【表紙】 令和8年6月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第6号通巻559号 高齢者雇用の総合誌 6 2026 特集 困っているのは年下上司? それとも年上部下? リーダーズトーク 困りごとが気軽に相談しやすい 安心して長く働ける職場環境の整備を 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 小林江里香 【前頁】 〜65歳超雇用推進助成金のご案内〜 65歳超継続雇用促進コース 65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、66歳以上への継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施する事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 @労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、過去最高を上回る年齢に引上げること A改正前後の就業規則を労働基準監督署等へ届け出ること B1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること C高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※)の実施 支給額 ●定年の引上げ等の措置の内容、60歳以上の対象被保険者数、定年の引上げ年数に応じて240万円まで支給。 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(賃金制度、健康管理制度等)を実施した事業主の皆様を助成します。 支給対象となる主な措置(注)の内容 @高年齢者に係る賃金、人事処遇制度の導入改善 A労働時間制度・在宅勤務制度・研修制度・健康管理制度の導入・改善 (注)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 ●措置の内容に応じて最大60万円(中小企業事業主以外は45万円)支給。 ●措置の実施に必要な機器等の導入経費(上限50万円)に60%(中小企業事業主以外は45%)を乗じた額を支給。 高年齢者無期雇用転換コース 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 @高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※)を1つ以上実施し、無期雇用転換制度を就業規則等に規定していること A無期雇用転換計画に基づき、無期雇用労働者に転換していること B無期雇用に転換した労働者に転換後6カ月分(勤務した日数が11日未満の場合は除く)の賃金を支給していること C雇用保険被保険者を事業主都合で離職させていないこと 支給額 ●対象労働者1人につき40万円 (中小企業事業主以外は30万円) (※)高年齢者雇用管理に関する措置とは、55歳以上の高年齢者を対象とした、次のいずれかに該当するもの(a)職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等、(b)作業施設・方法の改善、(c)健康管理、安全衛生の配慮、(d)職域の拡大、(e)知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進、(f)賃金体系の見直し、(g)勤務時間制度の弾力化 JEED ホームページ「助成金」 https://www.jeed.go.jp/elderly/subsidy/index.html いつでも、どこでも助成金の電子申請 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に申請いただいている65歳超雇用推進助成金が、e-Gov電子申請を利用して申請できます。 電子申請って? 現在、紙によって行われている申請などの行政手続を、インターネットを利用して自宅や会社のパソコンを使って行えるようにするものです。 e-Govって? デジタル庁がインターネット上で運営する行政サービスの総合窓口です。状況・分野・所管行政機関の条件から手続を探して、行政手続の申請・届出を行うことができます。 電子申請のメリットは? ●24時間365日いつでも手続ができます。(申請期限があります) ●インターネット経由でどこからでも申請できます。 ●手続はマイページで管理され、処理状況や通知等を確認できます。 初めて助成金を申請する場合など、助成金制度や要件に関して不明な点がある場合は、JEED各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪支部は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします。そのほかに必要な条件、要件等もございますので、詳しくはホームページ(https://www.jeed.go.jp)をご覧ください。 なお、e-Govの利用方法については「e-Govを初めてお使いの方へ」(https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/beginner)をご確認ください。 【P1-4】 Leaders Talk No.133 困りごとが気軽に相談しやすい 安心して長く働ける職場環境の整備を 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 小林江里香さん こばやし・えりか 専門は社会老年学。博士(社会心理学)。東京都健康長寿医療センター研究所研究部長、同研究所の「社会参加とヘルシーエイジング研究チーム」チームリーダーを務める。日本老年社会科学会理事。  70歳までの就業確保措置を努力義務とする、改正高年齢者雇用安定法の施行から5年が経過しました。70歳までの雇用を実現している企業は着実に増えていますが、社会貢献事業を含む創業支援等措置については決して事例は多くないのが実情です。今回は社会老年学の視点から、高齢者の社会参加を専門に研究をされている小林江里香さんにご登場いただき、雇用・就業を含む高齢者の社会参加の課題などについてお話をうかがいました。 リスキリングの土台となる 意欲やモチベーションを高める環境整備が重要 ―2021(令和3)年に70歳までの就業確保が企業の努力義務となり5年が経過しました。この間の高齢者雇用・就業を取り巻く社会環境の変化をどのようにとらえていますか。 小林 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」(厚生労働省)によると、70歳までの就業確保措置実施済の企業は3割を超えていますが、産業によって差があります。「農、林、漁業」、「建設業」、「運輸、郵便業」では4割を超えているのに対し、「情報通信業」は2割を切っています。例えばIT企業のように技術革新のスピードが速い企業は新しい知識を持つ若い人を採用したいと考えますし、高齢者をどのように活用していけばよいのか悩んでいる面もあると思います。  また、70歳までの就業確保措置では業務委託や企業の社会貢献事業に参加することも認めていますが、導入しているところは非常に少ないというのが実態です。私は高齢者の社会参加を研究テーマとしていることもあり、高齢者の社会貢献事業への参加に企業がどのように関与していくのかを期待して見ていますが、現段階では事例も少なく、なかなか踏み切れていないように思われます。  また、働く高齢者が増加している一方で、地域活動をしている方からは、人手不足に加え、活動のにない手の高齢化が深刻化しているという声もよく聞きます。昔は専業主婦の方が町会や地域行事のにない手だった時期もありますが、いまは働く女性も増えています。さらに高齢者も働くようになり、地域活動のにない手が不足するなかで、課題も山積しています。例えば、見守りが必要な一人暮らしの高齢者が増えており、自治体が住民と一体となって高齢者の介護予防活動を推進していますが、世話役となる人材が地域でも不足しているという課題もあります。 ―高齢者が働くことの社会的意義についてはどのように考えていますか。 小林 働く高齢者を増やすという政策自体はもはや不可避といえます。高齢化率の上昇や労働力不足もあり、65歳になったら一律に支えられる側に回ると社会保障制度は維持できなくなると思います。ただし、70歳までの雇用を推進するうえでは、悩みを感じている会社もあるのではないでしょうか。  70歳まで、ただ働くのではなく、能力を発揮し、会社に貢献してもらう必要があります。業務の変化に応じて新しいスキルを身につけるリスキリングの重要性が増し、制度や支援体制も整備されてきていますが、新しいスキルを身につけるにしても、その前提となる働く意欲やモチベーションを高めるための環境づくりが重要です。  特に同じ企業で働き続けている場合、60歳を過ぎると、役職がなくなったり、収入が減ることが、働く意欲に影響するかもしれません。あるいは、年齢が高いのであまり尊重されなくなったと感じる人、若い人とうまくコミュニケーションがとれないために適応できないと悩む人もいると思います。うまくやっていくには若い人だけではなく、高齢者の意識も変えないといけない面もあります。昔であれば年齢による上下関係が重視されましたが、いまは年下上司・年上部下の関係も増えており、コミュニケーションのとり方も課題だと思います。 活き活きと働ける環境を整えることが健康の維持・向上につながる ―働く意欲に関しては、健康への不安も考えられます。 小林 健康については個人差も大きいですが、加齢による体力低下のほか、視力や聴力も衰えてきます。また、高齢になると家族の看護や介護の問題も発生しますし、そうした変化によって、安心して仕事に打ち込めない状況も出てくると思います。そこで困りごとが発生したら気軽に相談できる仕組みがあることが重要です。日ごろから話しやすい雰囲気の職場であれば、問題が深刻化する前に解決することができます。例えば「耳が左側だけ聞こえにくい」と事前に会社に話してくれれば、右側の耳に話しかけるといった配慮をすれば解決することもでき、体の状態によって適切な業務への配置も可能になると思います。いずれにしても、本人から何が問題であるかを伝えてくれないと、会社も同僚も気づけないので、本人が話しやすい環境を整えることが大切です。「体調面で不安があることを知られたら、雇用を打ち切られるかも」と思っていたら本人はいい出せません。  もちろん高齢者だけではなく、若い人のなかにもさまざまな事情を抱えている人はいます。高齢者のためだけではなく、すべての社員が相談しやすく、柔軟に対応できる仕組みをつくることが大事だと思います。  また、「働くこと自体が健康によい影響を与える」という見解もありますが、必ずしもそうではなく、働くことに本人がどういう意識で臨んでいるかによって健康への効果は異なります。例えば、若い人であっても、働くことを負担に感じストレスを溜めてしまえば、心理的にも身体的にも悪影響を及ぼします。高齢者もそれは同じです。やりがいを感じて働ける、安心して働けることが健康によい影響を与えると思います。嫌々働くのではなく、活き活きと働くことができれば健康維持につながり、生産性も上がるでしょう。 ―高齢者のなかには経済的不安から働いている人も少なくないと思われます。 小林 健康もそうですが、調査をしていて経済的問題も個人差が大きいと感じています。資産も十分ではなく、年金だけでは生活が維持できず、働かざるを得ない高齢者は少なくありません。昔は年金が少ない親は子ども世帯と同居し、扶養してもらうこともありましたが、いまは子ども世帯も経済的に厳しく、同居して扶養するという考え方も変化し、高齢者自身の経済的自立が昔よりも求められています。こうした背景のなかで「少しでも収入が得られるなら働きたい」という高齢者が増えていることもあり、安心して働ける環境はとても重要となります。 「生涯現役」という価値観を拡大し退職後の活動を見すえた情報提供を ―気軽に相談でき、やりがいや働きがいを感じられる職場づくりは、働く高齢者にとって豊かな老後を過ごすうえでも大事ですね。 小林 「生涯現役」という考え方が、有償労働を重視しすぎではないかという懸念もあります。雇用されている人はいつか退職する年齢がきます。仮に70歳で仕事を辞めても人生が終わるわけではなく、その先の時間も充実した生活を送ることが必要になります。アメリカの老年学者であるロバート・バトラーは、「プロダクティブ・エイジング」(高齢者を経験や知識を活かして社会に貢献する「創造的な主体」と位置づける考え方)を提唱し、「有償労働にかぎらず、ボランティアや家事・介護など、無償労働によって社会に多様な貢献をしていることに目を向けるべき」といっています。「生涯現役」という価値観は、退職後の無償労働にまで広げて考えるべきではないでしょうか。  そのためには、「仕事を辞めてから何をやるかを考える」のではなく、働いているうちから仕事以外にも大きく関心を広げ、地域活動や各種のボランティア活動に試験的に参加するなど、自分のやりたいことや楽しみを見つけておくことが重要だと思います。 ―退職後の活動に向けて企業として支援できることはありますか。 小林 アクティブな人は企業が何もしなくても、自身で夢や目標を見つけられますが、そういう人は一握りです。自ら探す人は少なく、だれかに誘われたからやってみようという人が多いので、企業が退職後の活動について考える機会を提供することはすばらしいと思います。さまざまな活動事例の情報提供だけでも有益だと思います。仕事以外のプライベートの少しの時間を使って参加してみれば、リフレッシュにもなり、仕事もがんばろうという気持ちになれるのではないでしょうか。 ―小林先生は、JEEDの「中高年齢障害者の雇用継続支援及びキャリア形成支援に関する研究」の研究委員を務めています。得られた研究の成果について教えてください。 小林 障害のある中高年者が長く働き続けるためにどういう支援が必要かを明らかにすることを目的に、『取組事例から学ぶ「中高年齢障害者の雇用継続・キャリア形成支援」のポイント』※をまとめました。私は障害者雇用の専門家ではありませんが、障害のある方の身体機能や認知機能の低下は、障害のない人に比べて早く現れたり、強く出たりする傾向があり、その人たちのニーズに沿った環境整備は、一般の高齢者雇用でも役立つのではないかと強く感じました。腰痛の際の対応や家族を介護しているときのストレスへの対応事例などもまとめられており、障害者にかぎらず幅広い領域で活用できます。外部の支援機関との連携についても詳しく触れられており、自社の高齢者への対応でもこの手引きは非常に参考になるのではないでしょうか。 (聞き手・文/溝上憲文、撮影/中岡泰博) ※JEED ホームページでご覧になれます。 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/kyouzai88.ht 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト:水穂真善/アフロ 2026 June No.559 特集 6 困っているのは年下上司?それとも年上部下? 7 特別インタビュー エイジレス社会の実現に向け 「年下上司・年上部下」が活躍できる環境を 青山学院大学 名誉教授 山本寛 11 解説1 年下上司の困りごと ―年上部下マネジメントのポイント― 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー 竹野潤 15 解説2 年上部下の困りごと ―心理的安全性を高め、経験を資産に変える職場づくり― アチーブ人財育成株式会社 代表取締役社長、NPO法人フィンランド式人材育成研究所 理事長 諌山敏明 19 コラムメール相談事例で学ぶ年上部下の悩みごと 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義 1 リーダーズトーク No.133 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長 小林江里香さん 困りごとが気軽に相談しやすい 安心して長く働ける職場環境の整備を 21 立川談慶の人生100年時代の歩き方 【第5回】 だから教えねえほうがよかった 22 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 【第2回】 70歳雇用推進プランナーがやってきた! 28 新連載 江戸時代にもあった「仕事と介護の両立問題」 〜目からウロコの高齢者介護史〜 【第1回】 江戸時代の武士は介護休業をとっていた! ―「サムライケアラー」を支えた制度― ア井将之 30 高齢者の職場探訪 北から、南から 第166回 京都府 株式会社セイワ工業 34 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第116回 公益財団法人日本生産性本部 参与 小林次男さん(75歳) 36 高年齢者活躍企業コンテスト 受賞企業の軌跡 【最終回】 株式会社きむら 40 知っておきたい労働法Q&A 《第95回》 高年齢者就業確保措置、問題社員の対応について 家永勲/木勝瑛 44 いまさら聞けない人事用語辞典 第68回 「スポットワーク」 吉岡利之 46 特別寄稿 中小企業における高年齢者の採用と戦力化 ―「50歳代正社員」と「60歳代正社員」との比較― 玉川大学 経営学部 教授 大木栄一 50 TOPIC1 新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課 52 TOPIC2 シニア就業に関する実態調査 株式会社マイスター60 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.364 100年続く技術を礎に 表具の新たな世界を拓く 表具師 鈴木浩さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第108回] マッチ棒パズル 篠原菊紀 【P6】 [特集] 困っているのは年下上司?それとも年上部下?  役職定年や定年後再雇用による役割や職責の変化により、上司・部下の関係が入れ替わり、年下上司と年上部下の関係となって仕事をすることが増えてきています。しかし、このように関係性が入れ替わったとき、年下上司は「お世話になった先輩にこんな指示をしてよいのだろうか」、年上部下は「私が出しゃばってしまったら仕事をしにくいだろうな」といった具合に、それぞれの立場に応じた悩みがあるのではないでしょうか。  そこで今回は「年下上司」と「年上部下」をテーマに、悩んでいることや困っていることのポイント、その解決に向けたマネジメントの考え方などについて解説します。 【P7-10】 特別インタビュー エイジレス社会の実現に向け「年下上司・年上部下」が活躍できる環境を 青山学院大学 名誉教授 山本(やまもと)寛(ひろし)  年下上司・年上部下の関係は、多くの会社で増加傾向にあります。その背景や課題をふまえ、年下上司と年上部下が「チーム」として会社の事業に貢献していくためのポイントについて、働く人のキャリアや企業における人材マネジメントについて詳しい青山学院大学名誉教授の山本寛先生にうかがいました。 年功序列の崩壊とエイジレス社会 ―役職定年や定年後再雇用によって、「年下上司・年上部下」が増えていますがその背景についてどのようにご覧になっていますか。 山本 いわゆる能力主義や成果主義の広がりによって、日本的経営の一つの柱である「年功処遇」が崩れてきているということが背景にあるでしょう。能力や成果の重視によって、若手の人たちをどんどん抜擢(ばってき)していかなければ、中堅層の人たちがやる気をなくし、モチベーションの低下、業績の低下につながり、場合によっては辞める人が出てしまうというようなことがいわれるようになっています。そうしたなかで、年下上司・年上部下という関係は、必然的に発生せざるを得ないものだととらえています。  また、もう少し大きな視点でみると「エイジレス社会」への変化があげられます。年齢による画一化を見直し、すべての年代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できる社会を目ざすという流れです。日本における年功処遇という岩盤はまだまだ強固であり、意識のなかでも根強いのですが、制度的にはそれを変えて、エイジレスの方向に進もうとしています。その処遇面における一つのやり方が、年下上司・年上部下という現象だと思っています。  年下上司・年上部下の実態については、民間企業が実施した調査が参考になります。一つめは人材サービスのエン・ジャパン株式会社(現・エン株式会社、以下、「エン」)(東京都)が2016(平成28)年に同社サイト利用者を対象に実施したアンケート「『年下上司』について」(有効回答数352人)※1。二つめはIT大手のサイボウズ株式会社(以下、「サイボウズ」)(東京都)が2023(令和5)年、30〜50代会社員計3000人を対象にした「年下の上司に聞く『年上の部下へのマネジメント』調査」※2です。  サイボウズの調査結果によると、調査対象の会社員のうち「直属の上司が年下」である人は約20%で、従業員2000人以上の会社になると、これが30%近くに達します。必ずしも55歳、60歳以上のシニア世代だけでなく、その下の世代も経験しているという結果で、年下上司・年上部下は近年、より一般化してきているということがわかります。年下上司・年上部下の関係は、いまやどこでもみられる状況になってきているのです。 「どのように仕事をしやすくするか」を考える ―年下上司・年上部下が増えている社会で、企業はどのような意識を持つことが必要でしょうか。 山本 年下上司・年上部下の関係では、年齢と役割の逆転による「やりにくさ」が、課題としてあげられることがあります。エンの調査結果では、年上部下で「仕事がしづらい」と回答した人は58%で、「仕事がしやすい」の42%を上回っていた一方、2023年のサイボウズの調査では、年下上司、年上部下ともに76%が「相手(年下上司・年上部下)との仕事はやりやすい」と回答しています。両調査のたずね方の違いなども影響しているかもしれませんが、年下上司・年上部下がより一般化してきていることが、結果によって示されているのではないかと思います。  そもそも仕事がしやすいか、しづらいかということは、本人の意識の問題でもあります。年下上司・年上部下は、もはや必然的に発生せざるを得ないものですから、「しやすい」、「しづらい」の傾向や比率を考えることより「どのようにしやすくするか」を考えるべきでしょう。  そのため、まだまだ足りていないのが研修だと思います。例えば、初めて課長に昇進したときの初任者研修で、年下上司・年上部下の問題は、必須で取り入れるべき内容だと考えています。ジェンダーや国籍の問題、障害のある人への配慮など、ダイバーシティ(多様性)という視点の一つとして、取り入れるべきです。  さらに大きい問題が一つあり、それが「エイジズム」、「エイジハラスメント」という、いわゆる年齢差別です。年下上司・年上部下の関係性のなかでは、エイジズム・エイジハラスメントに陥らないよう意識する必要があります。エイジズム・エイジハラスメントとは、例えば、「中高年だったらどうせIT、AIはわからないだろう」といった偏見で、「じゃあ、そういうものを使わない仕事をさせよう」と仕事を制限したり、定年近くになった人に「だんだん手を抜いていくし、楽をしたいだろうから」と仕事を与えなかったりすることです。逆にエイジズム・エイジハラスメントは、若手に対するものもあります。  日本では本当に、年齢による意識がまだまだ強く、職場で働いていないようにみえる中高年の男性を「妖精さん」と呼ぶこともあるようですが、そうしたこともエイジズムが根底にあるといえるでしょう。経験のある人材を活かせていない、非常にもったいないことだと思います。 「リスペクト」と「柔軟性」、「チームの成果」にフォーカス ―年下上司・年上部下が「働きやすい」と感じる職場にするために、課題となること、必要とされる取組みは、どのようなことでしょうか。 山本 現状の課題と「どうしたらよいか」ということを、「年下上司」、「年上部下」、「年下上司・年上部下共通」の三つの視点からまとめると次のようになります。 @年下上司の課題と心得 ―リスペクトを形にする―  年上部下は「経験へのプライド」がある一方で、「価値観が固い」、「気を遣って指示しにくい」など、指示への拒絶感や気まずさを感じているケースがあります。そうした年上部下に対応するため、年下上司には六つの点を心がけてほしいと思います。  一つめは「敬語の徹底」です。基本中の基本ですが、相手の人生経験への敬意を払うため、公私ともにていねいな言葉遣いを維持します。頭ごなしの指示は避け、「どう思いますか?」と経験を尊重する姿勢が必要です。ただ、サイボウズの調査結果では、「年上部下へのマネジメントで必要だと思うこと」について、年下上司でもっとも多くあがった回答が「敬語・丁寧な言葉遣い」(41.9%)だったのに対し、年上部下の同回答は27.7%にとどまります。「丁寧な言葉遣い」は年上部下から、年下上司が思うほど求められていないという結果ですが、逆に「言葉だけていねいでもだめ」ということなのかもしれません。  二つめは「相談の形をとる」ということ。年上部下に接するときは、命令ではなく「〇〇さんの知見をお借りしたい」と頼る姿勢をみせることで、年上部下の承認欲求を満たし、強固な協力関係を築くことが可能になります。サイボウズの調査結果でも、年上部下が必要だと思うことの最多は「部下の話を聞く」でした。具体的には1on1ミーティングなどで、相手の知識や経験を認め、相談を持ちかけるような方法をとるとよいでしょう。年上部下の経験や知識を頼り、助けを求めることが、相手のプライドを尊重し、モチベーションを高めることにつながるでしょう。  三つめは「役割の明確化」です。年下上司・年上部下の問題を端的にいえば、「役割の逆転」だと思います。「年齢ではなく、役割が違うだけ」という共通認識が必要です。「あなたのほうが経験もあります。ただ、たまたま私が現在上司という立場になっただけです」と、具体的に伝えたほうがよいという考え方もあります。  四つめは「自己開示」です。これは日本では、なかなかむずかしいことですが、年下上司が年上部下に、自分から「開示」をしていくことが大事です。上司から弱みをみせたり、雑談を増やしたりして、人間的な信頼関係を先に構築すること。積極的なコミュニケーションを、上司から先にとっていくことが重要です。  五つめは「指示は遠慮しない」こと。遠慮をしていては上司としての役割は果たせません。ただし、指示をする際は、命令口調ではなく相談という形をとるほうが、関係性がよくなるでしょう。  最後は「外部セミナーの活用」です。必要に応じ、外部セミナーを受けて指導方法を学ぶことも有効です。例えばアンガーマネジメントのセミナーなどを活用し、感情をコントロールする方法を学ぶことなどで、人間関係の円滑化につながることも期待できます。 A年上部下の課題と心得 ―「柔軟性と役割理解」―  年上部下は、年下上司に対して「扱いづらさ」を感じ、「年下に命令されたくない」、「面子を潰された」などと思いがちですが、重要なのは「組織としての成果」にフォーカスすることです。役割の逆転を許容し「組織の一員」として割り切り、チームの成果を上げることに注力することが必要です。具体的な心得として次の四つがあげられます。  一つめは「報告・連絡・相談を怠らない」こと。いわゆる「報連相(ほうれんそう)」ですね。報連相は新入社員など若手に対する研修では必ず出てくる内容ですが、ベテラン社員が「いまさら」と思うのは大間違いです。年上部下の場合、豊富な経験があるがゆえに自己判断で進めてしまい、情報共有が漏れるケースが多い傾向にあります。最低限の報連相を徹底し、上司を安心させることは信頼につながります。  二つめは「価値観のアップデート」です。サイボウズの調査結果では、年下上司の67.6%が「年上部下の価値観はなかなか変わらない」という項目に「そう思う」と回答していました。年上部下は、過去の成功体験に固執せず、新しいやり方、デジタルスキルや最新トレンドにも通じた、年下ならではの視点を受け入れる姿勢が求められます。年下上司のよさを受け入れ、過去のやり方を押しつけないことが肝要です。  三つめは、「これまでの経験に基づく適切な関与」です。サイボウズの調査結果をみると、年上部下は年下上司に対し「適切な判断と意思決定」、「部下のミスのフォロー」などを期待している実態がみられました。年下上司も確固とした自信を持っているわけではなく、「これでよいのかな」と感じている面があり、年上部下には、経験に基づいた関与、フォローを求めているということです。さらに同調査では、年上部下に対し「若い人の手本になるべき」、「上司に適切な助言やアドバイスをするべき」という意見をあげる年下上司が、6割以上にのぼっています。年上部下も遠慮をせず、自信をもってバリバリと活躍していくべきでしょう。  最後は「ハラスメント意識」です。部下から上司への不遜な態度は、「逆ハラスメント」とみなされることもあるので、マナーを守った関係性が不可欠です。 B共通の課題と心得  年下上司、年上部下ともに、年齢や経験の差に関係なく、チームの成果を最優先事項として共有することが重要です。また、この関係性で注意しなければならないことに「コミュニケーションの負のループ」があります。一番問題なのは、双方が遠慮しすぎて、コミュニケーション量が減ること。コミュニケーション量が減ると、業務が滞る「負のループ」に陥ってしまいます。 いずれはみんな「年上部下」 フォロワーシップの学びも重要 ―年下上司と年上部下が協働していくためには、当事者の意識改革などとともに、企業・人事の取組みもカギになると思います。企業・人事に求められる考え方や対応のあり方について考えをお聞かせください。 山本 特に新人の管理職に対し、1on1で話を聞くことなどが必要だと思います。コーチングという形をとることもありますが、とにかくまずは年下上司が潰れないようにすることが大切です。プレーヤーとして活躍できた人でも、管理職になると求められるものがまったく違う状況になるので、メンタル面も含めて、大きな役割の変化に対応できるようにサポートしなくてはなりません。  年上部下に対してベストなのは、例えば年上部下が持っている専門性を尊重し、残していくということでしょう。そのためには例えば、社内につくられるプロジェクトチームやタスクフォースで、年上部下に重要な位置づけを任せることなどが考えられます。逆に、中高年社員にとって必要なことは、自分の専門性を確立していくことだと思います。中高年社員にとって受け入れにくいのが「リスキリング」ですが、新しい状況に合わせて、自分の専門性をブラッシュアップしていくことができれば、年下上司にとって頼れる存在となるでしょう。  企業は、「本気で中高年の人たちにがんばってもらいたいと考えている」ということを示すためにも、必要なスキルを身につけるための研修などについて、就業時間内に受ける機会を設けるべきです。「武者修行研修」や「レンタル移籍」など、企業や部署の枠を超えて実施される能力開発も、中堅や管理職などの中高年層に門戸を開くことが有効だと思います。  現在の若手も、年下上司も、「同期トップ」のような一握りの人たちを除き、ほぼ全員がいずれは年上部下になります。会社組織にいれば、だいたい「いつごろに年上部下になるか」予想がつくものです。そのときに備える意味でも、自分の立場が変わったときに、どのように人を助けたらよいのかを考えておくことも必要だと思います。  部下の心得を一言でいうと「フォロワーシップ」ですが、リーダーシップやチームビルディングの研修を実施する企業は多い反面、フォロワーシップの研修はあまりみられません。リーダーシップ研修と並んで、フォロワーシップ研修をすることは効果的だと思います。フォロワーシップ研修を実施した部署の業績が上がる、エンゲージメントが上がるということがあれば、年下上司でも年上部下でも、より仕事のしやすい環境を構築できるのではないでしょうか。 ※1 エン・ジャパン株式会社(2017)「『年下上司』について(2016年版)」 https://mid-tenshoku.com/enquete/report-125/ ※2 サイボウズ株式会社(2023)「年下の上司に聞く『年上の部下へのマネジメント』調査」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000242.000027677.html 【P11-14】 解説1 年下上司の困りごと ―年上部下マネジメントのポイント― 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー 竹野(たけの)潤(じゅん) @「年下上司」、「年上部下」の現状  昨今のビジネスシーンでは、年功序列型の崩壊やジョブ型雇用の浸透により「年下上司」と「年上部下」という関係性がごく一般的になりました。図表1(12ページ)は役職別の平均年齢を表示したグラフです。部長の平均年齢が過去10年ほぼ横ばいなのに対し、課長と係長の平均年齢は右肩上がりです。2014(平成26)年と2024(令和6)年でそれぞれの役職間の平均年齢差を比較してみましょう。従業員数1000人以上の大企業(図表1ー1)では、部長と課長の平均年齢差は4.1歳→3.5歳に、課長と係長の平均年齢差は3.6歳→3.4歳に縮まっています。同じく100〜999人の中堅企業(図表1−2)でも、部長と課長は4.6歳→3.4歳に、課長と係長は4.3歳→4.2歳といずれも平均年齢差が縮まっています。これは「年下上司」、「年上部下」といった、役職と年齢の逆転現象の増加を意味しています。  一方、日本には儒教に由来する「長幼(ちょうよう)の序(じょ)」といった年長者を敬う伝統的な価値観が色濃く根づいており、この関係性に強いストレスや悩みを抱える若手・中堅マネジャーは少なくありません。ここでは年下上司が年上部下に対して抱える「悩み・困りごと」を整理し、それらを乗り越えるための「解決に向けた対策」を具体的に解説していきます。 A年下上司が抱える「悩み・困りごと」  年下上司が直面する壁にはさまざまなものがありますが、おもにコミュニケーション、心理的負担、業務遂行といった側面に分けられます。では具体的なシーンを紹介していきましょう。 (1)言葉遣いや距離感のとり方がわからない  「敬語を使うべきか、上司としてタメ口を混ぜるべきか」という基本的なスタンスで悩む上司は意外に多いです。へりくだりすぎると舐められるという懸念が生じ、逆に横柄にふるまうと反発を買うというおそれから、適切な距離感に悩むマネジャーは多いようです。2023(令和5)年にサイボウズ株式会社のサイボウズチームワーク総研が実施した「年上の部下へのマネジメントとして、必要だと思うこと」に関するアンケート結果※においても、年下上司がもっとも必要だと感じているのは「敬語・丁寧な言葉遣い」という結果になっています。 (2)指示や注意がしづらい  人生経験や社歴が自分より長い年上部下に対し、「どこまで強くいっていいのか」、「生意気だと思われないか」と躊躇(ちゅうちょ)してしまい、明確な指示や改善要求をいい出せず、結果として業務に支障をきたすケースです。こういった状況が続くと、ほかの若手メンバーは「年上部下の特別扱い」といった不公平感を抱きかねず、チームの風通しが悪くなるおそれがあります。 (3)年上部下のプライドや「過去の成功体験」の扱い  年上部下の多くは過去の実績や成功体験に対する自負を持っています。かつてはチームを率いるマネジャーとして活躍していた人が、役職定年などによりやむなく管理職を退くケースもあります。そのため、自分がこれまでマネジメントしてきたやり方とは異なるチーム運営に対し「私のやり方とは違う」などと反発したり、あるいは暗黙の抵抗、いわゆる面従腹背(めんじゅうふくはい)するケースもあります。 (4)人事評価の強烈なプレッシャー  半期や期末ごとの人事評価において、自分より給与が高い(あるいは過去高かった)年上部下に対して評価をつけることは、年下上司にとっての大きな心理的負担です。なかでも低評価をつけざるを得ないケースなどは、面談に臨むに際してそれなりの準備が必要になってきます。評価の根拠を巡って感情的な議論に発展することを恐れ、ついつい無難な評価をつけてしまう、あるいは至らない点ばかりを指摘することで“予防線”を張ってしまい、関係がぎくしゃくしてしまう、といったことが起こり得ます。 B解決に向けた対策とコミュニケーション術  これらの悩みを解決するためには、年下上司自身の「マインドセットの変革」と「コミュニケーション術」の両輪が重要になってきます。では具体的な解決策をご紹介しましょう。 (1)組織ミッション・ビジョンの共有  会社にはミッション(経営理念・存在意義)と、ビジョン(向かうべき方向)があります。上司はこれらを、自分たちの組織に置き換えたものに明文化しなければなりません。これは上司にしかできないもっとも大切な仕事です。これらが明確になることで、社員たちは「自分たちは何のために働くのか」、「自分たちはどの方向に向かうべきなのか」を認識します。そして年上部下には組織のミッション・ビジョンをしっかり共有し、その実現のために“協力を仰ぐ”のです。経験年数の長い年上部下は、過去にさまざまな組織に所属してきたはずです。蓄積された経験値を惜しみなく発揮してもらい、組織ミッション実現のために一肌脱いでもらいましょう。 (2)育成ビジョンの相互共有  若手部下と違い、年上部下の育成に頭を抱える年下上司は多いようです。まずは“育成する”という概念を捨てましょう。これは年上部下の人材育成を放棄するという意味ではありません。まずは自分の組織のミッション実現のために、年上部下にどのような役割をになってもらいたいのかを正直に伝えます。彼らの経験やノウハウがどのような形で組織に貢献できるのかを考えてもらう、そのプロセスが年上部下の成長をうながします。  仮に定年間近のベテラン社員であっても同じです。定年までの期間を大過なくやり過ごすのはあまりにもったいないです。定年退職後も人生はまだまだ続きます。組織に所属できる残りわずかな貴重な時間を、豊かな老後に向けて自分を成長させる時間と位置づけてもらいましょう。 (3)役割分担  上司=偉い人、部下=従う人、という前時代的な考えを少しでも持っている年下上司は、まず意識改革が必要です。上司と部下は「偉さ」ではなく「役割」と割り切ってください。会社における役職は単なる「役割(機能)」の違いに過ぎません。上司の役割は「組織をマネジメントすること」、「人を育てること」、「組織目標を達成させること」であり、人間的な上下関係ではありません。上司としての役割(機能)に対する認識を、年上部下ときっちり共有してください。そして彼らに対してはこのような接し方がよいでしょう。  「意見はどんどんいってください。先輩の意見には謙虚に耳を傾け、そのうえで組織の方針を総合的に判断します。ただし決まったことには気持ちよく従ってください」  これなら彼らも自分の立ち位置を正しく理解してくれるはずです。 (4)“力を借りる”というスタンス  年上部下を動かす最大のコツは、彼らの「承認欲求や経験を尊重すること」です。頭ごなしに「〇〇してください」と指示するのではなく、「〇〇さんの経験を貸してください」、「相談に乗ってください」といった「依頼・相談」のアプローチをとります。「頼りにしている」ことを明確に伝えると、年上部下のプライドが満たされ強力なサポーターになってくれるはずです。  年上部下のなかには過去にマネジャー経験がある人もいます。「じつはいま、ちょっと困っていまして、○○さんは過去にどんなマネジメントをしていました?」などと、あえて自分の弱みを開示すると、年上部下との心理的距離感は一気に縮まります。人間は論理だけで動く生き物ではなく、感情でも動く生き物でもあることを忘れないようにしてください。 (5)年上部下の「居場所(活躍の舞台)」をつくる  年上部下が反発したりモチベーションを下げる背景には「自分の居場所がなくなる」、「若手のお荷物になりたくない」という不安が隠れています。そのため「豊富な人脈」、「トラブル対応の経験」、「特定の専門知識」など、彼らの強みが活きる役割を与えてください。例えば「若手のメンター役」、「クレーム対応の最終防波堤」、「特定顧客の専任担当」なども候補になるかもしれません。つまり「自分は組織に必要だ」と実感できる役割を任せることができれば、彼らのモチベーションは維持できるはずです。 (6)「ていねいな敬語」を徹底し、敬意を態度で示す  いうまでもありませんが、年上部下に対しては一貫して「ていねいな敬語(です・ます調)」を心がけてください。「上司らしくふるまおう」と無理にタメ口をきくのは禁物です。人生の先輩への敬意を言葉遣いで示しましょう。  また若手部下であれば「よくやったな!」といった表現でも問題ありませんが、年上部下に対して使う表現としては適切ではありません。そこでぜひ「一人称表現」を使ってみてください。「すごいですね!」、「よくやりましたね!」といった表現は上から目線の印象を与えますが、このような“客観的”な表現ではなく、「(私は)うれしかったです!」、「(私は)助かりました!」といった一人称表現を用いた“主観的”な表現で伝えてください。きっと彼らに「よし、次も組織に貢献しよう!」というモチベーションが芽生えるはずです。 (7)こまめな「1on1ミーティング」の実施  サイボウズチームワーク総研が実施した「年上の部下へのマネジメントとして、必要だと思うこと」のアンケート結果(図表2)をご覧ください。年下上司がもっとも必要だと考えていることが「敬語・丁寧な言葉遣い」であるのに対し、年上部下がもっとも求めているのは「部下の話を聞く」ということです。そこで大切にしていただきたいのが、年上部下との「1on1ミーティング」です。出身地や出身校、会社ではどんな仕事をして、どんな成果を出してきたのか、といった年上部下の「歴史」に耳を傾けてください。そうすることで、彼らが何を大切にして仕事をしてきたのか、つまり“価値観”が次第に見えてくるようになります。価値観の理解なくして彼らに本来の力を発揮させることはできません。1on1ミーティングの真の目的はここにあります。  それともう一つ、1on1ミーティングのなかでやっていただきたいことは「期待値を伝える」ことです。上司であるあなたが彼らに期待することをはっきりと伝え、四半期などの節目で互いにふり返ってください。あなたの期待値に対する彼らの“現在地”を1on1ミーティングのなかで確認しながら、互いの認識の“ズレ”を修正するのです。これで年度末の人事評価のフィードバックに対する精神的負荷がかなり軽減されるだけでなく、あなたの期待値に対する彼らのモチベーション維持を図ることができるはずです。 C最後に  年下上司と年上部下の関係性は、初めはだれしもやりにくさを感じるものです。しかし「彼らの経験に敬意を払うこと」と「役割として毅然とマネジメントすること」は両立可能です。  年上部下を持つという経験はだれもができる経験ではありません。年上部下を敬い、彼らの力を引き出すことができるようになったとき、年下上司であるあなたの人間力は格段に向上しているはずです。組織をマネジメントする役割を与えてくれた会社に感謝しつつ、ぜひ人としての器を広げていってください。 ※サイボウズチームワーク総研(2023年)「『年上の部下』へのマネジメント、必要なのは『敬語』よりも『傾聴』と『適切な関与』」 https://teamwork.cybozu.co.jp/blog/youngerboss.html 図表1―1 大企業の役職別平均年齢の推移 平均年齢(歳) 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 2014年 部長52.1 課長48.0 係長44.4 全体46.6 2019年 部長52.4 課長48.7 係長45.2 全体47.1 2024年 部長52.5 課長49.0 係長45.6 全体47.2 ※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに株式会社トランストラクチャが作成 図表1―2 中堅企業の役職別平均年齢の推移 平均年齢(歳) 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 2014年 部長52.6 課長48.0 係長43.7 全体46.6 2019年 部長52.8 課長48.6 係長44.9 全体47.2 2024年 部長52.8 課長49.4 係長45.2 全体47.8 ※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに株式会社トランストラクチャが作成 図表2 年上の部下へのマネジメントとして、必要だと思うこと 上司の意見:年上の部下のマネジメントに必要(n1500) 部下の意見:年上の部下のマネジメントに必要(n1000) 上司の意見:年上の部下に実際にしていること(n1500) 敬語・丁寧な言葉遣い 日々の声かけ 部下の話を聞く 他部員と平等に接する 適切な判断と意思決定 部下のモチベーション向上 所属チームの良い雰囲気づくり 適切なフィードバック 業務進捗の把握 部下のミスのフォロー 部下の性格・価値観の把握 社内情報の収集と共有 所属チームの状況・目的の共有 裁量の付与 役割やキャリアへの助言 上司の自己開示 出典:サイボウズチームワーク総研(2023年)「『年上の部下』へのマネジメント、必要なのは『敬語』よりも『傾聴』と『適切な関与』」 【P15-18】 解説2 年上部下の困りごと ―心理的安全性を高め、経験を資産に変える職場づくり― アチーブ人財育成株式会社 代表取締役社長、NPO法人フィンランド式人材育成研究所 理事長 諌山(いさやま)敏明(としあき) @なぜいま「年上部下の心理的安全性」が重要なのか?  2026(令和8)年、日本の労働市場は未曾有の転換点を迎えています。労働力不足が深刻化し、シニア層の戦力化が企業の命運を分けるなか、役職定年や定年後再雇用にともなう「役割の逆転」は、いまやどの職場でも見られる日常となりました。「かつての部下が上司となり、かつての上司が部下として支える」という新しい関係性は、一見スムーズに見えても、その水面下では深刻な「溝」が生まれていることが少なくありません。  特に注目すべきは、年上部下の「心理的安全性」が著しく損なわれている現状です。心理的安全性とは、だれもが非難を恐れず、自分らしく発言し、貢献できる状態をさします。年上部下が「出過ぎた真似はできない」と口を閉ざし、周囲への「気兼ね」から必要な指摘を避ける職場では、彼らが数十年のキャリアでつちかってきた貴重な知見は組織に還元されず、ただ埋没してしまいます。  本稿では、年上部下が抱える「困りごと」を理解して、年上部下の「遠慮」を「貢献」に変えるために、会社や管理職がいかにして心理的安全性を構築し、年上部下の経験を組織の人的資本と再定義して経営していくか、具体的な対応策を提示します。  昨今、「年上部下の心理的安全性」が重要視されているのは、Google社の研究によって、心理的安全性の高いチームほど生産性が高いと証明されたことが大きな要因です★。多様な人材が活躍する現代において、年齢にかかわらずだれもが安心して意見をいえる環境が、組織全体のパフォーマンス向上に不可欠だからです。心理的安全性とは、組織のなかで自分の意見や気持ちを、拒絶や非難を恐れずに発言できる状態をさします。  この心理的安全性が年上部下にとって重要な理由として考えられるのは、次の4点です。 (1)意見表明の促進 ・年上部下も、自身の経験に基づく意見や疑問を気兼ねなく発信できる。 ・上司の顔色をうかがう「沈黙」がなくなる。 ・多様な視点を活用できる。 ・率直な意見交換により、チームに多様な価値観が生まれる。 ・イノベーション創出につながる可能性がある。 (2)学習と成長の機会 ・質問や相談をためらわず、知識や情報を共有できる。 ・個人の能力が最大限に発揮しやすくなる。 (3)エンゲージメントの向上 ・組織への愛着心が深まる。 ・離職率の低下にもつながる。 (4)心理的安全性が低い職場での問題 ・心理的安全性が低い職場では、図表1のような問題が発生しやすくなる。  心理的安全性は古くから存在する概念ですが、特に2016(平成28)年のGoogle社の「プロジェクト・アリストテレス」という調査結果によって一躍注目を集めました。この調査では、生産性の高いチームの共通点として「心理的安全性の高さ」があげられています。 ■Google社のおもな調査結果(★15ページ) @生産性の高いチームは、心理的安全性が高いです。 Aチームメンバーの「誰か」より「どのように協力しているか」が重要です。 B離職率が低く、収益性が高いなどの効果があります。 C心理的安全性の高い職場は、単なる「仲良しチーム」や「ぬるま湯組織」とは異なります。  むしろ、健全な意見の対立が生まれ、建設的な議論ができる環境をさします。 A年上部下が直面する「見えない困りごと」の正体  弊社が企業の定年延長者・再雇用者を対象に実施した昨年度の社員研修で、「シニア社員の困りごと・悩みごとアンケート」の調査を行った結果、もっとも多い回答が、「体力・健康面に対する不安」(50.0%)で、次いで「モチベーションの低下」(49.5%)、「パフォーマンスの低下」(42.3%)となり、体力・気力の衰えや、モチベーションが下がることに対して課題や不安を感じていることがわかりました(2025年度実施の研修受講者累計338人の有効回答結果より)。  アンケート調査結果をみると、特筆すべき点は、年上部下の抱える悩みごとの多くの場合、周囲からは見えにくいという特徴があります。これは、ベテラン社員として・プロフェッショナルであるとしてふるまおうとするあまり、内面の葛藤を押し殺している状況があるようです。  年上部下が直面する「見えない困りごと」について、シニア社員向けの研修で分析した結果、次の3点がわかりました(図表2)。 (1)働く自己像(アイデンティティ)の揺らぎと役割喪失感  長年、決定権を持ち組織を牽引してきた自負がある人ほど、肩書きが外れた後の「一担当者」としての自分を受け入れることに苦しみます。これは単なるプライドの問題ではなく、長年築き上げた「働く自己像(アイデンティティ)」が崩れるという深刻な心理的体験です。 (2)コミュニケーションにおける「沈黙の忖度(そんたく)」  年上部下は、年下上司を立てるために「あえて教えない、口を出さない」という選択をすることがあります 。例えば、このようなエピソードがありました。ある製造現場では、再雇用されたベテランが、若手上司の判断ミスを予見しながらも「いまさら口を出してメンツを潰しては悪い」との配慮で沈黙を守ったそうです。結果として生じたトラブルは、回避できたはずの損失でした。 (3)スキルへの不安と孤独感  最新のデジタルツールや生成AIなどの急速な変化に対して、「いまさら聞くのは恥ずかしい」というプライドが邪魔をし、一人で抱え込むことで孤立感を深めてしまうケースも多く見受けられます。 B心理的安全性を阻害する要因  組織側に目を向けると、意図せず年上部下の心理的安全性を損なう「構造的な壁」が存在します。  第一に、組織に蔓延する「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。「シニアは教えにくい」、「過去に固執する」といった決めつけが、彼らへの期待値を下げ、挑戦の機会を奪っています。  第二に、会社からの「曖昧な期待役割」です。「経験を活かしてほしい」という抽象的な指示は、本人に「どこまで踏み込んでよいのか」という迷いを生じさせます。この曖昧さが、さらなる「遠慮」と「居心地の悪さ」を助長しているのです。 C心理的安全性を高めるための環境整備〜年上部下への取るべき対応  では、ここからは、年上部下の困りごとについて、具体的にどのように対応すればよいのかを考察します。  まずは、年上の部下を「かつての功労者」として遇するのではなく、「現在の重要な戦力」として再定義することが必要です。上司が年下で、自分より若い人材が多い組織に入った場合、年上部下は「自分はここにいていいのだろうか?」、「自分がいる意味があるのか?」といった不安を抱えがちです。不安を解消するには、「自分の居場所がある」と思える具体的な役割を与えることがおすすめです。  例えば、業界経験の長い年上部下に若手の指導役をお願いすれば、長いキャリアから得た経験や気づきなども伝えてもらえるメリットが生まれます。発言や提案してもらう機会を増やすことも効果的です。  また、居場所をつくるうえでは、企業やチームのビジョンを伝えて、「ビジョン実現のために〇〇さんの力が必要だ」、「◯◯スキルの高い若手を育てていきたい」といった話をすることで、年上部下の役割や居場所は増えやすくなるでしょう。チーム内に居場所がある実感が生まれると、年下上司や同僚の話にも耳を傾ける心の余裕も生まれやすくなるでしょう。  年上部下の場合、人生経験や業務経験がある分、年下上司やチームに対して構える姿勢があったり、プライドが高かったりするのはやむを得ない部分でしょう。そのプライドを「悪しきもの」として否定せず、活かしてもらえるように働きかけていきましょう。年下上司が年上部下のプライドを受け入れると、同チーム内で働く部下も年上部下の経験を尊重しやすくなりますし、年上部下の居場所も次第に増えていくことでしょう。  年上部下の心理的安全性を高めるために必要な環境整備は図表3のようになります。 (1)「期待役割」の言語化と合意形成  現在のポストにおける具体的な「貢献の形」を明文化します。例えば、「若手の商談同行・フィードバック」や「ナレッジの体系化」など、本人と話合いのうえで役割を特定し、組織全体に周知します。 (2)「対話の質」を変える1on1面談の仕組み  あえて業務進捗を確認しない「対話の時間」を定期的に設けます。上司が「教えてもらう」姿勢で、部下が現在感じている「働きにくさ」や、過去の経験をいまの課題にどのようにつなげられるかを聞き出すことで、心理的距離を縮めます。 (3)「学び直し(リスキリング)」能力開発への機会を提供  ITリテラシー向上や生成AIの活用など、変化に適応するための学習を会社として奨励します。知識のアップデートは「現役感」と「自己効力感」を取り戻させ、貢献意欲を再点火させます。 D年上部下が年下上司に接するときの心構え  昨今の年功序列制度の見直しや中途入社者の増加により、年下の上司や年上の部下との関係が多く見られるなか、お互いが気をつかい、パフォーマンスが上がらないケースも散見されます。その際、年上部下への適切な接し方を十分に理解することが重要です(図表4・5)。  逆に、年上部下が年下上司に接するときの心構えとして、「役割」と「人格」を切り離し、役割に徹する意識が求められます。  上司と部下は役割が異なるため、年齢や経験にかかわらず、部下としての仕事に注力します。 (1)敬意を持つ  たとえ年下であっても、上司には敬意を払い、礼を失しないことが大切です。 (2)積極的にコミュニケーションをとる  良好な関係を築くためには、積極的にコミュニケーションをとり、信頼関係を構築します。 (3)自分の強みでサポートする  豊富な経験や知識を活かし、チームや上司をサポートすることで、自尊心が満たされ、主体的に仕事に取り組めます。 (4)上司の気持ちに寄り添う  年下上司もまた、年上の部下との接し方に悩んでいることがあります。相手の立場を理解し、寄り添う姿勢が大切です。  次に「良好な関係を築くための共通ルール」を意識することも必要です。役職や立場の違い、権限を明確にするなど、共通のルールを設定することで、ぎくしゃくした関係を防げます。そのためには、共通のビジョンや目標を掲げ、目標達成に向けて協力することで、良好な関係を築けます。 Eおわりに「経験を組織の資産へ」  年上部下の心理的安全性を高める取組みは、単なる配慮ではなく、組織の持続可能性を高める経営戦略そのものです。「遠慮」というブレーキを外し、ベテランの持つ豊かな「経験」というエンジンを再び回し始めること。そのための土壌を整えることこそが、多世代共生社会における理想の組織像ではないでしょうか。 ★出典:Google re:Work「『効果的なチームとは何か』を知る」より一部参考 https://rework.withgoogle.com/intl/jp/guides/understanding-team-effectiveness 図表1 心理的安全性が低い職場での 問題点 体的な影響 無知だと思われる不安 質問や相談を控える 無能だと思われる不安 積極的な発言や失敗の共有を避ける ネガティブだと思われる不安 否定的な意見や懸念を報告しない 邪魔だと思われる不安 チームへの貢献をためらう ※筆者作成 図表2 年上部下の「見えない困りごと」 カテゴリ 具体的な影響 存在価値の揺らぎ 「自分がいなくても組織は回る」という喪失感・疎外感 役割の曖昧さ 期待されている役割が「現状維持」なのか「貢献」なのか不明 コミュニケーションの壁 「出過ぎた杭」になりたくないという過度な遠慮 スキルへの不安 新しいツールや手法への適応に対する焦りと気後れ ※筆者作成 図表3 心理的安全性を高める環境整備(施策の柱とアクション) 施策の柱 具体的なアクション 期待される効果 役割の明確化 ジョブ記述書の作成・貢献領域の合意 「自分の居場所」の確信 対話の仕組み 定期的1on1面談・多角的なフィードバック 孤独感の解消、本音の表出 能力開発支援 リスキリング・強みの棚卸し支援 自己効力感の向上、変化への適応 ※筆者作成 図表4 年下上司と年上部下の関係構築(おすすめ・避けるべきスタンス) 項目 おすすめのスタンス 避けるべきスタンス 聞き方 「〇〇さんの視点をお借りしたいです」 「昔の話はいいので、今の話をしてください」 フィードバック 「助かりました」「さすがの安定感です」 「年上なんだから、これくらいやって当然」 指導が必要な時 「チームとしてこのルールで統一したいので協力してください」 「私のやり方に従ってください(感情的な命令)」 ※筆者作成 図表5 年下上司の支援明日から使える「声かけ」Before/After 場面 逆効果な声かけ(NG) 心理的安全性を高める声かけ(OK) 業務の相談 「これ、やっておいてください」 「〇〇さんのこれまでのご経験から見て、この進め方はどう思われますか?」 ミスへの指摘 「やり方が古いです」 「〇〇さんの知見は貴重ですが、今のプロジェクトのスピード感に合わせるため、このツールを併用しませんか?」 1on1面談の冒頭 「何か困っていることはありますか?」 「〇〇さんにチームの『重し』として支えていただき感謝しています。より力を発揮しやすくするために、私に手伝えることはありますか?」 ※筆者作成 【P19-20】 コラム メール相談事例で学ぶ年上部下の悩みごと 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長 山本(やまもと)晴義(はるよし) 25年間で20万件の相談に対応してきた心療内科医・山本晴義さんに、年上部下から寄せられたメール相談をご紹介いただきました。 相談事例1 年下上司との関係に揺れる心  私は今年、役職定年を迎え、長年務めてきた部長職を退きました。これまで部下だった若手が、いまでは私の上司としてチームを率いています。頭では「時代の流れ」、「組織の仕組み」と理解しているつもりなのですが、心が追いつきません。  会議で彼が指示を出すたび、かつて自分が同じように采配していた姿がよみがえり、胸の奥がざわつきます。彼の判断に納得できないときもありますが、「元上司の自分が口を出すのはみっともない」と思うと、意見を飲み込んでしまいます。逆に、彼が私に遠慮している様子が見えると、申し訳なさと居心地の悪さが混ざり合い、ますます自分の立ち位置がわからなくなります。  これから私は、どのように心を整え、年下上司との関係を築いていけばよいのでしょうか。(61歳 事務職) 【山本先生の回答】  メール拝見しました。胸中の複雑なお気持ちが伝わってきます。頭では割り切れても、心の整理がつきにくいのは当然です。とりわけ、かつては采配を振るい、組織の決定権をになってきたご自身にとって、「いまは意見を控えるべきか」、「発言したら過去の威圧と映るのでは」と葛藤されることは、ごく自然な反応といえます。  まず大切なのは、「年月をかけてつちかった経験や知見、誇りは消えない」ことを心に留めておくことです。役職は変わっても、あなたがこれまで積み上げてきた業務知識、人脈、問題解決能力は、チームにとって貴重な資産です。ですから、ご自身を卑下する必要は一切ありません。今後は、「決定する立場」から少し距離をとり、「支える立場」として力を発揮してみてはいかがでしょうか。  例えば会議で意見があるときは、責任ある助言者として、具体的な提案や「私はこういう経験があるが、どう思いますか」と問いかける形にすると、元上司・現部下の線を越えず、いまの組織に調和した形で存在感を示せるはずです。 さらに、遠慮や居心地の悪さを感じるのは、おもにお互いの気づかいゆえです。どちらかが割り切ることも一つの方策ですが、やはり、敬意と信頼をベースに、オープンな対話を日々意識しましょう。「今後はあなたを支える役割で貢献したい」と、自分なりの立ち位置を相手に伝えておくのも有効です。  最後に、自らも新たな専門性や分野を学び直すことで、過去の輝きにすがるだけでなく、「いまここでこそできる」自分の成長の機会へと変えていきましょう。自分の役割が変わることは、人生の新たなステージの始まりです。焦らず、経験値を活かしつつ、前向きな気持ちで新しい関係性とご自身のあり方を模索してみてください。 相談事例2 「老害」といわれショックです  定年退職後、アドバイザーという立場で5年間働いてきました。若い社員の育成や、これまでの経験を伝えることにやりがいを感じ、微力ながら会社に貢献できていると思っていました。  ところが先日、研修講義を担当した際、受講後の匿名アンケートに「老害」という言葉が書かれていました。正直、胸を刺されるようなショックを受けました。自分なりに誠実に取り組んできたつもりでしたし、これまでの経験が少しでも役に立てばという思いで続けてきたので、否定されたように感じてしまいました。  このような状況で、私は会社を辞めるべきなのでしょうか。それとも、受けとめ方やかかわり方を見直すべきなのでしょうか。自分では冷静に判断できなくなっています。ご意見をいただければ幸いです。(65歳 技術職) 【山本先生の回答】  悩みをお寄せいただき、ありがとうございます。定年退職後もアドバイザーとしてご勤務し、若手社員の育成に尽力されてきたこと、誠に立派ですばらしいことだと思います。長年の経験を基に、後進へのサポートをされる姿勢は、決して軽視されるべきものではありません。こうした職務を通じて、あなた自身も多くのやりがいを感じていたことでしょう。  それにもかかわらず、アンケートで「老害」と書かれたことが、いまのあなたに大きなショックを与えたこと、心中お察しします。人は自分が誠実に取り組んできたことを否定されたと感じると、その影響は非常に大きいものです。このようなフィードバックに直面することは、特に長年の経験を持っている方にとってはつらいことです。匿名性のある評価は時に、その言葉に強い感情が込められることがあり、無意識に心の負担となることもあります。  まずは、自分自身の気持ちを受けとめてあげてください。どれだけ努力しても、すべての人に受け入れられることはむずかしいのが現実です。しかし、あなたがいままで蓄積してきた経験や知識は、きっと多くの人にとって価値あるものです。それを伝えることに責任を感じているあなた自身の姿勢は、偉大なことだと思います。ですから、今回の一つの意見にふり回されるのはもったいないです。  今後のかかわり方については、次のように考えてみてはいかがでしょうか。まず、アンケート結果をただの評価だと受け取るのではなく、一つの意見としてとらえ、自らを見直すきっかけにすること。自分の言葉や伝え方をふり返り、若手社員とのコミュニケーションのスタイルを工夫するのもよいかもしれません。また、フィードバックとして受け入れつつ、積極的に対話を持ち、その内容についてじっくりと話し合う機会をつくることができれば、理解も深まるでしょう。  会社を辞めることについては、その判断は慎重に行うべきです。あなたの存在が迷惑になっているかどうかは、周りの意見や反応をしっかりと確認してみることで得られる答えでもあります。可能であれば、ほかの信頼できる同僚や上司とも話をしてみて、客観的な声を得ることが重要です。最終的な決断は、あなた自身がどのように感じ、思うかにかかっています。自分にやさしく、控えめな気持ちを持ち続けながら、少しずつ前進していただければと思います。 ※Dr.山本のメール相談(無料) mental-tel@yokohamah.johas.go.jp 【P21】 立川(たてかわ)談慶(だんけい)の人生100年時代の歩き方 第5回 だから教えねえほうがよかった  これは落語「長短」のオチです。「長短」とは、気の長い男(長七(ちょう)しち)と気の短い男(短七(たんしち))との二人の会話だけという落語らしい設定です。ただ、この二人がとても仲がよく、いつも一緒にいる感じがしてとてもよい空気感に包まれるような一席でもあります。  気の短い男は、気の長い男の言動にいちいち腹を立てます。会話から、餅菓子の食べ方に至るまで、腹を立ててばかりいます。気の長い男のたばこの吸い方に怒りを覚えて、「こうやって吸うんだよ」と気の短い男が見本を見せるのですが、「短七さんは、気が短いから、いつも怒っているよなあ」、「そうだよ」、「俺のいうこともやっぱり腹が立つかい?」、「お前は別だよ。生まれついて仲よくしていて幼なじみだ。お前が何いっても俺は怒らないよ」、「ほんとかい」、「うるせえな、ほんとだよ」、「じゃあ、いうけど、お前さんが煙草盆にはたいた火の玉が煙草盆に入らねえでお前さんの着物の袂(たもと)に入っちまって、大丈夫かなと思っていたら、いまモクモクと煙が出てきているけど…」。ここで短七は激怒して「そういうことは早くいえ、バカ野郎!」、「ほら、やっぱり怒るじゃねえか。だから教えねえほうがよかった」。  師匠の談志(だんし)は、このオチにフォーカスし、「世の中、教えすぎなんだよ。教えねえほうがいい場合が、じつはほとんどじゃないか」と頻繁に訴えていたものです。  情報過多のマイナスという意味合いでしょうか。「教えてしまう」ことで自分の力で工夫するという大切な可能性もなくなってしまうのではと危惧していたものです。  かくいう私も還暦を過ぎてからというもの、成人しているわが子二人にも、ついつい教えたがりになってしまっているようで、これも老害かと反省するのみです。  そこで「向こうが教えてくれというまで教えない」と心の中で決めてみました。  得てして若い人は「わからないところがわからない」ケースもあるものです。向こうが気づくまで待つしかありません。いや、これは若い人ばかりではありません。何ごとも気を長くして待ちましょう。 【P22-26】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 第2回 70歳雇用推進プランナーがやってきた! 〈前回のあらすじ〉 社長の指示により高齢社員が長く働ける職場づくりを推進することになったLDer金属株式会社。人事課長の金井錬太郎がJEEDに相談をしたところ、70歳雇用推進プランナーの訪問を受けることに…。 ★このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです ※前回(2026 年5 月号)は、JEED ホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202605/index.html#page=32 ※「企業診断システム」については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/employer/system.html 【P27】 解説 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 安心!頼れる専門家 ―70歳雇用推進プランナー活用術― 第2回 70歳雇用推進プランナーがやってきた!  JEEDでは、高齢者雇用に取り組む事業主の方へのさまざまな支援を行っています。そのなかで個別に事業主を訪問する活動をしているのが、「70歳雇用推進プランナー」です。高齢者雇用の専門家である70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーが、その知識や経験、実務上のノウハウを活かし、高齢者雇用に悩んでいる事業主のみなさまをサポートしています。 ◆70歳雇用推進プランナーとは  70歳までの就業確保措置の導入・実施や、高齢社員の活躍を推進していくための諸制度の整備など、高齢者雇用に取り組む事業主をサポートします。相談・助言をはじめ、高齢者雇用に関連する制度の提案、各種ツールを活用した課題の分析などを通じて支援を行っています。 ◆70歳雇用推進プランナーによるヒアリング  70歳雇用推進プランナーが事業主を訪問し、高齢者雇用の状況や取組みについてうかがいます。現在導入している定年・再雇用制度や評価・処遇制度のほか、高齢社員が担当している業務や役割、活躍状況などについてうかがい、生じている課題や必要な対応などについて分析します。 ◆高齢者雇用の推進にあたって必要な検討事項とは  高齢者雇用の推進にあたっては、定年・再雇用制度や評価・処遇制度、柔軟な勤務制度など、各種制度の見直し・再設計を行い、意欲をもって働ける環境を整えることが重要です。また、加齢による身体機能の低下により労働災害の発生リスクや、けがなどをした場合に回復が長期化するリスクなども高まることから、負荷を軽減するための環境改善の視点も必要となります。 【P28-29】 新連載 江戸時代にもあった 「仕事と介護の両立問題」 〜目からウロコの高齢者介護史〜 文化・福祉ジャーナリスト ア井(さきい)将之(まさゆき) 第1回 江戸時代の武士は介護休業をとっていた! ―「サムライケアラー」を支えた制度― 深刻化する現代日本の介護離職問題  現在日本では、親・近親者の介護のために仕事を退職する「介護離職」の問題が次第に深刻化しつつあります。  公益財団法人生命保険文化センターがまとめた厚生労働省の「雇用動向調査」のデータによると、年間介護・看護離職者数は、2000(平成12)年当時は年間約3.8万人だったのに対し、2024(令和6)年では約9.3万人まで上昇し、25年近くの間に2.4倍以上も増加しました※1。さらに経済産業省の「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」によれば、介護離職および介護発生による労働者の物理的、精神的な負担増による日本社会全体の経済損失は、現状のままだと2030年に年間約9兆1792億円に上るとの試算がされています。※2  この9兆円という金額は、2026年度予算における日本の防衛費が9兆353億円(関連経費除く)※3でしたから、それとほぼ同額です。近年、日本の防衛費は上がりつつありますが、その金額に迫るような経済損失が、仕事と介護の両立問題によって生じると予測されているわけです。  なぜ仕事と介護の両立はむずかしく、介護離職が多く発生してしまうのでしょうか。  株式会社日本総合研究所が作成した『令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業』には、介護離職経験者1000人からの回答を元にしたアンケート調査結果が記載されています。それによると、「離職した理由」として最多回答だったのが、「勤務先に介護休業制度等の両立支援制度が整備されていなかったため」で、全体の23.4%を占めていました※4。さらに「勤務先の介護休業制度等の両立支援制度の利用要件を満たしていなかったため」、「勤務先の介護休業制度等の両立支援制度がわからなかったため」、「勤務先の介護休業制度等の両立支援制度を利用しにくい雰囲気があったため」など、介護休業等の両立支援制度の取得にかかわる回答割合を合計すると、全回答の過半数に達しています。  このことは逆にいうと、もし勤務先で介護休業ができる両立支援体制が完備・周知されていたり、介護を理由に休みをとりやすい雰囲気が職場の中にあったりしていれば、介護離職をせずにすんだ人が多数いることになります。介護と仕事との両立を実現できる職場環境の整備は、日本の経済界が取り組むべき喫緊の大きな課題であるともいえるでしょう。  ……とまあ、少し堅苦しい雰囲気の話が続きましたが、要するに、介護離職が日本で問題になっていて、その大きな原因の一つが、介護休業のような支援制度をうまく取得できないことにありますよ、ということをいいたかったわけです。「労働者が介護と仕事を両立できるように、介護休業をきちんと取得できる体制づくりや雰囲気づくりを実現していく」……このような話を聞くと、高齢化が急速に進んだ現代日本に特有の問題である、とのイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。  もっとも、そうした印象を抱くのは当然ともいえます。日本の介護休業制度は、要介護者が増加し、それに合わせて介護離職者が急増している状況を改善するために、国としてひねり出した制度体制です。「介護休業」が初めて法律で規定されたのは1995年のことで、当時は日本社会の急速な高齢化が問題視され始めていた時期でした。その後2026年現在に至るまで、何度も改正が行われて改善が図られてきました。これだけ見れば、現代的な社会課題に対して現代的な法制度をもって対応したのが、介護休業の制度であるようにも思われます。  ところが……このような介護休業の制度が、すでに江戸時代にもあったとしたらどう思われるでしょうか。介護と仕事を両立するために、当時の幕府や藩が、武士を対象として介護休業を制度化していたとしたら……? 江戸時代にもあった!介護休業制度  そのような話を聞くと、「いやいや、そんなことはない」と思われるかもしれません。そもそも介護休業制度とは、明治の近代化によって日本社会が西洋から「福祉」や「人権」などの概念を学び、さらに第二次世界大戦後にアメリカナイズされた福祉制度が整備されていったなかで、ようやくたどり着いた高齢者介護にかかわる最先端の福祉政策である……。こうした進歩的な流れのなかで成立していったと理解することが、いわば常識的な見方であるとも考えられるからです。  しかしながら、じつは……本当のことなのです。江戸時代にもあったのです、介護休業制度が。当時の武士の日記を見ると、介護休業を取得して親の介護をしたとの記録が実際に残っています。現代日本では仕事をしながら介護をする人のことは「ビジネスケアラー」と呼ばれていますが、江戸時代には、いうなれば「サムライケアラー」がいたわけです。  その実例の一つとしてあげられるのが、秋田藩の渋江(しぶえ)和光(まさみつ)の例です。彼が残した『渋江和光日記』には、実の父親に対する介護記録が記されています。  渋江家は秋田藩で代々家老職を務めるほどの家柄で、和光は13歳のころに分家からこの家に養子に入った人でした。ところが、養子となってから約10年後の1814(文化11)年の10月6日に、実家に住む実の父親・光成(みつなり)が脳卒中で倒れてしまったとの報告を受けます。そのとき和光は藩で「御相手番」という家老に次ぐ重要な役職に就いており、決して暇なわけではありませんでした。それでも報告を受けたその日の夜にはすぐ実家に帰って父親の状態を確認し、これはたいへんなことになったと確信します。そして倒れたことを知ってから2日後の10月8日に、藩に対して介護休業の申請である「看病御暇申し立て」を行って、即座に認められます。そして10月9日から、実父の介護のために休むことができています。また注目点として、和光は介護休業を取得する際に、職場の同僚であるいわゆる同役衆に対し、回文という回覧板のようなものですぐに連絡を行っています。同僚に対して、介護休業を取得すると迷いなくいえる職場環境であったわけです。  この点、先ほど見た株式会社日本総合研究所の調査結果を思い出してください。介護離職に至った理由として、介護休業制度のような介護と仕事の両立支援制度をうまく利用できなかったことが全回答の過半数であったと紹介しましたが……。この秋田藩のケースは、そうした問題がクリアされていることがわかります。父親が倒れたと知ったのが10月6日、介護休暇の申請を出したのが10月8日、介護を理由に休業を開始したのが10月9日です。現代の企業組織でもそう簡単にはマネできないような、迅速な介護休業の取得ではありませんか。  このような武士を対象とした介護休業制度があったのは、秋田藩のみではありません。幕府が正式に制度化し、全国の藩で積極的に行われていました。つまり、サムライケアラーはあたり前のように各地に存在していたわけです。  ではいったいなぜ江戸時代に介護休業制度があったのでしょうか。何がどうなって、そんな制度がつくられていたのでしょうか……?次回、この点を明らかにしつつ、もう一つ「サムライケアラー」の事例をご紹介しましょう。 【引用資料】 ※1:公益財団法人生命保険文化センター「介護離職者はどれくらい? 介護離職をしないための支援制度は?」 https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1099.html ※2:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/main_202603.pdf→PDF資料8ページ ※3:財務省『令和8年度 防衛関係予算のポイント(概要)』 https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2026/seifuan2026/20.pdf ※4:株式会社日本総合研究所『令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業』→PDF資料119ページ https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000110.pdf 【参考資料】 ア井将之 著『武士の介護休暇――日本は老いと介護にどう向き合ってきたか――』(河出書房新社)2024年 【P30-33】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第166回 京都府 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 全世代が持ち味を発揮する組織へ 50代から緩やかに後進へ仕事を引き継ぐ 企業プロフィール 株式会社セイワ工業(京都府久世郡(くせぐん)久御山町(くみやまちょう)) ▲創業 1950(昭和25)年 ▲業種 材料溶断、産業用機械の大物部品、製缶・機械加工等 ▲社員数 31人 (60歳以上男女内訳) 男性(4人)、女性(1人) (年齢内訳) 60〜64歳 3人(9.7%) 65〜69歳 1人(3.2%) 70歳以上 1人(3.2%) ▲定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員65歳まで継続雇用。以降は運用により基準該当者を年齢上限なく継続雇用。最高年齢者は76歳  京都府は、日本有数の歴史都市であり、「鹿苑寺(ろくおんじ)(金閣寺)」をはじめとする世界遺産を有しています。また、伝統工芸品が生活や産業に根づき、毎年多くの観光客が国内外から訪れています。JEED京都支部高齢・障害者業務課の石橋(いしばし)弥生(やよい)課長は、京都府と同支部の取組みについて次のように話します。  「観光のイメージが強い京都府ですが、電子部品や精密機器、計測・分析機器などの製造業も盛んで、世界的なものづくり企業を多数輩出しています。地域別に見ると、京都市中心部には観光資源に加え、大学・研究機関、IT分野や先端産業が集積しています。南部地域では研究開発拠点や製造業、学研都市の整備が進み、北部地域では農林水産業、機械・繊維産業、港湾関連産業が地域経済を支えています。当支部の相談・助言活動では、業種や事業規模の区別なく、各事業所が抱える課題に寄り添い、実情に即した具体的な解決方法の提案を心がけています」  同支部で相談・助言活動に取り組むプランナーの一人、内藤(ないとう)孝夫(たかお)さんは、長年の会社勤めで得た経営・労務・人事・社員教育などの経験を活かし、府内事業所の高齢者雇用の取組みを支援し、人材確保などの課題解決や企業の成長を支援しています。  今回は、内藤プランナーの案内で、「株式会社セイワ工業」を訪れました。 多様なものづくりを支える会社  株式会社セイワ工業は、産業用機械の大物部品加工を得意とする金属加工メーカーです。創業は1950(昭和25)年、清和工業の名称で鉄工所としてスタートしました。その後、有限会社設立をはじめ設備や技術力の向上を図りつつ事業規模を拡大。2000(平成12)年に株式会社セイワ工業に改組し、現在では業界屈指の保有台数とされる7台の五面加工機を保有しています。製造する物の大きさや構造上の特性などを考慮し、最適な機械を選択して迅速な需要への対応や、材料の溶断・溶接・機械加工の一貫生産体制を整えていることを強みとし、国内外のさまざまな産業用機械メーカーから製品を受注し、多種多彩なものづくりを支えています。  同社は、「すべての仲間と笑顔を共有したい お客様のみならず、社員と取引企業などすべての仲間と共に素晴らしい笑顔でいたい。」を企業理念に掲げ、社員が互いに理解しあい、力をあわせて前向きな行動ができる会社づくりを目ざしています。  取締役・総務部長の松井(まつい)義直(よしなお)さんは、同社について次のように説明します。  「『人は財産、社員は家族、社員の家族も家族』という考えのもと、年齢や性別などにかかわりなく、個性を尊重し、また、調和を大切にして働きながら地域や社会貢献にも取り組んでいます。最高齢者は76歳で、60歳を過ぎてから当社に入社し、機械加工と旋盤を担当しています。最年少者は20歳。平均年齢は41歳です」  家族的な温かい社風に加え、年齢や社歴を問わず努力した者を評価する仕組みがあること、また、互いの信頼関係を築くために多数のレクリエーション活動を行うなど福利厚生が充実していることも同社の特徴です。  例えば、新入社員歓迎会を兼ねた社員旅行を毎年3泊4日で開催し、これまでにハワイ、中国、タイ、ベトナム、沖縄などに出かけています。ほかに、運動会やボウリングなどのスポーツ大会を年4回開催。企画は若手が中心になって考えており、工夫を凝らしてみんなで楽しめるプログラムが用意されるそうです。また、クリスマスシーズンは工場をイルミネーションで装飾しており、地域でもたいへん評判がよいとのこと。さらに、「アソビバ」と名づけたジムやインドアゴルフ、ダーツが楽しめる施設を社内に整備しています。地域貢献では、月1回本社と工場周辺の道路清掃を実施。地域の中学生の職場体験、インターンシップの実施なども行い、かつて参加した子どもが同社に就職したこともあったそうです。  「社員旅行の参加率は約8割、そのほかの行事は9割を超えており、遊ぶときはみんなで楽しみます」と松井部長。こうした取組みが功を奏しているのか、毎年新卒者を採用し、離職率の低い職場を実現しています。 社員は財産、働けるうちはいつまでも  同社は2002年に60歳定年と希望者全員65歳までの継続雇用制度を整えました。継続雇用はフルタイム勤務を基本とし、1年ごとに契約を更新します。フルタイム以外にパートタイムで働くこともでき、いずれも基準該当者は年齢上限なく継続して勤務することができます。  「社員は会社にとってもっとも大切な財産ですから、働けるうちは勤務してほしいですし、退職しても家族の一員という考えを持っています」(松井部長)  内藤プランナーが同社を初めて訪問したのは、2022(令和4)年10 月のこと。その時点では比較的若い人材が多い同社でしたが、採用環境が厳しさを増していくことが予想されるなか、次のような話をしたと内藤プランナーはふり返ります。  「企業として技術力を維持・継承していくためには、もっとも大切な財産である社員の技術・ノウハウを、今後も企業内で発揮できる労働環境(福利厚生面を含め)を整えていくことが、若い人たちの就業意識の向上につながり、労働者の確保要因として効力があることなどをお話ししました」  そして2025年12月に2回目の訪問をした際は、50代の社員が増えてきたことから、「将来を見すえて、70歳までの就業を視野に入れた具体的な提案として、就業規則サンプルを提示したほか、JEEDの雇用力評価ツールを活用し、同業他社との比較から、会社の強みや検討課題を洗い出し、その対応策などをお示ししました」と内藤プランナーは話します。それらの提案や助言をふまえ、同社ではいま、定年年齢の引上げの検討や、働く意欲と能力があるかぎり、勤務を継続できる労働環境の整備を進めています。  また、同社では以前から30代が仕事の中心をになう組織づくりを行っており、ベテラン従業員は50代から緩やかに、仕事や役割を後進に引き継ぎ、その後は職場全体を見守るような役割をになっていくといいます。  今回は、そのような仕事の引継ぎを経験されたお二人に話をうかがいました。 若い世代に仕事を引き継ぎ、全体を見守る  勤続25年のHさん(63歳)は、定年後もフルタイムで勤務し、現在は営業事務を担当しています。「営業担当者は外出していることが多いため、お客さまから問合せがあったときなどに代わって対応することもあります」とHさん。お客さまと製造担当者との間に入るため、受注した機械の図面を理解していないとできない仕事です。「私が間違うと現場の人が困るのでそこは気をつけて行っています」と引き締まった表情で語ります。  以前は総務・経理を長く担当しており、「55歳になったころ、世代交代ということで、総務・経理の仕事を1年半くらいかけて次の世代に引き継ぎ、それから営業事務を担当しています」とのこと。ただ、総務・経理を担当していたときから営業事務の業務にもたずさわっていたため、現在の仕事に不安はなかったとふり返ります。  「定年を迎える前は、定年後がどのようになるのか想像もつかなかったのですが、定年を機に『今日からこっちの作業をしてください』といわれるのではなく、同じ仕事で同じような条件と状態で働ける環境で、とてもありがたく感じました。周囲のみなさんも変わらずに接してくれています」と定年を迎えたときの実感を語ってくれました。いまは自らの仕事に責任を持ちながら、「若い人たちの指導役はほかにいますので、そのサポート役として、何か気づいたことがあれば自分の持っている経験を伝えていけたらと思っています」と職場での現在の役割を語ります。  黒川(くろかわ)彰(あきら)さん(63歳)は、勤続31年。定年を迎える2年ほど前まで高度な技術を要する機械オペレーターとして働いていました。現在は、出荷前に行う製品の検査を担当しています。  「図面通りにつくられているか、最終確認する仕事です。製品の大きさや形状はさまざまで、8mほどの大きさの製品もあります」と黒川さん。  黒川さんは、同社の現社長である東(あずま)憲彦(のりひこ)代表取締役と同級生で、互いに気心の知れた仲とのこと。「社長から機械加工を教わり、ともに事業をつくってきました。定年前に、『次の若い人にバトンを渡していこう』と社長から話がありました。経験のある者が同じ仕事をずっとしていると、その人が働けなくなってしまった際に会社が困ります。そうならないよう、経験のある者が順次、次の人を育てていくというのが会社の方針で、私も同じ思いで引継ぎをしました。機械オペレーターは100分の1mmの精度が求められる厳しい仕事でしたから、それに比べると検査はやりやすいです。いま担当している仕事は長年の経験が活かせるのでやりがいもあります。検査で気づいたことがあると、なぜそうなったのか、つくった人が自分で考えて理解できるように導いていくことを心がけています」と仕事と定年前の引継ぎについて語ってくださいました。  また、同社の好きなところをたずねると、「前向きな行動であれば、自由に挑戦させてもらえることです」と黒川さんは即答し、そんな前向きな若手たちを見守り、支えていきたいと笑顔で話しました。 だれもがストレスなく働ける会社を目ざす  同社には、「若者の会」という、会社の将来を展望し、勉強会などを定期的に開催している会があるそうです。技術展などにも若手が積極的に参加しており、「ミドルシニア世代は、そういった若い世代を応援していると思います」と松井部長は話し、「人を大切にして、だれもがストレスなく働ける会社を目ざします」と今後を語りました。  内藤プランナーは、「人を大切にする姿勢が行きわたっているとあらためて感じました。今後60歳を超える社員が増えても、現在の社風であれば、ほとんどの人が70歳くらいまで働き、次の人にバトンを渡していくというよい循環が続いていくのではないでしょうか」と述べ、今後は健康対策などのアドバイスをしたいと話しました。  各世代が家族のようにつながって、互いを敬う職場づくりをしている同社には、技術力に加え、表からは見えない力も育まれていて、会社をより強くしているように感じました。 (取材・増山美智子) 内藤孝夫プランナー アドバイザー・プランナー歴:15年 [内藤プランナーから] 「『三方よし』の考えのもと、高齢者活用のさまざまな情報を訪問先企業にお伝えしています。少子高齢化に対応した人事施策の手がかりをつかんで具体的な制度設計に役立てていただくことで、人材確保と少子高齢化・労働力減少への対応に少しでもお役に立てればと務めております」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆京都支部高齢・障害者業務課の石橋課長は、内藤プランナーについて「企業の人事部門での経験から、特に人事労務管理や製造現場における品質管理などの職場改善を得意分野として15年にわたり当支部で活躍しています。豊富な知識と穏やかな人柄を活かし事業主へていねいなヒアリングを行い、課題解決に向けた的確な提案を行っています。当支部が信頼を寄せるプランナーの一人です」と紹介します。 ◆京都支部高齢・障害者業務課は、阪急電鉄「長岡天神」駅から徒歩8分、またはJR「長岡京」駅から徒歩15分の京都職業能力開発促進センター(ポリテクセンター京都)内にあります。京都市と大阪市の中間に位置し、公共交通機関によるアクセスの利便性が非常に高い立地となっているうえ、周辺では特産品である筍の生産・出荷が行われているなど自然が身近に感じられる環境でもあります。 ◆府内では、10人の70歳雇用推進プランナーが活動しており、事業所訪問を実施しています。2025年度は511件の相談・助言活動、180件の制度改善提案を行いました。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●京都支部高齢・障害者業務課 住所:京都府長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 電話:075-951-7481 写真のキャプション 京都府久世郡久御山町 株式会社セイワ工業本社・本社工場 松井義直取締役・総務部長 出荷前の製品を厳しいまなざしでチェックする黒川彰さん 【P34-35】 第116回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  小林次男さん(75歳)は、戦後の経済復興と高度経済成長を支えてきた公益団体に入職し、定年後も嘱託職員として、多忙な日々を送る。働くことと楽しむことを車の両輪ととらえ、アクティブに人生を謳歌(おうか)する小林さんが、生涯現役で働くことの醍醐味(だいごみ)を語る。 公益財団法人 日本生産性本部 参与(さんよ) 小林(こばやし)次男(つぎお)さん 半世紀を日本生産性本部とともに  私は群馬県高崎市(たかさきし)の生まれです。高校まで地元で過ごし、大学進学のために上京しました。群馬県が設けた学生寮に入寮して、充実した4年間を過ごすことができました。学生寮の仲間とは、いまも定期的にゴルフを楽しむなど交流が続いています。若いときの友人は宝物です。  大学は商学部を卒業しました。サラリーマンの家庭で育ち、「社会貢献活動をしている組織で働きたい」と漠然と思うようになりました。大学卒業後も就職活動を続け、1975(昭和50)年に公益財団法人日本生産性本部(以下、「日本生産性本部」)に就職しました。幅広い業務内容も魅力でしたが、募集要項の「完全週休2日制」という時代を先取りする働き方に心惹かれたのも事実です。当時は、大企業でも月1回の土曜休みの会社が大半で、外資系企業でさえ隔週週休2日制があたり前の時代でした。  時代はオイルショックを乗り越え、高度経済成長の真っ只中でした。労働市場は活気にあふれ、数多くの就職先の選択肢のなかで、日本生産性本部を選んだのは「時代を先取りする空気」を感じたからだと思います。60歳での定年退職後は嘱託職員として勤務。昨年からは週3日の勤務で会員サービスの仕事にたずさわっています。同じ勤務先で長く働き続けてこられたことには感謝の念しかありません。  昨年、設立70周年を迎えた日本生産性本部は、産業界の生産性向上を支えるさまざまな分野で画期的な活動を続けている。設立当初の活動を知る人が少なくなるなかで、小林さんは、その存在意義を会員に伝えていきたいと笑顔で語る。 社会全体が活気にあふれた時代のなかで  最初に配属されたのは「社会経済国民会議」という部署でした。高度経済成長が続く一方で、公害などの環境問題も新たに生じていましたから、10年後、20年後の日本のあり方を検討する組織がつくられ、その事務局に入りました。予算管理などを担当して8年を過ごし、学ぶことがとても多く、大いに鍛えられました。  そのころ、日本における生産性の向上は世界から注目されており、通商産業省(当時)の肝いりで国際会議の開催が決定し、私はその事務局に入ることになりました。31歳のときのことです。国際会議には約1000人が参加し成功を収めましたが、会議開催の直前はいまでは考えられないほどの過重労働でした。国際会議の準備のために新卒で採用された職員の親御さんから、あまりにも残業が続くので、心配して電話がかかってきたことなどを思い出します。だれもが働きすぎていた時代でした。  「働き方改革」が進展して、日本人の働き方は大きく変わり、幸せな時代を迎えているようにみえるが、その一方で、社会に閉塞感があふれていると感じる人もいる。「そういう世の中でも、豊かさの実現を目ざしたい」という小林さんの言葉に元気をもらった。 国民生活の向上という理念のもとで  国際会議の事務局の仕事の後は、企業向けの社員研修を運営する職務に就きました。そこで8年間、新入社員研修や管理者研修を担当しました。その後、「メンタルヘルス」を推進する部署に移りました。高度経済成長時代に働き続けることに、多くの人がやりがいは感じつつも、心に疲れを感じ始めてきたころです。メンタルヘルスの問題は生産性にも大きく影響することから、国の協力を得て研究所を設立したのです。世の中には、まだメンタルヘルスという言葉もありませんでした。そこで日本生産性本部では、独自の自己診断システムを開発。自己診断の結果は本人以外には知らせないようにしてプライバシーを守りました。  日本生産性本部はこのように、その時々の問題に対峙し、必要ならば組織内組織を設立して、真摯に取り組んできました。私が大学を出たころの就職活動は、いわゆる売り手市場でしたが、僭越(せんえつ)ながら、ここを職場に選んだのは、私に先見の明があったからかもしれません。取り組む課題は時代とともに変化していっても「生産性向上による国民生活の向上」という目標がぶれることはありません。 ポジティブ思考で生涯現役を目ざして  メンタル・ヘルス研究所や生産性新聞、会員サービス部門を経て、定年までの10年間は、法人運営業務やマスコミ対応などの広報業務を担当しました。  60歳で定年を迎えたとき、第二の人生の選択肢がいろいろとありましたが、嘱託職員として継続して働くことを選びました。契約の更新を重ね、その時々の課題をクリアすれば70歳までは働かせてもらえるかと漠然と考えていましたが、75歳になるまで元気で働き続けることができたのは、私の周囲の人の支えのおかげだと思っています。  創刊70年を迎える生産性新聞の広告も担当し、70歳から5年間は、ふたたび編集も手がけました。いろいろな方の取材を通して随分勉強させてもらいました。さまざまな部署でいろいろな経験をしたことが人生を豊かにしてくれたと思っています。そして、昨年からは週3日の勤務で会員サービスの仕事をしています。企業や労働組合などの会員の窓口担当として、日本生産性本部の活動をお知らせし、理解と協力を求めています。会員を訪問することもあり、やりがいのある日々です。  定年後はアクティブに暮らしたいと思い続けてきた私は、そのためにも物ごとをつねにポジティブにとらえるよう心がけてきました。メンタルヘルスを担当しているときに出会った書籍が、ポジティブ思考の原点になったように思います。私は、働くことと楽しむことは車の両輪だと考えています。定年から15年、現役時代にはなかなか行けなかった海外旅行も実現しました。当初計画したところへはすべて行くことができました。定年前はゴルフ三昧に憧れていましたが、膝への負担が大きいことがわかり、回数を減らしました。身の丈に合った健康管理が大事だと気づき、すべてに無理をしなくなりました。生涯現役のヒントは「無理をしないこと」のような気がします。  シニア世代には現役時代につちかった豊かな経験と幅広い人脈があります。シニアの活用は、不足する人材のカバーだけではありません。シニアの収入が増えれば消費は旺盛になり、市場が活性化し、社会全体に活気が生まれます。何よりも、後に続く世代の人たちの目標ができるのです。私自身、いつまで働き続けられるかわかりませんが、これからも精一杯、仕事に向き合っていきます。  時代をつねに先取りしてきた日本生産性本部で働き続けてこられたことを誇りに、「国民生活の向上」をいつも心の片隅に置いて、生涯現役の道をもう少し歩いていこうと思います。 【P36-39】 高年齢者活躍企業コンテスト 受賞企業の軌跡 最終回 株式会社きむら(香川県高松市)  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)と厚生労働省との共催で毎年開催している「高年齢者活躍企業コンテスト※」。高齢者雇用の推進に資する事例を広く募集し、優秀な事例を表彰しており、その内容は、毎年本誌で紹介しています。本連載では、かつてコンテストで厚生労働大臣表彰を受賞した企業を取材し、その後の取組みの進化・深化をレポートします。第6回は、2017(平成29)年度に最優秀賞を受賞した株式会社きむらを取材しました。 80代も活躍中!65歳定年後、三つの雇用区分を用意 1 大臣表彰受賞後、求人の応募者が増加 栄誉が人材獲得と成長の推進力となる  香川県高松市(たかまつし)に本部と本店を置く株式会社きむら(以下、「きむら」)(木村(きむら)宏雄(ひろお)代表取締役)は、2017(平成29)年に「平成29年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰最優秀賞を受賞した。同社は、生鮮食品を中心とする地域密着型のスーパーマーケット(以下、「スーパー」)を展開する老舗企業。人材獲得競争が激化するなかで、経験や技術を持った高齢者を即戦力と位置づけ、定年60歳(当時)以降の再雇用制度について、雇用の上限年齢を廃止した。また、賃金制度の見直しも行い、本人が60歳時と同じ就業を希望し、支障がなければ再雇用後も役職・給与を継続することとした。これらの取組みなどが高く評価され、厚生労働大臣表彰最優秀賞の栄誉に輝いた。  総務・人事部の藤田(ふじた)誉(ほまれ)部長は、「この賞をいただいてから、当社の求人に対してシニアの方々の応募が増えました。当社の店舗で高齢従業員が活躍していることや、健康で就業意欲があれば長く働き続けられる職場であることがハローワークなどから広まったのだと思います。また、高齢者のための就職面接会といったイベントや、パネルディスカッションのパネリストとして呼んでいただくなど、当社の取組みを多くの方に知っていただく機会が増え、人材獲得に加えて、企業として成長していく推進力になりました」と大臣表彰がもたらした効果をふり返る。受賞と同年の12月には、経済産業省が選定する「地域未来牽引企業」に選ばれるという栄誉にも浴した。翌2018年には、香川県が進める「かがわ働き方改革推進宣言」を行い、長時間労働の是正に取り組んで目標を達成するなど、全従業員の働き方改革も前に進めた。  大臣表彰から9年。この間、コロナ禍があったことは記憶に新しい。全国のスーパーは人々の暮らしを守る大切な役割をになって営業していた。同社でも感染防止対策を徹底して店を開け、従業員は使命感を持って働いていたという。また、流通業界では昨今、全国展開する大手スーパーが地方のスーパーを買収するなどの再編が進んだり、多彩な品揃えのドラッグストアが進出してきたりして、地方のスーパーが生き残るには地域に支持され続ける店舗づくりが以前にも増して求められるようになった。そのような状況下に同社の高齢者雇用はどのように深化したのか。そして、社業にどのような影響を与えているか、同社の軌跡を追った。 2 香川県発祥の地場スーパーとして地元の新鮮な食材を提供  同社は1907(明治40)年に食品を小売りする個人商店として香川県で創業し、有限会社、株式会社への組織変更を経て、現在に至る。1982(昭和57)年には県内2番目となるコンビニエンスストアスタイルの小型スーパーを開設し、店舗に書店を併設したことが注目を集めた。その後、生鮮食品を中心とした事業を展開し、屋号を「新鮮(しんせん)市場(いちば)きむら」とする。2001年からは本格的なチェーン化を目ざし、現在は香川県に11店舗、岡山県に4店舗を展開している。  屋号に「市場」とつけたのは、取り扱う商品の7割を生鮮品が占め、活気に満ちた市場の雰囲気をそのまま店に持ち込んでいるからだという。地域のニーズに合わせた品揃えとするため、店舗ごとに仕入れを行うことも同社の特徴だ。また、事業の継続が困難になった魚市場を買い取ってその運営も手がけており、鮮魚コーナーは、この直営市場のほか、漁船からの直接の買いつけと、直営以外の卸売市場で競り落とすという三つの仕入れルートを持ち、獲れたての魚を箱に入れたままずらりと並べて販売することでも有名になった。魚を目当てに、開店と同時ににぎわう日が多いという。精肉、青果、総菜にもこだわりがあり、最近ではピザチェーン店とのコラボレーション商品が人気となり、総菜部門の売上げを伸ばした。また、お客さま向けのアプリを開発するなど、さまざまな工夫を凝らし、唯一無二の地場スーパーとして地域の人々から親しまれ、人口減少が続くなかでも売上げを維持している。  9年前と現在の同社の取組みの違いとして、SNSや動画配信を使った広報が大幅に増えたことがあげられる。公式のほか店舗ごとの配信もあり、動画は若い従業員が中心になって制作しているそうだが、ミドル・シニア世代の従業員が参加しているものもある。多世代の多様な人材がそれぞれの持ち味とつちかってきた技術や経験を活かして働いているからこそ、同社の店舗が活気と工夫にあふれているといえそうだ。 3 定年を65歳に引き上げ、再雇用の雇用区分を整備。従業員から好評を得る  2026(令和8)年2月1日現在、同社の従業員数は887人。60歳以上の従業員は269人で、全体の30.3%を占めている。内訳は、60〜64歳が83人、65〜69歳が62人、70代が118人、80代が6人で、最高齢者は総菜部門の85歳。  大臣表彰受賞時の『エルダー』誌面によると2017年は、60歳以上は290人で、60〜64歳が126人、65〜69歳が132人、70歳以上が32人。比較すると、現在は70代、80代が大きく増えている。「パートで入って10年以上勤務する方が多いので、おそらく9年前から働いている方々の多くが年齢を重ねて、いまも元気に働いている、ということだと思います」と藤田部長は分析する。  豊富な経験や技術を持つ高齢従業員を即戦力として位置づけ、就業意思があれば年齢の上限なく再雇用する制度をはじめ、再雇用後も人事評価を行い結果によって昇給の可能性があることや、次世代の教育指導役として高齢従業員が活躍していること、作業環境はつねに改善を目ざし積極的な機械化を推進していること、60歳を超えてからの採用も積極的に行っていることなど、9年前から実施している高齢者雇用の取組みはいまも続いている。  ただ一つ、以前は「定年60歳。定年後は、希望者全員を65歳まで再雇用。さらに、運用で本人の就業意思があれば、年齢の上限なく再雇用」としていた定年制度を2024年にあらため、「定年65歳。定年後は、運用で本人の就業意思があれば、年齢の上限なく再雇用」とした。そして、定年後の雇用区分として、大きく次の3区分を整えた。@嘱託社員(定年前と同じ役職・給与を維持する働き方。本人の希望と会社の意向を調整して決まる)、A契約社員(1日8時間のフルタイム勤務で残業なしの働き方)、Bパート契約社員(勤務時間・日数は希望に応じて会社と相談して決まる。多様な働き方が可能)。  定年を65歳に改定したことについて藤田部長は、「以前は60歳定年後、ほとんどの人が60歳時と同じ働き方を希望して再雇用で勤務を継続していました。ただ、65歳前後くらいから、体調や家庭の事情などにより、ゆるやかな働き方を望む人も出てきます。そこで、自分に適した働き方でより長く勤務できるよう、定年を65歳にして、ここで面談をしてその後の働き方をしっかりと相談し、以降も1年ごとに面談を行うことにしました」と改定の理由を語る。従業員からは、「働き方を相談できるタイミングができてよかった」、「無理なく長く働けるようになってありがたい」といった好意的な声が聞かれているという。面談のタイミングで退職を決める人もいて、「面談の機会が決まっていてよかった」という声も聞かれたそうだ。  定年を65歳にしてから、次のようなこともあった。大手企業に勤務していた男性から求人へ応募があり、動機をたずねると、その男性の会社は60歳定年のため、65歳まで正社員として働くことができ、その先も年齢上限なく再雇用の道があるきむらに転職したいとのこと。その結果、経験豊富な50代を採用できたという。また、他社を60歳で定年退職後、きむらで正社員として働きたいと入社した人もいる。求人への応募者は9年前より年齢が上がっていて、経験と意欲があれば70歳超も採用している。人材獲得競争は年々激しさを増しているが、70代、80代も活躍できる雇用制度や職場づくりが同社にとって大きな力になっていることは間違いなさそうだ。最近は外国人材の採用にも取り組んでいる。  同社は、地場スーパーとして、地場の漁師や農家の生産者が生き残っていくことも意識して、生鮮食品に特化した事業にこだわっている。従業員には、そうした思いを強く持って仕事に臨んでいる人も多いという。「香川県発祥のスーパーはかつて多数あったのですが、大手による買収や事業譲渡が相次ぎ、当社を含めて数社となりました。そうした状況は社長から従業員に伝えており、従業員は地場のスーパーとして誇りを持ち、さらにがんばっていこうという思いを持って仕事をしています」(藤田部長) 4 経験豊富なベテランが、若い人材を育て安心して成長できる職場環境に貢献  同社で働いている高齢従業員の方々は、高齢者雇用制度や自身の働き方についてどのように感じているのだろうか。70代と60代のお二人からお話をうかがうことができた。  茶納(ちゃのう)英明(ひであき)さん(71歳)は、以前に勤務していたスーパーが閉店し、50代半ばできむらに入社して約15年。「当時、再就職は困難かと思いましたが、木村社長に救われました」とふり返る。店長の経験を経て、定年後は嘱託社員として太田本店に勤務しているが、昨年12月から急きょ同店の店長代理となり、次の店長を育てる役割もになっている。藤田部長は、「店長の欠員ができて経験者の茶納さんに代理をお願いしました。朗らかにみんなを引っ張ってくれる頼もしい存在です」と茶納さんを紹介する。茶納さんは、「店長経験があり、『店長代理』にと声がかかったことはうれしかったのですが、10年のブランクがあり、仕事の流れなども変化していますから、かなり重圧を感じました。それでも代理をやろうと決意したのは、社長の考え方や仕事に対する熱意が好きですし、何よりスーパーの仕事が好きですから、会社の役に立てるなら、という気持ちが勝りました。店長代理を務めながら、後進の育成もしています。店長代理として、たくさんの地域の方々に愛される店づくりを、そして、従業員が明るく元気に仕事ができる職場づくりを目ざしてがんばります。この仕事は天職と思っていますので、体調管理に気をつけて、あと10年は続けていきたいです」と笑顔で話してくれた。  上田(うえだ)耕司(こうじ)さん(62歳)は、家族が経営していたスーパーに長年勤務した後、13年前に入社した。スーパー勤務の経験は40年、そのうち37年は青果を担当し、きむらの青果部門でもチーフを務めた。藤田部長は「現在はチーフの役を若手に引き継いで、チーフをサポートする役をになっています。青果の知識も経験もたいへん豊富なので、いろいろなことを教えていると思います」と上田さんを語る。上田さんは、「チーフはすでにだいたいのことができるようになりましたので教えることはあまりなく、野菜に関する知識や情報を伝えたり、イレギュラーなことが起こったときに支えたりするくらいです。いまは仕入れの担当ではないのですが、担当していたときと同じような感覚で仕事に臨み、お客さまにどのように提供するかを考え、工夫することがやりがいになっています。  これからも活気があるスーパーであり続けるよう、補佐役としてしっかり仕事をしていきたいと思います。そのなかで、小さなことにもドキドキワクワクできるような、そんな働き方を続けていけたらいいなと思っています」とおだやかな表情で語った。  お二人の話から、経験豊富なベテランの存在が若い人材をしっかり育てていること、若手従業員が安心して育つ環境づくりに高齢従業員が貢献している様子が伝わってきた。  藤田部長は、今後に向けて次のように語った。「地元の新鮮な魚、肉、野菜などを地元のお客さまにおいしく食べていただけるよう、また、香川県発祥のローカルスーパーとして誇りを持って一生懸命仕事をする人材を採用し、育成することを続けることが大事な課題です。新卒者の採用に注力していますが、高齢者の方々の力も必要です。今後も働きたいと思っていただけるスーパーであるよう、よりよい職場づくりに取り組んでいきます」 ※2020(令和2)年度までの名称は「高年齢者雇用開発コンテスト」 写真のキャプション 総務・人事部の藤田誉部長 「新鮮市場きむら」の太田本店 太田本店の店長代理を務める茶納英明さん 青果部門のチーフをサポートする上田耕司さん 【P40-43】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第95回 高年齢者就業確保措置、問題社員の対応について 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲/弁護士 木勝瑛 Q1 高年齢者雇用の基本的な枠組みについて知りたい  高年齢者雇用を推進するうえで、高年齢者雇用安定法において規定されている、高年齢者を対象とする制度の全体像を教えてください。 A  65歳までの高年齢者雇用確保措置と、70歳までの高年齢者就業確保措置に大きく分かれます。前者については希望者全員を対象とすることなど厳格な管理が必要とされていますが、後者については、現時点では努力義務となっています。 1 高年齢者の就業機会確保に関する制度  前回※は、高年齢者雇用安定法が定める65歳までの高年齢者雇用確保措置について解説しましたので、今回は、70歳までの就業確保措置について解説します。  高年齢者雇用安定法は、「定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的」としています(同法第1条)。  この規定のうち、「高年齢退職者に対する就業の機会の確保等」とされている部分が、今回のテーマである「高年齢者就業確保措置」として、現在の高年齢者雇用安定法に、事業主に対する努力義務が定められています。 2 高年齢者就業確保措置について  高年齢者就業確保措置として掲げられているのは、@70歳までの定年の引上げ、A65歳以上の継続雇用制度の導入、B定年の廃止のいずれかをとることに加えて、C高年齢者等との委託契約その他の契約(労働契約を除く)を締結すること、D事業主自らまたは出資する団体が行う社会貢献事業について、当該事業の実施者が委託契約その他の契約(労働契約を除く)を締結することです(同法第10条の2)。  これらのうち、CおよびDは雇用以外の方法による就業機会の確保であり、創業支援等措置と呼ばれています。  まず、@からBまでは、70歳までの雇用継続であり、65歳までの高年齢者雇用確保措置の延長線上にあるものです。そのため、65歳までの高年齢者雇用確保措置とほぼ同様の運用を行うことで対応は可能と考えられます。  相違点としては、65歳までの高年齢者雇用確保措置においては、希望者全員を対象とすることが義務づけられていますが、65歳以降の70歳までの雇用については、現時点では努力義務にとどまっているということもあり、希望者全員を継続雇用の対象とするのではなく、一定の基準を設けて継続雇用を行う高年齢労働者を限定することが可能となっています。  例えば、直近数年間の人事考課の結果や出勤率を基準としたり、継続的に働くために必要な体力などが備わっているかを確認する観点から健康診断の結果などに基づき産業医が業務上の支障がないと判断できることを条件とするといった方法も考えられます。  この「一定の基準」は、就業規則に記載することになることから、労働者の過半数を代表する労働組合がある場合は当該労働組合と、ない場合には労働者の過半数を代表する者(以下、あわせて「過半数代表者」)の意見聴取が必要となりますが、恣意的(しいてき)な基準を設けることを回避する観点から、労使間の協議を行い、同意を得ることが望ましいと考えられています。  例えば、「会社が必要と認めたものにかぎる」とか、「男性にかぎる」とか、「組合員を除く」といった基準を設けることは、恣意的な内容であり許されないと考えられています。  次に、CおよびDの創業支援等措置は、雇用以外の方法による就業機会の確保です。雇用と比較すると、高年齢者本人がリスクを負う程度が高いこともふまえて、導入するための要件も定められています。  まずは、創業支援等措置を導入するためには、事業主が創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、当該計画について過半数代表者からの同意を取得する必要があります。ただし、@からBまでの措置と、CおよびDの措置の両方を講ずる場合には、@からBまでの措置を講じることで努力義務を果たしたものとして、計画に過半数代表者からの同意を得ることは必ずしも必要ないものとされています。  過半数代表者からの同意取得後には計画を労働者に周知したうえで、個々の高年齢者との間で契約を締結することが必要です。また、Dの方法による場合で出資する団体と委託契約を締結させることを予定している場合は、事業主と当該団体の間で、当該団体が高年齢者に対して社会貢献活動に従事する機会を提供することを約する契約を締結しておくことも必要です。  計画には、@創業支援等措置を講ずる理由、A従事する業務内容、B支払う金銭に関する事項、C個別契約を締結する頻度、D納品に関する事項、E契約の変更に関する事項、F契約の終了に関する事項、G諸経費の取扱いに関する事項、H安全および衛生に関する事項、I災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項、J社会貢献事業を実施する法人その他団体に関する事項、K対象者のすべてに適用される定めをする場合は当該事項(秘密保持義務、個人情報の取扱いなど)を記載することが必要とされています。  さらに、個々の高年齢者との間で契約を締結することとなりますが、契約は書面によることとされており、契約締結時には計画を記載した書面を交付したうえで行う必要があります。また、委託契約とするために、高年齢者と締結する契約が労働契約とならないように内容に留意し、また実態においても指揮命令を継続しないようにしなければなりません。  なお、65歳以降の継続雇用を行う場合には、高年齢者の労働災害防止のための指針に則して、安全衛生に関する教育などを実施することが求められており、創業支援等措置においても、雇用関係ではないとはいえ継続的な関係となることから、同指針に基づく教育等を行うことが望ましいと考えられています。 ※前回(2026年5月号)は、JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202605/#page=48 Q2 問題社員に対してどのように対応していけばよいのでしょうか  当社には、勤務不良や問題行動が多く、くり返し指導しているにもかかわらず一向に改善されない従業員がいます。注意をしても、他責的で、感情的かつ攻撃的な態度をとる状況です。どのように対応すべきでしょうか。 A  まずはくり返しの指導や教育に力を尽くし、解雇を回避する必要があります。配置転換が可能であるならば配置転換を行うなどして、ほかの業務で真価を発揮できるよう試みる必要があります。それでも改善が見込めない場合に初めて解雇を検討することになります。 1 いわゆる「問題社員」について  問題社員についての相談は毎年かなりの数が寄せられます。会社は人の集まりであるため、各従業員が実力を発揮できなければ会社の業績は伸び悩みます。また、問題社員がほかの従業員に悪い影響を与えることも少なくありません。問題社員が原因で退職者が生じたり、ほかの従業員のメンタルに不調をもたらすこともあります。そのため、問題社員が発生した場合には、会社は早期に適切な対応をとる必要があります。  他方で、会社が「問題社員」と認識していても、客観的には従業員の教育不足であったり、環境にマッチしていなかったり、上長と馬が合っていなかったりと、会社が「個性のある従業員」の真価を発揮させられていないだけのことも多くあります。この場合、会社としては、指導教育の体制を整える必要がありますし、配置転換や業務内容の見直しなどを検討する必要があります。これによって、個性のある従業員一人ひとりの真価を発揮させることが、まず第一に目ざすべきところでしょう。 2 問題社員への対応について  労働契約法第16条は、解雇につき、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」であることを要求しており、これを欠く場合には、解雇権の濫用として無効と規定しています。ここにいう客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性は、規範的な概念であるため、時代や場所によって移り変わるべきものといえます。  しかしながら、少なくとも、現代においては、会社として問題行動の改善のための行動をせずにした解雇は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと判断される傾向にありますので、やはり、まずは指導教育・配置転換・業務内容の見直しなど、会社として問題行動の改善のためにやれることをやり尽くすことが重要でしょう。  問題社員が発生した場合にすぐに解雇を検討してしまう会社がありますが、このような対応は妥当ではありません。前述の通り、まずは指導教育・配置転換・業務内容の見直しなど、会社として問題行動の改善のためにやれることをやり尽くして、それでも改善の見込みがない場合に、初めて解雇を検討すべきこととなります。 3 AGC事件(東京地裁令和7年8月21日判決) 問題社員への対応として参考になる裁判例として、AGC事件があります。本裁判例は、会社が、従業員の問題行動や勤務不良について、約9年にわたり指導や配置転換、業務内容の変更をくり返したものの改善せず、そればかりか従業員は他責的な言葉をくり返したり、感情的かつ攻撃的な態度をとっていたため、従業員を解雇した事案です。従業員側は雇用契約上の地位の確認などを求めて提訴しましたが、裁判所は、解雇を有効として、原告(従業員側)の請求を棄却しています。被告の対応を評価した裁判例として参考になります。  裁判例は、以下の理由で解雇を有効と判断しました。  「@原告は、……、自己の担当業務と関連しない抽象論やあるべき論に固執して担当業務を円滑に進捗することができず、面談等において指導を受けながらこれに従わなかった……、A……平易な課題設定がされた上、特別な支援体制が執られ、手厚い指導がされたにもかかわらず、課題達成に必要のない自己の見解に固執して、課題を達成することができなかった……、B……午前9時を過ぎて出社する場合には事前に連絡するよう指導されていたのに、……独自の見解に基づいて事前連絡なく午前9時までに出勤しないことを繰り返し……注意指導にも従わなかった……、C……上長に対して、業務に関係しない不適切な内容のメールを繰り返し送信し、……繰り返し注意指導を受けたにもかかわらず……止めなかった……、D原告は、……上記のメールが不適切な内容のものとは考えていない旨供述している……。……原告は、……注意指導にもかかわらず、独自の見解を正当なものであると考えてこれに固執し自らの行動を一切変えようとしない独善的な姿勢が顕著である……。」  「しかも、……@……原告が担当業務を円滑に遂行できないのは、もっぱら周囲の指導力不足によるものである旨の他責的な言動を繰り返した……、A原告は、……大声を出す、机を叩く、暴行におよぶなど、感情的かつ攻撃的な態度を取り、これにより職場の同僚が原告を怖がることとなり、上長が原告に対する指導を躊躇せざるをえない事態となった……。このような原告の態度は、自省する能力の欠如を表す……、職場内の円滑なコミュニケーションを阻害し、職場の協調性を損なう……。」  「そして、被告は、……約9年間にわたり、原告の配属や担当業務を変更して原告が行うべき業務の水準を下げる一方で、特別の支援体制をとるなどして継続的に指導を行い、原告の不適切な言動に対しても注意指導を繰り返してきた……。……被告は、原告の雇用を継続するための努力を尽くした……、他方、上記のような原告の考え方や姿勢が改善する見込みは極めて乏しい……。」「本件解雇は、客観的合理的理由があり、社会通念上相当であるから、有効である。」 4 まとめ  このAGC事件では、会社側は約9年間にわたって、対象従業員の配属や担当業務を変更したり、対象従業員の行うべき業務の水準を低下させたりして、対象従業員が能力を発揮できる体制を整えるよう尽力するとともに、特別な指導体制を整え、手厚い指導がなされていたとされています。  これに対し、従業員側は自己の考えに固執して改善を行わず、攻撃的な態度を取る状況であったと認定されています。このような事実関係においては、解雇を有効とした本裁判例は妥当な判断でしょう。問題がある従業員に対する会社側の対応として、参考になる事例です。 【P44-45】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第68回 「スポットワーク」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「スポットワーク」について取り上げます。 スポットワークは短期的・単発の働き方  スポットワークは、SPOT(一時的)とWORK(働く)を組み合わせた造語で、法律において定められた用語ではありません。  厚生労働省のリーフレット『「知らない」では済まされない「スポットワーク」の労務管理』(2025〈令和7〉年7月)※1によると「スポットワークとは、短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと」としています。また、財務省の資料である『スポットワーク市場の動向と展望について』※2の説明が、この働き方の特徴をより示しており、「継続した雇用関係を持たず、数時間〜数日間の期日で働くこと」としています(傍線は筆者による)。  このような働き方をする人をスポットワーカーと呼びますが、重要なのは、短期間でも業務を発注した事業主とスポットワーカーの間には直接の雇用契約が結ばれるという点です。このため、短時間・単発の仕事であろうと労働基準法の対象となります。同じような働き方を示す用語にギグワークがありますが、こちらは短期的・単発の仕事を業務委託契約に基づき実施するため、原則的には労働基準法の対象外となります。  スポットワークの形態についてはさまざまな形態があるものの、スポットワーク仲介事業者が運営するスポットワークアプリを通して、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間に求人と応募をマッチングさせることで雇用契約が成立し、仲介事業者が賃金の立替払いまで行うサービスが多く採用されています。リーフレットをはじめとした政府の資料もおおよそこの形態を前提に記載されています。 スポットワークの働き方は急速に拡大している  このスポットワークの働き方は、近年急速に拡大しています。  拡大の要因は三つに整理できます。一つめは労働力の確保という事業者側のニーズです。日本労働組合総連合会(連合)がまとめた『スポットワークに関する調査2025』(2025年1月公表)(以下、「連合調査」)※3によると、スポットワークで従事したことがある仕事の内容のうち回答上位3位は、「倉庫作業員(27.5%)」、「飲食店スタッフ(21.0%)」、「イベントスタッフ(17.2%)」という、求人しても応募者が集まりにくい業務やかぎられた期間中に人手が必要な業務があがっています。二つめは短期的・単発業務に対するニーズの高まりです。連合調査のスポットワークで働こうと思った理由の回答上位3位は、「生活のために収入を得たいから(27.1%)」、「空いている時間を有効活用したいから(24.5%)」、「賃金がすぐに受け取れるから(18.4%)」となっています。三つめは、ITの進化によるサービスの利便性です。スポットワークアプリで応募から賃金払いまで一貫して手軽に℃タ施できるサービスは、空いている時間ですぐに稼ぎたいというニーズに対して、非常にマッチしているといわれています。この仕組みがあってこそのスポットワークの拡大であるため、スポットワークという用語よりもCMで流れているサービス名※4やその際に使われるスキマバイトという用語の方がむしろ一般的になじみがあるといえます。  これらの要因から、内閣府の『令和7年度年次経済財政報告』のスポットワークの拡大の状況を参照すると、2019年12月時点ではスポットワークアプリの延べ登録者数は330万人程度だったものが、2025年1月時点には3200万人程度と、10倍近くに拡大しています。 スポットワークの課題  一方で、急速な拡大にともない課題も顕在化しています。スポットワーカーについての保護法などは現行では特になく、短期的・単発の業務であっても通常の労働者とは変わらないという位置づけで労働基準法が適用されます。しかし、その認識・順守が不足しているケースも多くあるのが実際のところです。  例えば連合調査によると、スポットワークで働いている際に仕事上のトラブルを経験することがあったかという問いに対しては、46.8%がトラブル経験ありの回答で、トラブルの内容は「仕事内容が求人情報と違った(19.2%:回答上位1位)」、「労働条件が求人情報と違った(16.5%:同4位)」、「急に仕事が取消しになった(15.6%:同6位)」という状況です。いずれも労働基準法に照らすと違反の指摘を受けざるを得ない内容です。  特に、雇用契約成立後の仕事の取消しについては、出勤前の取消しであれば賃金を支払わないというケースが頻発したこともあり、訴訟にも発展しました。このようなこともあり、厚生労働省は、「別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するもの」として、事業主の都合で丸1日の休業または仕事の早上がりをさせた場合には、休業手当または該当する賃金を支払うようにリーフレットにまとめ周知・徹底することとしました。  このほかリーフレットには、業務に必要な準備行為等も労働時間である点や一方的な賃金の減額は違法である点、スポットワーカーも労災保険※5給付の対象である点、ハラスメント対策が行われるべき点などについても記載されています。あたり前に遵守すべき事項として一般的に浸透しているような内容ですが、スポットワークは“手軽に”成立することから、事業主・スポットワーカーともに労働基準法への意識が低くなりがちなのが課題といえます。  また、空いた時間を活用するという働き方については、長い社会人経験やスキルを有したシニア層がにない手になる可能性は十分にあると考えられます。しかし、株式会社パーソル総合研究所の「スキマバイト/スポットワークに関する定量調査」(2025年1月公表)によると、スキマバイト(スポットワーク)の経験率でもっとも多いのは20〜29歳であり、60〜69歳は2%にも満たない状態です。若年層にはわかりやすいスポットワークアプリの仕組みがシニア層にはなじみにくい点は否定できず、シニア向けサービスの充実が待たれます。 ***  次回は、「労働委員会」について取り上げます。 ※1 本資料は事業主向けで、働き手向けには『ご存じですか?「スポットワーク」の注意点』という資料がある。 いずれも、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.htmlから参照可能 ※2 本資料はスポットワークの登場から現状の動向、市場拡大の背景、課題と展望までがコンパクトにまとめられている。 https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202412/202412l.pdf ※3 以下のホームページでご覧になれます。 https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20250123.pdf ※4 スポットワークの健全な発展の推進を目的とした「一般社団法人スポットワーク協会」の会員であるタイミー社のサービスなどは有名で、年次経済財政報告に統計情報のデータ提供を行っている ※5 労災保険……労働者が仕事や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や亡くなった場合に行われる給付 【P46-49】 特別寄稿 中小企業における高年齢者の採用と戦力化 ―「50歳代正社員」と「60 歳代正社員」との比較― 玉川大学 経営学部 教授 大木(おおき)栄一(えいいち) 1 はじめに ―求められる高年齢者の円滑な労働移動  これまでの高齢者雇用対策は、同一企業内で65歳までの雇用機会を確保する対策を進めてきた。この理由は労働市場を整備して円滑な労働移動を進める施策よりも、同一企業内で雇用を確保する対策を進めるほうが、65歳までの雇用機会を確保する方策として有効であるという判断に基づくものであった。こうした政策を進めてきた効果もあり、制度面・人材活用面でも同一企業内での雇用機会は確保されてきた。2012(平成24)年には、常用労働者が31人以上企業のうち、定年に達した人は約43.0万人おり、継続雇用を希望した人は32.4万人を数え、そのうち実際に継続雇用された人は31.7万人であった。  このように定年に到達しても希望すれば、ほぼすべての人が65歳まで働ける状況になっている(厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告』〈2012年6月1日現在〉)。さらに、2012年度の高年齢者雇用安定法改正では公的年金の支給開始年齢の引上げを受け、継続雇用制度において事業主が定める基準の撤廃により、65歳まで希望すれば働ける仕組みを設けることが義務化され、雇用確保措置の充実を図る改正が行われた。これにより65歳までの雇用確保措置の完全義務化が図られることになった。  しかしながら、2023(令和5)年度の『雇用動向調査』(厚生労働省)を見ると、「60〜64歳」の年間の移動者(再雇用も含む)は527.7千人を数えるが、そのうち、「前の会社の紹介」(「再雇用」も含む)による入職者は101.8千人に過ぎず、高齢者の多くはこれまで働いてきた企業による再雇用や再就職支援よりも、「その他の媒体」(106.5千人)、「広告媒体」(99.9千人)、「公共職業安定所(ハローワークインターネットサービスも含む)」(94.4千人)や「縁故」(87.9千人)、といった人材紹介機関や人的ネットワークを用いて就業機会を得ている。このことは60歳代前半層の多くが再雇用を通じて再就職をしていないことを示している。  このため、70歳雇用を進めるには、定年延長や継続雇用制度の雇用上限年齢の引上げを目ざした就業規則の改定や労使協定の締結、さらには高齢期の就業環境整備を積極的に進めていくと同時に、円滑な労働移動を進めるための対策を検討する視点も欠かすことができない。加えて、採用した中途採用者の早期の戦力化をはかるためには、採用時の情報の非対称性や職場管理者の管理行動のあり方など幅広い観点からの検討が必要となっている。 2 早期の戦力化を図るために募集・採用時に実施したこと  執筆者が参加した(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)(2013)『企業の高齢者の受け入れ・教育訓練と高齢者の転職に関する調査研究報告書』※は過去3年間に「50歳以上の者」を正社員として採用した企業(多くは中小企業)における採用者の早期の戦力化を図るために、募集・採用時と採用後に、具体的にどのような取組みを行ったのかを明らかにしている。 (1)求職者に提供した情報  中途採用者の早期の戦力化をはかるためには、募集・採用時の情報の非対称性への問題に対して、企業がどのような対処・工夫しているのか、さらに、採用者の早期の戦力化をはかるために、企業レベルだけでなく職場レベルの管理職の取組みを明らかにする必要がある。まず、最初に、募集・採用時の情報の非対称性への問題に対して、企業がどのような対処・工夫しているのか、についてみてみよう。50歳以上の正社員を募集・採用するに際して、求職者に伝えた情報についてみると、第1に、「人事制度・賃金制度の仕組み」、「定年年齢や定年後も働くことができる期間」および「仕事の内容」については、50歳代よりも60歳代を募集・採用するに際して、多くの情報を求職者に提供している。第2に、「経営者の考え・経営方針」、「事業の将来性」、「企業風土・文化」、「自社の課題・弱み」などの企業経営に関する情報や、「初任賃金」、「労働時間・休日」および「福利厚生」などの労働状況について、採用年齢にかかわらず、同じ程度に情報を提供している(図表1)。 (2)企業が求職者の能力を知るために実施したこと  採用に際して、仕事上の能力を知るために実施したことは、第1に、「業務経験等について以前勤務していた会社から情報を得た」および「人柄について以前勤務していた会社から情報を得た」については、50歳代よりも60歳代を採用するに際して、求職者の能力を知るために実施した企業が多くなっている(47ページ図表2)。  第2に、「3回以上にわたり面接を行った」、「担当する業務について詳しい社員を面接に加えた」、「業務経験等について紹介を受けた人や会社から情報を得た」、「人柄について紹介を受けた人や会社から情報を得た」、「担当する業務を実際にやらせた」および「仕事上の能力に関するペーパーテストをした」については、採用年齢にかかわらず、同じ程度に求職者の能力を知るために実施している。 3 採用後に早期の戦力化を図るために実施したこと (1)企業レベルの取組み  次に、採用後に中途採用者の早期の戦力化をはかるために、企業レベルと職場の管理職の取組みを明らかにしよう。企業が採用者の早期の戦力化をはかるため実施している取組みは、第1に、「健康・疲労面で定期的にチェックを行っている」、「積極的に声をかけている」および「採用者に対する導入研修」については、50歳代よりも60歳代を採用した企業で実施している。  第2に、「受け入れ者の役割を事業所の従業員に周知している」、「受け入れ者(採用者)をサポートする担当者を決めている」、「経営者・経営幹部と直接話ができる機会を設けている」、「配属される職場の雰囲気を伝えている」、「職場の責任者に受け入れ者の仕事に関する要望を伝えている」および「不満や要望を聞く機会を設けている」については、採用年齢にかかわらず、同じ程度に採用者の早期の戦力化をはかるため実施している。  第3に、採用者の早期の戦力化をはかるために、配属される職場の責任者(管理職)に対して、どの程度、採用者(配属者)に関する情報を提供しているのかについてみると、採用年齢にかかわらず、職場の管理職に対して採用者(配属者)に関する情報の提供状況は変わらない状況にある(図表3)。 (2)職場の管理職が採用者の早期の戦力化をはかるために行っていること  職場の管理職が採用者の早期の戦力化をはかるために行っている取組みは、第1に、採用年齢にかかわらず、採用者を戦力化するための取組みを行った施策の数は変わらない。第2に、戦力化をはかるための具体的な内容についてみると、「受け入れ者と職場のメンバーとの人間関係に気を配っていた」については、60歳代よりも50歳代を採用した企業の管理職で戦力化をはかるために実施している。  これに対して、第3に、「受け入れ者の役割を職場のメンバーに周知していた」、「自らの能力を活かす方法を考えてもらっていた」、「仕事に関する不満や要望を聞く機会を設けていた」および「人事担当者に直接合って受け入れ者に関する情報を得ていた」については、50歳代よりも60歳代を採用した企業の管理職で戦力化をはかるために実施しており、採用年齢により、管理職が中途採用者の戦力化をはかる取組みが異なっていることがわかる。  第4に、「職場が期待する役割を伝えていた」、「職場の仕事の進め方について時間をかけて説明していた」、「働きぶりについて、周囲からの評価を伝えていた」、「仕事上の悩みや相談にのっていた」、「他部門との調整をサポートしていた」、「職場になじむための雰囲気づくりをしていた」および「受け入れ者が懇親会やイベントへ参加するに促していた」については、採用年齢にかかわらず、同じ程度に採用者の早期の戦力化をはかるため職場の管理職が実施している(図表4)。 4 おわりに―企業が「中途採用者に期待する役割」を「知らせる」仕組み・「能力・意欲」を「知る」仕組みの整備(マッチングの仕組みの整備)  早期の戦力化は企業側のメリットだけでなく、中途採用者の離職防止にも大きな貢献を果たすことにつながる。そのためには、今後は、本論で明らかにしてきた募集・採用時の情報の非対称性、組織文化の違いや職場管理者の管理行動のあり方など幅広い観点からの検討がより必要である。そのなかでもっとも重要なことは、企業や職場の管理職が「中途採用者に期待する役割」を明確化し、明確化された期待を知らせる仕組みと企業や職場の管理職が「中途採用者の能力・適性や働き方の希望」を知る仕組みの構築である。  こうした仕組みを構築するためには、企業や職場の管理職と中途採用者の両方を知る社外の第三者からの相談・支援が欠かせない。特に「前の会社」からの紹介などの人的ネットワーク以外の中途採用者にとっては、採用された会社で、早期の戦力になるためには、社会的に両者をつなぐ仕組みが重要になってくる。すでに、障害者雇用の枠組みには、こうした企業と障害者をつなぐ仕組みが構築されており、60歳以降の高齢者についても、同様に、企業と高齢者をつなぐ仕組み(企業や職場の管理職および高年齢者に相談・支援する仕組み)が必要である。 【参考資料】 ・(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2013)『企業の高齢者の受け入れ・教育訓練と高齢者の転職に関する調査研究報告書』 ・大木栄一・鹿生治行(2024)「高齢採用者の早期戦力化の条件と人事部門の役割―職業紹介機関等からの中途採用を対象にして―」『論叢(玉川大学経営学部紀要)』第36号 ※JEEDホームページでご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/research/report/market/ukeire24.html 図表1 企業が募集・採用時に求職者に提供した情報 ―50歳代と60歳代の比較 (単位:%) 件数(社) 経営者の考え・経営方針 事業の将来性 企業風土・文化 自社の課題・弱み 仕事の内容 初任賃金 人事制度・賃金制度の仕組み 労働時間・休日 福利厚生 定年年齢や定年後も働くことができる期間 50歳代 371 38.8 26.7 27.8 22.9 79.0 81.9 52.3 79.5 57.7 61.2 60歳代 254 38.2 28.0 26.8 25.6 82.3 83.9 56.7 81.1 57.1 65.0 50歳代―60歳代 0.6 -1.3 1.0 -2.7 -3.3 -2.0 -4.4 -1.6 0.6 -3.8 注:比率は「提供した」値。 出典:大木栄一(2013)「企業の高年齢者の採用行動の特質と戦力化戦略―『50歳代正社員』と『60歳代正社員』との比較を通して―」『玉川大学経営学部研究紀要 第20号』、データはJEED「高齢期のエンプロイアビリティ向上に向けた支援と労働市場の整備に関する調査研究委員会」調査に基づく 図表2 企業が求職者の能力を知るために実施したこと(複数回答)(単位:%) 件数(社) 3回以上にわたり面接を行った 担当する業務について詳しい社員を面接に加えた 業務経験等について以前勤務していた会社から情報を得た 業務経験等について紹介を受けた人や会社から情報を得た 人柄について以前勤務していた会社から情報を得た 人柄について紹介を受けた人や会社から情報を得た 担当する業務を実際にやらせた 仕事上の能力に関するペーパーテストをした その他 とくに何もしなかった 無回答 50歳代 371 10.0 42.6 22.9 22.1 19.9 20.2 13.2 8.6 5.9 12.7 1.1 60歳代 254 8.7 43.7 32.7 24.8 29.1 22.0 11.0 6.7 5.9 10.6 0.8 50歳代―60歳代 1.3 -1.1 -9.8 -2.7 -9.2 -1.8 2.2 1.9 0.0 2.1 0.3 出典:大木栄一(2013)「企業の高年齢者の採用行動の特質と戦力化戦略―『50歳代正社員』と『60歳代正社員』との比較を通して―」『玉川大学経営学部研究紀要 第20号』、データはJEED「高齢期のエンプロイアビリティ向上に向けた支援と労働市場の整備に関する調査研究委員会」調査に基づく 図表3 企業が採用者の早期の戦力化をはかるため実施している取り組み(複数回答) ・職場の管理職への採用者に関する情報提供の状況 (単位:%) 件数(社) 早期の戦力をはかるために行っていること(複数回答) 職場の管理職への採用者に関する情報提供の状況 受け入れ者の役割を事業所の従業員に周知している 健康・疲労面で定期的にチェックを行っている 受け入れ者(採用者)をサポートする担当者を決めている 経営者・経営幹部と直接話ができる機会を設けている 配属される職場の雰囲気を伝えている 職場の責任者に受け入れ者の仕事に関する要望を伝えている 不満や要望を聞く機会を設けている 積極的に声をかけている 導入研修 その他 とくに何もしていない 行っている ある程度行っている あまり行っていない 行っていない 無回答 50歳代 371 38.3 24.5 34.2 24.0 25.3 31.3 20.8 45.3 59.3 0.8 9.2 42.3 46.9 5.7 3.5 1.6 60歳代 254 38.6 29.5 32.3 22.8 22.8 32.3 23.6 50.0 63.0 1.2 9.1 47.2 44.1 5.5 2.8 0.4 50歳代―60歳代 -0.3 -5.0 1.9 1.2 2.5 -1.0 -2.8 -4.7 -3.7 -0.4 0.1 -4.9 2.8 0.2 0.7 1.2 出典:大木栄一(2013)「企業の高年齢者の採用行動の特質と戦力化戦略―『50歳代正社員』と『60歳代正社員』との比較を通して―」『玉川大学経営学部研究紀要 第20号』、データはJEED「高齢期のエンプロイアビリティ向上に向けた支援と労働市場の整備に関する調査研究委員会」調査に基づく 図表4 職場の管理職の採用者の戦力化の取り組み状況と取り組み内容(複数回答) (単位:%) 件数(社) 取り組み数 取り組み内容 平均(取り組み数) 標準偏差 職場が期待する役割を伝えていた 職場の仕事の進め方について時間をかけて説明していた 受け入れ者の役割を職場のメンバーに周知していた 自らの能力を活かす方法を考えてもらっていた 働きぶりについて、周囲からの評価を伝えていた 仕事に関する不満や要望を聞く機会を設けていた 仕事上の悩みや相談にのっていた 他部門との調整をサポートしていた 受け入れ者と職場のメンバーとの人間関係に気を配っていた 職場になじむための雰囲気づくりをしていた 人事担当者に直接合って受け入れ者に関する情報を得ていた 受け入れ者が懇親会やイベントへ参加するに促していた その他 行われていない わからない 50歳代 669 3.04 2.15 61.4 34.5 37.4 21.8 17.3 19.1 16.7 12.0 31.5 25.6 10.2 14.9 1.3 3.4 4.5 60歳代 114 3.21 2.60 62.3 35.1 42.1 26.3 16.7 23.7 18.4 13.2 27.2 25.4 13.2 15.8 1.8 3.5 4.4 50歳代―60歳代 -0.8 -0.6 -4.7 -4.5 0.7 -4.6 -1.7 -1.2 4.3 0.1 -3.0 -0.8 -0.5 -0.1 0.1 出典:大木栄一(2013)「企業の高年齢者の採用行動の特質と戦力化戦略―『50歳代正社員』と『60歳代正社員』との比較を通して―」『玉川大学経営学部研究紀要 第20号』、データはJEED「高齢期のエンプロイアビリティ向上に向けた支援と労働市場の整備に関する調査研究委員会」調査に基づく 【P50-51】 TOPIC1 新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課  人口減少と高齢化が進むわが国においては、働く意欲のある高年齢者が年齢にかかわらず、その希望や能力に応じて、活躍し続けられる環境を整備していくことがいっそう求められています。このため、厚生労働省では、2026(令和8)年度から2029年度までの4年間にわたる高年齢者の就業機会の増大に関する目標を設定するとともに、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本等を示した新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定し、2026年3月31日に公表しました。その概要を抜粋して紹介します(編集部)。 策定の趣旨 ●「高年齢者等職業安定対策基本方針」(以下「基本方針」という。)は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第6条第1項に基づき、厚生労働大臣が、人口や高齢化の推移、高年齢者の雇用・就業の状況等を踏まえ、就業率等の今後の高年齢者の就業機会の増大に係る目標を設定するとともに、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本等を策定するもの。 ●現行の基本方針の対象期間は、令和3年度〜令和7年度までの5年間とされており、本年度がその最終年度となることを踏まえ、令和8年度からの新たな基本方針を策定する。 ●労働政策審議会(雇用対策基本問題部会)における議論(1月21日)を経て、労働政策審議会(3月11日 雇用対策基本問題部会・3月27日 職業安定分科会)に諮問。新たな基本方針は妥当との答申を得て、3月31日に告示、令和8年4月1日より適用。 新たな「高年齢者等職業安定対策基本方針」の概要 1 高年齢者の就業の動向に関する事項 @人口及び労働力人口の高齢化 ・65歳以上の高年齢者の人口は、2040年には推計3928万人(20年間で約325万人増加)、2.9人に1人が65歳以上の高年齢者となる見込み。 A高年齢者の雇用・就業の状況 ・高年齢者の就業率(2024年)は、60〜64歳層が74.3%(2014年比:13.6pt上昇)、65歳〜69歳層が53.6%(2014年比:13.5pt上昇)。諸外国と比べ群を抜いて高い水準。 B高年齢者に係る雇用制度の状況 ・70歳までの就業確保措置の実施率(2025年)は34.8%。 ・企業における定年後の賃金水準について、定年前の8割以上とする企業が2024年は39.6%(2019年比:15.1pt上昇)。 C高年齢者の職業能力開発の状況 D高年齢者の労働災害の状況 ・労働災害の発生率が高く、加齢に伴い労働災害発生リスクが高まる傾向にある。 E高年齢者の就業意欲 ・「70歳位まで」又はそれ以上の年齢まで仕事をしたいと考える者は8割超。 2 高年齢者の就業の機会の増大の目標に関する事項 令和11年(2029年)までに、高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)で示された以下の政策目標の達成を目指す ▲60〜64歳の就業率79.0%以上(2024年実績:74.3%) ▲65〜69歳の就業率57.0%以上(2024年実績:53.6%) ▲70歳までの就業確保措置の実施率40.0%以上(2025年6月1日現在実績:34.8%) 3 事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項 @事業主が行うべき諸条件の整備に関する指針 ・作業施設の改善等、高年齢者の知識・経験等を活用できる配置・処遇の推進等 A再就職の援助等に関する指針 ・再就職援助措置の実施、ハローワーク等による支援の積極的な活用等 B職業生活の設計の援助に関する指針 ・職業生活の設計に必要な情報の提供・相談等、キャリア形成の支援 4 高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項 @高年齢者雇用確保措置等の円滑な実施のための施策の基本となるべき事項 ▲65歳までの雇用確保措置(義務) ・令和7年4月に全面施行した「希望者全員の65歳までの雇用確保措置」について、全ての企業で確実に実施されるよう指導等を徹底。 ・意欲と能力に応じた雇用の確保を図るため、賃金・人事処遇制度を見直し、高齢期の処遇改善等に取り組む企業への助成措置を強化。 ・高齢期を迎える就職氷河期世代の将来を見据えた支援に取り組み、定年前に有期雇用労働者の無期雇用への転換を図る企業への助成措置を強化。 ▲70歳までの就業確保措置(努力義務) ・企業の実情を踏まえつつ、政策目標の達成に向け70歳までの就業確保措置の更なる普及・拡大を図るための企業への助成措置を強化。 ・雇用契約によらない創業支援等措置は、高年齢者雇用安定法の指針やフリーランス新法の遵守が図られるよう企業への指導を徹底するとともに、高齢期の特性やニーズを踏まえた多様な就業選択が可能となるよう、好事例の普及、制度の活用を図る。 ▲定年後継続雇用時の待遇の確保 ・見直し後の「同一労働同一賃金指針」の周知及び指導を図り、不合理な待遇の相違の解消に向けた法の履行確保の一層の徹底を図る。等 A高年齢者の再就職の促進のための施策の基本となるべき事項 ▲ハローワークの生涯現役支援窓口※における再就職支援等 ・高齢期の多様なニーズに応じたきめ細かなマッチングの推進に加え、関係機関と連携したハローワークへの誘導、65歳以降のセカンドキャリア研修の実施等、在職中からの支援に取り組むとともに、高齢期を見据えたキャリア形成、AI・デジタルの進展を踏まえた能力開発支援に取り組む。等 Bその他高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項 ▲シルバー人材センター等による多様な就業機会の提供 ・高年齢者の多様な就労・社会活動のニーズを、各種産業の人材ニーズや地域課題とマッチングし、健康状態に合わせ活躍できる社会参加の促進や高齢女性、ホワイトカラーのニーズを踏まえた就業先の拡大等、シルバー人材センター事業の活性化等により、高齢期の幅広い活躍機会を提供。 ▲高年齢者が安心・安全に働ける職場環境の推進 ・高年齢者に作業環境の改善等の措置を講じることが事業者の努力義務とされたことから、改正安衛法に基づく指針の事業者への周知指導に取り組む。等 ※全国の主要なハローワーク300箇所に設置する高年齢者の再就職を重点的に支援する専門窓口 【P52-55】 TOPIC2 シニア就業に関する実態調査 株式会社マイスター60  年金制度改革により、2026(令和8)年4月から在職老齢年金制度の支給停止基準額が引き上げられました。これにより、就労しながら受け取れる年金の減額が緩和されることで、シニア層の就労意欲の向上や、企業におけるシニア人材の活用拡大が期待されます。  そこで、シニア人材サービスを展開する株式会社マイスター60のリリースによる、企業の人事担当者500人を対象に2026年3月に実施した、在職老齢年金制度の改正の影響などに関する調査結果について紹介します(編集部)。 <結果概要> 1.在職老齢年金制度改正を理解している企業の78.1%がシニアの雇用方針を見直すと回答 2.企業の52.2%が短日数求人を「出したことがない」 3.理由の最多は「そもそも検討したことがない」(30.7%) 4.しかし63.8%の企業が「分業モデルは実現可能」と回答→「人材はいるが、働き方の設計が追いついていない」構造が顕在化 5.短日数勤務など働き方の選択肢がある企業は77.3%が雇用拡大に前向き(未提供企業8.3%) 1 在職老齢年金制度改正を理解している企業の78.1%が雇用方針を見直し  2026年4月の在職老齢年金制度改正を受けて、シニアの雇用方針に変化はあるかを聞いたところ、全体では49.4%がシニアの雇用を増やす、または勤務条件を見直すと回答しました。制度改正の認知状況別にみると、制度改正の「内容を理解している」と回答した企業では78.1%が雇用を増やす方向で検討している、または勤務条件を見直す予定があると回答した一方、「知らなかった」と回答した企業ではわずか9.9%にとどまりました(図表1)。 2 シニアの就業希望と企業の求人設計にギャップ、短日数求人、52.2%が未実施  第一弾調査※では、勤労意欲のある非就業シニア(n=200)の72.0%が「週4日以下」であれば無理なく働き続けられると回答しました。一方、本調査では、60歳以上向けに「週4日以下」などの短日数求人を出したことがない企業が52.2%にのぼり、シニア側が無理なく働き続けられる条件と企業側の求人設計との間にギャップがあることが明らかになりました(図表2・3)。 3 短日数求人を出さない理由1位「そもそも検討したことがない」(30.7%)“できない”のではなく、“考えたことがない”が最大の障壁  過去1年間で、60歳以上向けに「週4日以下」など短日数の求人を出したことがないと回答した方は500名中261名でした。その理由として最も多かった回答は、「そもそも検討したことがない」(30.7%)で、次いで「正社員との処遇差が出て不公平になる」(22.2%)、「社内で短日数雇用の制度がない」(20.7%)と続きました。  このように前例がないことで検討が進みにくい実態がうかがえ、制度やコストの問題以前に「発想の機会そのものがない」ことが、短日数求人が市場に出ない背景の一つとなっていることが分かりました(図表4)。 4 「週2日+週3日」の分業モデルは63.8%が実現可能と回答。業務設計を見直すことで、短日数雇用の導入余地は十分に存在  一方で、従来1名がフルタイムで担当していたポジションを「週2日の人」と「週3日の人」の2名で分担する働き方(分業モデル)について聞いたところ、「十分実現できると思う」(20.8%)と「工夫すれば実現できると思う」(43.0%)を合わせ、63.8%の企業が実現可能と回答しました(図表5)。  検討すらされていない短日数求人ですが、具体的なモデルを提示すれば過半数の企業が前向きに捉えており、必要なのは「前例」ではなく「きっかけ」であることがうかがえます。 5 働き方の選択肢がある企業は77.3%が雇用拡大に前向き 未提供企業はわずか8.3%にとどまる  シニアへの短日数の働き方を「積極的に提供している」と回答した企業では、77.3%が今後のシニア雇用について「積極的に増やしたい」または「やや増やしたい」と回答しました。一方、「提供していない」企業では8.3%にとどまり、働き方の選択肢の有無とシニア雇用拡大意向との間に大きな差がみられました(図表6)。 考察:制度改正を追い風に、働き方の再設計が人材確保の鍵に  本調査から、シニア雇用の拡大には以下3点が重要であることが示唆されました。 @制度改正による就業意欲の向上 A制度認知の拡大(企業・シニア双方) B柔軟な働き方(短日数・分業)の設計  特に重要なのは、「人材はいる」「制度も整いつつある」中で、企業側の働き方設計が鍵を握るという点です。  今回の結果は、企業がシニア雇用に消極的であるというよりも、前例や制度設計の不足により検討の機会が限られていた可能性を示唆しています。 ※マイスター60「シニアの就業意識に関する調査」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000035559.html 図表1 在職老齢年金制度改正の認知度別にみたシニア雇用方針の変化 シニアの雇用を増やす方向で検討している 勤務条件を見直す予定がある 特に変更の予定はない 制度改正の影響がよくわからない わからない 制度認知の有無で雇用方針の見直し意向に差がみられた 全体(n=500) 21.0% 28.4% 29.6% 10.0% 11.0% 内容を理解している(n=182) 41.8% 36.3% 18.7% 1.1% 2.2% 聞いたことはあるが詳しくは知らない(n=187) 12.8% 36.4% 36.4% 9.1% 5.3% 知らなかった(n=131) 3.8% 6.1% 35.1% 23.7% 31.3% 資料提供:株式会社マイスター60 図表2 無理なく働き続けられる日数(第一弾調査より) (対象:勤労意欲のある非就業シニア、n=200/60〜74歳) 週6日以上 1.5% 週5日程度 21.0% シニアの7割が「週4日以下なら無理なく働き続けられる」 週4日程度 23.5% 週3日程度 38.0% 週2日以下 10.5% わからない 5.5% 資料提供:株式会社マイスター60 図表3 直近1年で60歳以上向け短日数求人を出した経験 (対象:シニアが勤務する企業で人事業務に携わる担当者、n=500) ある 37.6% 企業の半数以上が短日数求人未実施 ない 52.2% わからない 10.2% 資料提供:株式会社マイスター60 図表4 短日数求人を出していない理由 (n=261/複数回答方式) そもそも検討したことがない 30.7% 正社員との処遇差が出て不公平になる 22.2% 社内で短日数雇用の制度がない 20.7% 短日数では戦力にならないと思う 17.2% 管理コストが増える 16.5% 業務を細かく切り出すのが手間 16.5% 応募が集まらないと思う 13.4% 求人媒体の仕組み上、出しにくい 7.7% その他 1.1% 資料提供:株式会社マイスター60 図表5  従来1名がフルタイム(週5日)で担当していたポジションを、「週2日の人」と「週3日の人」の2名で分担する働き方(分業モデル)について、貴社での実現可能性をどう思いますか。 (n=500/単一回答方式) 週2+週3分業モデル 63.8%が実現可能と回答 十分実現できると思う 20.8% 工夫すれば実現できると思う 43.0% 難しいと思う 16.2% 非常に難しいと思う 10.8% わからない 9.2% 資料提供:株式会社マイスター60 図表6 短日数の働き方の提供状況別にみた企業のシニア雇用拡大意向 積極的に増やしたい やや増やしたい 現状維持 減らす方向 わからない 全体(n=500) 18.8% 30.2% 33.0% 2.8% 15.2% 短日数の提供有無でシニア雇用拡大意向に大きな差、働き方の設計が雇用拡大の鍵に 積極的に提供している(n=150) 46.0% 31.3% 12.7% 2.0% 8.0% 一部の職種・部門で提供している(n=187)) 12.3% 42.8% 35.8% 1.1% 8.0% 検討はしているが、まだ提供していない(n=47) 2.1% 34.0% 53.2% 4.3% 6.4% 提供していない(n=85) 1.2% 7.1% 61.2% 7.1% 23.5% わからない(n=31) 6.5% 6.5% 3.2% 83.9% 資料提供:株式会社マイスター60 【P56-57】 BOOKS 大人気シリーズ最新刊!「人を幸せにする経営」を実践する5つの会社の物語 日本でいちばん大切にしたい会社9 坂本(さかもと)光司(こうじ)著/あさ出版/1694円  2008(平成20)年に第1巻を刊行して以降、発刊のたびに話題を集めてきた「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの最新刊。「人を大切にする経営学会」会長で経営学者の著者が8500社超の企業を訪問して、「人を幸せにする経営」を実践している企業を全国から厳選し、そのありのままの姿を、ていねいにヒアリングをして本シリーズで紹介している。  人を幸せにする経営とは、社員とその家族の幸せを重視し、続いて、「社外社員」、「現在顧客と未来顧客」、「地域住民、とりわけ障がい者などの社会的弱者」、「株主・支援機関・地域社会」の幸せを実現する経営を進めることとしている。  本書では、パート従業員が社長になり、新商品の企画開発などで小さなクリーニング会社を北海道有数の「いい会社」に育て上げた札幌市の会社の事例や、誘致した企業が倒産したため、町の有志が若者のために企業の再生に取り組み、紆余曲折を経ながら「関係する人々を幸せにすること」を経営の柱にして挑戦し続け、超優良企業としてよみがえった島根県の金属部品を製造・販売する会社の事例など5社を紹介。  企業経営の目的や働き方などについて、多くの気づきやヒントが得られる良書である。 ロールモデルのない働く女性たち。その定年後を考える一冊 女性たちの定年後 ―お金・仕事・暮らしのリアル 坊(ぼう)美生子(みおこ)著/祥伝社/1155円  1986(昭和61)年に「男女雇用機会均等法」が施行されてから丸40年。当時採用された女性たちが近年続々と定年を迎えており、これからも増えていくことが見込まれている。  40年前は、職場では結婚・出産を機に女性が退職し、育児に専念することが主流であった。働く女性たちの多くは、そのことに悩みながら退職するか、仕事と家庭の両立に努めるか、あるいは未婚などの生き方を選択してきた。退職後に子育てが落ち着いてから再就職した女性も多い。その道筋は一人ひとり異なり、おもに仕事一筋で働いてきた男性たちとも異なる。  本書は、中高年女性のライフデザインを研究してきた著者が、ロールモデルのない女性たちの定年後に向き合い、その最新の状況や年金の男女差、雇用制度が生み出してきたキャリア格差などを解説。さらに、働く11人の女性のライフストーリーを、取材をもとに仕事、お金、親の介護、住まいなど幅広い観点から紹介する。65歳以上の女性の2人に1人はシングルという現実をふまえ、「長寿・おひとりさま時代」の女性の生き方、働き方も考えている。女性はもちろん、女性の能力発揮に取り組む企業の経営層や人事担当者にも一読を推奨したい。 人事管理のこれまでをふり返り、これからを展望するためのテキスト 人事管理 人と企業,ともに活きるために[第2版] 江夏(えなつ)幾多郎(いくたろう)・平野(ひらの)光俊(みつとし)著/有斐閣/2640円  人口減少による人手不足を受けて、日本の企業では、賃上げによる採用力強化やダイバーシティ経営などが注目され、その実施にともない、人事管理を見直す動きが広がりつつある。  本書は、企業が経営を持続させながら、従業員一人ひとりが職業生活を充実させるために、人事管理のこれまでをふり返り、これからを考えるためにまとめられた一冊。2018(平成30)年に刊行された初版を7年ぶりに改訂したもので、2020年代中盤の日本の人事管理の現状に即したデータにあらため、関連する理論の紹介も新たにした。そして、「経営の視点」と「人の視点」の接合を模索しつつ、人的資源管理論の知見に基づいて人事管理の実務を解説する。  高齢者雇用の推進に向けた人事管理の改革については、「年功パラダイム」から「発揮実力パラダイム」への移行を掲げ、そのための仕組みや退出のルールを明確にすること、継続的なキャリア開発などについて言及している。また、生涯現役社会の実現に向けて、企業による雇用に限定しない、多様な就業経路の整備が不可欠になる、とも説いている。  人事管理の実務をになう企業の担当者や経営層に多くの示唆を与えてくれる内容である。 仕事も時間も人づきあいも、60歳からが楽しみになる一冊 60歳からの人生を変える22の発想 医師をやりながらベストセラーを出した僕の方法 松永(まつなが)正訓(ただし)著/小学館/1100円  著者は1961(昭和36 )年生まれの小児外科の開業医であり、作家としても活躍し、小学館ノンフィクション大賞や日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞している。  60歳を過ぎて体力、記憶力、感動力の衰えを痛感した著者だが、安易な方向に流されるのではなく、毅然と立ち上がることを決意。ポジティブな気持ちで考えたことを実践したら、「仕事も余暇の過ごし方も以前より楽しくなった」と綴っている。本書は、60歳からどう生きるかを、著者自身の人生を土台にして考え、「仕事をおもしろくする」、「時間を飼いならす」、また、「人は宝。自分から動けば、思わぬ出会いが次々にやってくる」を柱として、人生を変えていくシンプルで実効性がある22の処方箋を示す。「儲けるより大事なのはスマートに仕事をすること」、「自分の仕事の楽しさを再確認してみる」、「時間を無駄に使わない生き方を選ぶ」、「自分から恩師を作って人生を豊かにする」など、すぐに実践できそうな方法や発想が盛りだくさん。  本書は、医療従事者専用サイト「m3.com」で連載されたエッセイをもとにしており、加齢とともに右肩下がりになりがちな人生を前向きに生きるためのヒントに満ちている。 違反を引き起こすとき、人の心がどう動くのかをやさしく解説 なぜコンプライアンス違反はなくならないのか? 〜法と心理の観点から読み解く〜 波戸岡(はとおか)光太(こうた)著/日本生産性本部生産性労働情報センター/2420円  企業や組織で起きた不祥事の報道などに触れると、「なぜそんなことを」と外側からは批判的に見てしまいがちだ。だが、法律やルールを知っていても、人はコンプライアンス違反を「起こしてしまう」のだという。一体、なぜなのか。  本書は、数多くの企業事例と向き合ってきた弁護士・ビジネスコーチの著者が、コンプライアンス違反の奥にある、だれもが影響を受けている「人の心理」について身近な事例をあげて説くとともに、関連する法律や、企業がコンプライアンス違反を防止する体制を整えるために必要なポイントなどを、ていねいに解説する。  多くのコンプライアンス違反の背景には、人として備わっている自然な心理や、集団・組織内だからこそ強まる心の作用が存在しているという。その一つとして著者は「長年の経験と勘」にまつわる事例をあげている。経験とそれに裏打ちされた勘は組織にとって貴重な財産ではあるが、ときに「これまで問題がなかったから」という思考が働き、誤った方向に導かれていく危険がひそんでいる。これは、熟練者が活躍する職場だからこそ、気をつけたいことがあるという事例だ。さまざまな「人の心理」を本書で学び、職場に適した有効な対策を整えていきたい。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果を公表  厚生労働省は、「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の調査結果を公表した。  労働時間等に関する労働者の意識・意向アンケート調査の結果によると、労働時間の増減希望状況について、「このままでよい」が59.5%、「減らしたい」が30.0%、「増やしたい」が10.5%となっている。「増やしたい」の回答者の内訳をみると、週所定労働時間35時間以下で年収200万円未満の人が約3.4%、同35時間超または年収200万円以上で、上限規制である月80時間の範囲内で増やしたい人が約4.9%、上限を超えて増やしたい人は約0.5%となっている。  次に企業・労働者へのヒアリング調査の結果をみると、現状の労働時間に対する企業としての希望について、企業327社のうち「現状のままがいい」が201社、「減らしたい」が73社、「増やしたい」が53社となっている。一方、労働者97人のうち、現状の労働時間について「現状のままがいい」が70人、「減らしたい」が14人、「増やしたい」が13人となっている。  また、企業(327社)に、「労働者側から『労働時間を増やしたい』との声があがることがあるか」をたずねると、「あり」が140社、「なし」が187社で、「あり」の理由は、「もっと稼ぎたい」、「早く仕事を覚えたい」などの声があった。 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00060.html 厚生労働省 労働に関する情報をニーズに合わせて案内するポータルサイト「みんなの労働ナビ」を開設  厚生労働省は、さまざまなウェブサイトに掲載されている「はたらく」に関する情報を、個人・企業のニーズに合わせて案内するポータルサイト「みんなの労働ナビ」を開設した。  近年、転職やリスキリングの需要が高まる一方で、企業では労働力確保が重要な課題となっている。これにともない、就職活動を控えた学生や仕事を探している人、また、職場でキャリアアップや働き方の見直しをしたい人、企業の採用・人事担当者、転職・就職を支援するキャリアコンサルタントなど、幅広い人々から労働に関する信頼性の高い情報へのアクセスニーズが高まっている。「みんなの労働ナビ」は、こうした状況をふまえて開設された。  特徴は、職業や職場に関する情報、スキルアップ、労働関連法令等、働く人や企業、支援者の役に立つ情報を、利用者別・分野別に探すことができること。また、トップページのピックアップ欄には、最新の情報や注目すべき情報を掲載している。例えば、ハローワークの求人や賃金の動向がわかるページがあり、地域別・職種別の求人動向と賃金水準を、ハローワークのデータから可視化(3カ月ごとに最新のデータに更新予定)。自分が考えていた職種や地域のデータに加えて、別の職種や近隣県等のデータを比べてみることができ、仕事選びや企業における賃金決定などさまざまな場面で活用することができる。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70975.html ◆ポータルサイト「みんなの労働ナビ」 https://www.mhlw.go.jp/roudou-navi/ 厚生労働省 特定一般教育訓練の指定講座を公表  厚生労働省は、教育訓練給付金の対象となる「特定一般教育訓練」の2026(令和8)年4月1日付け指定講座を決定した。新規に指定する講座は、大型自動車第一種免許、実践的なマーケティングや事業モデルに関する知識やスキルを習得する講座など計275講座。  275講座の訓練内容の類型別内訳をみると、業務独占資格、名称独占資格、もしくは必置資格の取得を目標とする養成課程、またはこれらの資格の取得を目標とする課程(介護支援専門員実務研修、大型自動車第一種免許、特定行為研修など)が258講座、一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程(基本情報技術者試験など)が4講座、短時間の職業実践力育成プログラムおよびキャリア形成促進プログラム(特別の課程〈保健〉、特別の課程〈社会科学・社会〉など)が13講座となっている。  なお、今回の新規指定により、すでに指定ずみのものを合わせると、2026年4月1日時点の特定一般教育訓練給付金の対象となる講座は1424講座になる。  「教育訓練給付金」は、厚生労働大臣の指定する速やかな再就職および早期のキャリア形成に資する教育訓練を受講し修了した場合に、受講費用の40%(上限20万円)を支給するもの。また、訓練修了後1年以内に資格等を取得し、就職などをした場合には、受講費用の10%(上限5万円)が追加支給される。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70327.html 厚生労働省 専門実践教育訓練の指定講座を公表  厚生労働省は、教育訓練給付金の対象となる「専門実践教育訓練」の2026(令和8)年4月1日付け指定講座を決定した。新規に指定する講座は、デジタル技術の進展をふまえたニーズに応じた人材育成を行う第四次産業革命スキル習得講座や、専門職学位を取得する課程など計303講座。  303講座の訓練内容の類型別内訳は、業務独占資格と名称独占資格の取得を訓練目標とする養成課程(介護福祉士、看護師、美容師など)が94講座、専門学校の職業実践専門課程とキャリア形成促進プログラム(商業実務、衛生関係、工業関係など)が33講座、専門職大学院の課程と外国の大学院の学位の取得のための課程(ビジネス・MOT、法科大学院など)が7講座、大学等の職業実践力育成プログラム(特別の課程〈保健〉、正規課程〈保健〉など)が18講座、第四次産業革命スキル習得講座等が150講座、専門職大学等の課程が1講座。すでに指定ずみのものを合わせると、2026年4月1日時点の専門実践教育訓練給付金対象講座数は3488講座になる。  専門実践教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し修了した場合に、受講費用の50%(年間上限40万円)が支給される。また、訓練修了後1年以内に資格等を取得し、就職などをした場合には受講費用の20%(年間上限16万円)が追加支給される。さらに、訓練前後で賃金が5%以上上昇した者には、教育訓練経費の10%(年間上限8万円)が追加支給される。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70323.html 経済産業省 「健康経営優良法人2026」の認定法人を公表  経済産業省は、「健康経営優良法人2026」の認定法人を公表した。  健康経営優良法人認定制度は、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる「健康経営○R(★)」を実践する大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから評価を受けることができる環境を整備することを目的に、2016(平成28)年度に経済産業省が創設した。定められた評価基準に基づき、日本健康会議(民間組織が連携し行政の全面的な支援のもと実効的な活動を行うために組織された活動体)が認定する。  第10回となる「健康経営優良法人2026」は、大規模法人部門に3765法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加)、中小規模法人部門に2万3085法人(上位500法人には「ブライト500」、501から1500法人には「ネクストブライト1000」の冠を付加)が認定された。認定法人一覧は、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」に掲載されている。また、認定のもととなる健康経営度調査の回答法人に対する各施策の偏差値等を記載した評価結果(フィードバックシート)のうち、同意を得た2938法人分(うち上場企業874社)を同ポータルサイトで公開している。 https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260309002/20260309002.html ◆健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト https://kenko-keiei.jp 国土交通省 令和7年度「テレワーク人口実態調査」結果を公表  テレワークは、ワーク・ライフ・バランスの改善、出産や介護等ライフステージの変化にともなう人材の離職防止、仕事の生産性の向上、災害に対しての事業継続性の確保、地域活性化など多方面によい影響をもたらすことが期待されている。国土交通省は、都市部への過度の集中解消や地域活性化の観点から、厚生労働省、総務省、経済産業省などと連携し、テレワークの普及・促進を図る取組みを推進しており、その一つとして、「テレワーク人口実態調査」を実施している。このほど、2025(令和7)年度の同調査の結果を公表した。  それによると、雇用型就業者のうち、これまでテレワークをしたことがある「雇用型テレワーカー」の割合は、全国で25.2%となり、前年度(24.6%)に比べて0.6ポイント増加した。性・年齢別の割合から60歳以上についてみると、男性のテレワーカーの割合は27.4%(前年度と同じ)、女性の割合は8.9%(前年度9.5%)となっている。  次に、直近1年間の「テレワーク実施率」(雇用型就業者のうち、各調査年度において直近1年間にテレワークを実施しているテレワーカーの割合)をみると、全国で16.8%となり、前年度(15.6%)に比べて1.2ポイント増加した。  コロナ禍後は、雇用型テレワーカーの割合、直近1年間のテレワーク実施率ともに減少が継続していたが、2025年度調査では増加に転じ、安定基調で推移していることが確認された。 https://www.mlit.go.jp/report/press/toshikankyoteleworkr7.html ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 【P60】 次号予告 7月号 特集 新任人事担当者のための高齢者雇用入門 リーダーズトーク 定塚由美子さん(公益財団法人21世紀職業財団) 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐藤弘太……日本商工会議所産業政策第二部労働担当課長 谷圭一郎……日清食品ホールディングス株式会社グローバル人事部次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……明治大学商学部特任准教授、日本人材マネジメント協会理事長 JEED メールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 編集後記 ●今号の特集は、「困っているのは年下上司? それとも年上部下?」をテーマにお届けしました。  年下上司と年上部下の関係は、70歳就業機会を迎えた現在、決して珍しいことではなく、多くの職場で起こっていることだと思います。しかし、かつての上司が部下になる、かつての部下が上司になる、という関係は、当事者にとってはストレス要因になることも多く、それぞれが悩みを抱えています。年下上司にとっては「経験のある先輩が私のいうことを聞いてくれるだろうか」、「私の判断を尊重してくれるだろうか」と悩んだり、年上部下は「意見をしたら老害扱いされてしまうのではないか」、「私は一線を引いたのだから任せたほうがいいのかな」と遠慮をしてしまったりするのです。  お互いに敬意を払いつつも、伝えるべきことはしっかりと伝え、意見交換をしあえてこそ健全な組織です。最近では、ジョブ型雇用の広がりなどもあり、若手社員の登用により、若手・中堅世代でも年下上司と年上部下の関係が生まれています。本企画が少しでも参考になれば幸いです。 ●高齢者雇用の推進に取り組む読者のみなさま、「65歳超雇用推進助成金」(表紙の裏でご紹介)をぜひご活用ください。 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー6月号 No.559 ●発行日−−令和8年6月1日(第48巻 第6号 通巻559号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 石井伸明 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●編集委託 株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.364 100年続く技術を礎に表具の新たな世界を拓く 表具師 鈴木(すずき)浩(ひろし)さん(66歳) 「掛け軸の役割は、作品を引き立てることです。一点一点に作者の思いがこもっていますから、どの作品にも精魂込めて向き合います」 写真や漫画も掛け軸に新たな可能性を追求  床の間や壁に掛けて鑑賞する掛け軸。仏教文化とともに中国から伝わり、茶道の普及などを通じて室内を彩る調度品として広く親しまれるようになった。  「掛け軸はもともと書や日本画などを鑑賞・保存するために仕立てるものですが、写真家や漫画家など異分野の作家とコラボレーションし、新たな可能性も追求しています」  こう語るのは、神奈川県横須賀(よこすか)市の表具師、鈴木浩さん。1926(大正15)年に祖父が創業した株式会社鈴直(すずなお)の三代目として、掛け軸をはじめとした表装を軸に、住宅の内装工事などを幅広く手がける。表具の伝統的な仕立てには定評があり、日本遺産の「記念艦三笠(みかさ)」に展示されている掛け軸や屏風(びょうぶ)、額などの補修や、地元寺院の仏像に収める巻物なども手がけてきた。そのかたわら、全国表具経師(きょうじ)内装組合連合会の会長として業界全体の振興にも力を注ぐ。2025(令和7)年には厚生労働省の「卓越した技能者(現代の名工)」に選出された。 美しい仕立てを生み出す精緻な技術  どんな作品を手がけるときも、鈴木さんの姿勢は変わらない。  「作品を引き立てることが掛け軸の役割です。どの作品にも作者の思いがこもっていますから、私も心をこめて仕立てます」  その仕事を支えるのが技術の精緻さだ。作品の周囲を飾る裂地(きれじ)(織物)は、同じ一枚の布を切り分けて天地左右に張り合わせるため、継ぎ目の柄をぴったり合わせ、寸法を均等に保つことが求められる。わずかなずれも見逃さない正確さが、美しい仕立てを生み出す。  さらに、飾る環境によっても仕立て方は異なる。温度・湿度に応じて糊加減を調整するのはもちろん、床の間かギャラリーかなど、飾る場所によっても変わってくる。  「ホテルのロビーや洋間などに掛けられる新しい形の掛け軸を日々模索しています。ただし、作品を引き立てるという基本だけは変えません」 勉強会と競技会で磨いた技を後進へと受け継ぐ  幼いころから家業を見て育った鈴木さんは、中学生になると祖父や父を手伝うようになり、高校卒業後は進学よりも職人の道を選んだ。「いずれ継ぐ仕事なら、一日でも早く技術を身につけたい」と、職業訓練校で9カ月間基礎を学んだ後、すぐに鈴直で働き始めた。  技を磨く場となったのが、横須賀三浦表具経師内装組合青年部の活動だ。県内外の先輩を招いた毎週3時間の勉強会に参加し続けた。  「最初はコンクールでもまったく太刀打ちできませんでしたが、こうした環境で揉まれ続けているうちに、少しずつ賞が取れるようになっていきました」  神奈川県の一級表具作業、一級壁装作業の各競技大会で優秀賞を受賞。技能グランプリには神奈川県代表として出場するなど、各種競技会で実績を重ねた。  「競技会で切磋琢磨することが励みになり、技術のレベルも上がっていきます」  現在は技能グランプリ競技委員主査、中央技能検定委員として後進の指導にあたっている。  「技能検定は100%の力を出さないと受かりません。でも一番大事なのは、結果よりも検定を受けるために練習することです。それがふだんの仕事を見直すきっかけになりますから」  表具の仕事が少なくなるなか、これまで30近い資格を取得して仕事の領域を広げてきた。「そうすることで表具の技も残せる」と鈴木さん。どれだけ領域を広げても、表具への思いは変わらない。  「父が手がけた地元の寺院の襖(ふすま)を自分も手がけ、次は4代目の息子が手がけることになるでしょう。孫子の代まで続くような仕事ができる。それがこの仕事の醍醐味です」  100年継承されてきた技は、少しずつ形を変えながら、さらに次の世代へと受け継がれていく。 株式会社鈴直 TEL:046(852)3355 https://www.suzunao.co.jp (撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英) (写真提供:株式会社鈴直) 写真のキャプション 作品を補強し、しわやたるみを防ぐために、作品の裏面に和紙を張り合わせる「裏打ち」。多いときは肌裏・増し裏・中裏・上裏(あげうら)の4回を行う 裏打ち紙を、しわにならないように作品の裏面にゆっくりと下ろしたら、上から刷毛で撫でて空気を抜き、作品に圧着させる 表装に使った裂地の端切れ。裂地は西陣織で、掛け軸用に太い縦糸と細い横糸で織られている。使い道のない端切れを名刺入れなどに再生する構想がある 左の掛け軸の作品の左下部分の拡大図。左側(「柱」)と下側(「中回し」)の裂地を3o重ね合わせた部分の柄がぴたりと合っている 「行の行」(三段仕立て)と呼ばれるもっともオーソドックスな形式の掛け軸。作品に合わせる裂地の色は、作品に使われている色に合わせるのが基本 鈴木さんが理事長を務める神奈川県表具経師内装協同組合では、表具教室を開催しており、鈴木さんも講師を務めている(写真提供:株式会社鈴直) 表装では、和紙や裂地を張り合わせるために、打ち刷毛、撫で刷毛、糊刷毛、水刷毛など、用途に応じてさまざまな刷毛を使い分ける 裏打ちをしたら、乾かすために「仮張り」を行う。紙が縮んでシワになるのを防ぐため、「仮張り板」に四辺を貼りつけ、刷毛で伸ばして乾燥させる 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は、マッチ棒パズルです。頭の中でマッチ棒を動かして、数式が成り立つようにしてください。頭の中でマッチ棒を動かすメンタルローテーションの力(頭の中で図形を動かす力)は空間認識力の基本であり、脳の柔軟性とかかわりがあります。計算を行うワーキングメモリとともに、しっかり鍛えましょう。 第108回 マッチ棒パズル マッチ棒を1本だけ動かして、計算式を正しく直してください。 目標5分 @ 2+3=17 A 10−9=4 B 1×9=21 ●マッチ棒の数字は下記の形を使用します。 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9  マッチ棒を動かして、計算式を正しいものに変える――。そんなシンプルなルールで楽しめる「マッチ棒パズル」は、手軽でありながら奥が深い脳トレです。  この脳トレで重要なのは、「数字や記号は固定されたものではない」という視点であり、解き方のポイントは、数字や記号を「形」としてとらえ直すところにあります。  私たちは数字や記号を「意味」として処理していますが、このパズルではそれらを「形」として分解して再構築する必要があります。この過程が、固定観念にとらわれない柔軟な思考力を育ててくれます。  また、どのマッチ棒を動かせば目的の形になるのかを考える際には、頭の中で図形を動かす力、つまり空間認識力も重要になります。限られた情報のなかで試行錯誤をくり返すことで、直感と論理の両方がバランスよく刺激されるのです。  さらに、このパズルの魅力はその手軽さにもあります。特別な道具は必要なく、紙とペン、あるいはマッチ棒の現物があればすぐに楽しめます。ちょっとした休憩時間に取り組むことで気分転換にもなり、集中力のリフレッシュにもつながります。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。人システム研究所所長、公立諏訪東京理科大学特任教授。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『何歳からでも間に合う 脳を鍛える方法』(徳間書店)など著書多数。 【問題の答え】 @2+9=11 A10−6=4 B7×3=21 ※解答と違っていても、正しい計算式になれば正解とします。 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2026年6月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 『70歳雇用推進事例集2026』のご案内  2021(令和3)年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業を確保する措置を講ずることが事業主の努力義務となりました。  本事例集では、70歳以上の定年引上げ、70歳以上の継続雇用制度の導入、定年制の廃止を実施した事例を掲載しています。  各事例では、高齢社員の戦力化や賃金制度、安全衛生などについて詳しく紹介しています。 インタビュー形式で掲載 制度改定の経緯や苦労話をインタビュー形式で紹介しています 検索ガイドを掲載 企業規模や業種を超えた共通の課題に対応した事例を検索することができます。 『70歳雇用推進事例集2026』はJEEDホームページから無料でダウンロードできます https://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html 70歳雇用推進事例集 検索 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 2026 6 令和8年6月1日発行(毎月1回1日発行) 第48巻第6号通巻559号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈編集委託〉株式会社労働調査会