高年齢者活躍企業コンテスト 受賞企業の軌跡 第5回 大和(だいわ)ライフネクスト株式会社(東京都港区)  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)と厚生労働省との共催で毎年開催している「高年齢者活躍企業コンテスト※」。高齢者雇用の推進に資する事例を広く募集し、優秀な事例を表彰しており、その内容は、毎年本誌で紹介しています。本連載では、かつてコンテストで厚生労働大臣表彰を受賞した企業を取材し、その後の取組みの進化・深化をレポートします。第5回は、2013(平成25)年度に最優秀賞を受賞した大和ライフネクスト株式会社を取材しました。 高齢者を積極的に採用して活躍を促進 健康寿命を延ばすための取組みもスタート 1 70歳を過ぎても働くことができる雇用制度を早くから構築  マンションや事業用建物などの不動産管理事業を展開する大和ライフネクスト株式会社(齋藤(さいとう)栄司(えいじ)代表取締役社長)は、「平成25年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰最優秀賞を受賞した。  同社では、マンション管理員として、当時から多くの高齢者が活躍していた。その背景には、定年年齢の65歳を超えても70歳まで嘱託社員として継続雇用可能な制度と、70歳以降でも働くことができる制度により、働く意志と体力があるかぎり、生涯現役で働くことを可能にする仕組みがあった。  大臣表彰受賞時の本誌掲載記事によると、当時のマンション管理員1804人中、60歳以上は正社員、嘱託社員を合わせて1586人で87.9%を占めていた。マンション管理員を中心とする70歳以上の従業員は、300人であった。  マンション管理員として採用される高齢者は未経験者が多いため、新規に採用された管理員が質の高いサービスを提供できるように、着任前後に充実した教育研修を重ねていることや、マンション管理現場における業務改善提案などを表彰する制度を設けていることが管理員のモチベーションと会社への帰属意識を高めていることなども高く評価されて、大臣表彰最優秀賞の受賞につながった。  2013(平成25)年度の受賞から13年、マンション管理員として働く人たちを中心に、同社の高齢者雇用のその後の軌跡を追った。 2 80歳まで働ける制度を整えて70歳以上も2571人が活躍中  同社は、1976(昭和51)年に創業し、マンション、ビル・商業施設、ホテルなどの建物管理サービスを手がけてきた。2015年には、同社と同様に、不動産管理業務を展開する株式会社ダイワサービスと経営統合して、新生「大和ライフネクスト株式会社」として現在に至る。同社の管理する分譲マンション数は、4465棟(28万5173戸)となっている(2025〈令和7〉年3月31日現在)。  マンション管理員以外の正社員、嘱託社員を含む同社の従業員数は、8760人(2026年1月1日現在)。うち60歳以上は4914人で、全体の56.1%を占めている。60〜64歳が807人、65〜69歳が1536人、70歳以上が2571人である。  60歳以上の従業員のうち、マンション管理員は3567人(60歳以上の72.6%)となっている。65歳以上は、ほとんどがマンション管理員であり、13年前の大臣表彰受賞時に比べ、70歳以上の従業員が大幅に増えていることが大きな変化として見てとれる。  定年年齢65歳は大臣表彰受賞時から変わりはないが、マンション管理員の定年後の継続雇用制度は、2019年に「65歳定年後、嘱託社員として75 歳まで雇用を延長する」と改定された。その先も働くことを希望する者は、会社との合意を経たうえで、80歳まで働くことが可能とした(ただし、労働時間は週に20時間未満とする)。  雇用の上限年齢を80歳としたことについて、同社コーポレート本部人事部の土屋(つちや)浩史(ひろふみ)部長は、次のように説明する。  「少子高齢化が進展するなか、シニア層の方々の仕事の選択肢が増えて、採用競争が激しくなってきたことが一つ。また、健康寿命が延びたことによってリタイアする年齢にも変化が生じ、当社で働いているシニアとお客さまの双方から、まだリタイアせず管理員を続けてほしい、といった声が聞かれるようになったという背景がありました。一方で、70歳を超えると、健康面で個人差が大きくなってきますので、75歳を過ぎてからは週の労働時間を20時間未満とし、継続して働きたいという意欲がある方は会社と面談のうえ、双方のニーズが合えば80歳まで継続して働くことが可能な制度としました」  この制度のもと、75歳超になっても働く管理員が増えたことが、70歳以上の従業員数の増加につながっているといえるだろう。同社の現在の最高年齢者は80歳である。 3 充実した研修制度、スマホを活用した情報発信で一人ひとりの活躍を支援  同社ではマンション管理員として、高齢者を積極的に採用している。65歳までの応募者は正社員として採用していることから、好条件の同社を選んで応募する人も少なくないそうだ。ただ、定年退職後の仕事として応募する人が多いため、ここ数年、その年齢が上がってきている。また、一年間に500人ほどのマンション管理員が入社するが、その多くが未経験者であり、65歳、70歳過ぎの未経験者も採用している。  同社では大臣表彰受賞の以前から、マンション管理員を「フロントマネージャー」と呼んでいる。マンション管理の現場は、一人で勤務する場合が多く、自らの判断と責任でサービスを提供するスピード感が求められるため、管理サービスの最前線で、現場の責任者として業務にあたってほしいという意図が込められているという。そのため年齢にかかわらず、よりよいサービスを提供したいという思いを持つ人材を採用し、教育研修やモチベーションの向上に注力していることも、大臣表彰受賞時の同社の取組みの特筆すべき点であった。  それらはいまも続けられ、現在では専任の教育研修部門を設けて、着任前研修から、現地研修、フォロー研修など、最新の事業を反映した研修プログラムを作成し、現場に精通した講師が研修を実施。新規に採用された管理員が着任直後から高品質のサービスを提供できるように、具体的には、入社後は7日間をかけて、派遣前研修・ガイダンス(座学)、先輩マンション管理員との研修(実務研修)、配属先マンションで専属講師からマンツーマンでの現場研修(実務研修)を実施。入社から2〜3カ月後には、実務研修の専門講師によるフォロー研修を行う。  さらに、近隣エリアの担当社員と管理員とで月一回程度会議を開催し、情報共有や必要に応じたサポートを行う。また、何かあれば電話で相談を受けるなどの体制を整えている。  マンション管理員には、マンションごとに会社から業務用のスマートフォンを配備している。出退勤管理を行うことを目的として始めたものだが、2021年度からスマートフォン向けアプリを活用して、社内報の発信を開始。業務情報をはじめ、健康や安全に関する情報も随時発信し、情報の共有や業務知識のアップデートを促進している。当初は、管理員にスマートフォンの使い方をマンツーマンで教える取組みも行ったそうだが、いまではほとんどの管理員がスマートフォンの使い方を熟知し活用している。労働災害防止に向けた事例を動画で伝える発信も行っていて、転倒事例などの動画がよく見られているそうだ。  また、マンション管理員のモチベーション向上について、土屋部長は次のように話す。  「管理員が一人で勤務するマンションが多く、管理員同士の横のつながりがつくりにくい側面がありますが、当社では、同じエリアで働く管理員の方々で集う機会を設けています(45ページ写真)。また、それぞれが工夫した業務改善や住民の方々に喜ばれた取組み、ちょっといい話などを管理員から募集し、『KAGAYAKI1グランプリ』として表彰する制度があります。これが結構注目されていて、グランプリを目標にしている方もおり、業務へのモチベーションを高めることにつながっていると思います。こうした取組みや、横のつながりが持てるようにすることはつねに大事にしています」  高齢期に未経験から管理員という仕事を選んだ動機は、収入のためや、人と接する仕事がしたいなどさまざまだが、「よく聞くのは、社会とつながりを持っていたい、社会に貢献できる自分でありたい、という方が多く、その姿勢もモチベーションアップになっていると思います。シニア層の管理員の方々と話をすると、社会とつながり続けたい、働き続けたいという意欲が高い方が多く、そういう思いで働かれ、いろいろな工夫をされたりして、感心することが多くありました」と土屋部長。また、「管理員をしていると、マンションに住まわれている方々と交流があり、『ありがとう』という言葉をいただけたり、お子さんたちとあいさつを交わしたりする瞬間があります。『管理人さん』ではなく、『〇〇さん』と名前で呼ばれるなど、『あいさつしてくれてうれしかった』という話をよく聞きます。マンション管理員は、お客さまの暮らしを守る大事な仕事ですから、社会的な価値をさらに高め、広めていきたいと考えています」と力を込めて語った。 4 大学と連携した健康寿命延伸を目的とする運動プログラム  同社では、「大和ライフネクスト健康宣言」を制定して健康経営の取組みに注力し、2020年から、日本健康会議が認定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に選定され、「健康経営優良法人2022」では、大規模法人部門の上位500社に付与される「ホワイト500」に認定されている。  マンション管理員は60歳以上の高齢者が多いが、健康維持のためにこの仕事を選んだという人がいるなど、もともと健康に対する意識の高い人が多いという。同社ではこれまで、マンション管理員をはじめとする高齢従業員に対して、健康の維持に注力した取組みを行ってきた。健康診断を通じた取組みを重視し、産業医・保健師と連携して健康管理体制を構築して、健診結果に基づいて産業医や保健師が積極的に介入し、二次検査の受診勧奨、治療状況の確認など個別の事後フォローを徹底して、病気の早期発見、治療につなげている。また、マンション管理員については、現場での安全衛生対策と、無理をさせない働き方の徹底にも重点を置いている。  マンション管理員のおもな仕事は、マンション共用部分の清掃、館内巡回、受付、事務管理などで、例えば清掃をするときにわずかな段差につまずいて転倒する、ふり向いたときに何かにぶつかるといった労働災害が生じている。こうした労働災害を抑止するため、事故発生時は案件ごとに問題点の発見、再発防止策および対策後のリスク評価などを行っている。さらに2026年4月から、新たな取組みを開始する計画があることを土屋部長が話してくれた。  「いきいきと仕事をすることができているシニア層の方々により長く活躍してほしいと願い、健康寿命を延ばす取組みを健康経営の一環としてスタートする予定です。筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センターと『マンション管理業を行う高齢社員の健康維持・管理に資する体力向上プログラムの開発』をテーマとした共同研究を行い、当社のシニアマンション管理員の方々の健康に関する優れた部分と課題、また、当社のマンション管理の業務特性をふまえて、体づくりのプログラムの検討・開発を進めてきました。気軽にできるトレーニングプログラムで、業務に支障のない時間や自宅での隙間時間などに、強制ではないのですがまずはマンション管理員に周知して実施を呼びかけていきます」  この取組みは、加齢による運動機能低下をフォローするもので、転倒等による労働災害発生件数の削減につなげ、2030年までに60歳以上のマンションをはじめとする建物勤務者のけが(労働災害を含む)による延べ欠勤日数の削減を、2023年度比マイナス10%を視野に取り組む考えだ。  「働きながら健康寿命を延ばすことは、マンション管理員だけでなく、当社のお客さま、また、社会にとって価値のある取組みになると思いますので、今後、ほかの仕事をする従業員や、社内全体、あるいはグループ会社にも広められるよう、力を入れて進めていきたいと考えています」と土屋部長。今後の展開が気になる取組みである。 ※ 2020(令和2)年度までの名称は「高年齢者雇用開発コンテスト」 写真のキャプション 大和ライフネクスト株式会社本社(写真提供:大和ライフネクスト株式会社) コーポレート本部人事部の土屋浩史部長(写真提供:大和ライフネクスト株式会社) 同じエリアで働くマンション管理員の交流が横のつながりをつくっている(写真提供:大和ライフネクスト株式会社)