エルダー9特集令和7年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅡ〜3点目は、キャリアの責任所在です。一つの組織内でキャリアが完結するなら、キャリアや生活保障は組織側の責任ですが、空間が広がることで、キャリア形成は自己責任になりつつあります。そして4点目は、キャリアサクセスの考え方の変化です。一つの組織内でのキャリア形成であれば、昇進・昇格がサクセスでしたが、空間が広がり境界があいまいになると、サクセスは個人の満足感、達成感、充実感という内的キャリアへ志向が向きます。この四つの社会的変化が、サスティナブル・キャリアという考え方を生み出しました。では、サスティナブル・キャリアにおける成功の条件は何でしょうか。健康と幸福と生産性、この三つが重なり合ったところが、サスティナブル・キャリア成功の成果変数です。まず1点目が健康です。健康経営Ⓡ(★)は、いまでも非常に重要であり、心身ともに健康である経営を目ざすことは、社会的な動きになっています。2点目は、最近注目されているウェルビーイングです。社員一人ひとりが幸福であり、価値観や目標が自覚され、達成され、成長ニーズを満たすウェルビーイング経営も、特に人的資本経営の成果指標として取り上げられるようになサスティナブル・キャリアにおける成功の3要素そうしたなかで、今回、私が提案したいのが、「サスティナブル・キャリア」という考え方です。サスティナブルは、継続可能なという意味ですが、この考え方が生まれてきた背景について説明します。この研究を推進してきたのが、オランダのファン・デル・ハイデン氏と、ベルギーのデ・フォス氏というヨーロッパの研究者です。「ジョブ型」、「メンバーシップ型」の区別をする際に、私たちは「ジョブ型」を欧米的といいがちですが、実際はアメリカ的です。ヨーロッパは比較的、アメリカより社会主義的で、社会のため、個人のためという発想を持っています。彼らがサスティナブル・キャリアを提言する社会的背景として、大きく四つのポイントがあげられます。1点目は、時間軸の変化です。人生100年時代といわれるように、キャリアが長期化しています。2点目は、キャリア形成の場の変化です。一つの組織だけでなく、会社以外の社会貢献活動なども含め、さまざまな経験がキャリアに影響を与える空間が広がっています。このように、日本型雇用システムは、マルチステージ化への対応がむずかしいといわざるを得ません。ただし、早くから対策を進めている企業ももちろんあり、このあと事例として二社からご紹介いただきますが、定着に向けて現在、相当な努力をされているところだと思います。多様な課題があるなかで、シニア個人の視点で見ると、企業はさまざまな施策を打ち、最近ではキャリア自律が叫ばれるようになっていますが、納得するには時間のかかる方々もいらっしゃいます。というのも、彼らが入社した当初は、会社のために自分のキャリアをささげる働き方が歓迎されていた時代でした。当然、会社のなかでの昇進・昇格も、会社都合による人事異動にそのまま抵抗せずに、どこにでも異動し、できるだけ早く適応していくことが昇進していくうえでの大きな条件だったわけですから、ある日突然、自律的なキャリアといわれても、非常に戸惑ってしまうのは当然です。このため、釈然としない世代である50代の方々が、まだまだ残っていると思います。現在の30代は、この動きを自然に受け入れるでしょうが、今後10年ほどは釈然としない世代のキャリアシフトチェンジが求められます。個人と組織双方が納得できる制度設計と運用が必要です。★「健康経営Ⓡ」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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