BOOKS ブックス 将来の選択肢を増やし、長く働くために。実践者が指南する“リスキリング” 中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手にいれる 後藤(ごとう)宗明(むねあき)著/朝日新聞出版/990円  著者の後藤宗明氏は、アメリカで起業し、帰国後の2021(令和3)年にリスキリングに特化した日本初の非営利団体を設立。政府・自治体向けの政策提言や企業向けのリスキリング導入支援を手がけている、リスキリングの第一人者として知られる。  リスキリングについて後藤氏は、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして業務や職業に就くこと」と表現し、中高年世代に向けて書かれた本書では、「これからも必要とされる働き方を手にいれる」ための一番の解決策が、リスキリングであると明言。将来の選択肢を増やし、長く働き続けるために取り組みたいリスキリングの進め方やこれから注目される分野、リスキリングを開始、継続するために40代から始める「5つの投資(スキルと学び・健康・お金・人間関係・仕事)」などについて解説。自らも40歳を過ぎてからリスキリングに取り組んだという経験をふまえ、中高年が直面する求人状況などの現実やこれからの時代に必要とされる生き方の覚悟なども綴っている。  奮起してリスキリングを開始し、将来の選択肢を自ら増やし、働き続けるには何をしたらよいのか。いま知りたいことが詰まっている。 週休3日制の円滑な導入と定着に向けて、具体的な進め方や留意点を解説 週休3日制の設計と規程・協定 荻原(おぎはら)勝(まさる)著/経営書院/2640円  働き方改革、IT化の進展、人手不足の深刻化など企業の経営を取り巻く環境が大きく変化するなか、「週休3日制」の実現も例外ではなくなり、すでに導入したという企業の取組みが続々と報じられている。政府の推進する制度でもあり、企業にかぎらず、自治体のなかにも導入を検討する動きが出てきている。  1週間のうち3日休日を設ける週休3日制 は、社員の勤労意欲の向上、定着率の改善、募集・採用における優位性の確保などの効果が期待できる。一方で、時間外労働や休日労働の増加、職場内コミュニケーションの停滞などが危惧されている。週休3日制を円滑に実施し、定着させるためには、どのような手順をふみ、どのような点に留意する必要があるのだろうか。  本書は、週休3日制の設計や移行スケジュール、問題点と対策を、実務に即してていねいに解説。実務性を高めるために、社内で使用することのできる社内規程、労使協定、社内通知、各種の様式も多数掲載。また、週休3日制についての社員の希望や意見を把握するためのアンケート調査票の例も紹介している。週休3日制の企画・立案、導入・実施にたずさわる担当者にとって、大いに役立つ実用書である。 自分のなかに眠る「資産」を掘り起こせ。実りある老後を迎えるための指南書 先細らない老後のために、50代のうちにすべきこと 我慢やお金の不安から解放されて自由に生きる! 中道(なかみち)あん著/扶桑社/1540円  お金、健康、孤独など老後を想像すると不安ばかりが募る。どうしたら解消できるのだろう。  本書は、自分自身に眠っていた「資産」を掘り起こし、自分らしい働き方と豊かさを手に入れることができたという著者の体験をもとに、実り多き人生後半を迎えるための「棚卸し」の方法と、思考と行動を切り替えていく方法をまとめた指南書である。  著者の中道あん氏は、主婦であり45歳までパート勤務、その後正社員勤務を経て、55歳で起業。61歳のいま、著述家、トップブロガーとしても活躍する。道を開く秘訣は、「未来を設定」し、「目標に向かって行動する」ことだという。そのために中道さんが行ったのは、自分自身の資産に気づく「棚卸し」という作業だ。本書では、棚卸しの方法として、過去をふり返り成功や失敗体験などを書き出す「ライフラインチャート」の作成などを伝授。この作業により、自分を客観視し、努力が実りやすい方向性を探索していく。また、起業や副業の事業開始に向けた「ロードマップ」のつくり方も示している。  老後に不安を感じている人、今後の仕事や起業について前向きに考えたいという中高年世代に特におすすめしたい指南書といえるだろう。 部下からの不当な攻撃への対応方法、上司の心を守る方法を、幅広い観点から伝授 上司いじめ 企業法務弁護士が教える 上司のためのハラスメント対応法 國安(くにやす)耕太(こうた)著/あさ出版/1760円  いま、部下からの嫌がらせやいじめ、いわゆる「逆パワハラ」に悩まされる人が増えている。全体に占める割合は少ないが、被害者が自殺に追い込まれるようなケースもあり、「表面化しない事象がたくさんあることが考えられ、もはや無視できない問題になりつつある」と著者は問題を提起する。  2020(令和2)年6月に施行された「パワハラ防止法」では、部下から上司に対する嫌がらせやいじめも「パワハラ」にあたると明記されている。本書は、そうした部下からの不当な攻撃を「上司いじめ」と表現し、その対応の鉄則や適切な対処方法を伝授している。  著者の國安耕太氏は、企業法務を専門とする弁護士であり、本書では、上司いじめの12の事例から、相手との対話や対応の仕方を学ぶケース・スタディの章を設けるとともに、その際に根拠となる法律の基本知識もかみくだいて説明している。上司という立場上、「自分でなんとかしなければ」と思ってしまいがちなハラスメントだが、一人で抱え込まず、自分の上司や会社に相談し、それでも解決しない場合は労務や法律の専門家を頼り「ご自身の心身を守ってほしい」と著者。相談先と裁判例も掲載している。 病気の原因は「生活習慣」。行動を変え、習慣をつくっていくことで健康寿命は伸びる! 未病革命 新時代の健康づくり 花高(はなたか)凌(りょう)著/セルバ出版/1980円  健康寿命の延伸が関心を集めるなか、「未病」という概念が注目されているようだ。  「未病」とは、本書によると、「まだ病気としては診断されていないが、身体や心に何らかの不調やリスクが存在している状態」。この未病の段階を見逃さず、病気になる前に対処し、行動を変え、習慣をつくっていくことが、「将来の健康を守るカギとなる」と著者はいう。  本書は、まだ世の中で正しく理解されていない未病という概念について解説し、その重要性について考察していく。第1章では、未病についての基本的な考え方、自覚症状から未病を数値化する方法などについて説き、第2章から第4章までは、栄養とマインド、さまざまな生活習慣と未病の関係性をテーマに、健康づくりに必要な要素について解説。第5章以降は、未病の段階で気づき、具体的な対策につなげていくといった今後の「健康経営○R」(★)などをテーマに、人々に健康の価値を伝え、社会実装していくこれからの取組みなどを考察している。  自分や家族の健康管理のために、また、健康づくりを支援しているプロフェッショナル、健康増進の取組みを担当する人たちにとって、一読する価値のある内容となっている。 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します