エルダー63外のデザインコンペでも受賞し、ジュエリーやインテリアとしても世界的に高く評価されている。北井さんは30年間リウマチを患いながら刺しゅうを続けてきた。痛みで針に糸を通すことすらできない日もあるが、「刺しゅうに集中していると痛みを忘れる」という。「刺しゅうだけが楽しみ。もし、病気をしていなければ、ここまで来ることはできなかったでしょう」現在は生徒の一人が後継者に育ち、技術の継承を進めている。また、両面立体刺しゅうを一人でも多くの人に知ってほしいと、自らSNSなどを活用した情報発信にも力を入れている。つくりたいもののイメージを思い描きながら、一針一針に心を込める。長年にわたるその姿勢が、だれも見たことのない美しさを生み出している。立体刺繍SayokoTEL:090(3539)4630https://www.rittai-shisyuu.net(撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英)刺しゅうする糸は、綿の刺しゅう糸よりも細くすべりやすいレーヨンの糸をはじめ、硬いプラチナ糸や本金糸、さらにラメ糸などを組み合わせ、糸によって引く加減を調整しながら刺すことで、光沢のある刺しゅうを実現。さらに「ぐし縫い」という独自の技法で繊細なグラデーションも表現する。「すべて自分で考えながらつくっているので、失敗も多いです。でも失敗を重ねてきたことで、ほかのだれにもできない作品をつくれるようになりました」病と30年つき合いながら刺しゅうに向き合ってきた2018年に集大成として展示会を開いたところ、作品に感銘を受けたブライダルファッションデザイナーの桂かつら由ゆ美み氏から声がかかり、翌年のパリコレクションのウェディングドレスに作品を提供した。また、北井さんの作品は海プラチナ糸、本金糸(24金)、カラー金糸、ラメ糸などを使い分け、糸を引く加減を調整しながら、繊細な刺しゅうを実現する鳥は、羽を一枚ずつ刺して立体に組み立てている。この作品を桂由美氏が気に入り、パリコレクションに参加することにつながった左右対称かつ複雑な模様を持つオオムラサキは、北井さんの作品のなかでももっともむずかしいものの一つ。左右対称になるように刺しゅうをすることは、難易度がかなり高いというスケルトンのステッキのなかに、花に止まる蝶の刺しゅうを施した作品。黄綬褒章の授賞式にも持参した。「高齢の方も普通の杖には抵抗があるもの。こんな杖でおしゃれを楽しんでほしい」との思いで制作した色が徐々に変化するように刺しゅうする独自の手法「ぐし縫い」。自然なグラデーションを表現できる森英はな恵え氏が立ち上げたNDKファッションショーに出品した、刺しゅうの蝶をあしらった白しろ無む垢くのドレス(右)。左は留めそでをリメイクしたドレス vol.359
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