エルダー2026年3月号
10/68

2026.38護送船団的なメンバーシップ型には、いくつかの問題があります。もちろん、これまでの高度経済成長において、日本型の雇用システムは大きなメリットがあったということは決して否定しません。かなり効果的な人的資源管理の手法でしたが、現代におけるミドル・シニアのキャリアだけを取り出して考えてみると、彼らの自律的なキャリア形成に対して、いくつか影響を与えています。例えば、メンバーシップ型は内部労働市場と指摘されていますが、組織のなかで人材の流動化をうながす方法になっていますので、エクスプローラーとしての経験は社内にかぎられていきます。転職をくり返しながら、さまざまな専門性を身につけていくジョブ型と異なり、社内での経験にかぎられてしまうのです。また、日本では転職市場が活性化していないため、独立へのハードルが高いといえます。一度会社を辞めて独立した人が組織に戻る壁も高く、インディペンデント・プロデューサーにもなりにくい状況があります。さらに、副業を考えても、まだまだ日本社会では完全には定着していないこともあり、本人、あるいは企業もまだ模索段階です。そういった意味では、ポートフォリオ・ワーカーも、まだ一般化するにはむずかしいといえます。リーランスの働き方も、このインディペンデント・プロデューサーに相当します。最近では副業の解禁もあり、本業をしながらこういった独立した仕事をしていく準備をすることも、認められるようになってきました。最後に「ポートフォリオ・ワーカー」です。完全に独立をするというよりは、複数の仕事を組み合わせていく働き方です。さまざまな仕事を経験していくことで、互いに相乗効果があり、本業にも副業にもよい影響を与えていく、そういったポートフォリオの組合せは理想的です。日本型雇用システムとの相性この三つの働き方は興味深い提言ですが、日本型雇用システムとの相性には課題があります。伝統的な日本企業が取り入れている日本型雇用システム、最近では「メンバーシップ型」として知られるようになりましたが、この日本型雇用システムは、必ずしもリンダ・グラットンらが指摘している人生100年時代の働き方とは相性がよいとはいえません。具体的には、新卒一括採用、会社都合の人事異動、年齢による定年、そして再雇用時に処遇が4割減になるケースもあるなど、年齢による間が15年間もあるというのは、かなり長いと思いませんか? このように考えると、人生の長い時間を過ごす「仕事」が、マルチステージ化していくのはもっともなことで、リンダ・グラットンらが指摘していることが、日本にもまさしく当てはまってくるわけです。そこで、リンダ・グラットンらは働き方を三つの考え方でとらえてみてはどうかと提唱しています。それが、「エクスプローラー」、「インディペンデント・プロデューサー」そして「ポートフォリオ・ワーカー」です。「エクスプローラー」は「探査」という意味で、さまざまな世界を探査し、多様な経験をしていくことを意味しています。さまざまな職業経験を通して、幅広い見識を養っていくキャリアの形成です。次の「インディペンデント・プロデューサー」は「独立」を意味しています。組織に所属せず、自由と柔軟性を重視して、小さなビジネスを起こす働き方です。特に士業などで、会社に勤めながらキャリア後半に勉強を始め、適切なタイミングで独立する方々も、みなさまの周りにいらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、最近ではオンラインでの仕事やITの進展により、インターネットを使ったビデオ制作や翻訳などのコンテンツ制作といった、広義でのフ

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る