり、自分一人で業務を引き受けすぎたシニア社員が過労状態になり、結局は体調を崩して長期休職につながってしまったことがありました。善意からの行動でも、過剰になると本人も職場も苦しくなります。このような副作用を防ぐためには、上司が個人の工夫の意図は評価しつつ、職場全体とのバランスを見て調整する役割を果たすことが欠かせません。ジョブ・クラフティングは自律的な行動ですが、社員のジョブ・クラフティングが組織の許容できる範疇を超えたときには、上司がその業務を適正なレールに戻してあげることが必要です。その結果、本人の意欲を損なわずに組織にとって健全な方向へ導くことができるのです。マネジメントにできる支援は次のようなものが考えられます。第1に行動を起こす支援です。まず試してみるように社員の背中を押すのです。第2に行動を方向づける支援です。成果や課題を上司が一緒に確認し、改善の方向を示してあげることができます。第3に心理的安全性の確保です。上司は、社員が失敗を恐れず工白をつくっておくことが大事なのです。アソビとは上司に逐一報告せずに進められる少しの自由度のことであり、アソビがあることでシニア社員は自分らしい工夫を試せます。逆に、すべてがマニュアル通りだと工夫が制限され、働きづらくなります★1。例えば、小売業のシニア社員が「接客中にお客さまにひとこと声をかける」という工夫を自主的に始めました。決められたセリフではなく、天気や地域の話題を織り交ぜることで、常連客との会話が弾みました。これが売上げにもつながり、同僚も「真似したい」と取り入れるようになります。アソビがあるから工夫ができるのです。前回※1でも解説しましたが、ジョブ・クラフティングにも副作用があります。例えば、「やりすぎ」、「こだわりすぎ」、「抱え込みすぎ」といった状態に陥ると、かえって職場全体に悪影響を及ぼすことがあります。「やりすぎ」のケースでは、シニア社員が独自に接客方法を工夫しすぎて標準マニュアルを逸脱し、ほかの社員との対応に差が出てしまうなどの例があります。顧客に混乱を与える結果となり、本人の意図に反して職場全体に負担をかけてしまいます。「こだわりすぎ」のケースでは、あるベテラン社員が自分なりのやり方に強く執着し、新し※1 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202511/index.html#page=50エルダー39ジョブ・クラフティング入門
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