BOOKS 「対話」に疲れた方々へ。新しい気づきや方法を得られる有用な一冊 職場の対話はなぜすれ違うのか 小林(こばやし)祐児(ゆうじ)著/光文社(光文社新書)/1078円  著者は、人的資源管理論・理論社会学を専門分野とし、労働・組織・雇用に関する多様な調査・研究を行っている。本誌2026(令和8)年2月号では、JEED主催のシンポジウムの講演録で誌面にご登場いただいている※1。  本書は、組織の課題を解決するものとして「対話」の必要性が重視される一方で、そのために増える面談や心を開かない部下への対応などから「対話疲れ」を感じているビジネスパーソンに向けた一冊。社会学や哲学などの幅広い知見、独自調査の結果などを駆使し、新しい視点でビジネス・コミュニケーション論をまとめている。  職場における「対話」の施策に違和感や疲労感を覚える人が増えている原因は、対話スキルにあるのではなく、人それぞれが持つ「コミュニケーション観」の違いが根底にあるのではないかと著者は説く。前半の「講義編」では、職場内の対話をより深く考えるために、「コミュニケーション観」を五つの型に分けて整理し、コミュニケーションの幅を広げるヒントを提示。後半の「実践編」では、そのヒントを日々のコミュニケーションに落とし込み、対話推進のために大切なツボを押さえて、有意義な対話を実現するための具体的な提案をしている。 「意識変革」ではなく、「行動マネジメント」で人と組織を変えていく 行動科学で生産性向上! 組織行動マネジメント 榎本(えのもと)あつし著/日本生産性本部生産性労働情報センター/2420円  少人数で効率的に成果を出せる組織は、どうしたら実現できるのか。人材育成に注力しても、「部下の自主性が育たない」、「社員の意識を変えたい」と悩む経営者や管理職は多い。  対して本書の著者は、「人の行動は、意識を変えなくても変えられる」として、社員の「意識や性格」に働きかける従来型マネジメントではなく、「行動」に直接アプローチする科学的な「組織行動マネジメント」を提示する。  自主的に動かない部下を責めて意識を変えようとするのではなく、応用行動分析学(ABA)をベースに、社員の行動をどのように変え、どのように定着させるかの手法について、理論と多数の事例を用いて伝授。さらに、この手法を用いた、望ましい行動ができる人材の育て方を、ていねいに伝えている。  望ましい行動ができる社員が育成されると、組織の成長につながっていく。また、職場の安全性の向上や、個人を責めない文化を醸成して「責められる不安」と「責める罪悪感」から解放された職場を育むことができるという。組織行動マネジメントの最大の魅力は、「誰でも、どの職場でも使える」という再現性の高さにあるそうだ。高齢者雇用にも活用したい。 すべての人事関係者に必要な知識や哲学、関連理論を体系的に整理し、実践的に解説 HRMナレッジ大系○Rで学ぶ 人事プロフェッショナル実践講座 山ア(やまざき)京子(きょうこ)・中島(なかしま)豊(ゆたか)・浅野(あさの)浩美(ひろみ)・酒井(さかい)之子(ゆきこ)編著/中央経済社/3520円  本書の編著者の一人、山ア京子氏は特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会(以下、「JSHRM」)の理事長、明治大学商学部特任准教授であり、本誌の編集アドバイザーも務めている。また、本誌2026年3月号では、JEED主催のシンポジウムの講演録で誌面にご登場いただいている※2。  本書は、JSHRMの設立25周年を記念して、有志が人事プロフェッショナルのために開発した「HRMナレッジ大系○R(★)」を解説する教科書として出版された。人事のプロに求められる知識や哲学、理論を共通言語としてとらえることを目的に開発された同体系を整理し、実践的に解説。近年、人事の仕事の重要性がいっそう高まるなか、多方面から注目されている。  人事の世界ですでに活躍中のさまざまなプロも、初めて人事部に配属された人も、このHRMナレッジ大系○Rに触れることで、自分のたずさわっている業務が人事全体のどこに貢献し、今後はどこへ向かうべきか、あるいは、さらに習得したい専門知識などが見渡せる。リスキリングやキャリア研修にも役立つという。  人事担当者、コンサルタント、社会保険労務士など、あらゆる人事関係者に好適の書である。 「ここで働きたい」と心から思える職場に!具体的なヒントが満載 介護施設・事業所が実践したい! 職員の働きがいを引き出すキャリアデザインの仕組みづくり −スキルアップ・ワークライフバランス・多様な働き方− 高瀬(たかせ)比佐子(ひさこ)著/第一法規/2750円  介護の現場では、60〜80代の高齢職員が活躍している。介護サービスを必要とする人が増えるなか、高齢職員の活躍はますます重要になってくるといわれるが、介護の現場では支える側の人材が不足している状況が続いている。  人材が足りないため、新人の育成に時間をかけられず、職員は業務に追われ、仕事に対する不満やストレスが蓄積される。著者は、このような悪循環を打破するためには、「単に人を集める」という視点を見直し、既存の職員を大切にして、「働きがい」を感じられる職場づくりが、課題解決のカギを握っていると訴える。  本書は、介護施設・事業所の経営者、管理者に向けて、忙しくて時間や金銭に余裕がない職場環境下でも、職員が「ここで働きたい」と心から思える施設・事業所をどうつくっていくかを考え、具体的な方法を提供する。  なぜ「働きがい」に焦点を当てるのか。その意味を確認したうえで、組織の風土づくりやキャリア支援、ワークライフバランス実現のための制度の整備、多様な人材の活躍などについて、各現場で実践するイメージがわきやすいように解説。資料として、職員の働きがいを高めるための多様なワークショップを紹介している。 がんや認知症を予防し、健康を支える筋肉の基本知識から最新情報まで解き明かす 筋肉はすごい 健康長寿を支えるマイオカイン 青井(あおい)渉(わたる)著/中央公論新社(中公新書)/1078円  体を動かす役割をしている筋肉は、体内でもっとも大きく、体重の約40%を占めているという。このような情報から始まる本書の「まえがき」によると、糖や脂肪を燃焼させる筋肉は近年、「マイオカイン」という物質をつくり出して全身の健康を支えていることも解明され、筋肉への注目度は医学、スポーツ科学、薬学、栄養学など幅広い分野でますます高まっているそうだ。  本書は、運動栄養学を専門とする著者が、人間にとって筋肉がいかに重要か、医学、栄養学、スポーツ科学の見地から解き明かし、筋力トレーニングが、がんや認知症の予防に効くことや、運動習慣がアンチエイジングに効果的なこと、また、筋肉から分泌されるマイオカインの働きなどについてわかりやすく解説。さらに、腸内の健康状態が筋肉に影響を及ぼし、また、筋肉を動かすことによって腸の状態も改善されるという、筋肉と腸の関係も説明。善玉マイオカインを増やす運動や、筋肉が喜ぶ食べ物、食べ方、サプリメントの賢い使い方など日常生活にすぐに取り入れたくなる習慣も満載である。  筋肉は、いくつになっても鍛えれば増やすことができる。本書の内容を職場で共有して、健康寿命の延伸につなげてみてはどうか。 ※1 JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202602/index.html#page=9 ※2 JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202603/index.html#page=9 ★「HRMナレッジ大系○R」は、特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会の登録商標です。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します