エルダー19特集令和7年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅡ〜60歳手前で「本来いた、元の部門に戻りたい」と希望する方もいらっしゃいます。例えば不動産業務をずっと経験された方が、いまは個人向けの別業務をしていて、そこで定年後再雇用でジョブ型になっていくよりは、自分のキャリアのハイライトになっている業務に戻りたい、といった例です。ポストの兼ね合いで、人事異動を即座に行うことはむずかしいので、60歳で定年を迎える2年ほど前から、対象者全員に対し人事部で面談を行い希望を確認しています。こうすることで、人事異動に希望を反映させやすくなります。面談はまず人事部が個別面談を行い、そのうえで上司との面談を実施しています。上司としては「自部署に残ってほしい」という思いがある一方で、本人は「別の部署に戻りたい」と考えているケースもあります。そのため、人事部が客観的な立場で話を聞き、調整役をになっています。実施時期についても、あまり早すぎると本人が自分ごととしてとらえにくく、「まだ先の話」となってしまいますし、定年直前では運営上の調整がむずかしくなります。その点から、1〜2年前がもっとも適切なタイミングだと考えています。山﨑 ライオンではコミュニケーションを密にとることをプログラムに組み込んでいらっしゃキャリア自律を支える対話の仕組みづくり山﨑 次の課題は「価値観を自覚し、表現できる場づくり」です。P-Jフィットには、自分は何ができ、何をしたいのか、強みを自覚し選択していくための対話が不可欠であることが、2社の事例からもうかがえます。一方で、本人に明確なキャリア意識があっても、ポジションをすべて個別に用意できないという組織側の制約があります。この制約と個人のキャリア志向をどのように橋渡ししているのか、その苦労についてお聞かせください。中村 シニアの定年前に細かく面談をすると、結果的にジョブ型に近づいていくのか、という点についておうかがいしたいのですが。中村 シニアの方はジョブ型に寄っていったほうがよいと思います。専門性を発揮しやすいですし、人事異動の心配がなく最後まで決めてしまうほうが、納得感があって腰を据えやすいのではないでしょうか。若いうちは可能性を広げていき、中堅で決めていく形で併存させています。青木 職務型か役割型かは、現時点では正確な答えを持っていません。2023年に管理職を対象に二つのラダー(キャリアの段階や成長の道筋)を用意したのですが、その管理職が定年後再雇用になった際、役割型が適しているのか、職務を固定して決まった仕事をお任せしたほうがよいのかは、今後の検討課題だと思っています。山﨑 もしジョブ型、あるいはそれに近い制度運用になってきたとすると、特に先ほどのお話のように、キャリア後半でいわゆる出口戦略として輝くことが、本人にとっても自分にフィットした仕事を選んでいくことが大事になります。専門用語で「P-Jフィット(Person-Job Fit)」といういい方をしますが、これは若者の採用のときによく使われる概念ですが、個別化したシニアこそ、このP-Jフィットという概念が大事なのだと思います。釧路公立大学准教授岸田泰則氏
元のページ ../index.html#21