日本史にみる長寿食 FOOD 373 柚子は木になる“風邪薬” 食文化史研究家● 永山久夫 香り高い柚子 昔は、たいがいの家の庭先に、柚子が植えてあり、柚子のしぼり汁をいろいろな料理に用いたものです。  柚子はミカン科の仲間で、初夏に香りの強い白い花をつけ、初冬のころに実を結びます。秋に出回る柚子は、まだ青い実ですが、10月を過ぎると黄色くなります。  この黄色い外皮は、香りがよいので、薄くそいで汁物の吸い口などにします。  また、柚子の中身をくり抜いて、中に和え物や魚介類を詰め、柚子釜にして、季節料理として楽しみました。  そのほかにも、浅漬けや湯豆腐、吸い物などに、柚子の皮を添えて香りを楽しめます。 柚子湯で風邪予防  日本人は、古くから柚子のしぼり汁に砂糖を加え、お湯を注いで柚子湯をつくり、寒い日などに飲用して、風邪予防に役立ててきました。柚子にはビタミンCが豊富に含まれるため、免疫力が強化されるのです。  寒い東北地方では、木になる「風邪薬」と呼び、どこの家の庭にも植えられていました。私も、雪の降る東北の生まれで、小学生のころは、学校から帰ると、冬は毎日のように柚子湯を飲まされました。  おかげさまで、あまり風邪もひかず、現在92歳になりました。自宅の庭先に柚子の木が2本植えてあり、冬になると黄色い柚子がたくさん実をつけます。いまでも、この柚子で柚子湯を飲んでおり、風邪をひいたことがありません。 美味なのは柚子味噌  柚子味噌は、柚子の皮をみじん切りにし、しぼり汁といっしょに味噌などを混ぜ、甘めに整えていき、フライパンなどで加熱しながら練りあげていきます。  新米ごはんにのせて食べると、とっても食が進みます。お茶漬けにすると、3、4杯は軽く平らげてしまいます。風邪の季節を前に、柚子をしっかり食べて、インフルエンザなどに対する免疫力を強化していきましょう。