TOPIC2 シニア就業に関する実態調査 株式会社マイスター60  年金制度改革により、2026(令和8)年4月から在職老齢年金制度の支給停止基準額が引き上げられました。これにより、就労しながら受け取れる年金の減額が緩和されることで、シニア層の就労意欲の向上や、企業におけるシニア人材の活用拡大が期待されます。  そこで、シニア人材サービスを展開する株式会社マイスター60のリリースによる、企業の人事担当者500人を対象に2026年3月に実施した、在職老齢年金制度の改正の影響などに関する調査結果について紹介します(編集部)。 <結果概要> 1.在職老齢年金制度改正を理解している企業の78.1%がシニアの雇用方針を見直すと回答 2.企業の52.2%が短日数求人を「出したことがない」 3.理由の最多は「そもそも検討したことがない」(30.7%) 4.しかし63.8%の企業が「分業モデルは実現可能」と回答→「人材はいるが、働き方の設計が追いついていない」構造が顕在化 5.短日数勤務など働き方の選択肢がある企業は77.3%が雇用拡大に前向き(未提供企業8.3%) 1 在職老齢年金制度改正を理解している企業の78.1%が雇用方針を見直し  2026年4月の在職老齢年金制度改正を受けて、シニアの雇用方針に変化はあるかを聞いたところ、全体では49.4%がシニアの雇用を増やす、または勤務条件を見直すと回答しました。制度改正の認知状況別にみると、制度改正の「内容を理解している」と回答した企業では78.1%が雇用を増やす方向で検討している、または勤務条件を見直す予定があると回答した一方、「知らなかった」と回答した企業ではわずか9.9%にとどまりました(図表1)。 2 シニアの就業希望と企業の求人設計にギャップ、短日数求人、52.2%が未実施  第一弾調査※では、勤労意欲のある非就業シニア(n=200)の72.0%が「週4日以下」であれば無理なく働き続けられると回答しました。一方、本調査では、60歳以上向けに「週4日以下」などの短日数求人を出したことがない企業が52.2%にのぼり、シニア側が無理なく働き続けられる条件と企業側の求人設計との間にギャップがあることが明らかになりました(図表2・3)。 3 短日数求人を出さない理由1位「そもそも検討したことがない」(30.7%)“できない”のではなく、“考えたことがない”が最大の障壁  過去1年間で、60歳以上向けに「週4日以下」など短日数の求人を出したことがないと回答した方は500名中261名でした。その理由として最も多かった回答は、「そもそも検討したことがない」(30.7%)で、次いで「正社員との処遇差が出て不公平になる」(22.2%)、「社内で短日数雇用の制度がない」(20.7%)と続きました。  このように前例がないことで検討が進みにくい実態がうかがえ、制度やコストの問題以前に「発想の機会そのものがない」ことが、短日数求人が市場に出ない背景の一つとなっていることが分かりました(図表4)。 4 「週2日+週3日」の分業モデルは63.8%が実現可能と回答。業務設計を見直すことで、短日数雇用の導入余地は十分に存在  一方で、従来1名がフルタイムで担当していたポジションを「週2日の人」と「週3日の人」の2名で分担する働き方(分業モデル)について聞いたところ、「十分実現できると思う」(20.8%)と「工夫すれば実現できると思う」(43.0%)を合わせ、63.8%の企業が実現可能と回答しました(図表5)。  検討すらされていない短日数求人ですが、具体的なモデルを提示すれば過半数の企業が前向きに捉えており、必要なのは「前例」ではなく「きっかけ」であることがうかがえます。 5 働き方の選択肢がある企業は77.3%が雇用拡大に前向き 未提供企業はわずか8.3%にとどまる  シニアへの短日数の働き方を「積極的に提供している」と回答した企業では、77.3%が今後のシニア雇用について「積極的に増やしたい」または「やや増やしたい」と回答しました。一方、「提供していない」企業では8.3%にとどまり、働き方の選択肢の有無とシニア雇用拡大意向との間に大きな差がみられました(図表6)。 考察:制度改正を追い風に、働き方の再設計が人材確保の鍵に  本調査から、シニア雇用の拡大には以下3点が重要であることが示唆されました。 @制度改正による就業意欲の向上 A制度認知の拡大(企業・シニア双方) B柔軟な働き方(短日数・分業)の設計  特に重要なのは、「人材はいる」「制度も整いつつある」中で、企業側の働き方設計が鍵を握るという点です。  今回の結果は、企業がシニア雇用に消極的であるというよりも、前例や制度設計の不足により検討の機会が限られていた可能性を示唆しています。 ※マイスター60「シニアの就業意識に関する調査」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000035559.html 図表1 在職老齢年金制度改正の認知度別にみたシニア雇用方針の変化 シニアの雇用を増やす方向で検討している 勤務条件を見直す予定がある 特に変更の予定はない 制度改正の影響がよくわからない わからない 制度認知の有無で雇用方針の見直し意向に差がみられた 全体(n=500) 21.0% 28.4% 29.6% 10.0% 11.0% 内容を理解している(n=182) 41.8% 36.3% 18.7% 1.1% 2.2% 聞いたことはあるが詳しくは知らない(n=187) 12.8% 36.4% 36.4% 9.1% 5.3% 知らなかった(n=131) 3.8% 6.1% 35.1% 23.7% 31.3% 資料提供:株式会社マイスター60 図表2 無理なく働き続けられる日数(第一弾調査より) (対象:勤労意欲のある非就業シニア、n=200/60〜74歳) 週6日以上 1.5% 週5日程度 21.0% シニアの7割が「週4日以下なら無理なく働き続けられる」 週4日程度 23.5% 週3日程度 38.0% 週2日以下 10.5% わからない 5.5% 資料提供:株式会社マイスター60 図表3 直近1年で60歳以上向け短日数求人を出した経験 (対象:シニアが勤務する企業で人事業務に携わる担当者、n=500) ある 37.6% 企業の半数以上が短日数求人未実施 ない 52.2% わからない 10.2% 資料提供:株式会社マイスター60 図表4 短日数求人を出していない理由 (n=261/複数回答方式) そもそも検討したことがない 30.7% 正社員との処遇差が出て不公平になる 22.2% 社内で短日数雇用の制度がない 20.7% 短日数では戦力にならないと思う 17.2% 管理コストが増える 16.5% 業務を細かく切り出すのが手間 16.5% 応募が集まらないと思う 13.4% 求人媒体の仕組み上、出しにくい 7.7% その他 1.1% 資料提供:株式会社マイスター60 図表5  従来1名がフルタイム(週5日)で担当していたポジションを、「週2日の人」と「週3日の人」の2名で分担する働き方(分業モデル)について、貴社での実現可能性をどう思いますか。 (n=500/単一回答方式) 週2+週3分業モデル 63.8%が実現可能と回答 十分実現できると思う 20.8% 工夫すれば実現できると思う 43.0% 難しいと思う 16.2% 非常に難しいと思う 10.8% わからない 9.2% 資料提供:株式会社マイスター60 図表6 短日数の働き方の提供状況別にみた企業のシニア雇用拡大意向 積極的に増やしたい やや増やしたい 現状維持 減らす方向 わからない 全体(n=500) 18.8% 30.2% 33.0% 2.8% 15.2% 短日数の提供有無でシニア雇用拡大意向に大きな差、働き方の設計が雇用拡大の鍵に 積極的に提供している(n=150) 46.0% 31.3% 12.7% 2.0% 8.0% 一部の職種・部門で提供している(n=187)) 12.3% 42.8% 35.8% 1.1% 8.0% 検討はしているが、まだ提供していない(n=47) 2.1% 34.0% 53.2% 4.3% 6.4% 提供していない(n=85) 1.2% 7.1% 61.2% 7.1% 23.5% わからない(n=31) 6.5% 6.5% 3.2% 83.9% 資料提供:株式会社マイスター60