■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー55ILOと私たちとのかかわりILOに関する概要を押さえたところで、実際に私たちにどのようにかかわってくるのかをみていきましょう。もっともかかわりの大きいものに、ILOの使命や目標を達成するための国際的な労働基準の設定があります。設定の対象は、強制労働の禁止、雇用・職業の差別待遇の排除などの基本的人権に関連するものから、労働条件、労働安全衛生、社会保障など、労働に関連するあらゆる分野に及んでいます。これらの基準に実効性を持たせるために「条約」と「勧告」という手段を用いています。条約は、2カ国以上の加盟国が批ひ准じゅんすることで国際的に発効し、批准国は条約を実施するために必要な措置を執るという国際的な義務を負うことになります。一方で、勧告は加盟国の事情が相当に異なることに配慮し、各国に適した方法で適用できる指針となるものです。条約には拘束力があるが、勧告にはないという関係になります。なお、現在の条約数は全体で191(うち撤回・廃止11、棚上げ19)、勧告数208(うち撤回36、置き換え22)という状況です※3。日本の批准条約数は50です。詳細な内容と批准・未批准の情報に関心のある方は、インターネットで公開されている『国際労働基準 ILO条約・勧告の手引き2025年版』(ILO駐日事務所 編集・発行)※4をご参照いただき、本稿では、中核的労働基準に絞ってみていきます。中核的労働基準とは、労働に関する最低限の基準を定めたものであり、5分野・10条約で構成されています(図表)。このうち8条約は批准されていて、「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(111号)」と「職業上の安全及び健康に関する条約(155号)」は未批准の状態です。条約を批准すると必要措置を執る義務が発生しますので、具体的に労働法制に反映していくことになります。この反映にあたっては、厚生労働大臣の諮し問もん機関である労働政策審議会(労ろう政せい審しん)※5で審議にかけられたのち、国会で審議され法案成立というプロセスを執ることになります。当然ながら法として整備された後は企業・労働者ともに遵守する必要があるため、ILOの活動は私たちの賃金や働き方に大きくかかわってくるといえます。例えば、現在の労働時間の基本である1日8時間、週40時間の基準は、ILOの条約や勧告に沿ったものです※6。今後の動きとしては、先述の職業上の安全及び健康に関する条約(155号)について条約締結に向けた手続きを進めていく予定で、国内の労働安全衛生政策に大きな影響を与えることが想定されます。* * *次回は「過重労働対策」について取り上げます。※3 ILO駐日事務所のサイト「数字で見る国際労働基準(2023年8月時点)」https://www.ilo.org/ja/reqions-and-countries/国際労働基準(基準設定と監視機構)※4 ILO駐日事務所のサイトhttps://www.ilo.org/ja/publications/国際労働基準:ilo条約・勧告の手引き2025年版※5 労働政策審議会についても、公(公益代表委員)・労(労働者代表委員)・使(使用者代表委員)の三者構成で議論が行われている※6 第1号条約に定められた内容だが、日本は直接の批准は行っていない出典:日本労働組合総連合会ホームページ(中核的労働基準とILO)https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/kokusai/ilo/図表 中核的労働基準 5分野・10条約結社の自由・団体交渉権の承認結社の自由及び団結権の保護に関する条約(87号)団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(98号)強制労働の禁止強制労働に関する条約(29号)強制労働の廃止に関する条約(105号)児童労働の禁止就業の最低年齢に関する条約(138号)最悪の形態の児童労働の禁止及び廃絶のための即時行動に関する条約(182号)差別の撤廃同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(100号)雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(111号)安全で健康な労働条件職業上の安全及び健康に関する条約(155号)職業上の安全及び健康促進枠組条約(187号)
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