⑵ 通算により法定外の労働時間が発生した場合では、通算の結果、法定外の労働時間が発生した場合の割増賃金は、いずれの事業所が支払うことになるのでしょうか。通達(令和2年9月1日基発769号)によれば、まず労働契約の締結の先後の順に所定内労働時間を通算し、次に所定外労働時間の発生順に所定外労働時間を通算することによって、通算した労働時間全体を把握し、そのうち法定労働時間を超える部分で自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金の支払義務を負うとされています。なお、労働者が使用者に無断で副業や兼業を行っていた場合にまで割増賃金の支払義務を生じさせることは不合理であることから、「労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が事実と異なっていた場合でも労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば足りる」とされています(令和2年9月1日基発769号)。タイミー事件3労働時間の通算に関して判示した近年の裁判例として、タイミー事件(東京地裁令和7年3月27日判決)がありますので見ていきましょう。裁判所は、「労働者が複数の事業主の下で労働に従事し、それらの労働時間数を通算すると労基法32条所定の労働時間を超える場合には、労基法38条1項により、時間的に後に労働契約を締結した事業主はその超えた時間数について割増賃金の支払義務を負うとされている」としたうえで、「当該労働者が他の事業主の下でも労働しており、かつ、同所での労働時間数と通算すると労基法32条所定の労働時間を超えることを当該事業主が知らなかったときには、同事業主の下における労働に関し、当該事業主は、労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負わないものというべき」としました。そして、「本件では、原告がA社において勤務していた間、事業主であるA社が、原告からの申告等により、他の事業主の下における労働時間と通算すると原告の労働時間が労基法32条所定の労働時間を超えることを知っていたとは認められない」、「A社あるいは被告において、労基法38条1項の規定を念頭に置いて、原告の申告等がない場合にも、自ら、他の事業主の下での労働について原告に確認する義務を負っていたものと解すべき根拠は見出せ」ないなどと認定し、事業主の割増賃金の支払義務を否定しました。ふり返り4前述の通り、労働者が使用者に無断で副業や兼業を行っていた場合にまで割増賃金の支払義務を生じさせることは不合理であることからすれば、割増賃金の支払義務を否定したことは妥当な判断と思われます。エルダー51知っておきたい労働法A&Q
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