BOOKS ミドルシニアが活躍する働き方とは?「個人」と「組織」双方の視点から提示 再雇用という働き方 ミドルシニアのキャリア戦略 坂本(さかもと)貴志(たかし)・松尾(まつお)茂(しげる)著/PHP研究所(PHP新書)/1320円  人口減少と急速な高齢化により、日本の企業は人材の確保に困難を強いられている。従来の若手中心の人材戦略の継続がむずかしくなるなか、経験とスキルを備えたミドルシニア層に期待し、制度を整える企業が増えてきている。  本書は、このような社会と企業の変化を背景に、企業はミドルシニア社員にどう向き合っていくのか、個人はミドルシニア期に家計とキャリアをどう考え、選択したらよいのか、「再雇用」という選択肢を中心に、これからの組織と個人が目ざしたい対処法を具体的に示していく。  企業側の視点としては、ミドルシニアを活かすために不可欠となる要素として、「@従業員の多様な働き方を認める」、「A職務や成果などに見合った給与体系とする」、「B厳正な評価を行い、納得と意欲を引き出すマネジメントを確立する」の3点をあげて、企業ですでに取り組まれている代表的な事例を紹介。さらに、70歳雇用時代を見すえ、経営・人事、現場マネジャー、あるいは個人が進むべき方向性についても具体的な処方箋を提示している。  組織と個人の双方にとって、これからの人材活用や働き方、自分らしく選択して働くためのヒントが得られる好著である。 多様な人材の活用が企業成長をうながす。弁護士がわかりやすく解説 ダイバーシティ人事と法実務 中井(なかい)智子(ともこ)・中山(なかやま)達夫(たつお)・仁野(にの)周平(しゅうへい)著/有斐閣(ゆうひかく)/4180円  人手不足の解消には、DXやAIの活用に加えて、高齢者、LGBT、障害者、女性、外国人など、多様な人材の活用が不可欠といわれる。  本書は、「多様性を活かした人事労務に取り組むことは、企業の競争力を向上させる足掛かりになる」として、多様性を活かす人事労務について、法制度・判例をふまえた実務対応と、実際に行われている企業の取組みを、データや資料をもとにわかりやすく解説する。執筆陣は、使用者側の立場から人事労務問題に取り組む、経験豊富な3人の弁護士である。  第1章ではダイバーシティを取り巻く状況を、第2章はLGBT雇用、第3章は障害者雇用と、章ごとに独立した構成で、興味ある章から読み進めることができる。  第5章の高齢者雇用では、高齢者雇用をめぐる三つの裁判例に見られる留意点などを解説するとともに、企業における取組みに向けて、継続雇用の望ましい進め方や、70歳までの就業確保措置の留意点について説明。Q&Aでは、65歳定年後、70歳までの継続雇用制度を設ける際の労働条件についての注意点などを示している。事業主や人事労務担当者が、手元に置いておきたくなる一冊といえるだろう。 労働力不足時代に適合した、新しい日本企業の仕組みを「10の提言」で示す 人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」 石山(いしやま)恒貴(のぶたか)著/光文社(光文社新書)/1166円  本書は、少子高齢化と労働力不足が深刻化する日本に適合した、新しい日本企業の仕組みを提案する一冊。企業を中心に、労働組合、国・社会に対して「10の提言」を示す。  日本企業の仕組みを変える試みはこれまで何度か行われてきたが、その根本的な仕組みは「変わっていない」と著者は冒頭に記し、その理由は「三位一体の地位規範信仰」にあると分析する。三位一体の地位規範とは、無限定性(正社員総合職という働き方に代表される)、標準労働者、マッチョイズムを意味し、多くの人が信じて疑わない、日本企業の「空気」であるという。しかし、人口減少時代にいよいよこの信仰は崩壊へと動き出すため、すみやかに脱却することをうながし、「10の提言」で新しい仕組みを提案する。例えば企業に対しては、「人事異動における本人同意原則の導入」、「ライフキャリア最優先」を標榜し、お互いさまで助け合う企業文化を醸成する、「出口改革(定年の見直し・退職におけるプロセスの充実)」などの内容で、すでに実現した企業の取組み事例をあげて解説し、説得力のある提案となっている。  人が集まる企業へと自社を変革したい事業主や人事労務担当者らに一読をおすすめしたい。 50歳を超えてなお現役選手として進化し続ける葛西選手。その心技体の整え方とは 限界を外す レジェンドが教える「負けない心と体」の作り方 葛西(かさい)紀明(のりあき)著/集英社(集英社新書)/1067円  本書の著者は、1992(平成4)年のアルベールビル大会に初出場してから2018年の平昌(ぴょんちゃん)大会まで、スキージャンプ選手として史上最多、計8回の冬季五輪に連続出場し、国内外で「レジェンド」と称される葛西紀明さん。2014年ソチオリンピックでは、個人で銀、団体で銅の二つのメダルを獲得した。また、ワールドカップ最年長優勝記録、冬季五輪スキージャンプ最年長メダリストなど七つのギネス記録を保持する。50代に入った現在も選手として活躍し、「9回目のオリンピックも夢ではない」と本書の「はじめに」で自信をのぞかせている。スキージャンプの選手生命は「せいぜい30代まで」とよくいわれるが、そのような言葉にとらわれず、葛西選手はいまなお進化を続けている。  本書は、ランニングをはじめとした練習法や習慣を工夫することで心技体を整え、自らの限界を外すことで進化してきた軌跡と、世代交代が求められるなどの逆風に抗い、年齢を重ねても成果を出し、挑戦し続けるための思考法などを語った一冊。選手兼監督になって学んだことやけがをしないためのストレッチ方法など、中高年のビジネスパーソンが共感し、実践したくなる考え方や体のつくり方も披露している。 新入社員研修にも活用できる、第一線で活躍する42人のメッセージ集 新入社員に贈る言葉 豊かな職場生活のための言葉の花束 経団連出版 編/経団連出版/1650円  本書は、日本のさまざまな分野の第一線で活躍する有識者や著名人が、新たに社会人となる人々に向けた、職業人生へのアドバイスなどをまとめた一冊。1973(昭和48)年の初版以来、定期的に改訂を重ねながら長く刊行されており、毎回、社会で活躍し、影響力を持つ人々がそれぞれの考えや経験をもとに、厳しくも温かいメッセージを寄せている。今回の新版には、42人の言葉がまとめられている。  執筆者には、日本の働き方改革の先駆者であり、本誌にご登場いただいたこともある小室(こむろ)淑恵(よしえ)さんや、「今のあなたの会社、定年まであると思いますか」と問いかける東京大学名誉教授の上野(うえの)千鶴子(ちづこ)さん、「仕事で変わる人生を楽しもう」と綴るキャスターの大越(おおこし)健介(けんすけ)さん、ほかにも企業人、起業家、大学教授、料理人、ヴァイオリニスト、俳優、宇宙飛行士、レスリング選手など各界の第一人者が名前を連ねている。それぞれ4、5ページの短いメッセージながら、職業人としての考え方のヒントとなり、人生の指針となるような言葉が詰まっている。新入社員を迎える立場にある企業の人事労務担当者にとっても気づきが得られるうえ、新入社員研修の参考書として活用もできる良書である。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します