エルダー63「針の位置、送り、糸をかける部分などの調整が何十通りもあり、若いころは調整だけで一晩中かかったこともあります」 近年はコロナ禍を境に高級靴の需要が減り、スニーカーの傷の修理や色補正、クリーニングなどの依頼が増えた。一緒に働く長男の康やす之ゆきさんは、こうした新分野の技術を開拓し、新たな顧客を増やしている。折田さんは「私はソールの交換は得意だけど、色の補正などは苦手。長男がいなかったらできません」と話す。 親子による二人三脚で、時代の変化に対応している。 「お客さまに喜んでもらえることが一番です」と、一足一足に心を込める折田さん。たいへんな時代もあったが、いまはこの仕事をやってきてよかったと感じている。「生涯現役」を目ざして、今日も靴と向き合う。哲学堂靴修理店 有限会社折田商会TEL:03(3951)7667https://t-kutsushuri.com(撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英)ている部分が大きいですね」調整がむずかしい機械を使いこなし、効率化を実現大手との取引きが増えると、修理の依頼は急増した。数をこなすため、折田さんは機械の導入を積極的に進めた。「機械でできるところは機械で、大切なところは手で仕上げることで、効率化を図りながらも仕上がりの質を維持できます」 また、機械を導入することで、外注せずに自店だけで修理を完結できるようにしたことも、顧客からの信頼につながった。 数ある機械のなかでも特に扱いがむずかしいのが、高級靴の革底(ソール)と甲の部分(アッパー)を縫製する「ダシ縫い機」。約30年前に導入した海外製の機械だが、革の厚みなどに合わせて細かい調整が必要で、折田さんのように使いこなせる職人は少ない。効率化のために機械化を進めてきたが、手作業も多い。道具の数々は、靴修理が多様な技能を要する仕事であることを物語っている長男の康之さん(左)は、インターネットを駆使した新たな市場と、スニーカーの修理や色補正など新たな分野を開拓し、父と二人三脚で経営を支えるダシ縫い機は機構が複雑で、どこか1カ所でもずれると縫製できなくなるほど調整がむずかしい。導入当初は調整だけで明け方までかかったことも高級靴のソールとアッパーを縫製している様子。大手との取引きで多忙だった時代、この機械を導入し内製化したことで、納期の短縮を実現した哲学堂公園近くの商店街にある「哲学堂靴修理店」。1945年に折田さんの父が群馬県高崎市で創業し、3年後新宿区に移転したソールをグラインダーで削っているところ。修理を頼まれた靴は、できるだけ完成品に近づくよう、きれいに仕上げることに細心の注意を払う vol.361
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