ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 政府・厚生労働省 「令和6年版 過労死等防止対策白書」を公表  政府は2024(令和6)年10月11日、「令和5年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和6年版 過労死等防止対策白書)を閣議決定した。  同白書は、過労死等防止対策推進法の第6条に基づき、国会に毎年報告を行う年次報告書で、今回で9回目となる。おもな内容は、以下の通り。 1.同年8月に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、「大綱」)の変更経緯やその内容について報告。 2.大綱に基づく調査分析として、医療従事者(医師・看護師)の精神障害の労災認定事案の分析結果、DX等先端技術担当者および芸術・芸能従事者(スタッフ)の働き方の実態等について報告。 3.長時間労働の削減やメンタルヘルス対策、国民に対する啓発、民間団体の活動に対する支援など、2023年度の取組みを中心とした労働行政機関等の施策の状況について詳細に報告。 4.2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用された業種等に係る企業等における長時間労働削減等の働き方改革事例やメンタルヘルス対策、ハラスメント防止対策など、過労死等防止対策のための取組事例をコラムとして紹介。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44199.html 厚生労働省 第14次労働災害防止計画1年目の実施状況を公表  厚生労働省は、2023(令和5)年4月から2028年3月までを期間とする第14次労働災害防止計画の1年目の実施状況を公表した。  重点対策の「高年齢労働者の労働災害防止対策の推進」についてみると、アウトプット指標「エイジフレンドリーガイドラインに基づく高年齢労働者の安全衛生確保の取組を実施する事業場の割合を2027年までに50%以上」に対して、2023年実績は19.3%(前年11.2%)となっている。  次に、アウトカム指標「増加が見込まれる60歳代以上の死傷年千人率を2027年までに男女ともその増加に歯止めをかける」に対して、2023年実績は男性3.91(前年3.90)、女性4.16(同4.04)と前年に比べて増加しており、「過去には少なかった身体機能の低下した労働者の慣れない仕事への就労が増えていることが、災害発生率の押し上げ要因になっていることが推測される」とその要因を分析している。  今後の対応について、「エイジフレンドリーガイドラインに基づく取組を実施する事業場の割合を増加させるための取組」として、◆転倒・動作の反動等による労働災害発生時の損失及び対策による効果の可視化のための調査(委託事業)を実施し、対策の必要性を周知、◆労働局・労働基準監督署から個別の中小事業場への「エイジフレンドリーガイドライン」と「エイジフレンドリー補助金」の一体的な周知、などの実施をあげている。 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001314287.pdf ダイヤ高齢社会研究財団 仕事と介護の両立をテーマとしたシンポジウムを開催  公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団は、一般財団法人オレンジクロスとの共催で、「ストップ介護離職5−サポートを100%活かす−」と題し、2024年11月14日にシンポジウムを開催した。  第1部は、「介護をしながら働くことが当たり前の社会」をつくるための活動に最前線で取り組んでいる和氣(わき)美枝(みえ)氏による基調講演。第2部は、ダイヤ財団による「仕事と介護の両立」に関するアンケート調査結果速報。第3部では、第1部と第2部をふまえ、和氣美枝氏を含むパネリストが、仕事と介護を両立するためのサービスや支援の有効な活用策などについてのディスカッションを行った。  なお、シンポジウムの模様はオンライン配信をしており、視聴申込みをすれば無料で観ることができる。 ◆配信期間 2024年12月2日(月)〜2025年3月31日(月)期間中何度でも視聴可能 ◆プログラム【第1部】基調講演「介護離職防止対策の理解促進〜サポートを100%活かすために」和氣美枝氏(一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事)、【第2部】三菱グループ社員対象「仕事と介護の両立」アンケート調査速報等 安順姫(あんじょんき)氏(ダイヤ財団)、【第3部】パネルディスカッションパネリスト:桑山(くわやま)裕衣(ひろえ)氏(明治安田生命保険相互会社)、藤井(ふじい)敏美(としみ)氏(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社)、沼田(ぬまた)裕樹(ひろき)氏(町田市ケアマネジャー連絡会)、和氣美枝氏 コーディネーター:佐々木(ささき晶世(あきよ)氏(ダイヤ財団) ◆申込み シンポジウム・セミナー申込みフォームから https://dia.or.jp/disperse/event/ 当機構(JEED)から 「生涯現役社会の実現に向けた地域ワークショップ」を開催  JEEDでは「高年齢者就業支援月間」である10月、各都道府県支部が中心となって「生涯現役社会の実現に向けた地域ワークショップ」を開催した(一部は11月に開催)。地域ワークショップは、高齢者雇用に関心のある事業主や人事担当者を対象に、学識経験者の基調講演、ならびに高齢者雇用に先進的な企業の事例発表で構成され、各地域の実情をふまえた実践的な情報を提供している。  今回は2024(令和6)年10月24日(木)にJEEDの奈良支部が主催した地域ワークショップ「高齢社員に力を発揮してもらうために〜人事制度『賃金と評価』」の模様をレポートする。  開会のあいさつに続き、奈良県内における高齢者雇用の概要について、奈良労働局職業安定部職業対策課の野澤(のざわ)俊雄(としお)さんが報告。「県内企業の65歳以上の就業率が全国平均を上回っている。要因として年金の繰下げ受給希望者が増えたことなどが考えられる」と指摘し、JEEDが支援する65歳以上の雇用推進のための助成金制度、および70歳雇用推進プランナーによる相談助言活動の活用を呼びかけた。  続いて、愛知学院大学経営学部の関(せき)千里(ちさと)教授が登壇し、「高齢社員に力を発揮してもらうために」をテーマに、企業の実例を交えて講演。生涯現役を目ざした高齢者雇用制度の好事例をあげ、「健康でやる気があり、自分の得意分野が明確で、職場の理解と支援がある場合は年齢に関係なく働き続けられる。各世代の持ち味を活かせている点も大きい」と指摘した。また、ジョブクラフティング※の手法を紹介し、高齢者自身が能動的にモチベーションを向上させ、仕事に対する意義を見出すよう、企業がうながせるとよいとアドバイスを送った。  休憩をはさんで、企業の事例発表が行われ、五條運輸(ごじょううんゆ)株式会社の松尾(まつお)和彦(かずひこ)取締役総務部部長が登壇した。同社は1970(昭和45)年奈良県五條市で創業し、ここ15年間の業域拡大により社員数が15人から150人へと大幅に増員した成長著しい地元企業だ。地場の運送・倉庫管理事業から、通販物流事業、物流アウトソーシング事業に新規参入し、業務拡張にともない人材確保のために高齢者を多く採用。2017(平成29)年に定年制を廃止し、短日・短時間勤務を可能にして高齢社員のニーズに柔軟に対応しており、「高齢社員が持つ可能性を、適材適所で発揮してもらえていることは当社の財産。高齢社員の力が安定経営には必要で、年齢・経験を問わず、責任ある仕事に就いてもらい、任せて経験を積んでもらうという人材育成を今後も進めていきたい」と方針を示した。  続いて、70歳雇用推進プランナーの北場(きたば)好美(よしみ)さんをコーディネーターに、五條運輸の松尾総務部部長と関教授がパネリストとして登壇しパネルディスカッションを実施。五條運輸の取組みとその成果をふまえ、松尾総務部部長に質問が投げかけられた。北場プランナーが定年後の給与水準と継続雇用の条件について質問すると、「基本的な給与水準は変わらないが、状況に応じて面談を行い、本人の希望と実態に合わせて対処している」と応じ、関教授からは、高齢社員が職場に与える影響について質問があり、「豊かな人生経験から生じる意見が新たな視点を提供している。年齢の壁を越えて意見を出し合う環境が整っている」と回答した。  関教授は同社の取組みを「経営陣や人事の役割として個人と組織の志をすり合わせ、ビジョンや価値を明確にして社員が働きやすい環境を整備している」と述べ、北場プランナーは「『よい会社は自分がつくる』という思いで一人ひとりが取り組んできた結果、だれもが幸せになれる会社づくりにつながっている」と評価した。  最後に、公益財団法人産業雇用安定センター奈良事務所所長の祝(いわい)雅則(まさのり)さんが登壇し、キャリア人材バンクの概要を説明。経験豊富な60歳以上の人材は働く意欲と能力があり、近年再就職数が増加していると推移データを示し、キャリア人材の再就職支援を誓った。  開演中、資料を手に取り熱心に目を通す参加者の姿が見られ、地域ワークショップは熱気冷めやらぬまま閉会した。 ※ジョブクラフティング……働く人が自ら仕事に対する認知や行動を変えることで、やりがいを感じない仕事をやりがいのあるものへと変える手法 写真のキャプション 奈良県での「地域ワークショップ」の様子