日本史にみる長寿食 FOOD 375 うどんの効果 食文化史研究家● 永山久夫 江戸の夜鳴きうどんと油揚げ  北風の吹く季節になると、江戸の町ではそばよりもうどんの方が人気がありました。特に屋台の店が人気があり、いつも湯気がもうもうと立ちのぼり、行列までできています。  甘じょっぱく煮た油揚げがのったキツネうどんの人気が高く、朝まで人の途絶える間もなかったそうです。体が温まるからで、特に冷え症の女性に人気がありました。 薬味のあれこれ  雪のちらつくような肌寒い夜になると、薬味のネギを多めに所望する客が多く、屋台の棚には刻んだネギが山ほど置かれていたそうです。ネギの白根には発汗作用の硫化アリル、青い部分にはビタミンCが多く、いずれも風邪の予防に役に立ちました。  うどんに欠かせないのが粉トウガラシ。好みの量をふりかけて食べると、からみ成分のカプサイシンの作用で、血行がよくなり、体がいっそう温まることが知られていました。  江戸中期になって、七味トウガラシが考案され、うどん人気がいっそう高まります。  現代風に、もっと機能的に食べるには、うどんにすりゴマをかけてみましょう。すると、ゴマに多いビタミンB1の作用で、脳の唯一のエネルギー源である糖質の吸収効率が上がり、記憶力の老化を防ぐうえで役に立ちます。情報化時代の食べ方といってもよいでしょう。 うどんのだし  うどん汁には、カツオ節でとっただしのうま味が、しっかり溶け込んでいます。そしてカツオには頭の回転をよくする作用を持つDHA(ドコサヘキサエン酸)や血液サラサラ効果のEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれていますから、頭の働きはいっそうよくなります。  私たちは、世界一長寿の国で生活しています。食べ物の機能性を考え、その特徴を上手に活かして食べることで、長寿効果はいっそう高まり、長寿記録をさらに伸ばすことも可能となることを知るべきではないでしょうか。それはともかく、寒い夜には、熱々のぶっかけうどんが食べたいです。