【表紙】 令和8年5月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第5号通巻558号 Monthly Elder 高齢者雇用の総合誌 エルダー 5 2026 特集 シニア人材が中小企業を元気に! リーダーズトーク コア事業でシニアの能力を最大限活用 「モダナイマイスター」制度の魅力 富士通株式会社 モダナイゼーションナレッジセンター センター長 SVP 伊井哲也 【前頁】 このページ全て画像です。 【P1-4】 Leaders Talk No.132 コア事業でシニアの能力を最大限活用 「モダナイマイスター」制度の魅力 富士通株式会社 モダナイゼーションナレッジセンター センター長 SVP 伊井哲也さん いい・てつや 1990(平成2)年富士通株式会社に入社。データセンター事業本部長、インフラ&ソリューションセールス本部長などを経て2024(令和6)年より現職。  著しいスピードで新しい技術が生まれ、つねにアップデートが求められるIT業界。そんな時代の最先端を行く業界でいま、数十年前のシステムに精通するベテランエンジニアの力が求められていることをご存じですか。今回は、シニア人材の知見を活かし、旧来の“レガシーシステム”を最新のシステムに移行する「モダナイゼーション」に取り組む、富士通株式会社モダナイゼーションナレッジセンターの伊井哲也さんにお話をうかがいました。 「モダナイゼーション」に必要なレガシースキルを持つエンジニアの価値とは ―富士通では、「モダナイマイスター」という認定制度を設け、外部からの登用も含め、シニア人材の活躍推進に取り組まれています。富士通が取り組む「モダナイゼーション」とはどういうものでしょうか。 伊井 「モダナイゼーション」は日本語で「近代化」という意味ですが、コンピュータなどのITの進化のスピードは著しく、その知識や技術は5〜10年でたちまち古くなってしまいます。そういった過去の知識や技術を、われわれは「レガシー」と呼んでおり、それをいかにして新しい基盤に移行させるかが、当社が掲げるモダナイゼーションです。単に機器を新しくするだけではなく、新しいIT環境においてお客さまのさまざまな業務変革やプロセス、あるいは人の働き方や文化を変えるDX(デジタルトランスフォーメーション)の世界に誘導していくことを目的としています。  当社では、2024(令和6)年4月にモダナイゼーションに欠かせない技術情報やノウハウ、知見を集約するセンターオブエクセレンス(CoE)として、「モダナイゼーションナレッジセンター」を発足させました。現在のメンバー数は200人にのぼります。モダナイゼーションにかかわるプロジェクトは、当社のなかでも数多く動いていますが、その全体の動きを集約する、あるいは逆に各プロジェクトのナレッジを集約し、社内全体に展開していく、また、モダナイゼーションにかかわる商品を開発し提供していく役割などをになっています。モダナイゼーションは富士通にとってもコア事業の一つでもあります。 ―「モダナイマイスター」に期待する役割とはどのようなものでしょうか。 伊井 古くなったITの仕組みをいまでも使っているお客さまのなかには、下手をすると30年前の基盤がいまも生き残っているケースなどがあります。例えばそれに使われているプログラミング言語の一つにCOBOL(コボル)と呼ばれるものがありますが、それを知っている人はすでに50歳を超えているのです。古いシステムならではのいろいろな特性があり、単純にそれを新しい技術で上書きするだけではモダナイゼーションはうまくいきません。また、そうしたレガシースキルを持ったエンジニアは今後退職し、放っておくと減っていくことになります。  そのためレガシースキルを持つ人材を社内外から募集し認定する「モダナイマイスター(以下、「マイスター」)」という社内認定制度を設けました。現在、80人のマイスターが働いており、平均年齢は58歳、最高齢は70歳になります。マイスターは自身でシステム開発をするわけではなく、エンジニアたちが担当する各プロジェクトを側面支援するのが大きな役割です。2026年度は、マイスターの人数をさらに増やしていきたいと考えています。 ―マイスター認定のプロセスや、求められる能力についてお聞かせください。 伊井 社内募集と社外募集の二つがあり、社内は年に2回、社外は年に1回、募集の機会を設けています。職種はSEに限定し、社内はポスティング(公募)で行い、自信がある人は年齢に関係なくだれでも応募できますがレガシースキルが不可欠の要件になります。書類選考と面談を経て認定しており、面談は私とマイスター室の室長が担当します。スキル面はもちろんですが、“人柄”を重視しているのも特徴です。  「側面から支援する」というのは意外とむずかしく、支援する相手はプロのエンジニアですからプライドもありますし、そんななかで、マイスターの意見に耳を傾けてもらうためには、やはりコミュニケーション能力が大事になります。  また、突発的な仕事が入ってくることもあるので、そこに柔軟に対応していく姿勢も必要になります。コミュニケーションスキルに加え、学ぶ意欲、挑戦する意欲、業務に柔軟に対応できるフレキシビリティも重要です。これまでに500人を超える応募がありましたが、認定されたのは80人で、合格率は2割弱になります。合格者の役職をみると、一担当者だった人もいれば上級幹部社員だった人もいます。マイスターの仕事はいままでにない機能ですから、新しいチャレンジともいえます。 モダナイマイスターは定年後も処遇を維持 年齢に関係なくKPIに基づく評価を実施 ―認定後の具体的な仕事や働き方はどのようなものでしょうか。 伊井 基本的知識や支援方法、お客さまとの商談のやり方などのルールをまとめた「ブートキャンプ(短期間の集中プログラム)」を整備しており、認定後は所属部署の業務と並行して1カ月程度にわたって受講してもらいます。マイスターに合格しても、もとの仕事の都合などもあり、実際にマイスター室に配属される時期はバラバラですし、当初は本当にたいへんでした。  働き方や仕事の内容は大きく三つに分かれています。一つめはお客さま先での対応です。モダナイゼーションプロジェクトは1〜3年かかる場合もあり、お客さまの課題を聞いて解決策を提示する、あるいは常駐する社内のメンバーと相談し、品質向上のための提案などを行います。  二つめは、当社のオフィスでお客さまごとの課題について、エンジニアと打合せをしてお客さまのニーズに応じた商品開発にたずさわります。  三つめはテレワーク業務で、システム開発の支援やプログラムが正しく動いているかの動作確認などの評価・検証を行います。 ―マイスターの処遇についてはどうなっているのでしょうか。 伊井 ほかの社員と同様、マイスターもになう職務と職責によってジョブグレードに格づけされ、それに基づいて報酬が決まります。マイスター室長のもと、80人のマイスターが四つのチームに分かれ、それぞれシニアディレクターが管理しています。  当社は定年60歳ですが、マイスターの処遇は60歳以降も変わりません。60歳定年後は1年ごとに雇用契約を更新することになりますが、定年前と同水準の給与や賞与が支給されます。評価制度も現役の一般社員と同じで、KPI(重要業績評価指標)に基づいて評価し、年齢に関係なくグレードと評価に応じて処遇が決まります。実際に60歳以降でもになう職責や評価によってグレードが上がり、処遇が上がった人もいます。 モダナイマイスターとして役割を遂行することが本人のモチベーションを高め組織の力を高める ―テレワークも可能な比較的自由度の高い働き方ですね。一方で、モチベーションの維持・向上に向けた取組みなどもあるのでしょうか。 伊井 コミュニケーションを密にとるようにしています。例えば、各プロジェクトの方針が分散しないよう、目的などについて確認する週1回のオンライン会議を実施しているほか、半年に1回、全国のマイスター全員がオフィスに集合する全体会議を開催しています。  また、毎週火曜日に首都圏のメンバーによる飲み会なども開催しており、たいへん好評です。マイスター以外のエンジニアも含めて毎回10〜20人が参加しており、仕事の不満などをリアルにぶつけてもらうなど、業務の方向性や働き方を確認する場として有効に機能していると感じています。 ―60歳を過ぎても処遇は変わらず、しかもつちかったスキルを武器に働けるので、やりがいを感じている人も多いのではないでしょうか。 伊井 50代後半や60代になると、実力はあっても組織全体を見すえて「自分の役割はここまで」と考えてしまう人もいるかもしれません。ですが、マイスターとして活躍している社員は、仕事にやりがいを感じている人も多いですし、前向きにいろいろな提案も出てくるなど、よい組織になってきている実感があります。  その理由は、「自分の持つ古いスキルは、世間では斜陽でもここではメインのスキルであり、周囲からも頼られる」と感じられるからではないでしょうか。処遇面でもがんばれば昇格することができますし、一定の評価があれば年齢に関係なくいつまでも働けることも大きいと思います。 ―古いスキルだけではなく、新しいスキルも身につける必要があるかと思います。学び直しの支援を含めてマイスターの学ぶ意欲などはいかがでしょうか。 伊井 新たな資格取得の支援など、学ぶためのメニューを取り揃えています。レガシースキルを持ちつつ、クラウドなど新しいスキル・資格を最低限5〜6種類程度学ぶことを推奨しており、実際に積極的に受講し資格を取得している方は多いです。私もメンバーに対して、「いまの仕事に年齢は関係ない」、「富士通のなかでも大事なミッションである」ということを、ことあるごとに強調していますし、社内外の評価も含めて、高いレベルでの信頼が維持できるように心がけています。 (聞き手・文/溝上憲文、撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、“年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト:水穂真善/アフロ 2026 May No.558 特集 6 シニア人材が中小企業を元気に! 7 総論 人手不足時代におけるシニア人材の強みとは 東京学芸大学 名誉教授 内田賢 11 解説1 シニア人材の活躍をうながす工夫5選―制度編― 14 解説2 シニア人材の活躍をうながす工夫5選―マネジメント編― 社会保険労務士法人かわごえ事務所 代表社員 川越雄一 17 事例1 イシハラフーズ株式会社(宮崎県都城市) 機械化やDX、多様な働き方の推進がシニアも働きやすい職場づくりにつながる 21 事例2 株式会社鬼頭精器製作所(愛知県豊田市) 多様な人材が活躍できる職場づくりに努め、シニア人材が蓄積した技術と経験を発揮 25 事例3 株式会社旭フーズ(埼玉県日高市) 「生涯現役宣言」で年齢上限なくシニア人材を雇用 個人の事情にあわせて働ける環境を実現 1 リーダーズトーク No.132 富士通株式会社 モダナイゼーションナレッジセンター センター長 SVP 伊井哲也さん コア事業でシニアの能力を最大限活用 「モダナイマイスター」制度の魅力 29 立川談慶の人生100年時代の歩き方 【第4回】 豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ 30 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 【第1回】 「70歳雇用推進プランナー」って何? 36 高齢者の職場探訪 北から、南から 第165回 滋賀県 新江州サービス株式会社 40 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第115回 弥生交通株式会社 タクシー乗務員 松井愼一さん(78歳) 42 高年齢者活躍企業コンテスト 受賞企業の軌跡 【第5回】 大和ライフネクスト株式会社 46 知っておきたい労働法Q&A《第94回》 高年齢者雇用確保措置、就業規則と矛盾する 労使慣行の成否 家永 勲/木勝瑛 50 諸外国の高齢化と高齢者雇用 【最終回】 中国 藤本 真 52 いまさら聞けない人事用語辞典 第67回 「女性活躍推進法」 吉岡利之 54 『70歳雇用推進事例集2026』のご案内 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.363 日本各地に伝わる横笛を演奏者に合わせて製作 笛師 田中康友さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第107回] 四つの同じ図形に分割 篠原菊紀 【P6】 特集 シニア人材が中小企業を元気に!  少子高齢化による生産年齢人口の減少により多くの企業が人手不足という問題に直面しています。特にその影響を大きく受けるのが中小企業です。そんな中小企業の課題解決に向けて大きな力となるのがシニア人材。長い職業経験のなかでつちかわれた豊富な知識、経験、技術は、事業の安定や後進の育成に大きく寄与する可能性を秘めています。  そこで今回は、「シニア人材が中小企業を元気に!」と題し、中小企業におけるシニア人材の活用戦略について解説します。ぜひご一読ください! 【P7-10】 総論 人手不足時代におけるシニア人材の強みとは 東京学芸大学 名誉教授 内田(うちだ)賢(まさる) 1 シニアの強みで会社を伸ばす @人手不足を解消し技術・技能を活用  少子高齢化の進むわが国では、今後も労働力不足は続きます。この事態に対処するにはシニア活用は有力な方策の一つです。一方、シニアは単純な労働力ではなく熟練労働力です。シニア活用は人手不足解消だけを目的とするのではなく、その技術や技能を活用して企業成長に結びつけることも可能です。  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が、70歳以上の定年年齢または希望者全員70歳以上の継続雇用制度(定年なしも含む)を導入する企業2万社を対象に2023(令和5)年度に実施した調査※によれば、回答企業6349社(98%以上は正社員規模が300人以下)のうち6割弱が人員不足対応、4割強がシニアの優れた技術・技能活用を主目的として現行の定年制度を導入していました(8ページ図表1)。  人員不足対応は現下の喫緊の課題への対処、技術・技能活用は企業の長期的成長を視野に入れていると思われます。短期的状況に対処しながらも企業戦略に即した長期的視点からのシニア活用を検討する必要があります。 A「いま」と「将来」を見すえたシニア活用  シニアはまさにいまの人手不足を解消するだけではなく、そのシニアが引退した後に会社に財産も残せます。シニアは会社の「いま」と「将来」の両方に貢献できる存在です。  まず「いま」のことを考えてみましょう。シニアには長年にわたってつちかってきた技術や技能、知識や経験があり、その強みを社内で、また顧客や取引先対応で発揮できます。そして「将来」です。シニアは将来をになう人材の育成に貢献できます。業務でつちかったものだけではなく人生経験を含め豊富な財産を持つシニアの存在は、若手や中堅がシニアに至るまでのキャリア形成のロールモデルとなります。  それだけではありません。体力的負担が少なくライフスタイルに応じて勤務できるなどシニアが働きやすい職場づくりを進めれば若手や中堅社員も働きやすくなります。快適に仕事ができる企業は従業員からの評価が高まるでしょう(8ページ図表2)。 B社内社外を問わないシニア起用  シニア人材といえば自社で定年を迎える従業員を思い浮かべるかもしれませんが、社外にも経験豊かで即戦力となるシニアが、しかも身近なところにいます。都市部であればベッドタウンに住むシニア、地方であれば地元で働いていたシニアだけではなくUターン者やIターン者もいます。  生活のために働きたいというシニアだけではありません。筆者が実際に会社を訪問してお話をうかがったシニアのなかには、「定年退職後のんびりしていたが充足感を得るために仕事に就きたくなった」、「山登りがしたくて地方に移住したが趣味だけで過ごすのではなく仕事もしたくなった」というシニアがいました。このようなシニアが入社後に会社の課題だった製品の品質向上に取り組み、生産性も向上させました。採用した経営者は「会社の近くにこんなよい人がいたとは思わなかった」と話してくれました。  他社出身のシニアには自社出身者が持っていない強みがあります。この強みを企業の業績向上につなげます。外部の人にも自社の存在を知ってもらうこと。これが強みを持つ外部出身シニアの獲得に有利に働きます。 2 シニアの強みとは  内部出身のシニア、外部出身のシニア、それぞれに強みを持っています。会社に役立つ強みは何かを把握し、見きわめ、適材適所で起用します。 @社内に精通する内部人材  内部出身者には仕事でつちかってきたもの(技術、技能、知識、経験など)があります。業務上不可欠の国家資格なども保有しているでしょう。会社の内部事情がよくわかっているので、どのような技術を持つ人がどの部署にいるか、設備や機械のくせ、メンテナンス上の秘訣、取引先ごとの交渉術、他部門との協力の秘訣なども心得ています。  また、会社の業績がよかったときと苦しかったときの両方を経験して得られた教訓がいまに活きているかもしれません。会社の強みも弱みもわかっており、会社がもっとよくなる方法、どこを改善すれば解決できるかの道筋も理解しているでしょう。問題意識を持つシニアであれば、会社からの働きかけで意欲を高め、これからの時間を使って問題解決に取り組んでくれる可能性があります。 A自社にないものを持つ外部人材  外部人材も内部人材同様に自らつちかってきたものがあり、働いていた会社のことを熟知しています。同業出身でも会社が違えばさまざまな違いがあり、優れた技術や技法を体得しているかもしれません。人事管理や生産管理、顧客管理など、効率的に仕事が進められる仕組みづくりにたずさわった人材であればみなさんの会社へのノウハウ移植やシステム導入も可能となります。  会社で問題が発生し、どこから手をつけてよいかわからないということはないでしょうか。外部人材は解決に必要な情報や情報源、人脈を持っているかもしれません。また、出身企業と自社の関係が発注者と受注者、メーカーとユーザー、認可する側とされる側など立場に違いがあれば視野や視点が異なります。このような目線の違いを外部出身のシニアから吸収し、相手方の発想やニーズを知りノウハウとして蓄積し、顧客志向の製品開発、生産方式の見直しにつなげます。 3 強みを発揮してもらうために  シニアを受け入れても期待した強みを発揮してもらえないことがあります。シニア本人の意欲を高め、活躍できる体制を整え、会社と職場になじんでもらい、成果に報いることが前提となります。 @会社からの期待を伝える  会社からの働きかけでシニアの情熱を復活させ、意欲を持って再挑戦してもらいます。会社はシニアとの面談など頻繁なコミュニケーションに努め、この会社でまたがんばろう、この会社をよく知って働こうとする意欲を持ってもらいます。会社としてシニアを必要としていること、実力発揮のための援助を惜しまないこと、つねにフォローアップすることを伝えます。 Aシニアに発想転換してもらう  すべてのシニアの意欲が高いとはかぎりません。残念ながら働こうとする意欲が低い、第二の人生と割り切って無難に過ごそうとするシニアもいるでしょう。これではせっかくの強みを持っていても発揮にはつながりません。シニアには心機一転が求められます。  意欲があっても新しい職場を理解しようとしない、また、いつも前の会社と比べてしまうシニアもいます。中小企業に移った大企業出身者が悪気はないのに「前の会社では」とつぶやいてしまい、「上から目線」と誤解されることがあります。実力発揮の前提は職場から受け入れられることです。シニアには行動変容が求められます。  活躍できるシニアは自分と周りの状況を認識し(識)、自分のやることを感じ取り(感)、自分の強みを周りと結びつけ(結)、自分の強みで導きます(導)(図表3)。研修やオリエンテーションを通してシニアに発想転換と変身、準備をうながします。 Bミッション(使命)を与える  シニアに対して具体的な任務や役割、達成してほしいレベルや時期などの目標を示して意欲を高めます。例えば、「国家資格を取ろうとしている若手のAさんを指導してほしい」、「販売管理システムを構築してほしい」、「○○分野の取引先を増やしてほしい」などがあげられます。  ミッションを成功裏に導くには情報提供が不可欠です。特に外部出身者は会社の状況がよくわからないので、しっかり伝える必要があります。取り扱っている製品やサービス、経営者の方針、従業員の属性(職歴、習熟度、意欲、年齢別構成、職種、意識)、予算や設備、仕事の進め方、現在抱えている問題などについては十分に知ってもらうべきでしょう。 Cシニアが活躍できる環境を整える  シニア本人が新しい環境や新しい会社でがんばろうと思っても、それを阻むものはないでしょうか。例えば、「設備が十分でなく環境が整っていない」、「周囲がシニアの教えを受け入れる力がない」、「周囲がシニアを受け入れようとしない」、「実力を発揮しようとする方向が会社の風土ややり方にそぐわない」といった問題が生じた場合は取り除くか、緩和します。不可能な場合は任務遂行上の前提・制約条件と認識してもらい、そのなかでの最適解を考えてもらいます。会社とシニアの間の頻繁なやりとりが解決を促進します。 D職場の管理職や同僚がシニアを受け入れる  シニアの実力発揮には同僚との円滑な人間関係やチームワークが欠かせません。そこで管理職や若手・中堅社員に対する働きかけも重要です。ともすれば新参者に対して否定的なイメージから入りがちですが、そのような先入感を抱かせない工夫をすべきでしょう。「いつかはだれしもシニアになる」という気持ちで接する態度や風土が問題を解決します。  前もって会社からシニアの情報を流します。「今度こんなシニアが来るよ」、「こんなことができる人だよ」、「話をしてみるとなかなかよい人だよ」、「○○の分野に強いので助けになるよ」と伝え、肯定的なイメージを抱いてもらうとよいでしょう。  また、正式採用や配属の前にシニアに体験入社してもらうなど「お見合い期間」をつくってはいかがでしょうか。職場の人々が「この人こんなことができるのか、結構よい人だね」と思い、シニアは「この会社にはこんな人たちがいるのか、結構よい会社だね」と感じてもらえれば、その後の活躍を後押しできます。 Eシニアの貢献に報いる  会社はシニアが出した成果を人事考課で把握し評価して処遇に反映させます。「がんばれば会社はしっかり評価してくれる」という信頼が次のミッションの遂行も成功裏に導くでしょう。なお処遇は昇給のような金銭的報酬だけではなく、マエストロやマイスターなどの称号付与のような心理的報酬も効果を発揮します。 4 みんなが幸せになれるシニア活用をめざして  ある中小企業でお話をうかがったときのこと、その会社では長く働いているシニアにこれからも力を発揮してもらおうと勤務時間や勤務形態を柔軟にしています。外部出身シニアを採用する際は、「この人はうちの会社の従業員とうまくやっていける人か」を大前提に面接に臨むそうです。シニアだからといって給与を低水準にとどめることはしません。  会社や職場が感謝すればシニアはがんばってくれるでしょう。がんばるシニアは会社を去るその日まで会社に財産を築きます。技術やノウハウ、システム、これからをになう後継人材を残します。そんなシニアと巡り会うために、シニアを活かすしっかりした方針とさまざまな工夫を凝らしてはいかがでしょうか。 ※「データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫」(2024年)は、JEEDホームページでご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/sankousiryou/index.html 図表1 定年制別の制度導入理由 (単位%、N=6,349) 全体(N=6,349) 人員不足に対応するためである23.6% どちらかといえば、人員不足に対応34.5% どちらかといえば高齢者の優れた技術・技能の活用29.0% 高齢者の優れた技術・技能を活用するためである12.2% 無回答0.7% 定年なし・定年70歳以上(N=2,091) 人員不足に対応するためである26.9% どちらかといえば、人員不足に対応33.0% どちらかといえば高齢者の優れた技術・技能の活用25.8% 高齢者の優れた技術・技能を活用するためである13.1% 無回答1.2% 定年65〜69歳以下&継続雇用70歳以上(N=3,134) 人員不足に対応するためである23.0% どちらかといえば、人員不足に対応35.2% どちらかといえば高齢者の優れた技術・技能の活用29.8% 高齢者の優れた技術・技能を活用するためである11.6% 無回答0.4% 定年60〜64歳以下&継続雇用70歳以上(N=1,124) 人員不足に対応するためである19.1% どちらかといえば、人員不足に対応35.7% どちらかといえば高齢者の優れた技術・技能の活用32.7% 高齢者の優れた技術・技能を活用するためである12.3% 無回答0.3% 出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫』(2024年) 図表2 シニア人材活用の効果 「いま」を伸ばす効果(第一線での活躍) ・技術や技能、知識や経験の発揮 ・洞察力や応用力、危機管理力の発揮 「将来」を伸ばす効果(将来の基礎づくり) ・後継者の育成 ・マニュアル整備、システム構築 「働きやすい職場」を実現する効果 ・安全かつ健康的に仕事ができる環境の実現 ・ライフスタイルに応じた柔軟な働き方の実現 ※筆者作成 図表3 シニアが心がけたい「識感結導」 識(自分と周りの状況を認識する) ・自分の立場を認識する ・自分の役割を認識する ・自分の健康状態を認識する 感(自分のやることを感じ取る) ・自分にできることを感じ取る ・自分でやるべきことを感じ取る ・自分だからこそできることを感じ取る 結(自分の強みを周りと結びつける) ・自分の知識や経験を結びつける ・自分の技術や技能を結びつける ・大人の社会常識を結びつける 導(自分の強みで導く) ・会社の期待に沿って導く ・自身が持つもので導く ・現状に即して柔軟に導く ※筆者作成 【P11-13】 解説1 シニア人材の活躍をうながす工夫5選 −制度編− 社会保険労務士法人かわごえ事務所 代表社員 川越(かわごえ)雄一(ゆういち)  シニア人材の活躍をうながす要素はいくつかありますが、ベースとなるのは就業規則などの制度面の整備です。本稿では五つの制度についてポイントを解説します。 1 適用される就業規則を整備する  シニアは自社で定年を迎え引き続き継続雇用される「生え抜き組」と、他社で定年退職などの後、新たに雇用された「転職組」に分けられます。それぞれに適用される就業規則を整備し整理しておくことが必要です。 ●「生え抜き組」向けの定年制・継続雇用制度  自社で定年を迎えた後、継続雇用される生え抜き組について、定年前と同様の労働条件で正社員の就業規則が適用される場合はよいのですが、そうでない場合は、適用される就業規則を整備する必要があります。そして、定年前に適用されていた就業規則からスムーズにバトンを受け継ぎ、新しい雇用形態に移行させます。仮に60歳定年、その後は再雇用となり正社員と異なる定めをするのであれば、それらを「再雇用者用就業規則」として明文化し周知しておきます。生え抜き組の場合は定年前後の位置づけが曖昧になりがちですが、ここは「親しき仲にも礼儀あり」の意識が必要です。 ●「転職組」向け採用・雇用制度  他社を定年などで退職後に、自社の定年年齢を超えて採用された転職組のシニアには大きく三つのパターンがあります。@親会社・関連会社からの再就職、A経歴などを見込まれてのヘッドハンティング、Bハローワークなどからの一般採用です。いずれのパターンも自社においては新入社員ですから、自社の雇用体制へスムーズに合流させることが肝要です。そのためには生え抜き組と同じく、どの就業規則が適用になるかを明確にしておきます。例えば、契約期間の有無、職位などは、労働条件に直結していますから特に重要です。 2 納得感のある賃金・評価制度  シニアの雇用関係においても賃金・評価制度は中核をなすものです。有期雇用であることが多いシニアの場合は、雇用関係が長期的決済ではなく、短期的決済志向が強くなりがちなので、より納得感のある制度が求められます。 ●「同一労働同一賃金」を意識する  同一労働同一賃金は、同じ企業内で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、不合理な待遇差を解消するための制度です。簡単にいえば、社内での呼称にかかわらず、同じような仕事をしている人には同じような賃金を払うという考え方です。もし、賃金額を低下させるのであれば、職務内容(業務の内容、責任の程度等)の軽減も必要です。 ●自社の採用力を意識した賃金  仮にシニアのになう業務に新規求人をした場合、時給換算でいくらなら採用できるか、いわゆる労働の市場価値が賃金額決定において大きな要素になります。自社に採用力がなく人材確保がむずかしい場合は、少なくとも年金支給開始年齢である65歳までは同じ職務で同じ賃金額が現実的です。また、賃金額引下げでシニアに納得を得られやすいのは、職務内容などの軽減に合わせた労働時間の短縮です。 ●評価項目は三つの役割に応じて設定する  評価項目の比重は、シニアの雇用目的や期待する役割により大きく変わります。管理職の場合は、組織全体の課題を把握し調整に必要なコンセプチュアルスキルです。また、リーダーの場合は、チームでの業務、顧客とのコミュニケーションに必要なヒューマンスキルです。そして、一般職や専門職の場合は、担当業務を正確に、効率的に遂行するテクニカルスキルの評価比重が高くなります。 3 柔軟な勤務制度  シニアの勤務制度は、収入面や健康面など各人の抱えている事情によって多様なニーズがあるため、柔軟な勤務制度の設定が必要です。 ●柔軟な就業時間や就業場所の設定  業種・業態や職種にもよりますが、勤務時間を8時間、6時間、4時間(半日)の3パターン、休日も週休3日や4日というように設定し、シニアの事情により選択してもらうことも考えられます。シニアのなかには、「定年までがんばったのだから、これからは少しゆっくり働きたい」という人もいるからです。その際には社会保険や雇用保険の加入希望も考慮した時間設定が必要です。また、リモートワークや就業場所限定も考えられます。 ●フレックスタイム制の活用  シニアの多くは、自分の健康や家族の介護などにより定時の勤務がむずかしい場合もあります。そういう場合に活用できるのがフレックスタイム制です。フレックスタイム制というのは、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻や労働時間を自由に決められる制度です。これにより、シニアはほかの従業員に気兼ねなく業務と私生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。 ●制度導入は適切な手順を踏む  勤務制度は柔軟になればなるほど、その導入には適切な手順を踏むことが必要です。まず、短時間勤務制度は就業規則にパターン別の始業・終業時刻の規定、休日についても同様に規定します。また、フレックスタイム制も就業規則にその旨を規定したうえで、従業員の過半数代表と労使協定を締結します。そして、就業規則や労使協定を根拠にシニアと雇用契約書(労働条件通知書)を取り交わします。 4 役割や業務が選択できる制度  シニアの雇用で注意したいのは役割や業務のミスマッチです。それを防ぐためには、役割や業務を言語化し、どのようなキャリアに進むのか、選択の機会を与える制度が有効です。 ●求める役割や業務の折り合い  会社がシニアに求める役割・業務は多様です。例えば、一般職、専門職、管理職、若手の指導職などが考えられます(13ページ図表)。また、雇われる側のシニアにも「こんな仕事がしたい、こんな仕事ならできる」という希望があります。そして、この会社の求める役割・業務とシニアの希望が折り合えてこそ雇用関係が成立します。特に転職組の採用においてはここがとても重要です。生え抜き組の場合も、とかく属人化しやすい役割や業務を定年などの節目において見直すことが必要です。 ●役割や業務を言語化する  こんな役割の仕事にはこんな役職、職責、求められる能力、必要な保有資格などを「キャリアパス」として言語化します。そのうえで役割に応じた賃金レベルも記載しておくとよいでしょう。これを会社がシニアに求める役割ごとに作成します。仮に、当初は管理職を希望していた人が、1年後の更新時にはもっと職責の軽い一般職として勤務したいということもあるでしょう。そのような話合いができるのもキャリアパスがあればこそです。 ●あらかじめ選択の機会を与える  役割や業務の選択肢は、キャリアの複線化としてほかの従業員にも周知します。特にシニア予備軍ともいえる50歳以上の従業員にはシニア期におけるキャリア選択の判断材料になります。あらかじめ示されることにより、自分の選択しようとするキャリアに向け、いま自分が何をすればよいのかがわかります。また、転職組には求人情報の一つとして提示すればお互いに「こんなはずじゃなかった」を防げます。 5 雇用を安定させる健康支援制度  専門知識、技術、人脈などを活かしてもらうにも、そこそこの健康が保たれていればこそです。健康状況は若手に比べると格段に個人差が大きくなりますので、なんらかの支援制度が必要です。 ●健康あっての活躍  「寄る年波には勝てない」といわれますが、年齢を重ねることによる体力や気力の衰えには逆らえません。たとえすばらしい職業能力があっても、それを発揮するにはほどほどの健康があってのことです。そのため、まずは自分自身で心身の健康を維持・管理するために、自ら行う取組みであるセルフケアが大切です。そのうえで、会社としてもシニアの活躍を後押しするためになんらかの健康支援が必要です。 ●定期的にコミュニケーションの場を持つ  健康支援というと何か大がかりなことを考えがちですが、まずは定期的に話を聴くだけでも有効です。例えば、3カ月に1度でも「何か困ったことはありませんか」と耳を傾けます。心身の健康問題にかぎらず仕事上の悩みもあると思います。シニアにしてみれば自分の話を聴いてもらっただけでも救われることがあります。このようなコミュニケーションの場を制度化することにより相談しやすい環境ができます。 ●相談しやすい体制  シニアの健康支援には、定期的なコミュニケーションの場を持つことが有効ですが、その中核をなすのは相談しやすい組織体制です。もっといえば相談窓口となる人の役割です。シニアの話を聴いたうえで、必要な場合は外部機関と連携します。健康問題は専門的な知見が必要であり、素人が判断をすることは避けるべきだからです。定期健康診断で異常の所見がある人や、シニアが面談を希望する場合は産業医などにつなぎます。 図表 制度を整えシニアの活躍をうながす 生え抜き組 定年 転職組 賃金・評価・勤務制度 役割・業務 一般職 専門職 管理職 若手の指導職 健康支援 ※筆者作成 【P14-16】 解説2 シニア人材の活躍をうながす工夫5選 −マネジメント編− 社会保険労務士法人かわごえ事務所 代表社員 川越雄一  シニア人材の活躍をうながすためには、仕組みとしての制度(ルール)に加え、運用としてのマネジメント視点が必要です。そのポイントは、シニアを会社の成長を支える存在と位置づけ、安定した戦力として一日でも長く勤務してもらうことです(15ページ図表)。 1 会社を好きになってもらう  まずはシニアに会社を好きになってもらうことが大切です。好きだからこそ、会社のために期待以上の成果を出そうとするのです。そのためにはシニアに安心感を持ってもらい、会社から必要とされていると感じてもらいます。 ●会社への安心感  シニアに会社への安心感を持ってもらうことは最低限必要です。安心感というのは相手が感じとるものですから、抑えつけて安心感を持たせようとしても逆効果です。そこで、一つ考えられるのは約束を守ることです。例えば、定年やその後の継続雇用制度があれば、それに規定された手順を愚直に踏むことです。何も特別なことではなくても、あたり前のことをあたり前に行う会社に対して安心感は高まります。 ●仕事のやりがい  人は他者から必要とされていることにやりがいを感じますし、その相手に対して好意を持つものです。雇用関係においても「法律で決まっているから、定年後はとりあえず65歳、70歳まで雇用するけど」ではなく、「あなたがいてくれて助かる」という意識を持てば、シニアはやりがいを感じます。トップがそのような意識を持てば、社内にもそのような雰囲気が醸成されますから、シニアも会社を好きになります。 ●コミュニケーションを意識する  コミュニケーションというのはおもに感情と情報のやりとりです。シニアは、社内でもなんとなく疎外されやすいので、意識してコミュニケーションを充実させます。感情面では、仕事を教えてもらったら「いつも助かります」と感謝を伝え、また、情報面では新商品やイベント情報などを伝えます。このようなことをコツコツ行うことにより、社内において一体感が生まれやすくなります。 2 転職組とのミスマッチを防ぐ  いわゆる転職組については、自社にないノウハウを活用できるというメリットがある反面、考え方の違いなどからミスマッチを起こし早々に離職ということもあります。それを防ぐには次のようなことが考えられます。 ●雇用の目的を明確にする  若い人の場合は、自社で育成するということもあり、長い期間で考える必要がありますが、シニアの新規雇用では勤務年数がかぎられていることから、基本的には即戦力ということになります。「新入社員のつもりで勉強させてもらいます」と勉強をしに来てもらっても困るわけです。ですから、何をしてもらうために雇用するのかを明確にし、本人にも具体的に伝えます。 ●経歴を過大評価しない  シニアの雇用にかぎったことではありませんが、経歴の過大評価は禁物です。特に、他社を定年後となれば、若い人より経歴も長く、また、一般に自社より規模の大きな会社に勤務していた人が多く、経歴は立派な人が多いものです。そこで「すごいな、この人なら大丈夫」と思いこみやすくなります。しかし、仮に優秀であったとしても、それはその会社の仕組みのなかでの話であり、前提条件が違う自社で活かせるとはかぎりません。 ●試用期間でユニフォーム≠フ着替え  生え抜き組と違い、転職組の場合は新たな雇用ですから能力など未知数なので試用期間を設けたほうがよいです。通常は3カ月程度でしょうが、その間の勤務態度など働きぶりをしっかり見きわめます。また、この間に前職から自社のユニフォーム≠ヨ着替えてもらいます。つまり、もう前職に勤めているのではなく、自社の一員になったことを感覚的にも理解・納得してもらいます。 3 シニアの強みを活かす  長い職業経験によりつちかわれた知識や知恵といった強みは、一朝一夕に習得できるものではなく、会社にとっても大きな財産ともいえます。その財産を活用・継承してもらうことはシニア雇用の大きなメリットです。 ●シニアの持つ三つの強み  シニアの持つ強みについては、会社の業種・業態によって有用性の程度は違いますが、おもに次のようなものがあります。@「豊富な経験や知識・知恵」:過去の豊富な経験などに基づいた問題解決能力、A「人間関係や人脈」:良好な人間関係構築能力から若手の指導や育成、調整能力、B「勤務の安定性」:長年の勤務実績から、強い責任感により決まった時間に出勤し、所定の業務を成し遂げる能力、などです。 ●強みを言語化して継承する  シニアの持つ強みは会社にとって無形の財産です。ただ、中小企業の場合は仕事に人がつくのではなく、人に仕事がつく傾向が強く属人化しやすいものです。そのために、強みを言語化し若手に継承させます。言語化とはいっても言葉だけではなく図や写真、動画の活用も考えられます。また、言語化をシニアに一任するのではなく、若手も一緒に行えばより効果的です。 ●企業DNAとして活用する  最近よく企業DNAという言葉を聞きますが、企業が持つ独自の魅力、らしさ、信念や行動規範が、長く時代を超えて受け継がれることをいうようです。シニアの持つ強みも、まさに企業DNAの一つです。規模の大小にかかわらず老舗といわれる企業は、このようなDNAが脈々と受け継がれており、社会からの評価も高く、若手の新規採用にも有利です。結果としてシニアはもちろんのこと全社員の活性化につながります。 4 チームのレギュラーに位置づける  以前なら定年後のシニアは補欠的な存在だったかもしれません。しかし、深刻な人手不足にあって、いまやチームには欠かせないレギュラーであり、その強みを遺憾なく発揮してもらえばこそ会社の成長につながるのです。 ●シニアの役割とチームワーク  シニアの役割は会社ごとに違いますが、多くの場合はチームワークにより成果を上げるわけです。例えば野球では、9人の選手それぞれにポジションがあり、その持ち場で力を発揮することによりチームを勝利に導きます。会社も同じように、若手・中堅・ベテラン・シニアがそれぞれの役割を果たすことで成果を上げることができます。つまり、シニアも会社というチームでは欠かせないレギュラーなのです。 ●肩書で役割を見える化する  シニアにとって役割というのは重要ですが、カタチとして見えにくいので見える化することが必要です。例えば、になっていただく役割に応じて「業務サポート役」、「シニアアドバイザー」、「技術指導役」といった肩書を付与します。もちろん、名刺にもそのような肩書を記載します。長い間役職だった人が、定年で何もなくなると気持ち的に落ち込み、消化試合的な雇用関係になりかねないからです。 ●会社の成長を後押しする  シニアの雇用はシニアだけの問題ではありません。シニアがチームのレギュラーとして活躍することは、若手にとっても励みになります。「明日は我が身」であり、いずれは自分たちもシニアになるわけですから、他人ごとではありません。特に、中堅やベテランにしてみればそう遠くない話です。会社がシニアをチームのレギュラーとして大切に扱うことで、会社全体の雰囲気をよくし、成長を後押しするのです。 5 スキルアップ・学び直しを支援する  雇用を取り巻く環境が急速に変化し、「人生100年時代」といわれ職業人生が長期化するなか、シニアにもいまの時代に対応できるスキルが求められています。そのために必要なのがスキルアップ・学び直しの支援です。 ●求められるスキルも変わる  仕事をするうえで求められるスキルも変化します。例えば、計算するのもそろばんから電卓、そしていまはパソコンです。たしかに、長年の経験により身につけた知識・知恵は豊富かもしれませんが、いまの時代に合うよう定期的なスキルアップ・学び直しが必要です。このような取組みが、会社から雇われる力を身につけることになります。結果として、戦力的な人材として年齢を問わず重宝されるのです。 ●公的支援制度を活用する  スキルアップ・学び直しの支援といっても、中小企業が自前で行うのは困難です。そこで活用できるのが、厚生労働省の「労働者が受講できる公的職業訓練(ハロートレーニング)※1」、「事業主による人材育成への支援」として、人材開発支援助成金※2、JEEDの生産性向上支援訓練※3、企業内のキャリアコンサルティング(セルフ・キャリアドック)※4などがあります。 ●セカンドキャリアにつなげる  いまは定年後とはいえ、消化試合的な雇用というわけにはいきません。ですから、定年はゴールではなくセカンドキャリアのスタートでもあります。中小企業では、就業規則の規定では65歳まで継続雇用とはなっているものの、実際には、年齢に関係なく働けるうちは一日でも長く働いてもらいたいという会社も少なくありません。そのためには、これまでのスキル・キャリアを活かしつつ、いまの時代に合うようなスキルアップ・学び直しへの支援が必要なのです。 ※1 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/zaishokusha.html ※2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html ※3 https://www.jeed.go.jp/js/jigyonushi/d-2.html ※4 https://carigaku.mhlw.go.jp/corp/ 図表 マネジメント面からシニアの活躍をうながす 会社を好きになってもらう 転職組とのミスマッチを防ぐ シニアの強みを活かす スキルアップ・学び直し支援 安定した戦力として会社を支えてもらう ※筆者作成 【P17-20】 事例1 機械化やDX、多様な働き方の推進がシニアも働きやすい職場づくりにつながる イシハラフーズ株式会社(宮崎県都城(みやこのじょう)市) 自社農場で栽培した野菜を原料として安心・安全な冷凍野菜を製造・販売  イシハラフーズ株式会社は、1976(昭和51)年に初代社長の石原(いしはら)和秋(かずあき)さんが、学生時代に創業した青果業からスタートした。1983年から野菜の冷凍食品事業も手がけるようになり、この事業に注力し、1991(平成3)年に社名を「石原青果株式会社」から現在の「イシハラフーズ株式会社」に変更。また、冷凍食品事業を始めた当初は、契約した農家から野菜を仕入れて加工していたが、生産者の高齢化やにない手不足が全国的に課題となるなか、原料の地元産の野菜を安定的に確保し続けていくことを考え、2003年に自社農場を立ち上げ、農業生産法人として歩み始めた。以降、農場を徐々に増やし、現在では原料の約98%を自社農場で栽培している。  企業理念に「国産の元気な野菜を食べると、人間の体も元気になる。」を掲げ、ほうれん草や小松菜、里芋、枝豆、大根などを栽培し、採れたてを速やかに加工し、包装、出荷まで手がける。出荷前には商品の細菌検査や食味検査、残留農薬検査も自社で行い、安心・安全な商品づくりに努め、全国の生活協同組合を通じて販売している。2024(令和6)年には日々の努力が実を結び、商品の一つである「オーガニックほうれん草」が、野菜ソムリエが選ぶ「第1回全国冷凍野菜アワード」で「最高金賞」を受賞。その後も地道に実績を積み重ねて成長し、2026年に創業50周年を迎えた。  早くから多種類の機械を導入するなど、農作業の効率化や省力化を図る取組みのほか、DXやIT化を推進して独自開発したシステムで農場や作物、商品の情報を一元的に管理して見える化する「トレーサビリティ」を実現し、取引先や消費者の信頼を得る取組みを積極的に進めてきた。そうした取組みの成果により、若い人材とともに、多くのシニア人材が活躍している。 「土に下りない農業」を目ざして農業の機械化やDXに取り組む  同社の定年は65歳。本人が希望すれば、会社と働き方などを相談してその後も継続して働くことができ、雇用の上限年齢は定めていない。  従業員数は133人。うち60歳以上は23人で、内訳は60〜64歳が8人、65〜69歳が7人、70歳以上が8人(2026年3月末日時点)となっている。2026年に入り、業務委託で仕事を依頼していた数人を自社で直接雇用としたことから、シニア人材が増えたそうだが、同社で定年を迎え、さらに勤め続けている人も多く、最高年齢者は78歳である。  代表取締役の小倉(おぐら)祥子(しょうこ)さんは、社会福祉士の資格を持ち、以前は東京都台東区の社会福祉事業団で働いていたが、東日本大震災の復興支援を機に地域に合った産業があることの大切さに気づき、出身地である都城市に戻りイシハラフーズに2018年に入社。2021年に社長に就任した。  「先代社長である父が、『いずれ人を採れなくなる時代になる』と将来を見すえ、少人数で効率的に作業ができるよう、『土に下りない農業』を目ざして、農業の機械化を進めてきました。また、加工場の省人化・効率化に取り組むとともに、IT化を進めて、少人数で野菜づくりから加工、出荷までを手がける現在の当社の土台が築かれました」(小倉社長)  15年ほど前から農産部(野菜の栽培にかかわる従業員)の全員にiPhoneを支給し、独自のシステムにより、農場ごとの栽培状況や最新情報を社内で共有。これにより、農場から事務所に戻って日報を書く手間がなくなり、農産部の社員は農場への直行・直帰が可能になった。  小倉社長は「父は、携帯電話もショルダーバッグ型のころから使うほど新しもの好きで、社用パソコンはApple社のMacが登場したときに導入し、社員も便利なものを使って、仕事をやりやすくしていこうと必死になって応えていきました」と多様な挑戦をしてきた過去をふり返る。現在もAIを含むDXに取り組み、だれもが使いやすいシステムや、作業が楽になる機械化を追求し続けている。この精神と努力の賜物が、シニアにとっても働きやすい職場環境の実現につながっている。 iPhoneを使って社内に情報を発信わからない操作は若い人から教わる  先代の時代から同社に勤務する田上(たのうえ)三十一(みとかず)さん(78歳)は、三重県内の自動車メーカーを経て、故郷の宮崎県に帰り、三十数年前に同社に入社した。以来、「フィールドコーディネーター」として、700カ所以上ある同社の農場の賃借契約や1000人を超える土地所有者との連絡・調整などを一人で担当。78歳のいまもフルタイム勤務を続けている。  現在では「農地中間管理機構」(農地バンク)※という組織を介するようになり、土地所有者らとのやりとりは少し変化したが、当初はコツコツと一軒ずつ訪ねていく毎日で、「まず、信頼関係を築くことに努めました。畑を借りて、当社で野菜づくりをしていくなかでは、地域の方々とコミュニケーションをとることが大切な仕事の一つです。畑のある地域に足を運んでは、いろいろな方と話をしました」とふり返る。温厚な人柄の田上さんは、やがて各地域で知られる存在になり、同社で借りる農場数は次々に増えていったそうだ。  「携帯電話は、早くから仕事で持たせてもらいました。便利ですし、いまはiPhoneで畑に設置した看板の二次元コードを読みとるとその畑の最新の状況がわかり、社内で共有したい情報を私から流すこともできます。新しいアプリで使い方がわからないときは、若い社員に教えてもらいます。みんな親切に教えてくれます」と田上さんは語る。今後の抱負をたずねると次のように返ってきた。  「会社をよくしていきたい、という思いがあります。いま、点在している自社の農場をなるべく集約して、広い畑にしていくことに取り組んでいます。賃借や農場の交換のための交渉を、双方にとってよくなるように考えて進めています。畑が広くなれば、農産部の仕事がしやすくなるので大事な役目であり、やりがいを感じています。昨年からは30代の社員とペアを組んで仕事をしており、徐々に引き継ぐようにしています。ただ、会社から必要とされる間はがんばって働いていたいと思っています」  小倉社長は、「田上さんの仕事は当社にとってとても重要で、すぐに引き継ぎができる内容ではないため、今後も仕事をする姿を若い人に見せながら、いろいろなことを伝えてほしいと思っています」と深い信頼と期待を話す。 新入社員をさりげなくサポートするシニア人材の隠れた活躍に感謝  同社の業務は、畑で野菜を栽培する生産部、旬の野菜を急速冷凍して商品にする製造部、機械の修繕やメンテナンスを行う工務部、安全管理をになう品質管理部、そして事務部門に大きく分けられる。もっとも規模が大きいのは製造部で、従業員のおよそ7割が所属する。  この製造部をはじめ、女性や子育て世代の社員も多く、小倉社長は就任後、機械化による効率化や製造力の向上に取り組みつつ、子育て世代にとって働きやすい環境を整えることに注力。出勤・退勤時間や休日を社員が自由に決められるようにしたり、年間休日数を少しずつ増やしたり、男性の育児休業取得の促進などにも取り組んできた。こうした環境整備の効果もあり、人手不足といわれる現在でも、同社には20代、30代の人材が入ってくるそうだ。  小倉社長は、新入社員が仕事を覚え、慣れるまでの過程で、「シニアが大切な役割をになっています」という。  「教えることが得意な人も、職人気質であまり得意でないという人もいるなかで、シニアのパート社員がさりげなく仕事のコツを教えたり、声をかけたりしていて、会社にとって大事な存在であることを実感しています」(小倉社長)  製造部に勤務して25年になる蒲生(がもう)幸子(さちこ)さん(75歳)もその一人。「蒲生さんは手際がよく、野菜選別などの技術があるうえ、新しい人が仕事に慣れるまでそっと支えたり、話しかけたりして、とてもありがたい存在です」(小倉社長)  蒲生さんは、「若い人や技能実習生に仲よくしてもらっています。技能実習生からは出身国の言葉を教えてもらい、その言葉で朝のあいさつをすると笑顔で返してくれるのがうれしいんです。お昼休みにも話をしたりして、楽しいですよ。仕事場では、コツのようなことを伝えることがありますが、物を運ぶようなときは、若い人が『私が持ちます』といってすぐに代わってくれるので、助かっています」と職場の様子を明るい表情で話す。  75歳になったとき、それまでの週4日勤務を、社長に相談して週3日にして、「体力に合った働き方ができていると思います」と蒲生さん。休日は趣味のお菓子づくりをして、職場仲間にふるまうことも楽しみの一つという。  工場で機械化が進んでいることには、「機械化が進んで、本当に働きやすくなりました。昔は野菜を持ち上げる動作があって体力的にきついこともあったのですが、いまは機械がやってくれるので楽になりました。新しい機械が導入されると、安全講習があるので、その都度しっかり学ぶことを大切にしています。ほかにも、床のホースに足を引っかけそうで気になっていることを会社に相談すると、工務部で対策を考えてつまずかないための対策をしてくれました。こういった要望を聞いて、すぐに対応してくれる環境もありがたく感じています。社長は気さくに話しかけてくれますし、何かあれば相談できる安心感があります。健康に気をつけてなるべく長く働いていたいです」と話してくれた。 働き続けながら介護を両立 多様な働き方ができる職場を目ざす  製造部でフリーザー機械のオペレーターなどを務める西杢比野(にしむくひの)浩(ひろし)さん(63歳)は、2年ほど前に隣家で暮らす母親に異変を感じ、「もしかしたら認知症では」と気になり始めた。日に日にその心配が大きくなるなか、小倉社長から声をかけられ、西杢比野さんは初めて事情を話すことができたと当時をふり返る。  「社長は私を気づかいながら、相談機関があることや受けられる支援などについて教えてくださいました。途方に暮れていましたが、それから母を病院へ連れて行ったり、介護支援を受けられるように申請をしたりしました。そのために仕事を休んだり、途中で抜けたりしなければならず申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、社長が職場で話をする機会を設けてくださって、みんなに支えてもらいながらできることに努めました。感謝しています。いまは両親とも入院しているのですが、だれにもいえず相談もできなかった2年前ほど大変ではありません。次は、自分が職場で支える側になりたいですし、体が続くかぎりここで働いていたいと思っています」と西杢比野さんは話してくれた。  小倉社長は、「いつも一生懸命働いている西杢比野さんもなくてはならない人材です。親の介護に直面している社員がほかにもいましたし、職場で話をしたところ、だれもが他人ごとではなく『お互いさまだから』という空気が生まれました」と2年前をふり返る。  さらに、「社員とは年1回、1on1の面談を行い、ご家族のことや困りごとも聞くようにしています。ただ、日常では話す時間は限られ、特に介護のことは話しにくいという人もいるので、話すきっかけをこちらからつくることが大事だと感じています。少しでも聞くことができれば、相談機関を紹介したり、出勤時の短い時間でも『その後どう?』とたずねることができます。会社としては、働き続けながら、介護と両立できるよう、介護休業・介護休暇制度の周知、取得促進に努めるとともに、これからも支え合える職場、多様な働き方ができる職場づくりを目ざしていきます」と続けた。  小倉社長が大学卒業後に就いた福祉の仕事は、ソーシャルワーカーだった。「利用者の方が自分の持てる力を発揮しながら自己実現していくために、福祉の専門職をつないで環境を整えたり、サポートしたりする役割です。考えてみると、いまも取り組んでいることは変わっていないように思います。一人ひとりの社員がその人らしく働きながらワーク・ライフ・バランスを実現し、自己実現ができるように、今後も働きやすい職場づくりに取り組んでいきます」 ※農地中間管理機構……都道府県、市町村、農業団体等が出資して組織されている法人。都道府県知事が、その都道府県において一つに限って指定する 写真のキャプション 代表取締役の小倉祥子さん フィールドコーディネーターの田上三十一さん 製造部の蒲生幸子さん(写真提供:イシハラフーズ株式会社) 製造部の西杢比野浩さん 【P21-24】 事例2 多様な人材が活躍できる職場づくりに努め、シニア人材が蓄積した技術と経験を発揮 株式会社鬼頭(きとう)精器製作所(せいきせいさくじょ)(愛知県豊田(とよた)市) 精密機械部品の加工を手がけて63年強みは1ミクロンレベルの加工技術  株式会社鬼頭精器製作所は、「クルマのまち」、「ものづくりのまち」として知られる愛知県豊田市に工場を構える金属加工会社。1963(昭和38)年に創業して、今年で63年になる。おもに精密機械部品の切削加工や研削加工を行い、手がける部品の種類は多種多様。1ミクロンレベルの加工技術と、切削から研磨、ユニット組立てまで、一貫製造を行う体制を整え、回転工具の修理においても優れた技術を有することを強みとし、自動車、航空・宇宙、工作機械など、さまざまな産業から高い評価を得て信頼と実績を積み上げている。  その技術力を支えているのは、技能者の9割が国家資格である技能検定を取得し、職業訓練指導員免許などの有資格者が多数在籍する製造部門の人材と、働きやすい職場環境の整備に日々努める管理部門などの人材、そして、時代に合わせた「多様性のある働き方」を目ざしている経営者の考え方と実行力である。  同社では、熱意を持って仕事に臨む人材を採用し、年齢、性別、国籍などで差別をしないという方針のもと、だれもが活き活きと働ける職場環境を目ざして働き方改革に取り組んでいる。さらに、社員の困りごとや相談に対応する「よろず相談室」を設置するなど、子育てや介護をしながら働き続けられるよう、柔軟な働き方も実現している。  「当社の仕事は、技術に加えて経験が大事になるので、経験豊かなシニアは貴重な人材です。もちろん壮年期、青年期の人材も同じように大切です。バランスがとれた年齢構成になるように努めています」と同社経営企画室・SDGs推進室室長兼営業副本部長の渡辺(わたなべ)広之(ひろゆき)さんは説明する。同社では、ミドル世代の「壮年期」の人材が、若い「青年期」の人材を育成し職場をまとめる役をにない、シニア世代の「老年期」の人材は、つちかった技術と経験を活かし、生きがいを持って働く世代と位置づけている。「若い人から見た当社の魅力は『技術が身につくこと』、シニアの方々にとっては『技術、経験が活かせること』だと思います」(渡辺室長)  人材獲得競争が厳しさを増すなかにあっても、毎年新卒者を採用し、2026(令和8)年度は4人を迎えた。そして、多くの社員が技能検定1級取得を目ざして知識・技術の研さんを自発的に重ねており、同社では資格取得にかかる費用負担などを通して社員を支援している。2026年3月現在の受賞者・有資格者(延べ人数)は、黄綬褒章1人、現代の名工1人、愛知の名工4人、職業訓練指導員6人、複合技能士3人、特級技能士5人、一級技能士34人、二級技能士15人となっている。 雇用年齢の上限を定めず退職時期は本人の意思にまかせる  同社の定年は60歳。その後も働き続ける意欲のある社員には、フルタイム勤務の「嘱託社員」と、希望する時間で働く「パート社員」の二つの区分を用意している。パート社員は一年ごとに契約更新を行うが、嘱託社員は契約期間を設けていない。いずれの区分も雇用年齢の上限を定めず、健康で働く意欲があれば雇用を継続し、退職時期は本人の意思にまかせている。年に1〜2回、働き方などについて話し合う面談を行っており、賞与には能力の評価が反映される。  2026年4月1日現在の従業員数は51人。工場で働く技術者がもっとも多く40人ほどである。従業員のうち、60歳以上は18人で、内訳は60〜64歳が3人、65〜69歳が6人、70歳以上が9人。70歳以上のうち、2人が80代である。  60歳以上の従業員を雇用区分別にみると、嘱託社員が3人、パート社員が15人。最高年齢者は82歳で、経験を活かして工場で活躍している。  大岡(おおおか)重晴(しげはる)さん(81歳)は、勤続年数55年を超える超ベテラン技能者。「ものづくりが好きで、最初は刃物をつくる現場で働きました。作業は教わるのではなく、見て覚える、という時代でした。機械が好きなこともあり、縁あってこの会社に入り、60歳の定年が過ぎて20年も経ちました。いろいろなことがありましたが、身につけてきたものを活かせる仕事ができることがありがたく、毎日勤務しています。年金を受け取るようになってから、勤務時間を短くして、いまは9時から15時30分まで。明るいうちに帰宅できます」と話す大岡さん。  同社では長年製造業務にたずさわり、1年ほど前から品質管理を担当している。完成した部品を、図面をもとにデジタルスケールなどを用いて精度を確認したり、角度を変えるなどしながら慎重にチェックしていく。  渡辺室長は、「さまざまな仕事を経験し、技術と経験を積んでこられた大岡さんは、とても頼りになる存在です。品質管理は多様な経験があるからこそできる仕事です」とその仕事ぶりに敬意を表する。大岡さんは、「会社に来て手を動かしていることが認知症防止や健康のためになっているように思います。居心地は悪くないですよ(笑)。元気なうちは、働いていたいと思っています」と笑顔で語り、仕事場に戻ると凛としたまなざしで作業を再開した。 経験と熱意を重視して70代も採用 他社での経験が若手への刺激や学びに  中途採用についても年齢で区切ることはなく、経験があり、健康で熱意があれば、70代でも採用している。他社で定年退職をした後に、ハローワークなどを通じて入社する人も多いという。  例えば、大手自動車会社の元技術者で管理職経験のある70代の人材を採用し、労務・人事・採用の担当として働いてもらっている。「大企業を定年退職した方が、『再びものづくりにかかわりたい』と入社され、若手のなかに入って活躍しています。豊富な経験や知識を持ち技術を磨いてきた方々の存在は、若手にとって刺激になったり、資格取得のアドバイスをもらえたりもしています。もちろん当社に長年勤めているベテラン人材も含めリスペクトされる存在になっています」とシニア人材がいるメリットを語る渡辺室長。  「ただ、大企業と当社のような中小企業とでは仕事のやり方が違いますし、当社の場合、小ロットで毎日製作するものが異なるので、中途入社の方には一から学んでいただくことが多くありますが、みなさん熱意を持って対応されています。一方、大企業での経験や考え方から当社が学ぶことも多く、シニアの方々がそれぞれにつちかってこられたものは貴重でありがたいものばかりです」(渡辺室長) 働きやすい職場づくりに向けて新たな有給休暇やよろず相談室をつくる  同社のシニア人材は、自分の体調に合わせて無理せず仕事を続けている。「体調コントロールができているようで、そういう面においてもプロフェッショナルを感じます」と渡辺室長。  同社では、健康経営○R(★)に取り組んでおり、「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)」の認定を受けている。おもな取組みとしては、定期健康診断の実施に加え、人間ドックの費用を会社が負担し、受診することを促進している。  勤務時間や日数について、本人の要望に柔軟に対応していることも社員から好評だ。シニアにかぎらず、子育てや介護をしている社員もおり、必要があれば各種制度の範囲を越えて休めるなどの対応もしている。もともと柔軟性のある社風で、それを引き継いだ現在の社長が、時代に合ったより多様な人材が働きやすい会社を目ざして現在に至っているという。  2023年には、社長の呼びかけでSDGs推進室を立ち上げ、若手社員を集めてワーキンググループを結成。働きやすい職場づくりに向けて議論を重ね、就業規則にも反映させながら具体的な改善を進めた。そして、ボランティア休暇やファミリーフレンドリー休暇、育児目的休暇などさまざまな休暇制度を導入。また、メンター制度、LGBTQに配慮した就業規則改定などを実施。より休暇を取りやすい雰囲気が生まれ、現在の有給休暇取得率は90%を超えた。必要なときに休みが取りやすい職場環境は、年齢にかかわらず好評だ。  ワーキンググループでは、同社のよい点をあげる意見交換を行い、それが外からみても評価されるものかを探るべく、「豊田市SDGs認証制度」、「あいち女性輝きカンパニー認証制度」などに応募。結果、どちらも認証を受けることができた。さらに2024年には、豊田市「はたらく人がイキイキ輝く事業所表彰」に応募し、イキイキ優秀賞を受賞。これらを通して、自分たちがあたり前だと思っていたことがじつはすばらしい取組みであることを認識することができたという。社員にとって誇りにもなるだろうと考え、同社ホームページやインスタグラムなどで社内外に積極的に発信している。  働きやすい職場づくりの実現ではもう一つ、社員の困りごと、相談に対応する「よろず相談室」の存在があげられる。仕事以外の家庭や暮らしに関する相談をすることもでき、任命された4人の担当者が、相談内容や相談者の希望に合わせて対応する。「悩みを抱えたまま仕事をしていると、けがや事故につながることがあるため、いつでもどのような内容でも相談できる場として設置しました」と渡辺室長。これまで、多数の社員からさまざまな相談があり、解決できない場合は専門機関を紹介するなどの対応をしている。 みんなのお母さんのようなシニア人材が職場に心地よい風を吹き込む  よろず相談室の相談員を務める竹森(たけもり)さよ子さん(66歳)は、勤続約30年。もともとは、「清掃を手伝ってほしい」と当時の社長から声をかけられてパート社員として入社した。ほどなくしてフルタイム勤務となり、10年ほど前からは、前任者から仕事を引き継いで経理を担当している。  「週5日、8時から17時までの勤務です。出勤前には畑仕事をしています。100坪ほどの畑でいろいろな野菜をつくり、たくさん収穫できた日に会社に持参すると、みなさんが喜んで持ち帰ってくださることが私の喜びになっています」と竹森さん。経理の仕事にも活き活きと取り組んでいる。渡辺室長は、「みんなのお母さんのような存在です。経理はもちろん、よろず相談員としても元気に活躍されています」と竹森さんを語る。  最近では、ベトナムから来日して働いている社員の住まい探しの相談にのり、職場までの通勤時間やお子さんの小学校のことも含めて親身になって寄り添いサポートした。「ただのおせっかい焼きです(笑)」と竹森さんは朗らかに話す。職場環境についてたずねると、「希望に合った働き方ができるところがよいと思います。有給休暇も取りやすいです」と即答。いつも笑顔で明るい表情の竹森さんが、職場をあたたかい雰囲気にしている。 多様な人材のメンバーを大事にしてだれもが働きやすい職場環境を目ざす  同社では、ベトナムを中心とする外国人人材や子育て・介護をしている人材、シニア人材など20代から80代まで多様な人材が働いている。渡辺室長は、「分け隔てなく仕事ができる環境を実現しているので、やる気があればどんどん成長できますし、ベテラン人材にとっては持てる力を発揮でき、よい組織になっていると思います」と自社を評価する。  最後に、今後の方針とシニア人材への期待をたずねると、「生産年齢人口が減り、先が見えにくい時代ですが、長期的な目線を持って、現在のメンバーを大事にして進んでいきます。そのなかでシニアの方々には、つちかってきた技術と経験を活かし、また、新しいことにチャレンジする気持ちも持ちつつ、無理せず、元気に仕事を続けていただくことを期待しています」と話してくれた。 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 写真のキャプション 株式会社鬼頭精器製作所の本社工場 経営企画室・SDGs推進室室長兼営業副本部長の渡辺広之さん 品質管理担当の大岡重晴さん 経理を担当する竹森さよ子さん 【P26-28】 事例3 「生涯現役宣言」で年齢上限なくシニア人材を雇用 個人の事情にあわせて働ける環境を実現 株式会社旭フーズ(埼玉県日高(ひだか)市) 「生涯現役制度」を宣言 最高齢者は86歳  埼玉県の西南部、日高市に本社を構える株式会社旭フーズ。創業は1984(昭和59)年で、業務用食材の卸売販売を中心に事業を展開している。生産者やメーカーから食材を仕入れ、飲食店などに提供しており、取引先は大手外食チェーンから地域のレストラン、居酒屋までさまざま。扱っている商品は、海産物、魚介類、野菜類、畜産物、畜産加工品、麺類、タレ、ドレッシングなどがあり、冷凍食品やチルド商品、乾物や缶詰、調味料などのグローサリー、店舗で使用する食器類や制服と幅広く、得意先からの注文への迅速・柔軟な対応を目ざしている。近年は、これまでつちかった技術力やノウハウを活かし、介護事業者向けの介護系完全調理品の扱いも始め、業績が伸びているそうだ。  社員数は、正社員27人、パート・アルバイト37人の計64人。60歳以上は正社員2人、パート・アルバイト19人の計21人。うち70歳以上は7人で、最高齢者は86歳となっている。10年以上働いているシニア社員も多く、元気な高齢者によって同社の事業は支えられている。定年65歳、希望者全員75歳までの継続雇用制度を整えているが、2018(平成30)年に「生涯現役制度」宣言を行い、75歳以降も「本人に健康上の問題などがなく、本人が引退宣言をしないかぎり」(代表取締役の菊地(きくち)拓也(たくや)さん)、パート・アルバイトとして継続的に雇用することを明言した。 「自動仕分け機」を導入 省力化でシニアにも働きやすい環境に  旭フーズの業務の中心となるのが、得意先に食材などを納品するための仕分け作業。倉庫や冷凍庫内に保管されている多種大量の商品から、各店の注文に応じた商品をピックアップしていく業務だ。以前は、スタッフがそれぞれ台車を動かし、紙の伝票を見ながら、場内の商品を集めて回っていたが、働きやすい環境整備の一環として、自動仕分け機を導入している。  これにより社員は機械のレーンに流れてくる商品を受け取る作業を行えばよいので、シニア社員でも負担なく作業ができるようになった。また仕分けでは、それぞれ異なる注文について、迅速に正確に作業を行うことが求められるが、それを自動化することにより、スタッフのストレス軽減にもつながっているそうだ。  一方で、自動仕分け機により、作業効率が上がったことで、排出される段ボールの量が増え、その処分が問題化したという。そこで採用したのが「段ボール圧縮機」。通常、空になった段ボールを解体し、まとめる作業にはかなりの力が必要となるが、ここに機械を導入することで、段ボールを箱のまま投入するだけで圧縮することができるようになり、年齢を問わず、だれでもできる作業になったという。  このほかにも、シニア社員が働きやすい環境整備に恒常的に取り組んでおり、転倒防止のために階段に手すりを設置。さらに、シニア社員を含め、年末の繁忙期を全員で乗り切るため、毎年医師が本社に来て、全社員を対象としたインフルエンザの予防接種を行っている。  新型コロナウイルスの感染が広がった時期にも、地域の医療機関の協力を得て、社員がワクチンを接種できるよう全力を尽くしたそうだ。「コロナ禍では、経済的な大打撃を受けて痛手を負いましたが、働いている方々の命を守りきらねばと思っていました」と菊地社長。同社では何よりも、社員の命と健康を守る取組みを最重視している。 「仕事をすることで健康に」 最前線で働くシニア社員  商品の仕分け業務を担当している船蔵(ふなくら)君恵(きみえ)さん(76歳)は、旭フーズに入社して30年。新聞の折込みチラシの求人を見て、同社に応募したそうだ。「チラシには『45歳まで』と書いてあったのですが、当時の私は46歳。ダメ元で申し込んだら『大丈夫』といわれて仕事を始めました」と船蔵さん。  それから30年間、「本当にいろいろな仕事をしてもらいました」(菊地社長)と感謝される存在で、76歳になった現在も同社の中核となる業務を支えている。数年前までは、週5日で働いていたが、「いまは腰痛の影響などもあり週4日勤務になりました。でも仕事は生活のためでもあるし、生きがいでもあります。周りのみなさんとの交流があるから元気に過ごせます」と船蔵さんは話す。  船蔵さんは、以前の人力での仕分け業務も経験しており、自動仕分け機が導入されてから「とても楽になった」という。歩く距離も少なくなり、腰痛もあるが「ちょうどよい距離で、リハビリみたいになる。ちょっと重い物を持つときもありますが、持てないときは周りの人が助けてくれます」と笑顔で話してくれた。  商品の品出しと仕分け業務をになっている森(もり)幸男(ゆきお)さん(74歳)は、もともとコンピュータや経理関係の仕事をしており、旭フーズに入社したのは60歳になったころ。途中4年ほど中断をはさみ、約10年にわたって同社で仕事をしている。  森さんも、仕分け業務について、「歩いたり、ものを持ち上げたりするので、健康にもつながる仕事ですね。お給料をいただきながらジムに通っているようなものです」と笑顔で話します。現在は週平均4日ペースで出社しており、「この年になって『仕事』という意識を持ちすぎてしまうと、かえって無理が出てしまうのではないでしょうか。あまり構えずに働いています」と、長く仕事を続ける秘訣を話す。「仕事もなく、家でじっとしているだけでは退屈ですから」と話す森さん。休日は、趣味のボウリングなどの「遊び」に費やしているそうで、「70歳になってアベレージが落ちてきた」とはいうものの、ボウリングの平均スコアは170台。仕事も遊びも精力的に取り組んでいる。  同じく仕分け業務を担当している中島(なかじま)寛泰(ひろやす)さん(65歳)は、2025(令和7)年11月に入社したばかりの、同社にとっては「新人」だ。エネルギー関連会社を61歳で定年退職し、しばらくは孫の育児にたずさわっていたそうだが、「孫も大きくなり、時間ができたのですが、ゴルフなどの趣味の時間だけでは空いた時間が埋まりません。何か仕事をしなくてはと思い、ハローワークで旭フーズを紹介してもらいました」と入社の経緯を語る。  「いままでしてきた仕事とはまったく異なる分野なので新鮮ですね。過剰なノルマや精神的プレッシャーなどはなく、無理のない範囲で仕事ができるのでありがたいです」と話す。現在は週4〜5日、8時30分から16時までの勤務で、「1カ月前に申請をすれば休暇も比較的自由に取れるので、仲間とのゴルフ日程の調整などもできますし、とても働きやすい職場です」と話す。  中島さんも、現在の仕事が健康・体力の維持増進につながっていることを実感しているようで、「仕事がある日は、1日1万3000歩ぐらい歩きます。体調もよくなりBMI(体格指数)もだいぶ下がりました」とのこと。趣味のゴルフでも「この年になって飛距離が伸びてきました。これも仕事のおかげ」と笑顔を見せる。 大病を乗り越え77歳で現役 86歳「最高齢者」は「90歳」を目ざす  小島(こじま)泰水(やすお)さん(77歳)は60代のころに大病を患い、その治療を経て同社に入社した。  「心臓の病気で、60代前半のころが特にたいへんでした。手術を受け、しばらくは自宅で過ごしていたのですが、リハビリを経て歩けるようになったことで、仕事を始めました」と話す。当初は警備員の仕事に就いたが、医師から「泊まりがある仕事は体への負担が大きいのでやめた方がよい」と指摘されたことを機に、旭フーズの求人を見つけ、働くことになったそうだ。  週3日、朝8時からの勤務で、「オリコン」と呼ばれるプラスチック製コンテナの洗浄を担当している。「洗浄業務を普通にしているだけなら、体への負担はほとんどありませんが、無理をするときつくなることもあるので、午後の作業を早めに終えるなど、配慮をしてもらっています」と体調に合わせた働き方ができていると話す。  大病を経験しただけに、「体が限界を感じるまでは働きたいと思っているのですが、幸いなことにまだ感じていません。こうして仕事ができるのはありがたい」と話していました。  多くのシニアが活躍する旭フーズのなかで、圧倒的な最高齢記録を更新し続けているのが川口(かわぐち)弘幸(ひろゆき)さん(86歳)だ。福岡県柳川(やながわ)市出身の川口さんは、高校卒業後に上京。大学は夜間の工学部機械科で、入学と同時に機械の設計会社に入社し、大学を卒業して2年後には会社を立ち上げて独立。以来、機械畑一筋に歩んできたそうだ。しかし、2008年のリーマン・ショックで「パタンと仕事がなくなった」と話す。会社をたたみ、新たな職を探してハローワークに通ったものの、なかなか就職にはいたらず、諦めかけていたときに出会ったのが、旭フーズだったそうだ。入社時の年齢は69歳で、当初は「2〜3年ぐらい」と考えていたそうだが、今年で入社17年目を迎えた。  いまは自宅から片道5kmの道のりを自転車で通い、週5日、8時〜15時の勤務で、圧縮機の導入で負担軽減が実現した段ボール処理などの場内整備業務にあたっている。まじめで前向きな働きぶりに定評があり、周囲への目配りを欠かさず、自ら積極的に仕事をする姿勢は、年齢を重ねてもまったく変わらないそうだ。  「仕事にものすごく生きがいを感じています」と話す川口さん。「個人的な目標として、90歳までは働き続けたいと考えており、それまで雇ってもらえたら最高ですね」と話す。生涯現役の体現者として「何歳になっても働くことができる」ことを実践するその姿は、多くの社員の見本となっている。 長く働いている人を大切に 年齢の壁を乗り越え働ける環境を  同社は、シニア人材を積極雇用している企業として、自治体や公的機関から多くの表彰や認定を受けている。菊地社長は、「特に選んで高齢の方を採用しているわけではなく、長く働いている方々が、気がついたら高齢になっていた、という側面の方が大きいですね」と話す。「生涯現役制度」宣言は、埼玉県の「シニア活躍推進宣言企業プラス認定」をきっかけに策定したものだが、「生涯現役を宣言している企業として、シニア人材の活用・活躍に向け、つねに決意をもってやってきました。当社を選んでくれた人たちには、ずっと働いてもらいたいと思っています。そのために何ができるかを考えてきたつもりですし、これからも考え続けます」と菊地社長は強調する。  「シニアの方々は本当に真剣で、責任感が強く、必ずやり遂げるという気概を持つ方が多いです。シニアの方々がもっと長く働けるように、一つひとつのシステムや作業のあり方を突きつめていきたいです」と続ける菊地社長。今後に向けては、「86歳の川口さんが、どこまで記録を伸ばしていくか」にも注目しているそうだ。  「もちろん、みんながみんな、同じことをできるわけではないと思いますが、先駆者の川口さんがしてきたこと、実績を、今後に活かしていきたいです」(菊地社長)  同社は今後も「年齢の壁を乗り越え、働き続けられる環境」を目ざしていくが、「それは自分自身のためでもある」と、菊地社長は語る。「私は現在50代ですが、われわれもみんな、いずれシニアになります。私たちが70代になったころには、いまよりもっと長く、きっと75歳までは当然に働かなければならなくなるのではないでしょうか。働く環境をよくすることは、私たち、シニアの後に続く者のためでもあるのです」  活き活きと働くシニアに、自分たちの将来を重ねられれば―。それが菊地社長の思いのようだ。 写真のキャプション 代表取締役の菊地拓也さん 仕分け業務を担当する船蔵君恵さん 品出しと仕分け業務を担当する森幸男さん 仕分け業務を担当する中島寛泰さん コンテナ洗浄を担当する小島泰水さん 場内整備業務を担当する川口弘幸さん 【P29】 立川(たてかわ)談慶(だんけい)の人生100年時代の歩き方 第4回 豆腐の角(かど)に頭をぶつけて死んじまえ  一見ひどい言葉ですよねえ。これ、「死神」という落語に出てくるセリフです。  「死神」のあらすじは……貧乏な男が、「死にてえな」とつぶやくと、そこに死神があらわれます。「お前にはまだ寿命があるから何をしても死なねえ。それより医者になって儲けろ」といいます。死神は「瀕死の病人宅に入ると死神が見えるようになる」という魔法をその男にかけます。「病人の枕元に死神がいたら寿命だからあきらめろ。逆に足元にいたら呪文を唱えれば死神は消えてなくなる」といい、その呪文を伝授します。  さあ、それからその男は、そんなインチキな呪文だけで病人をすぐに治してしまうという評判が立ち、一気に大金持ちになります。そして愛人をつくり、女房や子供と離縁してしまうのですが、それ以降は枕元に死神がいるケースがほとんどとなり、一気にその男は没落します。貧困にあえぐその男の元へ大金持ちが訪れますが、行ってみると、やはり枕元に死神がいますが、男はふとよからぬことを思いつき、死神がいた枕元と足元の位置を変えてしまう……。  さて、今回は「死神」の冒頭で、この男がおかみさんからいわれるセリフ「豆腐の角に頭をぶつけて死んじまいな」にフォーカスしてみたいと思います。  この言葉、不甲斐ない亭主が出てくる場面など、ほかの落語のなかでも頻繁に出てくるセリフですが、なぜいいなあと思ったのかというと、現実問題として「人間は豆腐の角に頭をぶつけたぐらいで死なない」という大前提があるからなのです。決して相手が死ぬことを望んでいません。そうではなく「豆腐の角に頭をぶつける」程度の衝撃を与えることで、対象であるダメな人間に立ち直ってもらいたいという「愛」がそこにあるような気がしてならないのです。ハチミツ二郎さんという芸人さんが「死ね」などの代わりに使う「風邪引け!」という言葉につながるともいえましょう。  言葉には必ず魂が宿ります。古(いにしえ)の日本人は「言霊(ことだま)」と呼んでいました。心根の優しい言葉使い、心がけたいものです。やっぱり、落語は優しいのです。 【P30-34】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 第1回 「70歳雇用推進プランナー」って何? ★このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです 【P35】 解説 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 第1回 「70歳雇用推進プランナー」って何?  JEEDでは、高齢者雇用に取り組む事業主の方へのさまざまな支援を行っています。その中心として活動をしているのが、「70歳雇用推進プランナー」です。高齢者雇用のプロフェッショナルである70歳雇用推進プランナーが、その知識や経験、実務上のノウハウを活かし、高齢者雇用に悩んでいる事業主のみなさまをサポートしています。 ◆「70歳雇用推進プランナー」とは  高年齢者雇用安定法により、事業主には65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施する義務に加え、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施する努力義務が設けられています。70歳までの就業確保措置の導入・実施、そして高齢者が能力を発揮して働ける環境を構築するためには、賃金・退職金制度を含む人事管理制度の見直し、職業能力の開発・向上などの取組みが欠かせません。そこで、会社の実情に即した支援を行うため、高齢者雇用に精通した社会保険労務士や中小企業診断士、経営労務コンサルタントなど、専門的・実務的能力を有する専門家を70歳雇用推進プランナーとして認定し、JEED の各都道府県支部を通じて全国で活動し、高齢者雇用の推進に取り組む事業主を支援しています。 ◆70歳雇用推進プランナーによる支援内容 @相談・助言  高齢者の活用に必要な環境の整備に関する専門的かつ技術的な相談・助言を行っています。 A提案  70歳までの就業機会確保などに向けた、高齢者戦力化のための定年引上げや継続雇用延長などの制度改定に関する具体的な提案を行っています。 Bその他のサービス  各種ツールを活用した課題の分析や他社事例の提供などを行います。 C企画立案等サービス  専門性を活かして人事・労務管理上の諸問題について具体的な解決策を作成し、高齢者の雇用・活用等を図るための条件整備をお手伝いします。 【P36-39】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第165回 滋賀県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 制度整備と職場環境改善を進め高齢者の活躍を支える 企業プロフィール 新江州(しんごうしゅう)サービス株式会社(滋賀県長浜(ながはま)市) 創業 1988(昭和63)年 業種 一般貨物運送業、倉庫業、流通加工業(包装資材製造) 社員数 62人 (60歳以上男女内訳) 男性(15人)、女性(5人) (年齢内訳) 60〜64歳 11人(17.7%) 65〜69歳 8人(12.9%) 70歳以上 1人(1.6%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員65歳まで継続雇用、その後は運用により75歳まで継続雇用。最高年齢者は74歳  滋賀県は、県土の約6分の1を日本最大の湖・琵琶湖が占める、水と自然に恵まれた地域です。琵琶湖は豊富な水量を有し、県内のみならず、京都府・大阪府を含む近畿地域の人々の暮らしや産業を支える重要な水源となっています。古くから近畿・中部・北陸の三圏域を結ぶ交通の要衝として発展し、現在も高速道路や鉄道などの広域交通ネットワークが整備され、物流や人の移動において高い利便性を有しています。  JEED滋賀支部高齢・障害者業務課の和田(わだ)睦美(むつみ)課長は県内の産業について、「滋賀県は機械、電子部品、自動車関連を中心に製造業が盛んで、県内総生産に占める第二次産業の割合は46.9%と全国1位(内閣府『令和4年度県民経済計算』)となっており、『ものづくり県』として全国的に知られています」と話します。  さらに、滋賀県で活動するプランナーが受ける相談内容について、「@高齢労働者の働くことに対するモチベーションの維持、A職場におけるコミュニケーション、B納得感のある賃金制度などが多く見受けられます。制度改善提案業務については、プランナーに対し、初回訪問時に事業主および人事・労務担当者の話にしっかり耳を傾け、課題だけではなく事業所が置かれている実状も把握するようお願いしています。提案にあたっては、事業主をはじめ関係者に検討いただけるよう、把握した実状に即した内容とすることを心がけています」と説明します。  同支部で活躍するプランナーの一人、三橋(みつはし)正樹(まさき)プランナーは、社会保険労務士、FP技能士の資格を持ち、豊富な知識と経験を活かして、事業所訪問を通じて、課題整理や制度理解につながるよう支援を行っています。  今回は、三橋プランナーの案内で「新江州サービス株式会社」を訪れました。 60歳超ドライバーの評価・賃金制度を整備  新江州サービス株式会社は、1988(昭和63)年2月に設立された、滋賀県長浜市などの湖北地域を拠点とする企業です。一般貨物運送業と倉庫業を中心とした物流事業、ダンボールやフィルムの加工をになう製造事業の二本柱で構成されています。  経営理念に「人を大切に」を掲げる澤(さわ)文明(ふみあき)代表取締役社長は、「地域社会からの信頼を大切にし、時代とともに変化する物流をチャンスととらえ、運送・倉庫・製造を組み合わせることでお客さまの多様なニーズに応えてきました」と語ります。  全社員の約3割が60歳以上と社員の高齢化が進んでいることなどもふまえ、高齢者が働きやすい職場づくりに取り組んでいます。  「社会や家族のあり方が変化するなかで、高齢者の生きがいに対する考え方も大きく変化しました。以前は定年後に旅行をすることなどが一般的でしたが、現在は仕事そのものに生きがいを見いだす高齢者が非常に増えてきていると実感しています。こうした背景から、生涯現役で働ける企業を目ざし、仕事がやりがい(生きがい)となるためには、単に雇用を継続するだけでなく、『自分が会社からどう評価されているか』を明確にすることが重要であると考えました」(澤社長)  他方、2022(令和4)年から実施している社員満足度調査では、定年後の賃金制度が曖昧で、これから定年を迎える社員たちが将来に不安を抱いているという実態が浮き彫りになりました。  「年齢という区切りだけで賃金を下げることへの疑問がありながらも、法律や社会的なルールに照らして妥当なのか、客観的な判断がむずかしく、三橋プランナーに相談しました」(澤社長)  三橋プランナーは、同社から相談を受けた際のことを次のようにふり返ります。  「50代のドライバーが多く、今後、定年を迎える方が相当数いる状況でした。澤社長の『定年後も安心して働き続けられるような雇用の仕組みをつくりたい』という意向をふまえて、評価制度と賃金制度の改定を提案しました。第一歩としてドライバー職の評価軸を設け、生きがい・やりがいが処遇にしっかり反映される仕組みにするとともに、他社や全国平均のデータも示しながら、定年前と基本的には変わらない水準で雇用を継続できるような内容に取りまとめました」  成宮(なるみや)康宏(やすひろ)常務執行役員(中小企業診断士)は「ドライバー職の制度が整い、他職種への展開についても、三橋プランナーによる制度がベースにありますので、自信を持って社員に説明できます。定年後も安心して働いてもらえるのではないでしょうか」と話します。 満足度調査を活かして、環境改善に注力  社員満足度調査の結果をもとに、高齢者の視点に立った具体的な改善にも取り組んでいます。アンケートで寄せられた「通用口の段差がつまずきやすい」という意見を受けて、段差部分にスロープを設置したほか、移動の負担を減らすために工場の近くにトイレを増設しました。  青根(あおね)知美(ともみ)管理部長は「日々の業務中には10分間の小休憩を設けており、これが高齢社員の体力回復に役立っていることがアンケートからわかりました。管理部門としては全社員の顔と名前を把握してフランクに話しかけ、体調など気遣うようにしています」と話し、日ごろから高齢社員の健康状況などの把握に努めていることがうかがえます。  2026年3月からは、「時間単位の有給休暇制度」を新たに導入。通院や子どもの送迎、家庭の事情などに合わせて2時間単位で取得することができ、柔軟な働き方を後押ししています。  一方、高齢社員には、長年の経験に基づく技術や責任感を若い世代へ伝えるにない手としても期待が寄せられています。小倉(おぐら)徹(とおる)製造部長は、「他社で製造業などを経験されたことのある方は、当社とは異なる視点や知見をお持ちです。同じ現場に長くいると視野が狭くなりがちですが、外部を経験したベテランの方から『こう改善すべきではないか』と具体的な提案をいただけるのは非常に新鮮で、まさに“目からウロコ”の連続です。人生の先輩として率直な意見をいただけるのはとてもありがたいですね。ときには熱心なあまり議論が白熱することもありますが、それも良好な信頼関係があるからこそ。日々、新しい刺激を受けています」と語ります。  今回は、60歳を超えてますます自らの強みを活かして活躍するお二人にお話を聞きました。 日次棚卸しを徹底し、誤出荷防止に取り組む  前田(まえだ)雄治(ゆうじ)さん(64歳)は、機械メーカーに28年勤務した後、大手倉庫でのピッキング業務を経て入社し、現在勤続4年10カ月。入荷からピッキング、梱包、出荷までを一貫して担当しています。「倉庫内に棚番がなく置き場所を記憶する必要がありますが、項目ごとに分類して配置することで対応しています」と話します。  品質管理においては、出荷品の棚卸しを毎日徹底しています。週1回程度の頻度が一般的ななか、日次で確認することで誤出荷を未然に防いできました。新製品の増加により類似品も増えていますが、「誤出荷ゼロ」を最優先に、色や箱の違いなど細部まで注意を払っています。  製造部主任の進藤(しんどう)規子(のりこ)さんは「まじめで健康で、力仕事もまかせられる、頼りになる存在です。現場を安心してまかせられますし、年齢を感じさせない仕事ぶりです。これからもずっと元気に一緒に働きたいです」と話し、大きな信頼を寄せています。  「前田さんは感知力に優れており、事務所で停電が発生した際には、電柱のカラスの巣によるショートをいち早く発見し報告してくれて、迅速な復旧につながりました。ほかにもちょっとしたトラブルにすぐに気づいて知らせてくれたり、すばやく業者の来訪を共有してくれたり、高い報告姿勢も相まって会社にとってありがたい存在です」(青根部長)  今後については、「誤出荷ゼロを続けていきたい」と語り、新製品の増加にともなう保管場所の課題に対して、整理整頓や置場の最適化を進めていく考えです。「できるだけ長く勤めながら、現場をよりよくしていきたい」と、前向きな意欲を見せています。 ていねいな作業と先読みで、入出庫業務に貢献  川村(かわむら)二三男(ふみお)さん(74歳)は、20歳のときに入社して、約40年にわたり段ボール製造に従事し、係長や課長も経験しました。定年前にフォークリフト業務の部門に異動して15年、カウンターリフトやクランプリフトを操作して入出庫や出荷業務をになっています。  「初めはクランプリフトに恐怖心がありました。左右から荷物を挟んで持ち上げるクランプリフトは、挟む圧力の調整が必要で、重量物を扱ううえに、落下すれば重大な事故につながります。覚悟を決めて乗務を重ね、技術を習得しました」  その経験が安全意識の向上につながっています。  二つの製造課の動きを把握し、1週間先の製造予定を見すえながら荷物の配置や前出しを行うことで、スムーズな入出庫を実現しており、「計画通りに仕事が終わったときが一番うれしいですね」と語ります。  物流部課長の吉川(よしかわ)武(たけし)さんは、「川村さんは前準備や先を読む力に優れ、周囲からの信頼も厚く、『川村さんにお願いすれば安心』といわれるような存在です。なにより、仕事がとにかくていねいですね。ドライバー・外部業者への対応もていねいで、現場の信頼関係づくりに貢献してくれています。川村さんのていねいさと段取り力、コミュニケーション力を次世代へ引き継いでいってほしいです」と語り、期待しています。  プライベートでは、若いころから続けているボウリングで体力を維持しており、プロ選手に勝利した経験もあるほどの腕前です。現在も日々の運動や歩行を心がけ、健康管理に努めています。75歳を迎える節目を前に「これまでの分を恩返ししたい」と語る川村さん。長年つちかってきた経験と姿勢で、これからも現場を支えながら、「若い発想力、変化、進化に期待し、次世代にバトンタッチしたい」と話してくれました。  同社は今後も社会の変化に合わせて制度をアップデートし、地域社会に信頼される企業を目ざし、高齢者雇用を推進していく方針です。  三橋プランナーとの連携は現在も続いており、国の施策や法令の変化、他社の動向などをふまえながら、継続雇用制度をさらにレベルアップさせていくための相談を行っているそうです。(取材・西村玲) 三橋正樹 プランナー アドバイザー・プランナー歴:5年 [三橋プランナーから] 「事業所自身が気づいていないような課題を抽出し、その解決の必要性を認識していただいたうえで、実際に実践してもらえるような改善策の提案をするように心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆滋賀支部高齢・障害者業務課の和田課長は三橋プランナーについて「専門とする分野は賃金・退職金管理および人事・労務管理であり、事業所訪問時には人事評価・賃金制度や職場環境改善などについて、訪問先の状況に応じたさまざまなアドバイスを行っています。アドバイザー・プランナーとしての経験は6 年目となり、5年間で62件の提案、266件の相談・助言を行っており、責任感が強く、事業所が安心して相談できるプランナーです」と評します。 ◆滋賀支部高齢・障害者業務課は、JR石山駅から徒歩約10分、京阪唐橋前駅から徒歩5分の「ポリテクセンター滋賀」内にあります。公共交通機関でのアクセスがよく、来所しやすい便利な立地です。また、付近には名橋として知られる「瀬田の唐橋」や紫式部ゆかりの「石山寺」があります。 ◆同県では6人の70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーが活動しており、2025年度は制度改善提案を58件、相談・助言を232件行いました。 ◆相談・助言を実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●滋賀支部高齢・障害者業務課 住所:滋賀県大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 電話:077-537-1214 写真のキャプション 滋賀県長浜市 本社社屋 左から青根知美管理部長、澤文明代表取締役社長、成宮康宏常務執行役員、小倉徹製造部長 ピッキング業務を行う前田雄治さん クランプリフトを操作する川村二三男さん 【P40-41】 第115回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  松井愼一さん(78歳)がタクシー乗務員に転職して四半世紀が経った。会社で最高齢者になったいまも、深夜にハンドルを握る。高齢ドライバーによる事故が社会的に注目される時代だからこそ、運転のプロとしての責任を痛感する松井さんが、生涯現役で働き続ける喜びを語る。 弥生(やよい)交通株式会社 タクシー乗務員 松井(まつい)愼一(しんいち)さん 命の尊さを知った日々  私は東京都板橋区(いたばしく)で生まれました。小学校まで板橋区内で過ごし、その後、同じく都内の小平市(こだいらし)に移りました。高校卒業後に大学を目ざしましたが、高校生のころから一人旅が好きでふらふらしていましたので大学受験を断念。三人兄弟の長男が進学もせず、就職もしないのですから、いま思えば親不孝な息子でした。  それでもアルバイトは続けていました。ガス会社の営業所でガスメーターの検査のアルバイトをした縁があって、24歳のときにガス会社に中途採用してもらいました。当時のガス会社は天然ガスへの切り替えを進めている時期を迎えていて、多くの人材を必要としており、中途採用者を大量に採用していました。このころのガス会社は縁故採用中心でしたが、やっと24歳で職を得ることができました。じつは家族や親族の多くが警察関係者でしたが、私だけ、その道に進みませんでした。  入社してすぐに新宿の営業所に配属されました。ガスメーターの検針や集金を担当してから、ガス漏れの定期検査を担当、その後は、緊急車両に乗車する保安要員を長く務めました。ガスが原因となった火災現場にも数多く遭遇しました。たくさんの悲惨な事故現場と出会いましたので、私は命の尊さを思い知らされたような気がします。  多くの犠牲者を出した1982(昭和57)年2月のホテルニュージャパンの火災のときにも、松井さんは現場に駆けつけている。「警察官だった父や親族たちのDNAなのか、なぜか自分は度胸がすわっており、つねに落ち着いて対処できました」と松井さん。 タクシー乗務員を目ざして  ガス会社には24年間勤めましたが、保安要員の仕事が長かったです。この仕事は待機時間が多いわりに働きやすく、やりがいもある職場でしたが、私自身の人生に大きな転機が訪れ退職することになりました。  ガス会社を退職してから4年ほどは、石材店の仕事を手伝いました。私は器用なほうなので、この仕事は性に合っており、この道に進んでもよかったかなと思うほどでした。しかし、大学生の息子が2人いて、なにかと物入りでした。そこで選んだのが、タクシーの世界でした。もともと車の運転が好きだったこともあります。そこで、52歳でタクシー免許(普通第二種運転免許)に挑戦し、学科と実技の試験に、それぞれ1回で合格しました。いまは廃止されましたが、このころは地理試験があり、これが結構難関でした。地理試験はタクシー乗務員にとって必須だといまも私は思います。これほどカーナビが普及しても個人の経験にはかなわないからです。  タクシー乗務員との出会いは一期一会である。乗務員と話がはずむこともあれば、一言も言葉を交わさず下車するときもある。  今回は、松井さんの巧みな語り口に引き込まれ、いつの間にか波乱万丈ともいえる人生の話に聞き入ってしまった。 天職との出会い  タクシー免許を取得して、あるタクシー会社に入社しました。その会社は規模が大きかったので、乗務員の出入りが激しかったです。現在はゆとりを持って仕事をしていますが、当時はまだ若かったですし、稼ぐためにがむしゃらに働いたものです。その会社でタクシー乗務員としての経験を積み重ねましたが、私自身の生活の変化のため、家族寮が整備されている弥生交通株式会社に転職しました。  それから18年、いまも現役で働かせてもらえることに感謝しています。弥生交通は2019(平成31)年に定年が65歳になり、70歳まで再雇用、それ以降も年齢の上限なく働くことができるようになりました。高齢者が働き続けるための対策も万全で、私のように75歳を過ぎたドライバーには3カ月ごとに健康状態や、運行状況を加味した面談を実施しています。勤務形態も多様で、希望すれば短時間勤務や始業・終業時刻の選択も可能です。  弥生交通株式会社は、2023(令和5)年度の高年齢者活躍企業コンテストにおいて、厚生労働大臣表彰特別賞を受賞している。「高齢者が長く働き続ける職場環境づくりが進む会社に出会ったからこそ、いまがある」と松井さんは笑顔になった。 生涯現役という新たな目標  70歳を節目として、タクシーの乗車は週2回にしました。乗車のパターンは、朝5時に家を出てから会社で風呂に入り、8時には出庫します。帰庫するのは、所定労働時間と残業時間とあわせて、だいたい翌朝の3時から4時ごろになります。長時間の労働になりますが、しっかり休憩も取って、決して無理することなく運転しています。そのことが安全運行を実現するために、そして長く働くために必要なことだと思っています。  タクシーの乗車以外の仕事には、月2回の運行管理補助者の仕事があります。おもな仕事は電話の応対ですが、なにかトラブルが起こったときには、速やかに対処しなければなりませんので、責任は重大です。  健康に関しては、60歳を過ぎてから、3回ほど心筋梗塞(しんきんこうそく)で倒れました。1回目と2回目はカテーテルを入れて対処、3回目のときには手術をしてバイパスを造設しました。それから15年以上が経ちましたが、健康にはまったく影響がありません。視力も、眼鏡が不要なほどです。  たしかに高齢になるにつれて、反射神経や判断力、瞬発力などの低下を感じますが、ただ個人差があると私は思っています。高齢ドライバーによる事故が起きるたびに、年齢のことだけをひとくくりにして報道されることに忸怩(じくじ)たる思いがあります。  もちろん、タクシー乗務員が人の命を預かっている仕事をしているということは、肝に銘じています。お客さまを安全に目的地へお連れすること、車内で快適な時間を過ごしていただくことが、私たちの最大の使命です。  ひと昔前までは、タクシー乗務員の「約束ごと」がありました。例えば、すれ違うときには軽く手をあげるとか、細い路地では互いに道を譲り合ったりするといった、きわめてあたり前のマナーのようなものです。それがいまは、とても希薄になっているような気がします。タクシー業界だけでなく世の中全体の風潮かもしれませんが、私はハンドルを握る高齢者として、少しでも後進のお手本になりたいという気持ちで走っています。  高齢者が安心して働き続けられる会社に少しでも貢献したく、会社のモットーである「安全・安心な運行」を目ざして、もう少し現役でがんばりたいと思います。お客さまとの出会いを楽しみに、明日もハンドルを握ります。 【P42-45】 高年齢者活躍企業コンテスト 受賞企業の軌跡 第5回 大和(だいわ)ライフネクスト株式会社(東京都港区)  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)と厚生労働省との共催で毎年開催している「高年齢者活躍企業コンテスト※」。高齢者雇用の推進に資する事例を広く募集し、優秀な事例を表彰しており、その内容は、毎年本誌で紹介しています。本連載では、かつてコンテストで厚生労働大臣表彰を受賞した企業を取材し、その後の取組みの進化・深化をレポートします。第5回は、2013(平成25)年度に最優秀賞を受賞した大和ライフネクスト株式会社を取材しました。 高齢者を積極的に採用して活躍を促進 健康寿命を延ばすための取組みもスタート 1 70歳を過ぎても働くことができる雇用制度を早くから構築  マンションや事業用建物などの不動産管理事業を展開する大和ライフネクスト株式会社(齋藤(さいとう)栄司(えいじ)代表取締役社長)は、「平成25年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰最優秀賞を受賞した。  同社では、マンション管理員として、当時から多くの高齢者が活躍していた。その背景には、定年年齢の65歳を超えても70歳まで嘱託社員として継続雇用可能な制度と、70歳以降でも働くことができる制度により、働く意志と体力があるかぎり、生涯現役で働くことを可能にする仕組みがあった。  大臣表彰受賞時の本誌掲載記事によると、当時のマンション管理員1804人中、60歳以上は正社員、嘱託社員を合わせて1586人で87.9%を占めていた。マンション管理員を中心とする70歳以上の従業員は、300人であった。  マンション管理員として採用される高齢者は未経験者が多いため、新規に採用された管理員が質の高いサービスを提供できるように、着任前後に充実した教育研修を重ねていることや、マンション管理現場における業務改善提案などを表彰する制度を設けていることが管理員のモチベーションと会社への帰属意識を高めていることなども高く評価されて、大臣表彰最優秀賞の受賞につながった。  2013(平成25)年度の受賞から13年、マンション管理員として働く人たちを中心に、同社の高齢者雇用のその後の軌跡を追った。 2 80歳まで働ける制度を整えて70歳以上も2571人が活躍中  同社は、1976(昭和51)年に創業し、マンション、ビル・商業施設、ホテルなどの建物管理サービスを手がけてきた。2015年には、同社と同様に、不動産管理業務を展開する株式会社ダイワサービスと経営統合して、新生「大和ライフネクスト株式会社」として現在に至る。同社の管理する分譲マンション数は、4465棟(28万5173戸)となっている(2025〈令和7〉年3月31日現在)。  マンション管理員以外の正社員、嘱託社員を含む同社の従業員数は、8760人(2026年1月1日現在)。うち60歳以上は4914人で、全体の56.1%を占めている。60〜64歳が807人、65〜69歳が1536人、70歳以上が2571人である。  60歳以上の従業員のうち、マンション管理員は3567人(60歳以上の72.6%)となっている。65歳以上は、ほとんどがマンション管理員であり、13年前の大臣表彰受賞時に比べ、70歳以上の従業員が大幅に増えていることが大きな変化として見てとれる。  定年年齢65歳は大臣表彰受賞時から変わりはないが、マンション管理員の定年後の継続雇用制度は、2019年に「65歳定年後、嘱託社員として75 歳まで雇用を延長する」と改定された。その先も働くことを希望する者は、会社との合意を経たうえで、80歳まで働くことが可能とした(ただし、労働時間は週に20時間未満とする)。  雇用の上限年齢を80歳としたことについて、同社コーポレート本部人事部の土屋(つちや)浩史(ひろふみ)部長は、次のように説明する。  「少子高齢化が進展するなか、シニア層の方々の仕事の選択肢が増えて、採用競争が激しくなってきたことが一つ。また、健康寿命が延びたことによってリタイアする年齢にも変化が生じ、当社で働いているシニアとお客さまの双方から、まだリタイアせず管理員を続けてほしい、といった声が聞かれるようになったという背景がありました。一方で、70歳を超えると、健康面で個人差が大きくなってきますので、75歳を過ぎてからは週の労働時間を20時間未満とし、継続して働きたいという意欲がある方は会社と面談のうえ、双方のニーズが合えば80歳まで継続して働くことが可能な制度としました」  この制度のもと、75歳超になっても働く管理員が増えたことが、70歳以上の従業員数の増加につながっているといえるだろう。同社の現在の最高年齢者は80歳である。 3 充実した研修制度、スマホを活用した情報発信で一人ひとりの活躍を支援  同社ではマンション管理員として、高齢者を積極的に採用している。65歳までの応募者は正社員として採用していることから、好条件の同社を選んで応募する人も少なくないそうだ。ただ、定年退職後の仕事として応募する人が多いため、ここ数年、その年齢が上がってきている。また、一年間に500人ほどのマンション管理員が入社するが、その多くが未経験者であり、65歳、70歳過ぎの未経験者も採用している。  同社では大臣表彰受賞の以前から、マンション管理員を「フロントマネージャー」と呼んでいる。マンション管理の現場は、一人で勤務する場合が多く、自らの判断と責任でサービスを提供するスピード感が求められるため、管理サービスの最前線で、現場の責任者として業務にあたってほしいという意図が込められているという。そのため年齢にかかわらず、よりよいサービスを提供したいという思いを持つ人材を採用し、教育研修やモチベーションの向上に注力していることも、大臣表彰受賞時の同社の取組みの特筆すべき点であった。  それらはいまも続けられ、現在では専任の教育研修部門を設けて、着任前研修から、現地研修、フォロー研修など、最新の事業を反映した研修プログラムを作成し、現場に精通した講師が研修を実施。新規に採用された管理員が着任直後から高品質のサービスを提供できるように、具体的には、入社後は7日間をかけて、派遣前研修・ガイダンス(座学)、先輩マンション管理員との研修(実務研修)、配属先マンションで専属講師からマンツーマンでの現場研修(実務研修)を実施。入社から2〜3カ月後には、実務研修の専門講師によるフォロー研修を行う。  さらに、近隣エリアの担当社員と管理員とで月一回程度会議を開催し、情報共有や必要に応じたサポートを行う。また、何かあれば電話で相談を受けるなどの体制を整えている。  マンション管理員には、マンションごとに会社から業務用のスマートフォンを配備している。出退勤管理を行うことを目的として始めたものだが、2021年度からスマートフォン向けアプリを活用して、社内報の発信を開始。業務情報をはじめ、健康や安全に関する情報も随時発信し、情報の共有や業務知識のアップデートを促進している。当初は、管理員にスマートフォンの使い方をマンツーマンで教える取組みも行ったそうだが、いまではほとんどの管理員がスマートフォンの使い方を熟知し活用している。労働災害防止に向けた事例を動画で伝える発信も行っていて、転倒事例などの動画がよく見られているそうだ。  また、マンション管理員のモチベーション向上について、土屋部長は次のように話す。  「管理員が一人で勤務するマンションが多く、管理員同士の横のつながりがつくりにくい側面がありますが、当社では、同じエリアで働く管理員の方々で集う機会を設けています(45ページ写真)。また、それぞれが工夫した業務改善や住民の方々に喜ばれた取組み、ちょっといい話などを管理員から募集し、『KAGAYAKI1グランプリ』として表彰する制度があります。これが結構注目されていて、グランプリを目標にしている方もおり、業務へのモチベーションを高めることにつながっていると思います。こうした取組みや、横のつながりが持てるようにすることはつねに大事にしています」  高齢期に未経験から管理員という仕事を選んだ動機は、収入のためや、人と接する仕事がしたいなどさまざまだが、「よく聞くのは、社会とつながりを持っていたい、社会に貢献できる自分でありたい、という方が多く、その姿勢もモチベーションアップになっていると思います。シニア層の管理員の方々と話をすると、社会とつながり続けたい、働き続けたいという意欲が高い方が多く、そういう思いで働かれ、いろいろな工夫をされたりして、感心することが多くありました」と土屋部長。また、「管理員をしていると、マンションに住まわれている方々と交流があり、『ありがとう』という言葉をいただけたり、お子さんたちとあいさつを交わしたりする瞬間があります。『管理人さん』ではなく、『〇〇さん』と名前で呼ばれるなど、『あいさつしてくれてうれしかった』という話をよく聞きます。マンション管理員は、お客さまの暮らしを守る大事な仕事ですから、社会的な価値をさらに高め、広めていきたいと考えています」と力を込めて語った。 4 大学と連携した健康寿命延伸を目的とする運動プログラム  同社では、「大和ライフネクスト健康宣言」を制定して健康経営の取組みに注力し、2020年から、日本健康会議が認定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に選定され、「健康経営優良法人2022」では、大規模法人部門の上位500社に付与される「ホワイト500」に認定されている。  マンション管理員は60歳以上の高齢者が多いが、健康維持のためにこの仕事を選んだという人がいるなど、もともと健康に対する意識の高い人が多いという。同社ではこれまで、マンション管理員をはじめとする高齢従業員に対して、健康の維持に注力した取組みを行ってきた。健康診断を通じた取組みを重視し、産業医・保健師と連携して健康管理体制を構築して、健診結果に基づいて産業医や保健師が積極的に介入し、二次検査の受診勧奨、治療状況の確認など個別の事後フォローを徹底して、病気の早期発見、治療につなげている。また、マンション管理員については、現場での安全衛生対策と、無理をさせない働き方の徹底にも重点を置いている。  マンション管理員のおもな仕事は、マンション共用部分の清掃、館内巡回、受付、事務管理などで、例えば清掃をするときにわずかな段差につまずいて転倒する、ふり向いたときに何かにぶつかるといった労働災害が生じている。こうした労働災害を抑止するため、事故発生時は案件ごとに問題点の発見、再発防止策および対策後のリスク評価などを行っている。さらに2026年4月から、新たな取組みを開始する計画があることを土屋部長が話してくれた。  「いきいきと仕事をすることができているシニア層の方々により長く活躍してほしいと願い、健康寿命を延ばす取組みを健康経営の一環としてスタートする予定です。筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターと『マンション管理業を行う高齢社員の健康維持・管理に資する体力向上プログラムの開発』をテーマとした共同研究を行い、当社のシニアマンション管理員の方々の健康に関する優れた部分と課題、また、当社のマンション管理の業務特性をふまえて、体づくりのプログラムの検討・開発を進めてきました。気軽にできるトレーニングプログラムで、業務に支障のない時間や自宅での隙間時間などに、強制ではないのですがまずはマンション管理員に周知して実施を呼びかけていきます」  この取組みは、加齢による運動機能低下をフォローするもので、転倒等による労働災害発生件数の削減につなげ、2030年までに60歳以上のマンションをはじめとする建物勤務者のけが(労働災害を含む)による延べ欠勤日数の削減を、2023年度比マイナス10%を視野に取り組む考えだ。  「働きながら健康寿命を延ばすことは、マンション管理員だけでなく、当社のお客さま、また、社会にとって価値のある取組みになると思いますので、今後、ほかの仕事をする従業員や、社内全体、あるいはグループ会社にも広められるよう、力を入れて進めていきたいと考えています」と土屋部長。今後の展開が気になる取組みである。 ※ 2020(令和2)年度までの名称は「高年齢者雇用開発コンテスト」 写真のキャプション 大和ライフネクスト株式会社本社(写真提供:大和ライフネクスト株式会社) コーポレート本部人事部の土屋浩史部長(写真提供:大和ライフネクスト株式会社) 同じエリアで働くマンション管理員の交流が横のつながりをつくっている(写真提供:大和ライフネクスト株式会社) 【P46-49】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第94回 高年齢者雇用確保措置、就業規則と矛盾する労使慣行の成否 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲/弁護士 木勝瑛 Q1 高齢者雇用の基本的な枠組みについて知りたい  高齢者雇用を推進するうえで、高年齢者雇用安定法において規定されている高齢者を対象とする制度の全体像を教えてください。 A  65歳までの高年齢者雇用確保措置と、70歳までの高年齢者就業確保措置に大きく分かれます。前者については希望者全員を対象とすることなど厳格な管理が必要とされています。 1 高年齢者の就業機会確保に関する制度  高年齢者雇用安定法は、「定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的」としています(同法第1条)。  この規定には、高年齢者の就業機会確保等に関する要素が整理されています。  まず、@「高年齢者の安定した雇用の確保」として、定年の引上げや継続雇用制度の導入が求められています。次に、A「高年齢退職者に対する就業の機会の確保等」として、高年齢者等の再就職の促進などがあげられています。  具体的な制度としては、@は、高年齢者雇用確保措置として事業主に義務づけがされており、Aは、高年齢者就業確保措置として努力義務が定められています。今回は、@高年齢者雇用確保措置に関する内容を整理し、次回は、A高年齢者就業確保措置について整理していきたいと思います。  なお、高年齢者雇用安定法においては、55歳以上の者を「高年齢者」、45歳以上を「中高年齢者」と定めています。制定当時は60歳定年制が一般的であったこともあり、55歳以上の者が高年齢者とされていますが、現在では、定年制の廃止も含めて、60歳を超えた雇用継続が一般化していることから、一般的な感覚とはずれてきているようには思われますが、高年齢者雇用安定法上では、この定義が維持されています。 2 高年齢者雇用確保措置について  高年齢者雇用確保措置として掲げられているのは、@定年の引上げ、A継続雇用制度、B定年の廃止のいずれかをとることです(同法第9条第1項)。  定年については、60歳を下回ることができない(同法第8条)とされており、@定年の引上げをする場合には、これをさらに65歳まで引き上げなければなりません。B定年の廃止を採用した場合には、自然と65歳定年制よりも労働者に有利な内容となるのでそれで問題ないとされています。最近では、定年制を廃止する、または定年制は定めたままではあるが65歳を超えた継続雇用を維持することにより、法律上の要請を超えた長期雇用を実現している企業も必ずしも珍しいものではなくなってきました。  定年の引上げまたは廃止については、既存の労働契約が維持されたままになるだけですので、法令解釈上の疑義は生じにくいところですが、継続雇用制度については、一度終了した労働契約を別の形で再開することになり、解釈上の疑義が生じうる点が多いため、厚生労働省はQ&A※を公表しています。  まず、継続雇用制度は、定年退職後の労働者のうち、希望者全員を対象とすることが必要です。かつては、継続雇用者の基準を労使協定に基づき定める制度が用意されていましたが、現在は、希望者全員を対象としなければならず、継続雇用の基準を定めることはできません。また、制度を定めておくことが事業主の義務とされていますので、適用対象と想定される労働者がいない場合でも、希望者全員を対象とする制度自体は用意しなければなりません。なお、希望者全員を対象とする制度と並行して、一定の基準を設けた労働条件等の水準が異なる継続雇用制度を用意することは許容されるものと考えられています。  継続雇用を行わないでよいのは、心身の故障のため業務に耐えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど、就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢にかかるものを除く)に該当する場合にかぎられています。また、解雇事由または退職事由に該当することに加えて、解雇する場合と同様に、継続雇用しないことについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められます。  継続雇用を行うのであれば、労働条件の変更を提示して、労働契約を継続することも可能とされています。ただし、この場合でも、労働条件が著しく異なる場合には、そもそも継続雇用制度とは認められないと考えられています。また、提示できる労働条件については、使用者の合理的な裁量が認められるとされていますが、同一労働同一賃金制度との関係で、「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」を考慮したうえで、合理的な範囲に留まるものとする必要があります。同一労働同一賃金との関係では、基本給の性質に関して慎重な検討が必要と判断した判例が現れているところですので、自社の基本給の性質をあらためて検討し直しておくことは重要となっています。  なお、継続雇用制度については、必ずしも自社のみではなく、特殊関係事業主(典型的には、グループ企業の集団が該当します)の間であれば、よいとされています。ただし、特殊関係事業主において定年後も継続雇用される旨について、グループ企業間での契約締結が要件とされていますので、制度導入にあたっては失念しないように留意する必要があります。  特殊関係事業主での継続雇用についても、労働条件を変更するにあたって合理的な裁量の範囲に留める必要があり、就業場所の変更をともなう場合でもその範囲が合理的であるか問題となります。ただし、同一労働同一賃金の制度は、同一の法人内での適用が前提となっていることから、直接的な適用はないものと考えられます。  次号では、高年齢者就業確保措置について整理します。 ※ 「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」は、以下のホームページをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/newpage_55003.html Q2 当社には就業規則と矛盾する労使慣行があるのですが、問題はあるのでしょうか  当社では、就業規則上、月曜日を特定休日としており、この休日に出勤した場合には、時間外手当を支給することとされていました。そして、労働協約上、特定休日が祝日と重なった場合には、特定休日の振替は行わないものとされていました。しかしながら、これまで、月曜日が祝日である場合には、その翌日である火曜日に出勤した従業員に対し、時間外手当を支給する旨の取扱いがされていました。そのため、今回、この取扱いを就業規則に則った取扱いに改善するつもりです。注意すべきことはあるでしょうか。 A  問題となっている特定休日の取扱いが、一定の範囲において長期間反復継続して行われており、労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥しておらず、当該取扱いが労使双方の規範意識によって支えられている場合には、当該取扱いは、労使慣行として法的効力を有することになるため注意が必要です。 1 労使慣行とは  使用者と労働者の間には、明文でルール化はされていないものの、長きにわたって反復継続的に行われてきた取扱いが存在する場合があります。これを労使慣行といいます。労使慣行は、ただちに法的なルールとして拘束力を持つものではありませんが、一定の場合には、法的拘束力を持つとされています。  なお、労使慣行には、次の二つの場合があり、一つは、就業規則上規定されていない部分について、一定の取扱いを継続しているものです。もう一つは、就業規則の規定と抵触する取扱いが継続しているものです。いずれの分類にあたるかによって議論が異なります。今回のご質問は後者に該当します。 2 労使慣行が法的拘束力を持つ場合  労使慣行が法的拘束力を有するのは理論的には二つのパターンが考えられます。慣習法になっている場合(法適用通則法第3条)と、事実たる慣習として契約内容になっている(民法第92条)場合です。ただし、前者については、裁判例において、「慣習法は社会の法的確信または法的認識によって支持される程度に達したものをいうのであって、…一企業の一事業所における慣行について慣習法の成立する余地はない」(三菱重工長崎造船所事件・福岡高裁平成7年4月20日判決)とされていることからも、労使慣行が慣習法として認められる可能性はかなり低いでしょう。実際に法的拘束力を持つ労使慣行について検討すべきは、おもに事実たる慣習(民法第92条)として契約内容になっているか否かになります。 3 事実たる慣習とは  民法第92条では、「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う」とされています。本条は、事実たる慣習がある場合には、当事者が特に反対の意思を表示しないかぎりは契約内容になる趣旨と解釈されています。  裁判例では、「同種の行為又は事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと、労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないことのほか、当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることを要し、使用者側においては、当該労働条件についてその内容を決定しうる権限を有している者か、またはその取扱いについて一定の裁量権を有する者が規範意識を有していたことを要する」(商大八戸ノ里ドライビングスクール事件・大阪高裁平成5年6月25日判決)とされています。  つまり、@長期間にわたり反復継続していること、A労使双方がこれを明示的に排除していないこと、B当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることの3点が認められる場合には、事実たる慣習として法的拘束力を持つことになります(なお、学説上は、Bの要件は不要であるとするものも見られます)。 4 商大八戸ノ里ドライビングスクール事件  参照すべき裁判例として、商大八戸ノ里ドライビングスクール事件(大阪高裁平成5年6月25日判決)があります。被告会社においては、ご質問と同様の運用がなされていた状況が10年以上続いていたところ、新勤労部長就任をきっかけに、従前の運用を就業規則に合わせた運用に変更したため、原告は、本運用を含む四つの運用について、いずれも労使慣行として、労働契約の内容になっていたとして、未払賃金等の支払いを求めました。  裁判所は、前述の通り、法的効力のある労使慣行が成立していると認められるためには、@長期間にわたり反復継続していること、A労使双方がこれを明示的に排除していないこと、B当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることの3点が必要であるとしました。  そのうえで、「労働協約、就業規則等に矛盾抵触し、これによって定められた事項を改廃するのと同じ結果をもたらす労使慣行が事実たる慣習として成立するためには、その慣行が相当長期間、相当多数回にわたり広く反復継続し、かつ、その慣行についての使用者の規範意識が明確であることが要求される」として、就業規則等と矛盾する労使慣行の成立については、慎重な姿勢をとりました。  そして、裁判所は、本件の運用について、本件の運用が開始された端緒や理由が不明であること、労使間での協議がなされた記録はないこと、新勤労部長が本件の運用を知ってただちに是正を図ったことなどの事実関係を考慮し、被告会社において「明確な規範意識を有していたものとは認めがたい」として、事実たる慣習としての法的拘束力を否定しました。  この判決では、就業規則等と矛盾抵触する労使慣行については、Bの要件における使用者の規範意識が「明確」である必要があるとされています。そのため、この判決を前提とすると、就業規則等と矛盾抵触する労使慣行の法的拘束力が肯定されるのは、かなり限定的と考えられます。 5 まとめ  社内で事実上なされていただけの労使慣行も、それが長期間継続した場合には、法的拘束力を有することがあります。社内においてそのような運用がある場合には早期の是正を検討されるとよいでしょう。 【P50-51】 諸外国の高齢化と高齢者雇用 最終回 中国 独立行政法人労働政策研究・研修機構 人材開発部門 副統括研究員 藤本(ふじもと)真(まこと)  世界でもっとも高齢化が進行している国が日本であることは、読者のみなさんもご存じだと思いますが、高齢化は世界各国でも進行しており、その国の法制度に基づき、高齢者雇用や年金制度が整備されています。本連載では、全6回に分けて、各国における高齢者雇用事情を紹介します。最終回は中国です。 人口構造の巨大な転換と「未富先老」がもたらす問題  中華人民共和国(以下、「中国」)は現在、人類の歴史において類を見ない規模と速度で進行する、人口構造の巨大な転換期に直面しています。長年にわたって厳格に実施されてきた「一人っ子政策」の影響、急速な経済成長と都市化にともなうライフスタイルおよび価値観の劇的な変化、そして医療技術の進歩や公衆衛生の改善による平均寿命の大幅な延伸という複数の要因が複雑にからみあい、世界最大の高齢人口を抱える「超高齢社会」へと急速に移行しつつあります。  中国の65歳以上人口は、2010(平成22)年の第6次国勢調査で約1億1883万人と、総人口の8.87%に達し、国際連合が定義する「高齢化社会」に突入しました。その後も高齢化は劇的に加速し、2024(令和6)年末時点の国家統計局の発表によれば、65歳以上人口はついに2億人を超え(2億2023万人)、総人口に占める割合も15.6%にまで上昇し、「高齢社会」に移行しています。ほかの先進国が数十年から百年以上の時間をかけて経験した人口動態の変化を、中国はわずか数十年で圧縮して経験しており、一人あたりのGDPが十分に高まる前に高齢化社会を迎える「未富先老(みふせんろう)(豊かになる前に老いる)」にともなう問題が生じています。  「未富先老」にともなう深刻な問題の一つは年金制度の運営です。中国の年金制度は2000年に設立された「全国社会保障基金」などによって支えられていますが、制度の大部分は現役世代からの保険料収入で現在の高齢者の年金を賄う賦課方式に近い形態をとっています。そのため、高齢化が急激に進行すると収入と支出のバランスが崩れ、年金財政が危機的な状況に陥ることが懸念されています。中国社会科学院が2019年に発表した報告書※1は、現在の人口動態と制度設計のまま推移した場合、都市部労働者向けの基本年金基金が2035年までに完全に枯渇する可能性があると指摘しています。  年金制度については、都市部と地方農村部とで制度が分断され、給付水準が極端に異なることも問題としてとらえられています。中国の年金制度はおもに、都市部の正規雇用労働者や公務員を対象とした「都市従業員基本養老保険」と、農村部の農民や都市部の非正規労働者・無職者を対象とした「都市・農村住民基本養老保険」に二分されていますが、2023年のデータによると、都市部の給与所得者が受け取る平均受給月額が3743元(約7万4000円相当)であるのに対し、農村部などの住民向け基礎年金制度の参加者が受け取る平均受給月額はわずか223元(約4400円相当)に留まっています※2。 法定退職年齢の引上げと高齢者就業にかかわる課題  以上の年金財政における危機的状況や労働力不足への対応として、全国人民代表大会常務委員会は2024年9月に法定退職年齢の段階的な引上げを含む年金制度の抜本的改革を正式に承認しました。中国の法定退職年齢は1978年(昭和53)年に定められて以来改定されておらず、主要経済国のなかでもっとも低い水準にすえ置かれていました(男性60歳、女性幹部55歳、女性非幹部50歳)が、2025年1月から15年かけて段階的に、男性労働者63歳、女性ホワイトカラー・幹部労働者58歳、女性ブルーカラー・非幹部労働者55歳へと、それぞれ引き上げられることとなりました。  また、法定退職年齢引上げと並行して、基礎年金を受け取るための最低納付(加入)期間の要件も厳格化されました。現行制度では15年間の納付で受給資格が得られましたが、2030年1月から毎年6カ月ずつ段階的に期間が引き上げられ、最終的(2039年)には最低20年間の納付が必要となります。  国連アジア太平洋経済社会委員会の分析※3によると、引上げ前の法定退職年齢より高齢の人口における労働力率はおおむね28〜36%で推移していました(1980〜2020年)。この労働力率は地域による違いが顕著で都市部では2020年時点で20%程度であるのに対し、農村部では50%前後に達しています。こうした相違は前述した年金給付水準の地域間格差によるもので、都市部の高齢者が年金制度の恩恵を受けて早期にリタイア可能であるのに対し、農村部の高齢者は多くが生計のために、農業や建設現場、清掃などの労働に従事し続けている状況を反映しています。  年金や退職金を受け取っている高齢者が法定退職年齢を超えて雇用される場合、雇用主との関係は労働法で厚く保護される「労働関係」ではなく、民法に基づく当事者間の対等な業務委託契約に類する「労務関係」へと転換されます。この転換により高齢就業者は、不当解雇時の退職金の免除や最低賃金・労働時間制限・残業代の不適用といった不利益を被る可能性があります。法定退職年齢の引上げが順調に進めば、こうした不利益を被る高齢者は減っていくかもしれませんが、それでも農村部を中心に多数存在する、低労働条件の高齢就業者への対応は大きな課題であり続けると予想されます。  さらに法定退職年齢の引上げによって、これまでよりも長期間労働市場に留まることになる高齢就業者の生産性を維持・向上させるための再教育プログラムの構築や、年齢に基づく雇用差別の厳格な是正への取組みが課題となってきます。また、現在失業率が高止まりしている若年層※4の雇用機会とのトレードオフの回避や、シニア社員が管理職・専門職ポストをより長く占めることによる若年・中堅層の労働意欲低下への対応も求められるでしょう。 【参考文献】 ※1 中国社会科学院(2019)『中国年金詳細計算報告2019−2050』 ※2 片山ゆき(2026)「公務員の年金は12万円、農村住民は4千円!?世界最大規模の中国の公的年金制度がはらむケタ違いの格差」TBS CROSS DIG with Bloomberg https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2548309?display=1 ※3 ESCAP(2024)“Labour Force Participation of Older Persons and Population Ageing in China: Trends,Challenges and Ways Forward” ※4 国家統計局の集計によると、2026年2月の16〜24歳層(学生を除く)の失業率は16.1%である 【P52-53】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第67回 「女性活躍推進法」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「女性活躍推進法」(以下、「本法」)について取り上げます。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で、2015(平成27)年9月に公布、2016年4月に全面施行されています。 ポジティブ・アクションを推進する法律  本法の趣旨を理解するためには、制定の背景を知ることがとても重要です。公布された年度に厚生労働省から出された『平成27年版 働く女性の実情』は、わが国は急速な人口減少局面を迎え将来の労働力不足が懸念されるなかで、国民のニーズの多様化やグローバル化等に対応しなければならず、人材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可欠としています。それにもかかわらず、就業を希望していながら働いていない女性が約300万人、第一子出産を機に離職する女性が約6割、離職してからの再就職は非正規労働者になる場合が多く、管理職に占める女性の割合は欧米・アジア諸国に比べて低いなど、働く場面において女性の力が十分発揮できる状況にないなどの課題があるとしています。こうした状況をふまえ、女性の個性と能力を十分に発揮できる社会を実現するために、本法が成立したとされています。  本法の特徴は、ポジティブ・アクションを推進することにあります。これは、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することで、結果の改善を求める施策を国や自治体、事業主に求めるものです。本法より前の1986(昭和61)年4月に雇用や定年、退職・解雇、労働時間等の男女間の“差別的な取扱いを禁止”する男女雇用機会均等法が施行され女性の雇用や処遇の改善に寄与してきましたが、よりいっそうの“結果の改善の推進”を図るのが本法といえます。  本法は2025(令和7)年度末までの有効期限10年間の時限立法※1でした。しかし、女性の活躍は徐々に進みつつあるものの課題が依然として存在するとして、2025年6月の改正(2026年4月1日施行)により(以下、「改正法」)、さらに10年間期限が延長※2されています。 行動計画の策定と情報公開がメイン  それでは、本法の概要をみてみましょう。本法では、国・地方公共団体・事業主の責務が明確化されています。  おもな内容としては、女性活躍を推進するための具体的な行動計画の策定(常用労働者数101人以上の事業主は義務※3)があげられます。これは、@女性の活躍に関する状況把握・課題分析(女性労働者の割合・男女の平均勤続年数差異・平均残業時間等の労働時間・女性管理職比率など)、A一般事業主行動計画の策定(計画期間や数値目標・取組内容・実施期間)・社内周知・公表、B都道府県労働局への行動計画届出、C数値目標の達成状況や取組みの実施状況の点検・評価の四つの取組みをPDCAサイクルのように回し、次期の取組みにつなげていくものです。  次のおもな内容としては女性の職業選択に資する情報の公表があげられます。情報の公表により、企業の女性活躍に対する姿勢を表し、求職者が企業選択の要素とすることができるようにするためのものです。常用労働者101人以上の事業主には、男女間賃金差異および女性管理職比率の公表を義務づけています。これらに加えて、101人以上の事業主には1項目以上、301人以上の事業主には2項目以上の公表が求められています※4。各企業の公開情報や取組み内容は「女性の活躍推進企業データベース※5」(厚生労働省)に詳しく掲載されています。  このほか、本法では女性活躍を推進するための支援措置について定められています。対象となる取組内容としては、女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主を認定する「えるぼし※6」認定制度が本法制定時からありましたが、改正法により、職場における女性の健康支援に取り組む企業を認定する「えるぼしプラス(3段階)」および「プラチナえるぼしプラス」の認定が追加されました。なお、改正法により女性活躍の推進にあたっての女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨が明確化されている点も押さえておきたいところです。 統計でみる課題  最後に、統計によって女性活躍推進の課題を確認したいと思います。「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」(第11回 2024年8月1日)の参考資料中「第5次男女共同参画基本計画の目標値の進捗状況」(図表)を参照すると、令和5年時点で到達すべき数値(目標値)に対して、25歳から44歳までの女性の就業率と、えるぼし認定企業数は達成していますが、事業主の情報公表項目にもなっている女性管理職比率は、課長相当職は令和2年よりも増えているものの令和5年目標値に対して未達、部長相当職にいたっては令和2年よりも減少している状態です。このほか、同資料に男女間賃金差異の経年比較がありますが、長期的には縮小傾向にあるものの男性の所定内給与額を100としたときの女性の給与額が同法施行年の2016年の72.9%に対して2023年は74.8%と大幅に改善したとはいいがたい状態です。また、女性の就業率は上昇しているものの、正規雇用比率は30歳代以降に低下し「L字」カーブ※7を描いているとの指摘もあり、本法制定の背景にあった課題は続いているといえそうです。  次回は「スポットワーク」について取り上げます。 ※1 時限立法……一定の目的を期間内に達成する必要がある場合に制定する法律。期限までに目的が達成されない場合は、延長される場合がある ※2 本法の期限は2036年度末まで延長されている ※3 本法制定時は常用労働者301人以上の事業主が義務だったが、改正により101人以上の企業に範囲が拡大 ※4 対象項目は、サイトの資料にわかりやすくまとめられている。https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001663919.pdf ※5 https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb ※6 認定要件の取得度に応じて、「えるぼし(3段階)」、「プラチナえるぼし」を認定。https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001671864.pdf ※7 女性の正規雇用比率が20歳代後半にピークを迎え、その後右肩下がりになるグラフを90度回転させると「L」に似ていることから、出産を契機に、女性が非正規雇用化することをさす 図表 第5次男女共同参画基本計画の目標値の進捗状況 項目 目標値(令和7年) 策定当時(令和2年) 最新値(令和5年) 等速で目標値を達成する場合、令和5年時点で到達すべき数値 部長相当職に占める女性の割合 ★1 12% 8.5% 8.3% 10.6% 課長相当職に占める女性の割合 18% 11.5% 13.2% 15.4% 係長相当職に占める女性の割合 30% 21.3% 23.5% 26.52% 25歳から44歳までの女性の就業率 ★2 82% 77.4% 80.8% 80.16% えるぼし認定の企業数 ★3 2,500社 1,209社 2,534社 1,983.6社 ★1 資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 ★2 資料出所:総務省「労働力調査(基本集計)当該年平均」 ★3 厚生労働省調べ 出典:第11回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会(参考資料) 【P54-55】 『70歳雇用推進事例集2026』のご案内  2021(令和3)年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業を確保する措置を講ずることが事業主の努力義務となりました。  本事例集では、シリーズ5冊目として、70歳以上の定年引上げ、70歳以上の継続雇用制度の導入、定年制の廃止を実施した事例を掲載しています。  各事例は、高齢社員の戦力化や賃金制度、安全衛生・健康管理などについて21社の好事例を掲載しています。 T 企業事例のポイント  70歳を超えて働ける環境づくりを進める企業等の先進的な取組みを紹介しています。  各事例は、1.雇用制度改定の背景、2.人事管理制度の概要、3.高齢社員戦力化のための工夫、4.健康管理・安全衛生・福利厚生、5.制度改定の効果、今後の課題を中心に、高齢社員が活躍できる実践ポイントをわかりやすく解説しています。 ★企業プロフィール、社員の年齢構成図を掲載し、定年・継続雇用制度の改定契機、課題と対応、改定後の効果を整理しています。  また、インタビュー形式により、制度改定のきっかけ、シニアの強み、健康管理、安全衛生、技能伝承、教育訓練、キャリア形成など、多様な現場の取組みを紹介しています。 U 検索方法のポイント  本事例集は読者が目的とする事例を円滑に検索できるよう「検索ガイド」、「2026 事例一覧」の2ページにて構成しています。 ★「検索ガイド」は、定年制と再雇用制度、賃金・評価制度、職場環境・技能伝承、健康管理・安全衛生、制度改定の効果等の5つから、多様な取組みを比較・検索できます。 V コラムの掲載  本事例集では、各企業の取組事例に加え、70歳以上の雇用推進に役立つ考え方や工夫を紹介する「コラム」を掲載しています。 コラム1 「職場環境の整備」 執筆:内田賢氏(東京学芸大学名誉教授)  高年齢者の就業が進むなか、転倒や墜落・骨折などの労働災害のリスクが高まっており、職場環境の改善は喫緊の課題となっています。労働安全衛生法の施行をふまえ、加齢にともなう身体機能の変化を考慮した作業環境の整備や、重大な労働災害を未然に防ぐための対策について解説しています。 コラム2 「高齢社員のキャリア自律」 執筆:田口和雄氏(高千穂大学経営学部教授)  高齢社員が第一線で活躍するためには、これまでの経験や能力を活かし、自らの役割や働き方を主体的に考える「キャリア自律」の視点が重要となります。企業において、高齢社員の意欲や強みを引き出し、継続的に活躍できる環境づくりを解説しています。 『70歳雇用推進事例集2026』はJEEDホームページから無料でダウンロードできます https://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html 70歳雇用推進事例集 検索 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 【P56-57】 BOOKS 「対話」に疲れた方々へ。新しい気づきや方法を得られる有用な一冊 職場の対話はなぜすれ違うのか 小林(こばやし)祐児(ゆうじ)著/光文社(光文社新書)/1078円  著者は、人的資源管理論・理論社会学を専門分野とし、労働・組織・雇用に関する多様な調査・研究を行っている。本誌2026(令和8)年2月号では、JEED主催のシンポジウムの講演録で誌面にご登場いただいている※1。  本書は、組織の課題を解決するものとして「対話」の必要性が重視される一方で、そのために増える面談や心を開かない部下への対応などから「対話疲れ」を感じているビジネスパーソンに向けた一冊。社会学や哲学などの幅広い知見、独自調査の結果などを駆使し、新しい視点でビジネス・コミュニケーション論をまとめている。  職場における「対話」の施策に違和感や疲労感を覚える人が増えている原因は、対話スキルにあるのではなく、人それぞれが持つ「コミュニケーション観」の違いが根底にあるのではないかと著者は説く。前半の「講義編」では、職場内の対話をより深く考えるために、「コミュニケーション観」を五つの型に分けて整理し、コミュニケーションの幅を広げるヒントを提示。後半の「実践編」では、そのヒントを日々のコミュニケーションに落とし込み、対話推進のために大切なツボを押さえて、有意義な対話を実現するための具体的な提案をしている。 「意識変革」ではなく、「行動マネジメント」で人と組織を変えていく 行動科学で生産性向上! 組織行動マネジメント 榎本(えのもと)あつし著/日本生産性本部生産性労働情報センター/2420円  少人数で効率的に成果を出せる組織は、どうしたら実現できるのか。人材育成に注力しても、「部下の自主性が育たない」、「社員の意識を変えたい」と悩む経営者や管理職は多い。  対して本書の著者は、「人の行動は、意識を変えなくても変えられる」として、社員の「意識や性格」に働きかける従来型マネジメントではなく、「行動」に直接アプローチする科学的な「組織行動マネジメント」を提示する。  自主的に動かない部下を責めて意識を変えようとするのではなく、応用行動分析学(ABA)をベースに、社員の行動をどのように変え、どのように定着させるかの手法について、理論と多数の事例を用いて伝授。さらに、この手法を用いた、望ましい行動ができる人材の育て方を、ていねいに伝えている。  望ましい行動ができる社員が育成されると、組織の成長につながっていく。また、職場の安全性の向上や、個人を責めない文化を醸成して「責められる不安」と「責める罪悪感」から解放された職場を育むことができるという。組織行動マネジメントの最大の魅力は、「誰でも、どの職場でも使える」という再現性の高さにあるそうだ。高齢者雇用にも活用したい。 すべての人事関係者に必要な知識や哲学、関連理論を体系的に整理し、実践的に解説 HRMナレッジ大系○Rで学ぶ 人事プロフェッショナル実践講座 山ア(やまざき)京子(きょうこ)・中島(なかしま)豊(ゆたか)・浅野(あさの)浩美(ひろみ)・酒井(さかい)之子(ゆきこ)編著/中央経済社/3520円  本書の編著者の一人、山ア京子氏は特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会(以下、「JSHRM」)の理事長、明治大学商学部特任准教授であり、本誌の編集アドバイザーも務めている。また、本誌2026年3月号では、JEED主催のシンポジウムの講演録で誌面にご登場いただいている※2。  本書は、JSHRMの設立25周年を記念して、有志が人事プロフェッショナルのために開発した「HRMナレッジ大系○R(★)」を解説する教科書として出版された。人事のプロに求められる知識や哲学、理論を共通言語としてとらえることを目的に開発された同体系を整理し、実践的に解説。近年、人事の仕事の重要性がいっそう高まるなか、多方面から注目されている。  人事の世界ですでに活躍中のさまざまなプロも、初めて人事部に配属された人も、このHRMナレッジ大系○Rに触れることで、自分のたずさわっている業務が人事全体のどこに貢献し、今後はどこへ向かうべきか、あるいは、さらに習得したい専門知識などが見渡せる。リスキリングやキャリア研修にも役立つという。  人事担当者、コンサルタント、社会保険労務士など、あらゆる人事関係者に好適の書である。 「ここで働きたい」と心から思える職場に!具体的なヒントが満載 介護施設・事業所が実践したい! 職員の働きがいを引き出すキャリアデザインの仕組みづくり −スキルアップ・ワークライフバランス・多様な働き方− 高瀬(たかせ)比佐子(ひさこ)著/第一法規/2750円  介護の現場では、60〜80代の高齢職員が活躍している。介護サービスを必要とする人が増えるなか、高齢職員の活躍はますます重要になってくるといわれるが、介護の現場では支える側の人材が不足している状況が続いている。  人材が足りないため、新人の育成に時間をかけられず、職員は業務に追われ、仕事に対する不満やストレスが蓄積される。著者は、このような悪循環を打破するためには、「単に人を集める」という視点を見直し、既存の職員を大切にして、「働きがい」を感じられる職場づくりが、課題解決のカギを握っていると訴える。  本書は、介護施設・事業所の経営者、管理者に向けて、忙しくて時間や金銭に余裕がない職場環境下でも、職員が「ここで働きたい」と心から思える施設・事業所をどうつくっていくかを考え、具体的な方法を提供する。  なぜ「働きがい」に焦点を当てるのか。その意味を確認したうえで、組織の風土づくりやキャリア支援、ワークライフバランス実現のための制度の整備、多様な人材の活躍などについて、各現場で実践するイメージがわきやすいように解説。資料として、職員の働きがいを高めるための多様なワークショップを紹介している。 がんや認知症を予防し、健康を支える筋肉の基本知識から最新情報まで解き明かす 筋肉はすごい 健康長寿を支えるマイオカイン 青井(あおい)渉(わたる)著/中央公論新社(中公新書)/1078円  体を動かす役割をしている筋肉は、体内でもっとも大きく、体重の約40%を占めているという。このような情報から始まる本書の「まえがき」によると、糖や脂肪を燃焼させる筋肉は近年、「マイオカイン」という物質をつくり出して全身の健康を支えていることも解明され、筋肉への注目度は医学、スポーツ科学、薬学、栄養学など幅広い分野でますます高まっているそうだ。  本書は、運動栄養学を専門とする著者が、人間にとって筋肉がいかに重要か、医学、栄養学、スポーツ科学の見地から解き明かし、筋力トレーニングが、がんや認知症の予防に効くことや、運動習慣がアンチエイジングに効果的なこと、また、筋肉から分泌されるマイオカインの働きなどについてわかりやすく解説。さらに、腸内の健康状態が筋肉に影響を及ぼし、また、筋肉を動かすことによって腸の状態も改善されるという、筋肉と腸の関係も説明。善玉マイオカインを増やす運動や、筋肉が喜ぶ食べ物、食べ方、サプリメントの賢い使い方など日常生活にすぐに取り入れたくなる習慣も満載である。  筋肉は、いくつになっても鍛えれば増やすことができる。本書の内容を職場で共有して、健康寿命の延伸につなげてみてはどうか。 ※1 JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202602/index.html#page=9 ※2 JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202603/index.html#page=9 ★「HRMナレッジ大系○R」は、特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会の登録商標です。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「SAFE(セーフ)アワード2025」を発表  厚生労働省は、「SAFEアワード2025」の結果を発表した。  「SAFEアワード」は、職場において実施されている労働災害防止や安全・健康の増進のための取組み事例を募集し、表彰することで、優良な取組みを進める職場の「見える化」を図り、取組みのいっそうの推進を図ることを目的として実施している。  表彰は、労働災害防止の取組み全般に関するものを対象にした「安全な職場づくり部門」、特に高年齢労働者の労働災害防止の取組みに関するものを対象にした「エイジフレンドリー部門」、複数の企業・団体等の連携による労働災害防止の取組みに関するものを対象にした「企業等間連携部門」の3部門。「サービス産業」と「製造業・建設業・運輸業等」の2業種から、部門ごとにゴールド賞、シルバー賞、ブロンズ賞を選出している。  2025(令和7)年度の「SAFEアワード」には228件の応募があり、エイジフレンドリー部門では、次の事業所がゴールド賞に選ばれた。 ●サービス産業「ゴールド賞」  社会福祉法人スマイリング・パーク(宮崎県)  「徹底的なDX化で腰痛・転倒ゼロへ。いつまでも健康で、楽しく働き続けられる企業を目指して」 ●製造業・建設業・運輸業等「ゴールド賞」  株式会社三五(さんご)(愛知県)  「シニア世代の体力測定・運動セミナー」 https://safeconsortium.mhlw.go.jp/award/ 厚生労働省 女性の健康支援に取り組む企業を認定する「えるぼしプラス」のデザインを決定  厚生労働省は、2026(令和8)年4月から「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づき、職場における女性の健康支援に取り組む企業を認定する「えるぼしプラス」認定および「プラチナえるぼしプラス」認定を新設した。新しい認定マークのデザインには、柴崎(しばざき)三郎(さぶろう)さん(医師・香川県在住)の作品が採用されている。  「えるぼし」は、女性の活躍推進に関する取組みの実施状況が優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度。このほど新設された「えるぼしプラス」認定と「プラチナえるぼしプラス」認定は、えるぼし認定およびプラチナえるぼし認定に女性の健康支援に関する基準を加えた新しい認定であり、認定基準として、「『女性の健康上の特性に配慮した休暇制度(多様な目的で利用することができる休暇制度及び利用目的を限定しない休暇制度を含み、年次有給休暇を除く。)』及び『女性の健康上の特性への配慮のために利用することができる制度(半日単位又は時間単位の有給休暇取得、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、在宅勤務のうちいずれか)』を設けていること」などを設定している。  認定マークは、これらの認定を受けた企業が広告やウェブサイトなどに使用することで、女性の健康支援に取り組む優良な企業であることのアピールや、企業イメージの向上などにつながることが期待されている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70383.html 厚生労働省 「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表  厚生労働省は、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表した。  同マニュアルは、2025(令和7)年5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」により、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場(「小規模事業場」)におけるストレスチェックの実施が義務化(施行期日は公布後3年以内に政令で定める日)されたことをふまえて作成された。  内容は、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の趣旨・目的、効果から実施義務について、ストレスチェック制度の実施に向けた準備、ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定、ストレスチェックの実施、医師の面接指導および事後措置など、ストレスチェックが円滑に実施されるように、小規模事業場の実態に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法を示したもの。厚生労働省では、「50人未満の事業場においてストレスチェックを実施する際は、このマニュアルを参照することが望まれる」としている。  同マニュアルの巻末には、定めておくとよいと考えられる事項を詳細に示した「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」や、関係法令・各種情報等の資料も掲載されている。 ◆「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001646587.pdf 東京都・東京都中小企業振興公社 「第6回 東京シニアビジネスグランプリ2025」受賞者を決定  東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社は、「第6回東京シニアビジネスグランプリ2025」の受賞者を決定した。  東京シニアビジネスグランプリは、これまでつちかった経験やスキルなどを活かして定年後も社会に貢献していきたいと望む人の起業を応援することを目的として実施されている、55歳以上を対象としたビジネスプランコンテスト。受賞者には賞金が授与され、ファイナリスト(10人程度)には一定の要件のもと起業支援資金が授与される。  今回で6回目を数える東京シニアビジネスグランプリには425人がエントリーし、書類審査、面接審査を経て10人のファイナリストを選定。2026(令和8)年1月にファイナリストによる決勝大会が行われ、特に優れたビジネスプランとして表彰された受賞者とビジネスプランは次の通り。 ●最優秀賞 大槻(おおつき)知史(ともふみ)氏  「フレイル予防支援AIプラットフォーム」 ●優秀賞 藤田(ふじた)博基(ひろき)氏  「認知症の記憶を呼び覚ます音楽×記事アプリ」 ●奨励賞 千田(せんだ)明生(あきお)氏  「マイクロガレージ:都市型バイクガレージ」 ●オーディエンス賞 大槻知史氏  東京シニアビジネスグランプリの詳細は、左記のホームページに掲載されている。 ◆「東京シニアビジネスグランプリ公式ホームページ」 https://www.tokyo-kosha.or.jp/station/grandprix/index.html 調査・研究 日本政策金融公庫 「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果 〜「全国中小企業動向調査・中小企業編」  株式会社日本政策金融公庫は、「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果を発表した。  2025(令和7)年12月において、正社員が「不足」と回答した企業割合は55.0%で、前回調査(57.7%)から2.7ポイント低下した。業種別にみると、倉庫業、運送業、情報通信業などで「不足」の割合が高くなっている。また、「非正社員」が「不足」と回答した企業割合は29.9%で、前回調査(33.4%)から3.5ポイント低下した。業種別にみると、宿泊・飲食サービス業、倉庫業、小売業などで「不足」の割合が高くなっている。  一方、2025年12月の正社員数が前年から「増加」した企業割合は25.6%で、前回調査(23.6%)から2.0ポイント上昇した。情報通信業、運送業、水運業などで「増加」の割合が高い。また、「非正社員」が前年から「増加」した企業割合は15.1%で、前回調査(15.7%)から0.6ポイント低下した。宿泊・飲食サービス業、倉庫業、小売業などで「増加」の割合が高くなっている。  次に、給与水準についてみると、2025年12月において正社員の給与水準が前年から「上昇」した企業割合は78.4%で、前回調査(75.2%)から3.2ポイント上昇した。上昇の背景をみると、「最低賃金の動向」(30.5%)の割合がもっとも高く、次いで「物価の上昇」(24.8%)となっている。 https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/tokubetu_260205.pdf 発行物 生命保険文化センター 『ライフプラン情報ブック―データで考える生活設計―』を改訂  公益財団法人生命保険文化センターは、小冊子『ライフプラン情報ブック―データで考える生活設計―』(B5判、カラー60ページ)を改訂した。  この冊子は、結婚、出産・育児、教育、住宅取得など、人生の局面ごとに、経済的準備にかかわるデータや情報をコンパクトかつ豊富に掲載するとともに、いざというとき(万一の場合や、病気・けが、老後、介護)に対する経済的準備を考えるうえで役立つ最新データなどを紹介し、生活設計を立てるための基本的な考え方や参考情報をまとめている。  今回の改訂では、特集「住宅の価格と住宅ローン」を新規に掲載したほか、「地域別最低賃金」、「育児のための各制度の有無及び最長利用可能期間別でみた事業所の割合」、「自己啓発やボランティア活動をしている人の割合」のデータを新規に掲載。加えて、「雇用保険制度の概要」、「出産・育児関係の給付」、「大学などの教育費をサポートする制度」、「公的年金制度の概要(遺族年金・障害年金・老齢年金)」、「公的介護保険制度の概要」などについて制度改正を反映し、最新情報を掲載している。  また、生命保険文化センターが実施している「2025(令和7)年度生活保障に関する調査」の最新データを反映し、そのほかのデータも最新化している。  一冊200円(税込・送料別)。申込みや冊子の詳しい内容については、左記ホームページへ。 https://www.jili.or.jp/press/2026/10344.html 【P60】 次号予告 6月号 特集 困っているのは年下上司? それとも年上部下? リーダーズトーク 小林江里香さん(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 研究部長) 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐藤弘太……日本商工会議所産業政策第二部労働担当課長 谷 圭一郎……日清食品ホールディングス株式会社グローバル人事部次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……明治大学商学部特任准教授、日本人材マネジメント協会理事長 JEEDメールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.html であることを確認のうえアクセスしてください。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 編集後記 ●今号の特集では、「シニア人材が中小企業を元気に!」と題し、中小企業におけるシニア人材の活用についてお届けしました。  シニア人材が持つ知識や技術、経験は、人手不足に悩む中小企業において、多方面の課題を解決する可能性を秘めています。本特集の総論にて内田賢氏が解説している通り、業務に精通している内部人材の場合は、事業・業務における勘所がわかっているので、さまざまな困難を乗り越えるノウハウを持っています。外部人材の場合は、自社にはない目線やノウハウといった新しい視点を会社にもたらしてくれます。こうした強みを、惜しみなく発揮してもらうためには、シニア人材が活き活きと働ける職場環境を、制度・マネジメントの両方の視点から整えていくことが肝要です。本企画を参考にしていただき、ぜひ多くの中小企業でシニア人材の活用に積極的に取り組んでいただければ幸いです。 ●連載「諸外国の高齢化と高齢者雇用」は今回で最終回となります。高齢化は日本だけではなく、世界各国でも進展しています。その一方で、各国の年金制度や雇用制度は、画一的なものではなく、それぞれの国に応じた形で進化しているのは興味深いところです。今後も、世界各国における高齢化や高齢者雇用の動向に注目です。 月刊エルダー5月号 No.558 ●発行日−−令和8年5月1日(第48巻 第5号 通巻558号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 石井伸明 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●編集委託 株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.363 日本各地に伝わる横笛を演奏者に合わせて製作 笛師(ふえし) 田中(たなか)康友(やすとも)さん(70歳) 「材料、音色、装飾―すべての仕上がりに妥協しないこと。それが、吹き手の演奏のしやすさにつながります」 能管(のうかん)や龍笛(りゅうてき)から篠笛(しのぶえ)まで伝統的な横笛を一手にになう  日本各地の祭り囃子(ばやし)には、それぞれの地域に伝わる、音階も装飾も異なる独自の横笛が使用されている。かつては各地に「笛師」と呼ばれる職人がいて、地元の笛をつくり伝えてきた。しかし、現在は高齢化が進み、各地でつくり手が途絶えつつある。そんななか、東京都大田区の笛師、田中康友さんのもとには、「地元に伝わる笛と同じものをつくってほしい」と全国から依頼が舞い込む。  田中さんは祭り囃子などで用いる篠笛に加え、能や歌舞伎などに用いる能管や雅楽(ががく)に用いる龍笛まで、日本の伝統的な横笛を一手に手がけている。また、洋楽にも合わせやすいドレミ音階の篠笛も開発した。これらの功績が評価され、2020(令和2)年度に大田区の伝統工芸士に、2025年度には東京マイスターに認定された。笛師としては初の快挙。伝統工芸士の認定を持つ笛師は、全国でもわずかしかいないという。 素材から調律まで妥協しない笛づくり  笛づくりの工程は素材づくりから始まる。冬に竹を切り出し、曲げの矯正や油抜き、殺菌などのために火あぶりしたうえで、3年間天日干しと陰干しをくり返す。こうして丹念に準備された素材を加工し、漆塗(うるしぬ)りや籐巻(とうま)きなどの装飾を施して完成させる。  田中さんの笛づくりの根幹をなすのが、管楽器の調律法に基づいた高精度の調律技術だ。材料の竹は、管の断面が正円でなく内径も均一ではないため、ただ穴を開けるだけでは正確な音の高さは得られない。管の内側を部分的に削ることで音階を整え、パソコンのチューナーソフトで確認しながら正確に仕上げていく。独自の手法により、複数の能管を同じ音の高さ・領域でつくることも実現した。  演奏者に合わせた調律を行うのも特徴だ。従来は、職人のつくった笛に合わせて吹くことを強いられていた。しかし田中さんは、奏者から吹き方や手指の特徴、さらには希望の音色や音楽の種類、演奏環境などを聞き取り、奏者と一緒に笛を仕上げていく。 趣味で演奏を楽しむ立場から独学で笛づくりの道へ  田中さんは祭りが盛んな大田区の大森地区に生まれ育ち、10歳のときに父親から篠笛をもらって練習を始めた。その後、神楽(かぐら)の演奏家に師事し、祭り囃子や神楽囃子を本格的に学ぶとともに、笛づくりの基本も教わった。  「10代後半から40代にかけて、東京中の祭り囃子を演奏して駆けずり回っていました」  笛づくりに本格的に取り組むきっかけは、冬の乾燥で自分の笛が割れたことだった。修理するうちに笛の仕組みに興味を持つようになった。都内の笛職人に「自分の吹き方に合わせた笛をつくってほしい」と頼むと、どこでも断られた。「笛に奏者が合わせるのではなく、奏者に合わせて笛をつくるべきではないか」という考えは、このころから芽生えていた。  大手機械メーカーの代理店にエンジニアとして勤務していたころ、取引先の楽器工場に出入りするなかで管楽器製造について学んだ。  「おかげで管楽器の調律方法がわかり、竹材を使って音の高さが正確な笛をつくる方法が見えてきました」  50歳を過ぎて、笛づくりに本気で取り組もうと早期退職。能管と龍笛については文献を手がかりに試作し、演奏家に試奏してもらい、指摘を受けてはつくり直すという作業をくり返しながら、笛師として認められる技術を磨き上げた。能管や龍笛のようなむずかしい笛をつくれるかどうかが、職人としての技量を判断する材料になるという。  現在、注文は1年待ちの状態。演奏者の立場で笛と向き合ってきたからこそ、演奏者の要望に応える笛づくりができるのだろう。  「完成した笛を演奏家に吹いてもらい、喜んでもらえることが何よりのやりがい」という田中さん。伝統の音色を守るため、今日も笛をつくり続ける。 笛工房和康 TEL:080(2045)8150 https://www.shinobuewako.com (撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英) 写真のキャプション 笛づくりでもっともむずかしいのが調律だという。管の内側を部分的に削って音を調節する技術は、「ここを削るとこうなる」と試行錯誤しながら独学で身につけた 笛に装飾するための「籐引き作業」。仕上がりをきれいにするため、籐の両側を面取りして、0.5mmの幅に揃えていく 笛の素材となる竹。冬に切り出し、火あぶりして厳選した竹を、3年かけて乾燥させ、割れずに残った竹だけを使う 笛づくりに欠かせない道具類。上の長い「ガリ棒」は管の内側を削るのに用いる。左下の小刀は穴を開けるのに使う。いずれも職人に特注してつくってもらっている パソコンのチューナーで音程を確認。メーターの青い領域に入るように調律していく。青い領域内の誤差なら、絶対音感の人でもわからないそうだ 製作途中の能管。素材に硬い煤竹(すすたけ)を使い、歌口(うたぐち)(息を吹き込む穴)と第一指孔の間に「喉」と呼ばれる竹管をはめ込むことで、独特の音色を生み出す 相模里(さがみさと)神楽(かぐら)に用いられる「相模能管」(上)と、雅楽に用いられる「高麗笛(こうらいふえ)」(下)。相模能管のつくり方は能管と同じだが、音の高さが異なる 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回の問題は、「空間認知力」と「発想力」を鍛え、脳に豊富な神経回路をつくり、認知予備力(脳に病的な変化が生じても、認知機能を低下させない予備力)を高める問題です。子どものころから頭を使っている人は認知症になりにくいこと、また、成人や高齢者でも同様だと考えられています。 第107回 四つの同じ図形に分割 目標 6分 ●が一つずつ入るように、下の図形を四つの同じ図形に分割してください。四つに分割した図形は、【例】のように、一つが5マスずつの図形になります。 【例】 @ A B C D E 脳に「発想の回路」をつくろう  今回の脳トレは、単なるパズルの問題のように見えますが、発想力を鍛えるトレーニングにもなります。最初は、どこから手をつけてよいのかわからず、図形をながめては、試行錯誤をくり返すことになるかもしれません。しかし、何度か挑戦しているうちに、「こういうときは、こうすればよい」という感覚が少しずつ身についてきます。  さらに、この問題の要領がわかってくると、問題を見た瞬間に答えがひらめくことがあります。これは偶然の思いつきではありません。条件を理解し、答えを導く思考の経路が脳の中にできあがった証であり、脳が活発に働いているサインです。いわば、経験を重ねることで、脳の中に「発想の回路」が形成されていくのです。  こうした脳トレの要点は、知識の量ではなく、「視点の切り替え」や「柔軟な発想」が求められるところにあります。同じ図形でも、見方を変えるだけで、突然解き方が見えてくることがあります。その瞬間の「ひらめき」は、脳が新しい結びつきをつくりだした証拠といえるでしょう。楽しみながら発想力を磨き、脳を活き活きと働かせましょう。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。人システム研究所所長、公立諏訪東京理科大学特任教授。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『何歳からでも間に合う 脳を鍛える方法』(徳間書店)など著書多数。 【問題の答え】 @ A B C D E 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2026年5月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 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いずれもJEEDホームページで全文を公開中ですので、ぜひご覧ください。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 1 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会 ハイヤー・タクシー業における 高齢者雇用推進に向けたガイドライン 2 一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会 指定自動車教習所業における 高齢者雇用推進に向けたガイドライン 〜高齢教習指導員のさらなる活躍のために〜 3 一般社団法人『民間事業者の質を高める』 全国介護事業者協議会 高齢人材が輝く 介護サービス業へ 〜ともに働き、ともに築く職場づくりに向けて〜 4 一般社団法人 日本コンタクトセンター協会 コールセンター シニア人材の雇用・活躍推進のためのガイドライン 〜人生100年時代のキャリア これからも/これからはコールセンターで活躍〜 〈お問合せ〉 高齢者雇用推進・研究部 産業別雇用推進課 TEL 043-297-9530 2026 5 令和8年5月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第5号通巻 558号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)〈編集委託〉株式会社労働調査会