BOOKS 再雇用制から65歳定年制へ。制度改革の進め方を徹底解説! 65歳定年制への移行の実務 荻原(おぎはら)勝(まさる) 著/経営書院/2640円  高年齢者雇用安定法に基づく経過措置の終了により、2025(令和7)年4月から働く意欲のある希望者全員を65歳まで雇用することがすべての企業に義務化された。  これを受けて、60歳の定年後に嘱託社員などとして65歳まで再雇用する制度を整えた企業が多くみられるなか、著者は「高齢者の安定した雇用の確保」をはじめ、「能力と経験の有効活用」、「モチベーションの向上」などの観点から、また、少子高齢化の影響で労働力不足、人手不足がさらに進行すると予測されることもふまえ、「65歳までの継続雇用は、再雇用制ではなく、定年延長が望ましい」との見解を表明。  本書は、この見解に立ち、65歳定年制への移行を具体的にどのように進めていけばよいかを説明する。実務に即した全10章の構成で、定年延長へ向けての社内機運の醸成や、段階的な定年延長、給与・賞与・退職金制度の見直し、勤務時間・休日・休暇のあり方、多様な働き方などについて解説。さらに、中高年のエンゲージメントや自己啓発支援、ITリテラシー、高齢期の健康問題にも言及している。  労使双方にとって有意義な制度改革を進めるために、手にとりたい実用書である。 会話形式で理解しやすい!過度な要求や苦情などカスハラ対応20事例 実践 カスタマーハラスメント 対応ケーススタディ 日本能率協会コンサルティング 編著/経団連出版/2420円  顧客や取引先などからのひどい暴言、不当な要求などをさす「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題の一つとなっている。このため、労働施策総合推進法の改正により、2026(令和8)年中にカスタマーハラスメント(カスハラ)防止対策構築がすべての企業に対して義務化されることになった。  本書は、20年以上にわたり悪質な苦情への組織的な備えや、対応する従業員のスキルアップなどを支援してきたコンサルタントら2人が、組織・企業として従業員が安心して働ける職場をつくるという観点で、カスハラ対応の基本的な考え方から、適切な対応、そのポイントを解説する。ケーススタディでは、実際にメーカーや保険会社、通販会社、カフェなどで起こり得る20のケースについて、多様な登場人物によるドラマ仕立ての会話形式により「望ましくない対応」と「あるべき対応」を紹介。さらに、各ケースの対応のポイントを説明して、理解が深められる内容になっている。  法改正にともない「カスハラ防止対策」に取り組む企業の担当者や、顧客や取引先に対応する現場スタッフ、管理職などさまざまな立場のビジネスパーソンに役立つ一冊となっている。 対話型の人事制度が会社も社員も成長させ、潜在能力を最大化する! 改訂増補第2版 ダイアローグ(対話)型人事制度のすすめ 島森(しまもり)俊央(としひさ)・吉岡(よしおか)利之(としゆき) 著/日本生産性本部生産性労働情報センター/2420円  会社の経営戦略が現場に浸透し、現場のメンバーがそれを実行して結果を出せば、企業と社員がともに成長できる。しかし、経営戦略が現場に浸透しない、会社全体が進むべき方向に向いていない、という状況はめずらしくない。  本書は、こうした課題を解決するため、ダイアローグ(対話)をベースとした「戦略浸透会議」や「人材育成会議」などを組み込んだ人事制度の構築と運用によって、会社の潜在能力を最大化する方法を解説している。  初版の発行から十余年が経過し、人事をとりまく状況には変化が生じているが、「日常の職場にダイアローグの機会を増やすこと」、「戦略・方針を効果的に浸透させ実行させること」などの本書の内容は現在の状況にも対応できるうえ、「より一層必要とされている」と著者。ただし、初版時の考え方の根本は大切にしつつ、本書には、著者の考え方が変わった部分や最新の情報をとり入れ、また、第4章の事例紹介を具体的なイメージが湧くようにリニューアルした。  著者の一人、吉岡氏は、本誌の長期連載「いまさら聞けない人事用語辞典」(54ページ)の筆者でもある。人事担当者に加え、経営のヒントを得たい経営者らにもおすすめの内容である。 働きやすい職場をつくる仕組みとは? 定着率9割超の会社が実践する取組みと考え方 生成AIでわかった経営者のための人財定着術 小山(こやま)昇(のぼる) 著/あさ出版/1870円  本書は、入社3年以内の新卒社員の定着率が91%、勤続10年以上の社員133人中、過去10年間の退職者はわずか5人という、社員数約300人の企業「株式会社武蔵野」が実践する採用と定着の仕組みを公開し、「人財」確保のカギとなるマネジメントの本質を提示する。  同社ではなぜ、人が辞めないのか。その理由を探るため、同社の社内ナレッジなどをデータ化し、まずAIを使って分析・検証した。AIが注目したのは「会社」、「仕事」、「人間関係」の三つの観点。いずれにも満足できる環境が整うと、結果として高い定着率が実現するという。  本書の特徴は、AIの分析結果をもとに、「なぜそれが定着につながるのか」、「どのような視点で仕組みをつくるべきか」を、同社で実践している取組みや考え方を掘り下げて紹介している点にある。そこには、社員教育の大切さ、やる気を引き出すコミュニケーション方法、お局さまも派閥も生まない人事異動、感謝の言葉が潤滑油になるといったさまざまな工夫がある。最終章では、社員の人生を応援する働きやすい仕組みとして、パートの働き方が「妥協」ではなく「選択」になる仕組みなどを紹介。高齢者雇用に役立つ情報も織り込まれている。 初学者や人事労務担当者におすすめ。復職後フォローまでの流れを学べる実用書 8ステップ・42タスクで対応する メンタルヘルス不調者への職場復帰支援 森川(もりかわ)隆司(たかし) 著/セルバ出版/1870円  2025(令和7)年に公益財団法人日本生産性本部が実施した「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果によると、「最近3年間における『心の病』」が「増加傾向」と回答した企業は約4割(39.2%)で、前回調査(2023年)を下回ったものの、依然として高水準が続いている。そうしたなか、対応に苦慮している企業は少なくないようだ。  本書は、メンタル不調者の対応について経験がない、あるいは経験が少ない人事労務担当者に向けて、メンタルヘルス対策や休職からの復職支援の対応とそのヒントを平易な言葉で解説している。具体的には、「休職・復職支援で大切なこと」を説いたうえで、不調者発見から休職中の対応、復職判断、復職後フォローまでの流れを八つのステップに分解し、それぞれのステップで行うべきタスクを整理。休職者個人のスキル開発や、組織の職場環境改善まで視野に入れた対応を学ぶことができる内容となっている。  著者は、臨床心理士、公認心理師の資格を持ち、コンサルティングサービスや職場環境改善、復職支援など年間100社以上の支援にたずさわっている。企業の人事労務担当者にとって、実用的な情報が得られる一冊といえるだろう。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します