⑷福利厚生関係の手当について裁判所は、福利厚生に関する手当については、「経営判断及び団体交渉等による労使自治に委ねられる部分が大きい」としました。例えば、扶養手当については、「将来的に直面する可能性のあるライフイベントの有無や内容、過去の資産形成の機会の有無や程度等に関する正社員と嘱託再雇用社員との相違に照らすと、両者の福利厚生に一定の相違を設けることが使用者の経営判断として許容されるべき範囲を逸脱するとはいえない」とされています。これまでの判例においても、労使間の協議や団体交渉を考慮要素にすることは示されてきましたが、ていねいな交渉の結果が影響した事例として参考になると思われます。していきます。役員・従業員の義務について2会社法上、役員は、会社に対して忠実義務を負っています(会社法第355条)。また、労働契約において、従業員は、「使用者の正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務」(誠実義務)を負っているとされています。そのため、役員や従業員が自身の在職中にほかの従業員に対して勧誘・引き抜き行為を行うことは誠実義務違反に該当しうると考えられています。なお、幹部社員については、その影響力の強さから、より高度な誠実義務を負うものと考えられています。在職中の役員・従業員が引き抜き行為・転職勧誘行為を行った場合には、これらの義務に反するものと判断される可能性があります。従業員の権利について3引き抜き行為が行われた場合、一定の状況においては、引き抜き行為の違法性が肯定されます。もっとも、違法性が認められない範囲もかなり広くあるというのが現状です。この判断の背景にあるのは、従業員の職業選択の自由(憲法第22条1項)です。従業員はそれぞれ職業選択の自由を有しており、原則として、会社を自由に退職することができ、単なる転職の勧誘を超え、社会的相当性を逸脱する方法で引き抜き行為が行われた場合には、そのような引き抜き行為は違法と評価され、不法行為が成立することになります。もっとも、従業員には職業選択の自由があるため、違法となるハードルは相当程度高く設定されています。多数の部下を引き抜く行為は許されるのでしょうか会社の役員でもあった従業員が多数の部下とともに一斉に他社に転職しました。調査によれば、在職中から部下に対して勧誘を行っていたようです。このようなことが許されるのでしょうか。Q2Aはじめに1現在、人材の流動性は高くなってきており、人材の確保・定着が喫緊の課題となっている会社も多くあります。そのようななか、複数の従業員が、突然に一斉退職した場合、会社としては、事業の執行に多大な支障を生じることが想定されます。取引先との契約の維持も困難となる場合もあるでしょう。以下では、従業員による引き抜き行為・転職勧誘行為について最新の裁判例を紹介しつつ、解説2026.148
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