立川(たてかわ)談慶(だんけい)の 新連載 人生100年時代の歩き方 第1回 人生100年時代の歩き方 〜ともにダメなもの同士〜  今回から連載を受け持たせていただくことになりました立川談慶です。私も2025(令和7)年11月16日をもちまして、還暦を迎えることができました。あと5年で高齢者の仲間入りであります。みなさま、何卒よろしくお願いします。  師匠談志(だんし)は、落語とは「人間の業ごうの肯定」とズバリ定義しました。「業」とは「人間の弱さ・醜さ」、つまりダメなものの総称です。談志曰く「人間、眠くなれば寝ちまう。やるなということほどやってしまうものだ。酒が人間をダメにするんじゃない。人間というものはもともとダメなものだということを酒は教えてくれるのだ」とのことでした。  落語を聴くと、「人間のダメな部分を笑い合うことで、そのダメさ加減を許容し合い、なんだ、私もあなたもじつはダメ人間同士じゃないか」とあらためて気づかされることになります。その証拠が落語会とセットになっている終わってからの打上げです。ついつい居合わせた観客同士、仲よくなって酒を飲みたくなり、いつの間にか笑いの輪が起きています。  世間はついつい、「がんばれば結果が出る」とか「よい成績を修めないとだめだ」みたいな風潮になりがちです。が、これでうまく行ったのは昭和までではないでしょうか? 平成以降景気の停滞が続いているのが何よりの証拠です。  だからこそそれをふまえて「がんばっても結果なんて出ないものだよ」と落語を聴きながら優しく労わりあうことで、高齢者を含めた人材にもおおらかなまなざしを向けることができ、それが結果として「ゆるやかな居心地のよいコミュニティ」へとつながっていくのではと私は確信しています。  落語「不動坊(ふどうぼう)」では、「アルコールを買ってこい」といわれてどこをどう間違えたのか「あんころを買ってきてしまう」信じられないドジを踏む登場人物が出てきます。彼らを笑うことで、同時に自らのしくじり、そして他人の失敗なども相対化されてゆくものと私は信じています。  落語を聴くことで人と人とが許し合える社会。それが未来につながりますよう。祈りを込めての連載です。ご期待ください。