いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第64回 「インターンシップ」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「インターンシップ」について取り上げます。 インターンシップに関する重要な見直し  インターンシップとは、本稿執筆現在のインターンシップの考え方を示す『インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方』(文部科学省、厚生労働省および経済産業省)という資料によると、「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を経験すること)を行う活動(但し、学生の学修段階に応じて具体的内容は異なる)」と定義されています。学生のキャリア形成に主眼を置いた内容になっていますが、本資料では、企業等が実施する意義として、「実践的な人材の育成」、「大学等の教育への産業界等のニーズの反映」、「企業等に対する理解の促進、魅力発信」、「採用選考時に参照し得る学生の評価材料の取得」が掲げられています※1。後半の二つの意義には、インターンシップで企業が得た学生情報の採用広報活動(参加者への会社説明会の案内送付等)と採用選考活動(参加者への採用プロセスの一部免除等)への活用についても含まれていますが、生産年齢人口の減少による近年の人材確保の難化を背景に、この情報活用への期待がインターンシップを実施する多くの企業にあることは想像に難くありません。  学生情報の活用が可能とされたのは、じつは最近のことです。先述の資料が2022(令和4)年6月13日に改正され、2025年3月に卒業・修了する学生※2が2023年度に参加するインターンシップから適用されるようになりました。従来、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の間に「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」(三省合意)がありましたが、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)と国公私立大学のトップで構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」における意見交換をふまえた2022年4月の報告をもとに見直しをした結果、学生情報の広報活動・採用選考活動への活用が可能と6月13日の改正で初めて明文化されることになりました。 基準を満たしていないとインターンシップに該当しない  立場が異なる産学合意のもとで学生情報の活用が可能とされた意義は大きいといわれていますが、インターンシップに該当するのは一定の基準を満たした場合であることに注意が必要です。先の産学協議会の整理で、学生のキャリア形成にかかる産学協同の取組みを「タイプ1:オープン・カンパニー」、「タイプ2:キャリア教育」、「タイプ3: 汎はん用よう的能力・専門活用型インターンシップ」、「タイプ4(試行):高度専門型インターンシップ」に分けていますが、インターンシップに該当するのはタイプ3・4であり、タイプ1・2はインターンシップとは分類されずに学生情報活用は不可となります。インターンシップに該当するには就業体験要件・指導要件・実施期間要件・実施時期要件・情報開示要件を必ず満たす必要があります。図表に要件を載せていますが、一部抜粋のため、出典を確認してみてください。 インターンシップ実施における留意点  最後に、インターンシップにおけるおもな留意点について述べたいと思います。  一つめは、学生情報は広報活動・採用活動の開始時期以降にかぎりそれぞれ利用可能となる点です。内閣官房が公表している「2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」では、広報活動は卒業・修了年度に入る直前(一般的には3学年次)の3月1日以降、採用選考活動開始は卒業・修了年度(4学年次)の6月1日以降を原則としています。  二つめは、ハラスメントへの対応です。特にインターンシップ中にセクシュアル・ハラスメントを受けた者の割合は30.1%※3という調査結果があります。このようなことがあると学生にも企業にも深刻なダメージを与えるため、相談窓口をつくる、学生と従業員の個人的な連絡先の交換をさせない、面談の実施場所等に配慮するなど、企業側が対応を徹底することが必要です。  三つめは、労働者とみなされるかどうか(労働者性の判断)がある点です。タイプ3については企業と学生の間に雇用関係はないため、労働関連法令の適用外が原則です。しかし、就業体験や見学的要素が少ない、使用者からの指揮命令が強い、利益を生む生産活動に直接学生が従事しているなどのケースにおいては、企業と学生の間に労働契約があると判断され、労働関連法令の適用対象となる可能性があります。 * * *  次回は「ILO(国際労働機関)」について取り上げます。 ※1 本資料では、大学等および学生にとっての意義として「キャリア教育・専門教育としての意義」、「教育内容・方法の改善・充実」、「高い職業意識の育成」、「自主性・独創性のある人材の育成」があげられている ※2 学部生の場合は、2023年度に学部3年生に進学する学生 ※3 「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」令和5年度、厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課 図表 産学協働による学生のキャリア形成支援活動〈4類型とその主な特徴〉※出典より一部抜粋 タイプ1:オープン・カンパニー タイプ2:キャリア教育 タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ タイプ4(試行):高度専門型インターンシップ 主な特徴 @目的 個社や業界に関する情報提供・PR 働くことへの理解を深めるための教育 就業体験を通じて、学生にとっては自らの能力の見極め、企業にとっては学生の評価材料の取得 就業体験を通じて、学生にとっては実践力の向上、企業にとっては学生の評価材料の取得 B就業体験 なし 任意 必須 ★(a)就業体験要件 学生の参加期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる ★(b)指導要件 就業体験では、職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後、学生に対しフィードバックを行う 必須 C参加期間(所要日数) 超短期(単日) 授業・プログラムによって異なる ★(c)実施期間要件 (@)汎用的能力活用型は短期(5日間以上) (A)専門活用型は長期(2週間以上) ●ジョブ型研究インターンシップ:長期(2カ月以上) ●高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップ:2週間以上 D実施時期 時間帯やオンラインの活用等、学業両立に配慮し、学士・修士・博士課程の全期間 (年次不問) 学士・修士・博士課程の全期間(年次不問)。但し、企業主催の場合は、時間帯やオンラインの活用等、学業両立に配慮 ★(d)実施時期要件 学業との両立の観点から、「学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み、冬休み、入試休み・春休み) − E取得した学生情報の採用活動への活用 不可 不可 採用活動開始以降に限り、可 ★(e)情報開示要件:募集要項等に必要な情報(9項目。詳細は2021年度 報告書ご参照)を記載し、ホームページ等で公表 採用活動開始以降に限り、可 出典:採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2024年度報告書