エルダー2026年1月号
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転職先についても自由に選択することができます。勧誘行為をすべて違法としてしまえば、職業選択の自由が実質的に保障されないことになってしまいます。引き抜き行為の違法性4では、どのような場合に引き抜き行為・転職勧誘行為が違法になるのでしょうか。裁判例では、転職先での労働条件等を提示して転職を持ちかけるといった程度では違法ではないとされています(大阪地裁平成12年9月22日判決)。他方で、単なる転職の勧誘を超えて、社会通念上の相当な範囲を逸脱した場合には、違法な転職勧誘行為・引き抜き行為として、不法行為を構成するものとされています。転職勧誘が社会通念上の相当な範囲を逸脱しているか否かは、引き抜かれた従業員の地位、人数、退職による会社への影響、転職加入の方法、態様など諸般の事情を総合して判断するとされています。アジャイル事件(東京地裁令和7年1月22日判決)5従業員による引き抜き行為の違法性が問題となった最近の事件として、アジャイル事件(東京地裁令和7年1月22日判決)があります。本件は、キャラクターなどを活用した商品企画等を主たる業とする会社Xが、Xの元役員であったY1、Y2および会社Y3(Y2が代表取締役)に対し、Yらが共謀して、Xの従業員(22人)をY3に移籍させようとした引き抜き行為が、不法行為を構成すると主張して、Yらに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案です。裁判所は、「被告Y1らは、共謀の上、本件一斉退職によって、退職従業員らを被告会社に引き抜く行為(本件引抜行為)を行った」ものであると認定したうえで、「被告Y1らが、事前に計画のうえ、被告Y1がPM本部本部長の地位にありながら、A事業(相当多額の売上を上げていた。)を担当するPM3部の22名もの従業員(部長、グループマネージャー、チームマネージャーなど、PM3部の役職者の多くが含まれていた。)に直接又は間接に働き掛けをし、本件一斉退職をしたもので、本件引抜行為は、原告の経営に重大な打撃を与えるものであったことに加え、被告Y1らが、原告在職中からA【※Xの顧客(筆者追記)】の担当者に対し、別会社がA事業を行うことにつき、原告の了承を得ているなどと事実に反する説明をし、被告Y1及び退職従業員らの原告在職中から、退職従業員らのうち複数名に被告会社のメールアドレスを割り当てるなど、不当な方法を用いたことからすれば、本件引抜行為は、社会通念上相当な範囲を逸脱した違法なものである」と判断しました。そのうえで、結論としては、「被告Y1らの本件引抜行為は、原告に対する共同不法行為を構成し、また、被告Y2の行為は、被告会社の代表取締役の職務を行うにつき行った行為と認められる」と判示し、「被告Y1らは、共同不法行為(民法719条1項)に基づき、被告会社は、会社法350条に基づき、本件引抜行為により原告に生じた損害を賠償する責任を負う」として、Xの請求を一部認容しました(なお、Xが3億円以上の請求をしていたのに対し、2900万円余の範囲で損害を肯定し、請求を認めました)。本件は、会社の元役員らが、多額の利益を上げていた重要部署における主要メンバーの多数を一斉に引き抜くものであり、その方法も不適切であったことから、引き抜き行為の違法性が認められており、妥当な判断と思われます。エルダー49知っておきたい労働法A&Q

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