【表紙1】 画像です。 【表紙2】 高年齢者活躍企業事例サイトのご案内 ―高年齢者が活躍できる、これからの働き方― https://www.elder.jeed.go.jp 高年齢者雇用にまつわるさまざまな情報を発信しています! さまざまな条件で検索できる! @企業事例検索 高年齢者活躍企業コンテスト入賞事例のほか、定年年齢、継続雇用年齢、従業員規模、業種、地域、都道府県別検索やフリーワード検索ができます。 Aイベント情報 「高年齢者活躍企業フォーラム」など、高年齢者雇用に関するイベント情報を掲載します。 B雇用力評価ツール 自社の高年齢者を活躍させる力(高齢者雇用力レベル)を診断することができます。 C仕事生活チェックリスト 生涯現役で活躍するための仕事生活のチェックリストです。 ※ご利用は事前のお申込みが必要です D 高年齢者雇用に関する資料 高年齢者雇用に関する研究報告書などが閲覧できます。 jeed elder 検索 【P1-4】 Leaders Talk No.118 継続雇用の年齢上限を70歳に延長しジョブ型要素を取り入れた処遇制度を導入 株式会社九電工 人事労務部長 下村晋二さん しもむら・しんじ 1993(平成5)年に入社。九電工アカデミー(社員研修所)勤務などを経て、2018年東京本社総務部長、2021年人事労務部副部長、2024年より現職。  福岡県に本社を置く株式会社九電工は、九州・沖縄エリアの建設業において、37年連続で売上高1位を誇る。同社では、2025(令和7)年1月より、定年後継続雇用の年齢上限を65歳から70歳に引き上げるとともに、ジョブ型要素を取り入れた仕組みを導入し、継続雇用社員の処遇を引き上げました。そこで、人事労務部長の下村晋二さんに、制度改定の背景や新制度の概要について、お話をうかがいました。 将来を見すえて継続雇用制度を改定 シニア層が活躍できる環境を整備 ―貴社では、2025(令和7)年1月に定年後継続雇用制度を改定し、雇用の年齢上限を70歳に延長されました。その経緯やねらいについてお聞かせください。 下村 当社では、2002(平成14)年から、60歳定年後の継続雇用制度を導入しています。ただし、賃金については在職老齢年金や高年齢雇用継続基本給付金などを考慮したもので、定年前と比較すると低い処遇となっていました。制度導入以降、2回ほど賃金の見直しを行っていますが、技術職のなかには定年後、他社に引き抜かれて転職する人がいたり、各部門や支店によって制度の解釈が異なり統一性に欠けるといった課題も生じていました。  今回の制度改定の一つの契機は、2020年に高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保が努力義務となったことです。現在、当社には60歳以上の社員が、全社員の6〜7%にあたる約450人おり、10年後には約15%、1000人を超えると予測しています。新卒採用も厳しいなかで、人材を確保していくためには、シニア層が活躍できる環境を整備していく必要があると考え、今回の改定に至りました。いまの60 歳以上の人は、昔に比べてとても元気ですし、そうであればしっかりと働き、活躍してもらいたいという思いもありました。 ―新制度への改定にあたり、内部ではどんな議論があったのでしょうか。 下村 55歳以上の社員にアンケート調査を実施したところ、「60歳以降もフルタイムで勤務したい」という人が約8割、65歳以降でも約4割いました。特に人員が不足している施工管理に従事する技術職として雇用継続を希望する人も相当数いました。一方で、同業他社と比べて現在の報酬が低いという課題も見えてきました。  議論は、定年を延長するか、継続雇用制度を続けるか、というところからスタートしました。経営会議にも諮り、「一律に定年を延長するのではなく、継続雇用制度を改定したほうが、働く意欲を喚起できるのではないか」、また「若年層に配慮し、役職の世代交代の面でも有効」ということで、継続雇用制度の改定で対応することに決まりました。そして報酬制度を見直し、メリハリをつけたジョブ型に近い制度にすることにしたのです。 ―「ジョブ型に近い制度」というところも含め、新制度の概要について教えてください。 下村 従来の継続雇用制度の場合、65歳以降については、特例的に一部の技術職に限定して働いてもらっていましたが、新制度では希望する人は原則全員が70歳まで働くことができます。  また、60歳定年後の処遇制度については、定年前の役職や保有資格をポイント化し、その合計で報酬水準を決めていました。ただし、先ほどお話しした通り、部門や部署によっては報酬水準の特例運用が常態化するなど、運用面でばらつきがあり、担当する業務と報酬が紐づいていませんでした。  当社の事業は、九州電力から委託されている配電線工事、建物内の電灯・コンセントといった電気設備工事、エアコンや給排水衛生などの空調衛生の設備工事の三つの柱に加えて、最近では大型太陽光発電などの再生エネルギー事業も手がけています。また、社員は施工管理に従事する技術職が多くを占めているという実態があります。  この状況をふまえ、新たな処遇制度では、「施工管理」、「施工支援」、「技能現業」、「教育指導」、「業務」の五つの職務グループに分け、職務ごとに仕事の重要性や難易度によってランクを決定します。ランクごとに、どのような業務をになうのかといった役割と責任を明確にした「役割定義書」を作成し、ランクに基づいて定額の基本給が決まります。通常のジョブ型人事制度におけるジョブディスクリプション(職務記述書)のように、職務を細かく定義していないので完全なジョブ型ではありませんが、ジョブ型に近い制度設計です。そして、どのランクのどのような業務を担当するかについては、上長との面談を通じて人事労務部に申請します。すでに60歳以降で継続雇用の社員についても役割定義書に基づいて上長と面接し、担当業務の再定義を行いました。  職務グループごとにレベル1から3までの給与テーブルがあり、職務遂行難易度がもっとも低いレベル1の場合、賞与込みの標準報酬は以前に比べて2割程度高くなります。一方、レベル3になると以前の上限額の2倍近くの報酬になります。特に人員が不足している施工管理グループは、なるべく多くの人に従事してもらいたいということで、高い報酬設定にしています。  また、担当役員や社長の決裁により任用される特定A、特定Bという特定職を設け、さらに高い報酬水準を設定しています。役割ランクの見直しは1年ごとの契約更新の際に上長と話し合い、荷が重いということであれば下のランクの役割を担当してもらい、あるいは上長が上位のランクの役割をになってほしいと伝え、本人も意欲があればランクがアップすることもあります。 役割と責任を明確にした「役割定義書」を作成 ランクに基づいて基本給を定める ―本人の意欲と能力しだいで報酬アップも可能になりますね。人事評価制度はあるのでしょうか。 下村 もちろん評価制度もあります。ランク別の基本給はランクが変わらなければ昇給することはありません。人事評価には役割遂行度評価と行動評価の二つがあり、その二つの総合評価の結果を賞与に反映します。役割遂行度評価は年に1回、自分の役割と責任を果たしているかを評価しますが、じつは現役世代も期首に設定した目標の達成度を評価する仕組みなので、スムーズに受け入れてもらえると思います。  行動評価は半期に1回、年2回実施し、評価項目は「フォロワーシップ」、「チームワーク」、「指導・育成」、「健康管理」、「経営思考」、「プロ意識」の六つです。フォロワーシップでは、部署の方針にしたがい、上司やメンバーと協力しながら業務を遂行しているかを見ています。また、経験や実績を持つ人のなかには、ややもするとスタンドプレーに走りがちな人もいるので、自分勝手な行動は取らないという意味でチームワークを重視しています。指導・育成も後進にしっかりと技術・技能を伝承してほしいという思いがあります。 多様な勤務制度にも対応 元気で意欲的なシニアに高い期待 ―行動評価にシニアに対する期待があらわれていますね。また、雇用の年齢上限が70歳まで延びたことで健康管理も重要となります。会社として何か健康に配慮していることはありますか。 下村 経営会議で「健康経営○R(★)」の推進に力を入れていくことを決定し、経済産業省の「健康経営優良法人2025」の申請をしています。その一環としてシニアにかぎりませんが、健康診断の一定の項目の数値が高い人には、就業制限をかけるようにしました。例えば、最高血圧が180以上になると脳疾患や心臓疾患などのリスクが高まりますし、その場合は時間外労働や休日出勤、単独での運転や高所作業などを禁止します。いままでは健診結果がよくなければ、ひとまず二次健診を受けるようにと本人任せになっていました。会社の安全配慮義務も含めて、社員自身にも健康管理に対する意識を高めてもらい、治療に専念し、数値が改善すれば通常の仕事に復帰できるようにしています。 ―健康問題のほか、家族の介護など、加齢とともにさまざまな事情を抱えるシニアも増えてきます。その点での対応はいかがでしょうか。 下村 短日・短時間勤務制度を設けています。60歳定年後の継続雇用社員については要件は限定せず、個々の事情に応じて上長と話し合い、会社が承認すれば時給制の非常勤社員として働くこともできます。短時間勤務自体は従来から可能でしたが、時給は一律に決まっていました。新制度下では役割ランクに基づいて時給単価を計算するので、個々に支給額も異なります。 ―処遇の改善によって人件費も増えることになります。それだけシニア社員に対する期待も大きいということですね。 下村 経営トップも、「社員の処遇を向上させることが私のミッションの一つである」と、つねにおっしゃっています。その想いを具現化することが人事労務部の仕事です。継続雇用制度のスタート当初はシニアの力を経営戦略と結びつけて考えていなかった面もあります。いまは若手だけではなく、シニアも含めて人に対する投資を積極的に推進していこうとしています。いまのシニアは本当に元気ですし、意欲の高い人も多い。特に建設業にとっては、シニアは貴重な戦力ですし、しっかりと処遇し、元気に活躍していただきたいという思いが強くあります。今後も期待を込めたメッセージを発信し続けていきたいと考えています。 (インタビュー/溝上憲文 撮影/中岡泰博) ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト KAWANO Ryuji 2025 March No.544 特集 6 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートU〜 2024年11月28日開催「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」 7 基調講演 ミドルシニアのキャリアの現状の課題 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子 11 事例発表@ ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 アズビル株式会社 アズビル・アカデミー学長 荻野明子 13 事例発表A 50代は「今さら」ではなく「今から」 〜明治のキャリア自律支援の取り組み〜 株式会社明治 人財開発部DE&I推進G専任課長 戸井浩 15 事例発表B ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役CEO社長 宮島忠文 17 パネルディスカッション ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略 1 リーダーズトーク No.118 株式会社九電工 人事労務部長 下村晋二さん 継続雇用の年齢上限を70歳に延長しジョブ型要素を取り入れた処遇制度を導入 23 読者アンケート結果発表!! 24 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介 30 偉人たちのセカンドキャリア 第4回 生涯現役で朝廷を支えた政治家 吉備真備 歴史作家 河合敦 32 高齢者の職場探訪 北から、南から 第153回 千葉県 株式会社八千代商事 36 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第102回 悠山社書店 橋本直次郎さん(77歳) 38 加齢による身体機能の変化と安全・健康対策 【第4回】 加齢による歯・口腔≠ヨの影響と対策のポイント 渡邊裕 42 知っておきたい労働法Q&A《第81回》 期待値の高い中途採用者の解雇、高齢者の労災リスク 家永勲 46 TOPIC 「更年期の仕事と健康に関する定量調査」 株式会社パーソル総合研究所 48 いまさら聞けない人事用語辞典 第55回 「リストラクチャリング」 吉岡利之 50 労務資料 令和6年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.349 手間を惜しまず 伝統の方法で着物を再生 洗張職人 田川城道さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第93回] 正式名称思い出しクイズ 篠原菊紀 ※連載「日本史にみる長寿食」、「地域・社会を支える高齢者の底力」は休載します 【P6】 特集 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートU〜 11月28日開催「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」  JEEDでは、生涯現役社会の普及・啓発を目的とした「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。2024(令和6)年度は、企業の人事担当者のみなさまにとって、特に関心の高いテーマごとに全3回開催し、学識経験者による講演や、先進的な取組みを行っている企業の事例発表・パネルディスカッションなどを行いました。  今号では、2024年11月28日に開催された「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」の模様をお届けします。 【P7-10】 2024年11月28日開催 基調講演 令和6年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」 ミドルシニアのキャリアの現状の課題 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島(こじま)明子(あきこ) ミドルシニアのキャリア意識の現状  本日、私からはミドルシニアのキャリアにおける現状と課題についてお話しします。  私自身は20年近く企業のESG※1の評価にたずさわってきました。そのなかでも、特に働き方に関する調査・研究に長く従事しており、ここ数年ではいわゆる中高年、ミドルシニアの働き方に関して、株式会社日本総合研究所を主体としてデータを実際に集めて、働く人たちの意識について、データを分析しながら調査・研究を行っています。  本日の講演は二つのテーマを用意しています。一つめは「ミドルシニアのキャリアの意識の現状」です。こちらは日本総合研究所が実施をしたアンケート調査を基にお話しします。  45歳以上の就労者比率が、年々増加しており、2023(令和5)年には約6割近くに上っています。1976(昭和51)年には約4割でしたが、いまでは働く方々の多くが45歳以上であり、さらにこの比率は今後も増えていくでしょう。労働力人口全体が減少していくなかで、いかにミドルシニアに働き手として活躍をしていただくかが、非常に重要になってきています。  では、日本社会におけるシニア雇用の現状を見てみると、65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況として、約7割の企業が継続雇用制度を導入しています。  一方、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況を見ると、65歳まで働くことができる企業と比べ、70歳まで働ける企業はまだまだ少ないといえます。ちなみに、70歳まで働ける企業の従業員の規模を見ると、301人以上の企業より、21〜300人、いわゆる中小企業の方が70歳まで働ける環境を整備しています。これは、中小企業のほうが人手不足が深刻なので、より長く働いてほしい意向が強いのではないかと推察をしています。  それでは働き手の意識はどうなっているのでしょうか。ミドルシニアの男性の労働価値観の特徴を見てみましょう。一つめは外的報酬欲求です。特徴としては、「出世、昇進のために働くことが重要だ」と考えている人が、就職活動時点※2では約3割ですが、現在は2割ほどに下がっています。  二つめの特徴は、内的報酬欲求です。「自分の能力、スキルを活かしたい」と考えている人は、就職活動時点で約6割です。就職後もその数字は大きく変わっていません。「年齢を経ると仕事に対する意欲が低くなる」といわれることもありますが、データを見ると、若いときとモチベーションは変わらず、「やりがいのある仕事をしたい」、「自分の能力を活かしたい」という思いを持っている人が非常に多いということがわかります。  次に、ハードワークに対する許容度合いです。これは「ワーク・ライフ・バランスへの志向」に読み替えるとわかりやすいかと思います。「やりたい仕事であれば、仕事以外の時間が削られても仕方がない」と思っている人は、就職活動時点では、「長時間労働にも耐えられる」、「将来に向けて、さまざまなことを学んでいきたい」といった志向の人だと思いますが、半数近くと比較的多くなっています。ただし、年齢とともに体力も落ちてくるので、現在もハードワークを許容している人は約3割と非常に少なくなっています。  ハードワークに対する許容度合いをふまえると、「年齢を経るとハードワークはしたくないが、やりがいのある仕事をしたいという人の比率は、変わらず高いままである」という状況が見えてきます。一般的に「年を取るとやる気がなくなる」といわれる方は多いですが、長時間労働やハードワークができなくなることから、誤解をされてしまうのではないかと感じています。  続いて、ミドルシニアの女性について見ていきましょう。「出世、昇進のために働くことが重要だ」と考えている人は、就職活動時点でも、アンケート回答時点でも1割程度と、非常に少ないという結果が出ています。ミドルシニアを調査対象にしているところもあり、男性に比べて、出世・昇進に対する意欲が非常に低いようです。  一方、内的報酬欲求は、特に「自分の能力やスキルを活かすために働くことが重要」だと考えている人が、4〜5割弱となっています。これは就職活動時点とアンケート回答時点とでも同様です。女性が男性と少し異なるのは、「自分の能力を活かしたい」と思う人が就職活動時点より増えている点です。年を取ると、よく「女性のほうが男性よりも元気になる」という話を聞くことがありますが、データにも示されていると感じています。  次にハードワークに対する許容度合いです。女性でも年齢を重ねるとハードワークをきついと感じるのか、就職活動時点と就職後を比べると、1割ほど減っています。ただし、男性では比較的、就職活動時点から仕事以外の時間が削られても仕方がないと思う方は一定割合いるのですが、女性は男性に比べると少ないのが特徴的です。 ミドルシニアの職業生活に対する満足度  続いて、現在の職業生活に対する満足度についてです。  特徴的なのは、「仕事を通じて自分は成長している」と感じているミドルシニア男性は約3割しかいないことです。先ほど、「ミドルシニアの男性は年齢を経ても働く意欲は高い」とお話ししましたが、自分の能力やスキルを活かしたいという人は多くいても、職業生活において満足感を感じている方は非常に少なく、いい換えれば、「活躍の場が少ない」ということなのではないかと感じています。  一方で、現在の私生活に満足しているミドルシニアの男性は4割ほどで、あまり高くはないといえます。特にミドルシニアの男性は、趣味、居場所、あるいは友人が少ないことも明らかになっています。今後残された人生のなかで、これからの職業生活をどう歩んでいくかは重要な課題ですが、私生活をどう生きていくかも、男性にとっては課題になっていくだろうと感じています。  女性の職業生活への満足度に目を向けると、特にミドルシニアの女性に関しては、「興味や好奇心がかき立てられている」と感じている方が約3割と低めです。先ほども、男性と同様にミドルシニアの女性は、仕事に対する意欲が非常に高いというお話をしましたが、おもしろいと感じて仕事をしている方は少ないといえるかもしれません。  一方、私生活への満足度を見るとおよそ半数が満足しており、男性よりは私生活が充実していると感じている方が多いといえます。ただ、職業生活に満足している方は約4割で、私生活に比べると多くはないということになります。 役職定年制度と働く意欲・キャリア意識の関係  さて、大企業の多くが役職定年制度を設けており、特にこの制度が多くの働くミドルシニアの意欲を下げているというデータがあります。役職を降りた経験のある方の約6割弱が、会社に尽くそうとする意欲が下がっていることが明らかになっています。これが特徴の一つめになります。  二つめの特徴として、役職が高い人ほど、役職を降りたあとのモチベーションが下がっています。どうしても役職の高い方ほど、そのギャップに悩む方が多いということを示しているかと思います。  三つめの特徴は、経営層、上司の相談相手、教育係、あるいはアドバイザーのような仕事に就いている人のほうが、社員の補助、応援といった仕事をしている人よりもモチベーションが下がりづらいという結果が出ています。これは、若手社員と同じ立場で仕事をするよりも、モチベーションが下がりづらいということを表しているのだと思います。ただし、今後、ミドルシニアが企業のなかで増えていくことを考えると、その多くをアドバイザーや教育係に配置することは、組織としては対応しづらいところですので、今後課題になっていくのではないかと思います。  キャリア自律度について見てみると、男性も女性も40代・50代は非常に低くなっています。年齢が高くなるにつれてキャリア自律度が低くなっており、ミドルシニアのキャリア自律をどう高めていくかが一つの課題であると思います。 ミドルシニアの活躍施策の現状  次に、二つめのテーマである「ミドルシニアの活躍施策の現状」について、これまでお話しした働き手のキャリア意識の現状をふまえて、お話ししていきたいと思います。  ミドルシニアの活躍に向けた施策の動向としては、年齢にかかわらずスキルアップ、リスキリングの機会の提供、そのほか長く働く人が増えていくことから、仕事内容、働きぶりに合わせた賃金体系の整備の必要、あるいは副業・兼業の解禁などが、ここ数年指摘されており、その機会を提供していくことが必要です。  そして、65歳、あるいは70歳まで、いかに長く働ける環境を整備していくかが重要だといわれています。また、高齢者を含めICTを活用したテレワークの推進も求められます。  続いて「リスキリング」についてお話しします。  従業員の自己啓発の実施状況はどうかというと、まず年齢が上がるにつれて、自己啓発をしている人はどんどん減っていきます。自己啓発をしている人の割合を見てみると、20〜29歳が4割、50〜59歳は3割弱、60歳以上は2割ほどです。自己啓発を実施した時間は、20・30代と比べるとややミドルシニアの方が少ないのですが、全体を見ても、平均延べ時間は40時間程度なので、そもそもあまり時間をかけていないことがわかります。  さらに、自己啓発の実施方法に目を向けてみると、圧倒的に多いのがeラーニングでの学習、次いでラジオ・テレビによる学習であり、個人で勉強をするインプット型が非常に多いといえます。  能力・スキル向上に向けた従業員と企業側の認識におけるギャップについて見てみると、従業員が今後、向上させたい能力・スキルとしては、ITを使いこなす能力、あるいは高度な専門的な知識・スキルが非常に多くなっています。  一方、企業側が重要と考える能力・スキルに目を向けると、じつはIT、あるいは高い専門性を重要だと考えている企業は少なく、チームワーク・周囲との協働力、あるいは職種に特有の実践的なスキルを重要だととらえていることがわかります。従業員が向上させたい能力・スキルと企業側の認識には、大きなギャップがあり、企業側が従業員の声にきちんと応えきれていないといえます。  続いて、企業側の副業・兼業の取組み状況を紹介します。  副業・兼業を解禁しているのは、従業員規模が1000〜5000人未満の企業では5割ほど、5000人以上では6.5割ほどとなっており、じつは大企業ではわりと多いことがわかります。特に自律的なキャリア形成支援に取り組む企業ほど、副業・兼業に積極的です。自己啓発は一人で学ぶのも重要だと思いますが、学んだ知識をどうアウトプットしていくかが今後は重要になり、そのアウトプットの場として副業・兼業が非常に重要な意味を持つと思います。  では、実際に従業員の副業・兼業に関する意識はどうなっているでしょうか。大企業ほど副業・兼業を認めているなかで、「手をあげるのは若い人が多い」という話をよく聞きます。それはデータでも明らかとなっており、40代・50代の副業・兼業の実施率は、ほかの年代に比べて少ないということがわかっています。  副業を行っていない理由としては、「自分の希望やスキルに合っておらず応募を控えてしまう」という人が多くなっています。ただし、特に最近では、副業・兼業の形が変わり、リモートワークで知見を提供するといったスタイルの仕事も出てきていますし、副業・兼業そのものが、多様化してきているので、企業側も多様な副業を認めていく、あるいは情報提供をしていくことが必要になると考えています。  また、従業員の方に、なぜ副業・兼業をしないのかとお話を聞くと、「自分が何に向いているかわからない」という声や、「中小企業のプロボノのような場に行っても、自分がそこまで高いスキルを持っていないのでむずかしいのではないか」という答えが返ってきます。よって、各個人のスキルをきちんと見える化をしていく、あるいはもう少し参加をしやすい副業・兼業の場を、企業の側も提供していかなくてならないと感じています。 まとめ  総括に入りたいと思います。ミドルシニアに対する学びの機会の提供について、ミドルシニアの人ほど学ぶ時間が少なく、学んでいる人も少ないので、その量を増やしていく必要があると思います。つまり、「量」が一つめのポイントです。  二つめは「質」です。いままでのスキルの向上に加えて、社会のニーズに合わせた学びの支援が必要だと思います。企業側、従業員側、それぞれのギャップがあるとお話をしましたが、質を向上させていくことが必要になると思います。  三つめは、ミドルシニアに対する、「社会の活躍機会を増やしていく」ことです。「中小企業にプロボノに行くには、自分のスキルは足りない」と考えている方であったとしても、社会にはさまざまな活躍の場があるので、選択肢を増やしてその機会を提供していくことが必要だろうと思います。 ※1 ESG……Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の略 ※2 アンケートを実施した時点で、就職活動時はどう思っていたかをふり返って回答 【P11-12】 2024年11月28日開催 事例発表@ 令和6年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」 ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 アズビル株式会社 アズビル・アカデミー学長 荻野(おぎの)明子(あきこ) 能力開発方針のもと人材育成に注力 ベテランエンジニアが長く活躍  当社は、「人間の苦役からの解放」を目ざし、1906(明治39)年に創業者である山口(やまぐち)武彦(たけひこ)が、欧米の工作機械類を輸入・販売する会社として立ち上げました(当時の社名は山武(やまたけ)商会)。現在は、「人を中心としたオートメーション」をグループ理念に掲げ、間もなく創業から120年を迎える会社です。  計測と制御の技術を基盤としたオートメーション事業はアナログから出発していますが、大きな技術革新を迎えてデジタルへ移行し、最近では、DX、生成AIが浸透しつつあります。BtoBがメインで、建物市場ではビルディングオートメーション事業、工場やプラント市場でアドバンスオートメーション事業、ライフラインや健康など生活に密着した市場においてライフオートメーション事業を展開しています。全国にサービスの拠点を持ち、製品の開発から、製造、エンジニアリング、メンテナンス、保守までを一貫して行う体制が整っています。  当社のベテランエンジニアは、設備導入当初からお客さまに寄り添い信頼関係を構築し、長らく技術、サービスを提供しているメンバーが数多く在籍しています。  こういった背景もあり、ベテランが長く活躍し続ける会社という理由になっているのかもしれません。従業員(単体)5163人(2023〈令和5〉年時点)のうち、50代は2504人。60代以上を合わせると、約半数がベテラン社員という年齢構成になっています。  人材育成の面においては、2008(平成20)年に、社員に求める人材像や人材育成の基本理念といった、能力開発基本方針を制定しました。また、2012年には人事部から人材育成の機能を独立させ、アズビル・アカデミーという人材育成の専門機関を立ち上げました。アズビル・アカデミー誕生の2012年は経営体制の一新があり、その際に三つの基本方針を打ち出しました。その一つが「学習する企業体」です。  学習する企業体というのは、ただ研修が多い会社、たくさん勉強する企業という意味ではなく、自ら変革しなければならないという意識を持って、継続的に学び、実践をくり返すという体質を強化できる企業体を意味しています。 ミドルシニアが学び、体験する 人材育成専門機関の取組み  アズビル・アカデミーは学習する企業体を体現できる人材の育成をリードしていく役割をになっており、その取組みのなかから、おもにベテラン層が多く関係する制度や取組みの一部をご紹介します。  一つめは資格制度です。公的資格取得奨励制度は、現在、500を超える資格を登録しており、代表的なものとして、技術士、技能士、電気主任技術者、情報処理技術者のほか、各種IT関連の公的資格を対象としています。合格者には奨励一時金を支給しています。また、社内資格として「技術プロフェッショナル」や「安全マイスター」といった認定制度を設けており、資格試験に合格した方には一時金の支給に加え、その証として認定証とバッジを授与しています。認定された方は、その技術伝承のため後進を育成する役割をになうと規定に盛り込んでいます。  二つめは、メンタープログラムです。メンティーは新任のグループマネージャー、メンターには過去に役職を経験したベテラン社員を迎えて、伴走するプログラムになっています。ここでいうベテランとは定年後再雇用を迎えた60歳以上の方です。年に1回、メンター、メンティーともに手あげで参加者を募り、約半日のプログラムを合計3回、実施しています。通常、メンター制度といいますと、メンター、メンティーともに一対一で行うことが多いと思いますが、このメンタープログラムでは、メンター、メンティーともに複数名を一つのチームとして活動していきます。これが当社の特徴であり、メンター、メンティーのマッチング度合いを高めるための工夫の一つになっています。各チーム5人程度、そして5チームほどで開催します。開催時は、全員同じ場所に集まって話をすることになるので、同じチームのメンバーだけではなく、メンター同士、もしくはメンティー同士という横のつながりを広げる場としても活用しています。  社員一人ひとりの成長がアズビルグループの持続的成長の礎であることから、メンター、メンティーともに本取組みへの挑戦を通じて学び、成長するということをねらいに置いています。メンティーだけが何かを得るということではなく、メンターのみなさんにも学びや成長、そして参加してよかったと思えるような工夫を盛り込んでいます。  三つめは、社内プチインターン制度です。他部門の業務に興味、関心を持つ社員が自らの意思で、一定期間内、希望する業務の内容を体験できるという仕組みで、年1回、受入れ可能な部門を募っています。体験できる業務の内容、期間、頻度については、受入れ部門と手をあげた本人が、話合いのうえで内容を決定していきます。2024年度は最長6カ月という時間枠を設けて開催しました。私が所属するアズビル・アカデミーでも50代の方一名が、業務体験に来ています。 DX人材として活躍するため学びの場を提供  最後にご紹介するのはDX人材の育成です。当社が求めるDX人材のスキル定義から着手し、そのスキルセットを自身に実装していくために、どのような育成プログラムを提供するのがよいかを企画・検討し、いくつかのプログラムを実施しています。研修やセミナーなど、OFF-JTの場で得た知識を、OJTの場となるDXに関するプロジェクトへの参画や、日常業務内でのDXという取組みで発揮し、当社の製品やサービスのDXを実現していくというシナリオを描いています。  アズビル全社員がDX人材として活躍するということを目ざしているので、もちろん、ベテラン社員のみなさんも育成の対象に含まれています。 【P13-14】 2024年11月28日開催 事例発表A 令和6年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」 50代は「今さら」ではなく「今から」 〜明治のキャリア自律支援の取り組み〜 株式会社明治 人財開発部DE&I推進G専任課長 戸井(とい)浩(ひろし) シニア領域における課題感について  本日は、「50代は『今さら』ではなく『今から』」というテーマで、株式会社明治のキャリア自律支援の取組みについてお話ししていきたいと思います。  当社は、2009(平成21)年に明治製菓株式会社と明治乳業株式会社の経営統合によって設立された持ち株会社の明治ホールディングスの完全子会社になります。食品セグメントの事業会社として、乳幼児から高齢者まで、粉ミルク、牛乳、乳製品、菓子、スポーツ栄養食品、流動食など、多岐にわたる商品をお届けしています。  さっそく、本題のシニア領域における課題感についてお話ししていきたいと思います。当社の年齢別人員構成を2021(令和3)年4月当時と2032年4月のシミュレーションと比較したところ、60歳以上が2021年は259人ですが、2032年では955人と3.7倍も増える見込みです。さらに、構成比を見ると2021年は3.9%で、2032年は16.6%と、4.3倍に増加することになります。  このような状況ですと、従来の再雇用者の仕事のままでは立ち行かなくなり、会社への影響度が格段に上がると、大きな課題感を抱きました。そこにトップからの一言があり、2021年10月に施策検討のタスクチームが発足され、特に「シニア領域については重要度・緊急度の高さに対して世間より遅れている」という認識のもとで検討をスタートしました。  課題は四つあり、まずシニア層のモチベーションの低下です。現在の再雇用制度では業務内容や成果、あるいは保有スキルに応じた報酬体系になっていないので、特に管理職の再雇用後の活躍の阻害要因になっているというところが特に大きな課題です。そのほか、働き方に関する意識の変化、生涯現役への支援、そしてスキル向上と再雇用制度の再構築、これらを課題としてとらえてきました。  課題の解決にあたっては、リスキリングを通じて新しいスキル、技術を身につけてもらい、社員一人ひとりが活き活きと働き、そして会社に還元して会社も活性化を図るというところを目的としました。  その目的を実現するための施策としては、キャリアデザイン研修、面談、リスキリング支援の三つが軸となっています。  タスクチーム発足時に、制度の改正も必要であろうということで、キャリア開発支援に合わせて制度の改正に向けた検討も進めていきました。キャリア開発支援に関しては2022年度秋から開始しており、制度改正は2025年度4月以降を予定しています。  キャリア開発支援は50代社員を対象とした研修・面談を行い、リスキリングなどの行動変容をうながしています。また、再雇用の年齢上限を、現行の満65歳の誕生日の属する月の月末から、2024年度より段階的に満70歳の誕生日の属する月の月末に延長することになっています。 3本立てのリスキリング支援  では、当社の3本立てとなっているリスキリング支援施策について紹介します。まず「PICKUP」という名の手あげ式研修です。2023度よりスタートし、全社員向けに実施しており、1年間で最大6講座の受講が可能です。再雇用者も受講することができます。  二つめは「自己啓発」です。自己啓発は自費を原則としますが、条件を満たせば半額を会社が援助します。そのなかには通信教育講座、eラーニング、動画サブスクリプションを準備しています。  最後が「DX関連講座」で、「P活動画」というパソコンにかかわる動画をつねに閲覧することができ、自由にそれを見ながら、基本的なパソコンのスキルなどを磨ける場を設けています。さらに2024年度から「50代じっくりエクセル講座」という、50代限定でエクセルの基礎的なことを学ぶ講座を実施しています。 50代キャリア研修・面談  続いて、50代キャリアデザイン研修についてご紹介します。管理職向けの研修と一般職向けの研修に分かれており、管理職向けの研修は1日3.5時間を3回、月1回とし3カ月連続で行います。対象者は50代の管理職です。2022年度から2025年度まで、年度ごとに年齢で対象者を区切って受講を進めています。また、一般社員は3.5時間×1回に設定し、管理職と同じ時期にキャリアコンサルタントの資格を持つ人財開発部長が講師となり研修を実施しています。  管理職向けの研修の内容に関しては、おもに成人発達理論と意識体系を大きな二つの軸に定め、グループワークでの対話を重視し、内省による自律思考することを目ざしていきます。  受講者へのアンケートからは、「自分一人で考えるだけではなく、他者からのフィードバックを受けられることで自信を持ち、他者の話で新しい発見ができた」といった意見が多くありました。  キャリアデザイン面談は、キャリア研修で明らかになったキャリア形成上の課題、強み、希望などの気づきの再確認や個別アドバイス、個別のアクションプランの作成支援などを目的としたものです。面談の一番のポイントは、傾聴し、受講生が自身で話して、自身で気づくこと。そして自分の考えを整理するというところに主眼を置いています。  50代キャリア自律施策の今後の展望ですが、手あげ式のPICKUP研修は50代、60代の申込みが増えましたが、さらに増加に向かうよう取り組んでいきます。自己啓発の受講については2024年度より会社補助要件を緩和しました。キャリア相談支援はもっと時間をとって相談したいという人もいます。2023年度時点で十数人だったので、さらに増えるように認知度を上げる働きかけを進めています。  現在実施中の研修は、いずれも一部改善を加え、安定した運用を図っております。  いままでお話しした取組みを通じて、社員個人と会社双方にとってWin-Winの実現を図り、50代は「今さら」ではなくて、「今から」ということを掲げて取り組んでいきたいと思います。 【P15-16】 2024年11月28日開催 事例発表B 令和6年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」 ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役CEO社長 宮島(みやじま)忠文(ただふみ) ミドルシニアのキャリア再構築の必要性  ミドルシニアのキャリア再構築、リスキリングの重要性と企業の戦略ということでお話をしていきたいと思います。  当社は、研修から実際の職業紹介のところまでスキームを組み立てて、どうすればミドルシニアが活躍できるのかを研究している会社です。ミドルシニアの研修として、個人向けの塾も開講していますが、企業からの相談、あるいは研修の内製化の相談が増えています。実際に転職に至るまで、どうしたらうまく活躍できるのか、どういうスキルが必要なのかを探索しています。  会社内のシニアをめぐる問題点は、簡単にいうと「積極性に欠ける」、あるいは「知識が古いが学ぼうとしない」といった仕事に対する姿勢・態度です。原因は、ポストオフや報酬の減少などで、いわゆる縦型のキャリアに対する行きづまりがあり、そこでモチベーションが落ちていくということになります。また、研修を受けるミドルシニア当事者とお話をするなかで感じているのは、「承認欲求が満たされていない」ということです。当事者からすれば会社に裏切られた気分だと話す方も、正直なところ多いです。  当社の塾に来ている比較的やる気があるミドルシニアのデータではありますが、会社からの期待感を感じているという人は約4割で、残りの6割はあまり感じていません。会社の施策や会社に対する満足度、エンゲージメントにも影響しています。「能力や経験を活かしきれていない」、「がんばりたいが機会がない」と考えている人がいます。つまりがんばるためのポジションがないということです。ポストオフになっていればなおさらです。  また、人事の声、真意は届いていないといえます。「キャリア」という概念がまず多義的で、「キャリア自律」といわれても、何のことやらわからないというのが本音です。「いきなり『キャリア自律』といわれても、いままでしたことがないので無理です」と考えます。ですから若いうちからのキャリア形成が重要になるのです。  会社の制度や施策に満足しているかについては、「満足している」という人は10%と少数派で、7割以上は満足していないという答えが出ています(株式会社社会人材コミュニケーションズ会員アンケートより)。  問題は、ミドルシニアに「その施策の目的やビジョンを理解しているか」と聞くと、ほとんどの人が理解できていない点です。特にキャリア研修を始めるやいなや、「この研修の目的は何ですか」と聞かれることがあります。企業の意図が明確に伝わっていないところがあるので、まずはしっかり伝えることから始めることが大事だと感じています。  これらはあくまで受ける側の意見です。当社は、企業内のアンケートではなくて個人に聞いていますので、本音だと感じています。実際には、企業はたいへんな努力をされているのですが、それが届いていない、ということが見えてきています。  では、ミドルシニアのキャリアをどのように再構築していくのか。まずは、ミドルシニアの“在り方”から考えていきましょう。背景としては、知的資本を有したボリュームゾーンですから活躍してもらわなければなりません。これは避けられない状況です。ただし、いままではそれがなかった世界だったわけで、ロールモデルもおらず、つまり彼らは“フロンティア”なのです。ですので、在り方は新しく定義しないと立ち行かないだろうと感じています。  しかも、それはいままでの働き方の延長線上にはありません。縦型キャリアではなく面に広がっていくことになるので、これまでの延長線上にはないのです。つまり、働き方の再定義が必要になります。まず、「企業の戦略的視点から存在価値の再定義(場の再定義)」をし、続いて「ミドルシニア本人の変革(主体の再定義)」が必要だと思います。これからは付加価値を生む主体になっていかなければいけません。本人の変革においても縦型の年功序列的なポストや報酬といった動機づけの意識を変えなくてはいけません。例えば、達人やアーティストが結果に貢献するような、成果物を動機づけに変更していくイメージです。また陳腐化されたスキルを強化する必要があり、ゆえにリスキリングが重要です。 シニアのキャリア再構築の実施方法  ミドルシニア本人の変革をうながしていくうえでは、加齢と慣行からくる行動上の問題点を修正する必要があります。例えば、後輩の指導をする際に、口ではいろいろいえるけど、実際にお手本を見せるようなことはしない・できないというようなこともあります。  しかし、経験からスキルのレベルは高く、知的資本はすばらしいとしかいいようがありません。よく「WILL、MUST、CAN」といいますが、“WILL”は会社にあります。それなのに会社からの期待感が感じられない点が重要だと思っています。  総論として、重要なのはメッセージの浸透です。そして、突然キャリア自律のすべてを任せないということです。そして“勝手に老けさせない”。世の中に目を向ければ、70代以上でも現役でバリバリ活躍している人たちがいます。そういう人たちと比べればまだまだ若いので、老けさせてはいけないと思っています。また、自己決定の場の提供と、変われる人から変えていくというのが必要です。  リスキリングについては、貢献領域と連動させなければいけないと感じています。「『リスキリング』という言葉がいままでの否定に聞こえる」という声も聞こえてきます。そうではなく、いままでの知見に価値があるということですから、何にしてもリスペクトが必要です。それがあればシニアから新施策を動かせる起爆剤にできると考えています。  なかには経験と勘に頼りがちな人もいますから、リスキリングはアップデートのためにも必要です。いままでの知見とかけ算したらどうなるかを考えれば、リスキリングは有効だと考えています。いずれにしてもリスキリングは目的が明確でなければいけないというところがポイントになります。 【P17-22】 2024年11月28日開催 パネルディスカッション 令和6年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」 ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 コーディネーター 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子氏 パネリスト アズビル株式会社 アズビル・アカデミー学長 荻野明子氏 株式会社明治 人財開発部DE&I推進G専任課長 戸井浩氏 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役CEO社長 宮島 忠文氏 ミドルシニアのリスキリング施策に至る背景 小島 パネリストのみなさんからは、現在の取組みについて紹介していただきました。ここからは、ミドルシニアのリスキリング施策に至る背景についてお聞きしていきたいと思います。最初に、アズビル株式会社の荻野さんからお願いします。 荻野 当社で大きなリスキリングの起点となったのは、環境変化でした。大規模な人員の配置転換があり、異なる領域の事業、例えばビルの空調からプラントの制御へと大きく仕事の内容が変わる人がおり、これまでの知識や経験だけでは、日常の業務が立ち行かなくなったわけです。アズビル・アカデミーの最初の大きな仕事は、この配置転換となった方たちに対してのリスキリングだったと思います。 小島 ありがとうございます。では続いて、株式会社明治の戸井さん、お願いします。 戸井 先ほどお話ししたシミュレーションにおいて、60歳以上のゾーンが約4倍に増えるのであれば、そのゾーンが会社を支える社員としてどれだけ活躍してくれるかを考えた際に、危機感がありました。一方、ここ数年は従業員のキャリア自律を重要視しているので、こうした背景のもと、リスキリングの施策に取り組んでいます。 小島 ありがとうございます。株式会社社会人材コミュニケーションズの宮島さんは、実際に数多くの企業、あるいは塾生である個人の方と接しておられますが、双方の視点から見たリスキリング施策について、お考えをお聞かせください。 宮島 「リスキリングの必要性を感じないから実施しない」ということもあると思います。実際には65歳を超えると、さらに勉強の投資が増えるというデータもあります。人生は長いと気づき始めるのでしょう。ただ問題は、現役のときのリスキリングの必要性です。自分の役割を定義したら、それに対して学習が足りないはずなのです。知識が古いこともあり得ます。ですから、自身の能力を明確に理解する機会と、自身で役割を考える場を設けて、会社からも役割を明確にする。リスキリングの必要性を感じるところから取り組まないといけないと感じています。 小島 宮島さんのお話のなかでも、企業側の施策の重要性が従業員の側にあまり伝わっていないというご指摘がありました。それをきちんと伝えていくためにはどのような視点が必要でしょうか。 宮島 会社からのメッセージにバイアスをかけて、「何か裏があるのではないか」とメッセージを受けとめない人もいます。私が思う必要な視点は、制度との連動性です。リスキリングをして活用する場がある、つまり実用性があれば、客観的な事実に納得できます。制度との連動性がうまくつくれるかどうかが重要だと思います。 小島 ありがとうございます。裏がないように伝えていかなければいけないということですね。戸井さんはどういったメッセージを研修の場で伝えていますか。 戸井 昨年度から研修の体系をガラッと変え、手あげ式の研修がメインとなっています。これは、会社が謳い続けているキャリア自律が基になっております。われわれとしては、自ら学ぶための場を提供しており、一人ひとりがそれぞれ在りたい姿をしっかり設定できないと、受動的になってしまいますので、いかに能動的になるかの意識づけとして、30代、40代にもキャリアデザイン研修をしています。 小島 まず在りたい姿を明確化していくというところですね。荻野さんの会社ではどのように従業員に伝えているのでしょうか。 荻野 当社のなかでも社員のキャリア自律に関する施策の検討を始めています。経営理念や、中期・長期計画をみなさんにお伝えして、会社が目ざしていることを知ってもらう。そのうえで自分はどうなっていきたいのかを描いてもらうことを大切にしたいと考えています。 小島 中期・長期計画を自分の仕事に落としこんで紐づけできるようにメッセージを伝えているということですね。 ミドルシニア向けのキャリア形成支援策 小島 次にミドルシニア向けのキャリア形成支援策についてお聞きします。  まず、戸井さんにお聞きしたいのですが、キャリアデザイン研修について、こだわっているポイントや独自に工夫をされているところはありますか。 戸井 キャリア形成支援のスタートは研修となっています。成人発達理論や意識体系(「アイデンティティ=自己認識」、「価値観」、「能力」、「行動」、「環境認識」の意識を体系化)を軸に、自身の長所をあらためて確認しながら、在りたい姿を描いていただき、在りたい姿とのギャップに対して、何をしていくかを、段階を踏んで3カ月間3回に分けて考えていただきます。各回事前課題にも取り組んでいただき進めていきます。 小島 時間をとにかくかけて、ゆっくり腰をすえて考える機会を提供されているということですね。先ほど手あげ式の研修の話もありましたが、手をあげる方はわりと問題意識の強い方だと思います。そういった方を増やすためにどうされていますか。 戸井 そこはむずかしいところです。キャリア自律となると、どこまで手をかけてよいのかというところがあります。ですから成長の場を提供し、あとは自身でどれだけ先を見すえるか、そのきっかけづくりとして、30代・40代の社員を対象としたキャリアデザイン研修も行っています。 小島 たしかにキャリア自律といいながら、強制・名ざしで、研修に参加していただくのはむずかしいと思います。一方で、手をあげない方こそ、本当は出てほしいというところもあるので、主体的に参加する人をどのように増やすかという点が課題だといえます。荻野さんはいかがでしょうか。 荻野 これまでも、55歳を迎える社員を対象に「キャリアライフプランセミナー」を実施してきました。ここでは、これからの資産形成の情報提供、これまでの自身のキャリアの棚卸から、これからのキャリアを考える機会を提供しています。参加者からは「もっと前に実施してほしかった」といった意見も多く寄せられています。 小島 ライフプランセミナーは、今後ほかの世代に広げる予定はありますか。 荻野 30代、40代、50代の10年刻みで実施したいと考えています。例えば30代であれば、次の40代のセミナーの際、30代でどんなことを考えていたかをふり返ることができる、そんな仕組みにしていきたいですね。 小島 たしかにふり返りに使えるのはよいですね。例えばライフプランセミナーのようにお金のことを考える機会は非常に重要です。定年前に突然、資産運用をすすめるのは現実的ではないところもありますので、金融経済教育の支援は今後重要になってくると思っています。では、宮島さんに、企業が個人にキャリア自律をうながすために必要な視点についてお聞きしたいと思います。 宮島 視点としては二つあると思います。まず一つは、やる気のある人から動かすこと。リスキリングは新しい概念ですから、やる気のある人からということです。例えば同期の人たちはみんな横並びだと思っている人がいます。ところが同じと思っていた同期が、じつはこの先のキャリアに対するしっかりした考えを持っていて、準備もしているという状況を知ってもらうことです。やる気のある人から動かしてそれを見せていくというのは一つの普及経路です。  二つめは、会社からの期待感です。「がんばってくれよ」といわれて悪い気がする人はいません。役職を降りるのは仕方ないとしても、「君には次の役割がある、ぜひがんばってくれよ」といわれると、みなさん喜んで取り組めると思います。 小島 まずは、やる気のある方を中心に動きをつくり、褒めて育てる、ということですね。 宮島 そうですね、何歳になっても褒められたいものですし、特に出世をやりがいにしてきた人たちにとって、それが先になくなると、その時点でモチベーションが落ちてしまいます。自身で目的・目標を探すことは重要ですが、できるだけ具体的な役割を任せるなど、ある程度は企業に示してもらいたいと感じています。 小島 なるほど。じつはもっと役に立つことができるということを、会社側が示しつつ、その方をしっかり認めていくということですね。 宮島 まさにそうですね、他者承認が必要です。 デジタルスキル向上に向けた施策 小島 続いて、キャリア形成支援策のなかでも、デジタルスキルの向上についての話をお聞きしていきたいと思います。戸井さんが先ほどの発表で紹介された「50代じっくりエクセル講座」がとても興味深かったのですが、50代からシニアの方ほど、デジタルスキルを向上させたくても、参加しづらいのではないでしょうか。参加しやすくなる工夫などはありますか。 戸井 ひとことで「デジタルスキル」といっても、さまざまな職種の方がいて、どんな業務であるかによっても取得したいスキルは異なります。ここが一番むずかしいところで、デジタル部門に相談をしながら、一般的に使われているエクセルに絞って、よく使いそうな例題を出し、基本的な操作を教えています。  2023年度に2回行ったところ、募集人数を超える応募があったので、2024年度は人数制限せず開催しました。オンライン研修なので自分の進み具合が遅くとも恥をかくことはないですし、そういった意味でも敷居が低く、参加しやすかったのかもしれません。また、動画を後から何回も見ながらしっかり習得してもらえればと期待しています。 小島 “じっくり”という言葉が研修の名前になっていますが、本当にじっくり教えているのですか。 戸井 教える側も受講者と同じ年代なので、ペースについていけない人は遠慮なく申し出てもらって、じっくりと、ゆっくりな人のペースに合わせて行っています。 小島 同年代の方のみが参加可能な講座というのは、50代の社員にとっても参加しやすいですね。荻野さんにお聞きしたいのですが、アズビルでは社員全員がDX人材として活躍できるように取り組まれています。特にミドルシニア従業員向けの取組みはありますか。 荻野 あえて50代という年齢枠を設けて「DXナレッジセミナー」を企画しました。「DXを若者に任せておかず、50代でもやるぞ!」と気概がある方を手あげ制で募集しました。セミナーでは「DXとは何か」から学び、学んだことを自分なりに解釈してアウトプットします。自社のDXを自身で考え、成果物として最終発表の形まで整え、当社にあるテクノカンファレンスという場を使って発表、資料公開を行いました。  セミナー終了後のアンケートでは、「50代で体系立てて新しいことを学ぶことが新鮮でした。自分なりの大きな発見もありました」、「これまでの人脈を有効に使って、自分なりのDXができそうな気がしてきました」とベテランならではの声が届きました。  2024年度は年齢枠を40代にも広げて、同じセミナーを実施しています。  興味を持って参加したミドルシニアが、DXについて学びアウトプットすることで、インフルエンサーとなって、メンバーが集まってきていると思うので、徐々に広がっていくとよいと考えています。 小島 先ほど宮島さんが話していた、やる気のある人から広げていくような、受講者がインフルエンサーになって活動をより浸透させていくという、よい事例ですね。 リスキリング施策を通じた企業価値の向上 小島 リスキリング施策を通じた企業価値の向上という視点でとらえた場合、アズビルではどんな取組みをされているのでしょうか。 荻野 「社内プチインターン」という仕組みを取り入れています。自職場以外の業務体験ができ、年齢、部門を超えて、情報と人の交流を生み出すことができる施策です。  「学び」という切り口で得た新たな体験は、個人の気づきから行動変容につながります。また、人の交流から新たなアイデアが生まれます。こうして変革の種が蒔かれて、その継続によって芽吹き、結果お客さまへの新たな価値提供につながっていくと考えています。 小島 まさにリスキリング施策を通じて、本人の人材育成にもつながり、組織の新陳代謝、活性化にもつながっているのですね。宮島さんは、この点についてどうお考えですか。 宮島 ミドルシニアはまさに知的資本を持っているので、いままでのスキルにかけ算でリスキリングをすれば、きわめて有効に価値を生めるだろうと思います。ミドルシニアはやはり業務知識が豊富ですし、ワークフローの改善にもかなりの知見を持ち、現場の知識が強いので、あとはDXの材料があれば、むしろ活躍できると感じています。  戦略的にどう企業価値を上げていくかでいえば、ミドルシニアのイメージがあまりよくないので、新卒者がロールモデルとしてイメージできるようなかっこいいミドルシニアをつくるというところは、当然採用にも活用できるのではないかと考えます。  また、ミドルシニアのなかには、利益になりそうな情報を持っているのに発表の機会がないと感じている人もいるようです。なかには、効果の期待できるよい提案ができる人がいると思うので、ボトムアップ型にすることで、経営陣にも相当有効な策を出せると思います。 小島 ちなみに、宮島さんが考えるかっこいいミドルシニア像はありますか。 宮島 いわゆる「マニア」ですね。事業をどんどん開発していく方とか、卒業して何か会社をつくっているOBを取り込むことなども一つの方法だと思います。エンジニアリングの会社に多く、そういった人がいる会社は若手も活き活きしています。 小島 いくつになっても、夢中になる何かを仕事で実現している感じでしょうか。 宮島 そうですね。まさに夢を追っている、終わり感がないというところですね。 小島 なるほど。ミドルシニアのリスキリング施策について今後の課題はいかがでしょうか。 宮島 「リスキリング」という言葉が、なんとなく否定的に聞こえます。もっとアップスキルの要素をうまく伝えられるとよいですね。正直なところ、ミドルシニアがゼロから学び始めて、格段に優位性が出るとは思っていません。リスキリングはいままでの知見に上乗せていく、かけ算のところだと感じています。 小島 いままでの自分が持っているスキル、強みを把握するには、どうすればよいでしょうか。 宮島 極端なことをいってしまうと、修羅場を経験することでしょうか。副業も有効だと思います。社内の阿吽の呼吸もなく、異文化を経験するところで、自分は何の役に立つのだろうと感じることが、有効だと思います。 小島 本日みなさんからいろんなご意見をいただきました。最後に、今日感じたことについてコメントをいただけますか。 荻野 「社会人になると学ばない」といわれることもありますが、上司が期待を伝え、社員自らが目標を持ち、達成に向けて学び成長する。上司、会社はそれを支援していくことが重要だと思います。本日はさまざまなヒントをいただきましたので、ミドルシニアならではの学びの機会、学び方も模索しながら、学習する企業体として、魅力あるリスキリングの施策を打ち出していきたいと思いました。 戸井 ミドルシニアがこれから活躍するうえで、われわれとしても活躍の場を創出していくことも必要であると感じております。一方でミドルシニアには、いま一度、本当に自分の在りたい姿をイメージしていただき、われわれもそれができるよう引き続きうながしていければと思っています。 宮島 ミドルシニアは人口のボリュームゾーンですので、リスキリングは喫緊の課題だと思います。ミドルシニアは自身が持っている知的資本が失われていくことに危機感を持っているので、その活用という視点も重要です。また、その年代の方たちに対してのリスペクトがもう少し伝わるとよいと感じています。 小島 みなさん、ありがとうございました。ミドルシニアに対してリスキリング施策を推進していくうえで、荻野さんからは会社内での事業の転換があり、戸井さんからは組織内においてミドルシニアが増加することへの危機感といった背景があるといったお話をおうかがいしました。それらを共通認識として明確にしたうえで、会社としての方向性をミドルシニア社員に理解してもらい、取組みを推進していることを感じました。  一方で、宮島さんのお話では、当事者であるミドルシニアにしっかり伝わっていないという話もありました。しっかりと会社からのメッセージを届けていくことが、前提として重要だと思っています。  本日、パネリストのみなさんからは、独自性がある非常にユニークな取組みを紹介していただき、私自身もとても勉強になりました。「リスキリング」と聞くと、これまでつちかってきた知識や経験を否定されたように感じている方もいると思います。ですので、いままでの知識や経験を活かす・引き継ぐという視点も重要にしながら、リスキリング施策を進めていく必要があると感じました。  本日、お話のあった貴重な意見を一つでも、二つでも持ち帰っていただいて、何か活用いただけるものがあれば誠に幸いです。本日はありがとうございました。 写真のキャプション 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島明子氏 アズビル株式会社 アズビル・アカデミー学長 荻野明子氏 株式会社明治 人財開発部DE&I推進G専任課長 戸井浩氏 株式会社社会人材コミュニケーションズ代表取締役CEO社長 宮島忠文氏 【P23】 読者アンケート結果発表!! ご協力いただき、ありがとうございました  日ごろより『エルダー』をご愛読いただき、ありがとうございます。今年度実施した「読者アンケート」には、みなさまから多数のご意見・ご要望をいただきました。心よりお礼申し上げます。今号では、読者アンケートの結果の一部をご紹介いたします。今後の企画・編集の貴重な資料として活用させていただき、よりよい誌面づくりに努めてまいりますので、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。 (アンケート調査実施期間:通年、集計期間:2023年10月1日〜2024年9月30日) ご回答者の立場 (所属先を「民間企業」と答えた方のみ) 人事総務部門責任者・担当者 57.3% 経営者・取締役 (役員含) 26.7% その他(一般社員など) 8.9% その他の管理監督者(工場長、支店長、管理職など) 4.0% 無回答 3.1% 本誌に対する評価 非常に参考になる 27.0% 参考になる 59.5% あまり参考にならない 4.5% 参考にならない 2.4% 無回答 6.6% 参考になったコーナーとその理由 特集 ・給与制度の見直しや柔軟な勤務体制の整備などとても参考になった。 ・企業事例は、自社での取組みの参考になる。 など 知っておきたい労働法Q&A ・身近な話題であり、実務に役立つ知識の習得につながる。 ・労働法に詳しくないため参考となる。 など リーダーズトーク ・経営者の考えを知ることができる。 など マンガで学ぶ高齢者雇用 突撃!エルダ先生が行く!ユニーク企業調査隊 ・大事なことがマンガで学べるためとても分かりやすい。 など その他 ・コーナー問わず参考になる。地方の情報はありがたい。 ・助成金は知らないことも多く参考になる。 ・各職場での事例紹介が参考になる。また、高齢者雇用にかかわる法令改正の解説も参考になる。 など さらに充実を図ってほしいコーナーとその理由 ・〈知っておきたい労働法Q&A〉労働法が改正される際はその内容について解説してほしい。 ・〈高齢者の職場探訪 北から、南から〉制度導入後の具体的な取組みなどについても解説してほしい。 など 今後取り上げてほしい内容、ご意見、ご要望 ・業種・業態ごとでの学び直しの事例やおすすめの取組みがあれば知りたい。 ・効果的なリスキリング対策について。 ・小規模・零細企業における高齢者雇用のメリット・デメリットを解説してほしい。 ・高齢社員のモチベーション維持、メンタルヘルスについて知りたい。  など 興味・関心のあるテーマについては、JEEDホームページに掲載しているバックナンバーもご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/backnumber.html エルダー バックナンバー 検索 【P24-25】 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介  高齢者雇用を進めるためのポイントは、業種や業態によって違いがあります。そこで当機構(JEED)では、産業別団体内に推進委員会を設置し、高齢者雇用に関する実態を把握するとともに、解決すべき課題などを検討して、高齢者雇用を推進するために必要な留意点や好事例を「ガイドライン」として取りまとめています。  わが国では急速な高齢化が進むなか、中長期的に労働力人口の減少が見込まれ、高齢者が社会の支え手として意欲と能力のあるかぎり活躍し続ける「生涯現役社会」の実現が求められています。  2021(令和3)年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行され、各企業には70歳までの就業確保措置を講ずる努力義務が設けられました。高齢者が長年つちかった能力を十分発揮しながら満足感を得て働き続けるためには、賃金・処遇、能力開発、健康・安全対策などの仕組みづくりがますます重要となります。  しかしながら、産業ごとに労働力の高齢化の状況や置かれている経営環境、職務内容、賃金制度、雇用形態などには差異があります。このため、高齢者の就業機会の確保を図るには産業ごとに必要な諸条件を検討する必要があることから、JEEDでは「産業別高齢者雇用推進事業」により産業別団体の取組みを支援しています。 「産業別高齢者雇用推進事業」とは  「産業別高齢者雇用推進事業」は、産業別団体が高齢者の雇用推進のために解決すべき課題について検討し、その結果をもとに高齢者雇用推進にあたっての方策・提言からなる「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を策定し、これを用いて会員企業に普及・啓発することで、高齢者雇用をいっそう効果的に推進することを目的としたものです。  この事業では、毎年1月に高齢者雇用の推進に取り組もうとする全国規模の産業別団体を公募しており、本事業の目的に合致した産業別団体を複数選定し、JEEDと契約(2年以内の委託事業)を締結しています。現在までに建設、製造、情報通信、運輸、サービスなど、多岐にわたる産業のなかで、100業種がこの事業に取り組んでいます。 JEED 委託 産業別団体 「ガイドライン」の策定/普及・啓発 ○○○業 高齢者雇用ガイドライン 会員企業 改善 高齢者の活用・戦力化 ガイドラインの策定  ガイドライン策定への具体的な流れは、産業別団体内に、大学教授などの学識経験者を座長として、団体に所属する会員企業の経営者や人事担当者などで構成される高齢者雇用推進委員会(以下、「委員会」)を設置し、各年度4回程度委員会を開催します。  初年度の委員会では、その産業における高齢者雇用の実態把握を行います。高齢者雇用における課題は何かを検討し、あげられた課題をより明確に把握するため、会員企業へのアンケート調査や先進的な企業へのヒアリング調査を実施します。2年度目は、初年度の調査結果で浮き彫りとなった課題とその解決策を整理し、ガイドラインを策定します。  なお、ガイドラインでは、以下の点をおもな課題として取り上げています。いずれを重視するかは産業ごとに異なり、各産業の実態をふまえた実践的な一冊に仕上げています。 ・制度面に関する改善 ・能力開発に関する改善 ・新職場・職務の創出 ・健康管理・安全衛生 ・作業施設等の改善 ・定年前の準備支援  ガイドラインは高齢者雇用に対する理解を深め、活用してもらえるよう会員企業に配付します。  さらに、普及・啓発活動として会員企業に対し高齢者雇用推進セミナーを開催することで、ガイドラインをより効果的に活用できるようにするとともに企業への浸透をうながしています。  実際にガイドラインを読んだ会員企業へのアンケート調査結果では、9割ほどの会員企業から「ガイドラインは役に立った」または「役に立ちそうだ」との回答があり、「業界における高齢者雇用の動向を知ることができた」、「高齢者雇用の課題や解決方法がわかった」など、好評をいただいています。 業種を超えたガイドラインの活用  JEEDホームページでは、これまでに策定したガイドラインをはじめ、高齢者を雇用するうえで実際に役立つワークシートやチェックリストなどの各種ツールを公開しています。ガイドラインは業種や時代による変化があったとしても、共通して参考となる点も多くありますので、ぜひご覧いただき高齢者雇用の取組みにお役立てください。  次ページより、2024年度に策定した四つのガイドラインを紹介します。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 産業別高齢者雇用推進ガイドライン一覧 (2021〜2023年度に策定したガイドライン) 建設業 とび・土工工事業 高齢者がバトンをつなぐ未来のガイドライン 〜人生100年時代!活躍の場・生きがいを求めて!〜(2022年) 機械土工工事業における高齢者活用推進のためのガイドブック 〜高齢従業員の活躍と若手従業員の定着に向けて〜(2022年) 建設業基礎工事における高齢技能労働者の活躍ガイドライン(2022年) 製造業 鉄リサイクル業 〜その経験、活かせます!ベテランの活躍が鉄リサイクル業の未来を拓く〜(2022年) 歯車製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニアの技を次世代にバトンタッチ、皆が活躍できる職場作り〜(2022年) 情報通信業 組込みシステム業 高齢者雇用推進の手引き(2023年) 運輸業 倉庫業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニア人材の強みを生かす〜(2023年) 医療、福祉 患者等給食業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍で安全・安心な食事の提供を〜(2021年) 保育サービス業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニア人材の強みを保育施設の運営に活かす〜(2021年) 廃食用油リサイクル業における高齢者活躍に向けたガイドライン(2021年) 高齢者も働きやすい介護事業所に向けて 〜在宅介護サービス業高齢者雇用の手引き〜(2023年) サービス業 (他に分類されないもの) 食品リサイクル業 高齢者の活躍に向けたガイドライン(2022年) 職業紹介業における高齢者雇用推進ガイドライン(2023年) 警備業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜社会の安全・安心を支えるため、高齢者の活躍に向けて〜(2023年) ※( )内の数字はガイドライン策定年度を表します 【P26】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 1 2024年版 鞄産業における高齢者雇用推進ガイドブック  わが国では少子高齢化が加速し、労働力不足が急速に進むことが予想されている。2021(令和3)年には70歳までの就業確保措置を講じることが企業の努力義務となり、鞄産業においても、高い能力や豊富な経験を持つ高齢者の活用が、今後の企業経営や業界発展にとって大きな課題となっている。そこで、一般社団法人日本鞄協会では、高齢者が持つ熟練した技術や豊富なノウハウを未来の技術者たちに受け継いでいくことを目的に、技術認定試験や創作技術コンクールの事業を継続して実施してきた。  また、2023年9月には、鞄産業に関連する企業を対象とした大規模な実態調査を初めて実施し、高齢者の雇用状況と業界全体の実態を明らかにするとともに、高齢者の活躍に向けて企業が抱える課題と解決策を取りまとめ、本ガイドブックを作成した。  本ガイドブックでは、高齢者の活躍事例や、高齢者の活躍に向けた課題の解決策を数多く掲載しており、これらの事例から鞄産業にかかわる企業が今後、高齢者の雇用と活躍を推進するためのアイデアを得ることができる。また、鞄産業全体の活性化につながるような人材の活躍・活用事例の共有にも有効である。  「第T章【概要】鞄産業における高齢従業員の活躍に向けて」では、本事業を通じて実施したアンケート調査をもとに、業界における高齢従業員の活躍状況を紹介。あわせて、鞄産業における高齢従業員の活躍に向けた課題と解決策を一覧表に整理しており、本書のあらましとポイントが把握できる章となっている  「第U章 鞄産業における高齢者雇用・活躍の背景と実態」では、調査をもとに、定年・継続雇用制度の状況をグラフを用いて紹介している。そしてヒアリング調査の結果をふまえ、「高齢期でも活躍しやすい」、「高齢の転職者も活躍しやすい」、「短時間・短日数勤務でも働き続けることができる」など、鞄産業は高齢者が長く活躍しやすい産業と特徴づけている。  「第V章 企業が抱える経営課題と高齢従業員の活躍パターン」では、「コスト上昇」や「人件費の増大」といった経営課題について詳解するとともに、その解決・緩和のための高齢従業員の活用・活躍パターンを紹介している。同章では、企業の声や具体的な活躍事例が、「製造」、「卸」、「材料」といった事業ごとに区分けして掲載されており、参考にしやすい。  「第W章 高齢従業員の活躍に向けた課題と解決策」では、高齢従業員を積極的に雇用する際の「肉体的、体力的な衰えがある」、「IT化への対応」、「意欲の減退」という三つの課題について、一覧表に整理して解決策を提示しており、自社の対応を検討する際に状況に合わせて参考にすることができる。 一般社団法人 日本鞄協会 住所 〒111―0052 東京都台東区柳橋2―16―14 ハンドバッグ会館内 TEL 03―3862―3516 HP http://www.kaban.or.jp/ 【P27】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 2 ダイカスト業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 高齢者とともに、働きやすい職場づくり  少子高齢化と人手不足の進展により、安定的な労働力の確保はダイカスト業における重要課題の一つになっている。同業界ではすでに、高齢者のさらなる活用を図るべく、再雇用制度の整備や、定年年齢の引上げなどを進めている企業があることから、業界全体として高齢者の活躍を推進するため、高齢者雇用の実態を把握する調査を実施。この調査を通じて、各社で高齢者は戦力として不可欠な存在になっていること、高齢者が活躍できるための工夫が各社・各現場で積み重ねられていること、それらの取組みにより高齢者の活躍の場が拡がっていることが明らかになった。  そこで各社の工夫を業界全体で共有するべく、ダイカスト業における高齢者の活躍のあり方について検討し、本ガイドラインを取りまとめた。本ガイドラインでは、高齢者とともに、働きやすい職場づくりを推進してくためのポイントを提言している。  「T 高齢者活用に向けた背景」では、日本の労働力人口の減少と高齢化の進行や働き方改革などのトレンドについて詳解している。  「U 高齢者とともに、働きやすい職場づくりを推進していくためのポイント」では、ダイカスト業高齢者雇用推進委員会での検討結果をもとに、業界各社が高齢者とともに働きやすい職場づくりを進めるために取り組むべき課題や方向性を次の4項目にまとめ、取組みを進める手順を提示している。 @5〜10年後の雇用(労働力の確保)状況を見通し、必要な準備を進める A高齢者に期待する「役割」を明らかにするとともに、役割に対する働きぶりを「評価」する B高齢者はじめ従業員が今まで以上に能力を発揮できるよう職場環境を整える C高齢者の技術・技能・経験の伝承を進める  理解しやすいように項目ごとに関連する調査結果を、図を交えて紹介。さらに「役に立つツール」として安全と健康確保のためのチェックリスト、スキルマップシート作成の手順、参考にできる取組み事例なども紹介されている。  「V ダイカスト業における高齢者雇用の現状と課題」では、会員企業および業界で働く高齢従業員を対象に実施したアンケート調査の結果を取りまとめている。これらは高齢者雇用に関する現状と課題をより深く理解するために役立つほか、企業からの回答を、@業界全体、A従業員数59人以下、B従業員数60人以上169人以下、C従業員数170人以上のように区分けし、企業規模による傾向についても把握できるよう工夫している。  「W.参考資料」では、改正高年齢者雇用安定法の概要(2021年度改正)を示し、あわせて、JEEDによる各種支援サービスや連絡先一覧も紹介している。 一般社団法人 日本ダイカスト協会 住所 〒105―0011 東京都港区芝公園3-5-8 機械振興会館502 TEL 03―3434―1885 FAX 03―3434―8829 HP https://www.diecasting.or.jp/index.php 【P28】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 3 計量計測機器製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜はたらくすべての人々のウェルビーイング実現のために〜  計量計測機器は、あらゆる産業の基盤技術として、生産活動の高度化、評価試験、品質管理、取引および証明、ビッグデータなどに活用されてきた。今後も、本業界の各企業が成長し、持続可能な社会に貢献していくためには、少子高齢化や労働力の高齢化に対処し、産業の活力を維持すること、すなわち、高齢者のさらなる活躍が不可欠といえる。  ダイバーシティ経営を推進していくうえでも、個々の特性やニーズが異なる高齢従業員のウェルビーイング(個人が肉体的、精神的、社会的に満たされた状態)の実現が重要であり、本ガイドラインの活用が期待される。  本ガイドラインの策定にあたっては、アンケート調査・ヒアリング調査を実施し、業界特有の課題を洗い出し、分析・検討を実施。その結果をふまえ報告書およびガイドラインを取りまとめた。  「T 計量計測機器製造業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、計量計測機器製造業において、高齢者のさらなる活躍が求められている背景、また、高齢者の活躍を推進するための基本となる考え方を整理。高齢者の積極的な活用が企業の優位性獲得の有力な方策となることを示している。  「U 計量計測機器製造業における高齢者の活躍を推進するための指針」では、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら、競争力を高めるために取り組むべき課題や方向性を六つの指針にまとめて紹介している。指針ごとに関連するアンケート調査やヒアリング調査結果を「企業の意見」、「従業員の意見」、「会員企業の取り組み」として整理して紹介しているほか、他業種の取組み事例もあわせて掲載しており、内容をより深く理解しやすい。  「V アンケート調査結果」では、同業界における高齢者雇用の現状と課題、各社の取組みを多面的に把握するために、2023(令和5)年度に実施したアンケート調査結果を、「計量計測機器製造業における高齢者雇用の現状」、「高齢者の働きぶりについて」、「高齢者雇用のメリットと課題」、「賃金について」、「長く働くために必要な能力・勤務態度について」、「長く働くために今後必要と思われる教育訓練について」、「普段の生活の中で感じている気持ち」の七つの項目に整理し詳細に紹介している。  「W ヒアリング調査結果」では、U章で示した六つの指針に沿って主要なヒアリング意見を紹介している。「企業の意見」、「60歳以上の従業員の意見」、「59歳以下の従業員の意見」と立場別にまとめられ、理解しやすい。  最後に掲載している「X 参考資料」では、高齢者雇用に関する情報一覧が示されており、「高年齢者就業確保措置」、「同一労働同一賃金」の概要のほか、運用上の課題解決に向けて相談できる支援機関や、高齢者雇用に関する制度の情報を得ることができる。 一般社団法人 日本計量機器工業連合会 住所 〒162―0837 東京都新宿区納戸町25―1 TEL 03―3268―2121 FAX 03―3268―2167 HP https://www.keikoren.or.jp 【P29】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 4 IT検証サービスにおけるシニア人材活用についてのガイドライン  社会・産業のデジタル化が急速に進み、ITサービスがますます高度化・複雑化するなかで、IT検証サービス産業は、ITサービスの品質の確保と実現という欠かせない役割をになっている。現在、同産業では若い人材が活躍しているが、今後、日本の人口減少にともない、新たなIT人材の獲得が困難になったり、現在の若い人材層の高齢化が予想されたりしている。このように、これから増加する可能性があるシニア人材が十分に活躍できるような環境や仕組みを整備することは、IT検証サービス産業全体としての重要な課題といえる。  本ガイドラインは、経営層や人事担当者、現場のマネージャー、また、これからシニア人材として活躍を目ざす人に向けて作成。冒頭のページでは、各々の立場の人がどの章(ページ)を読むべきかを明示している。  「第1章 IT検証サービス産業の現状」では、はじめに日本のITサービス市場全体の動向と、市場を支えるIT人材の将来動向を見渡し、次に、IT検証サービス産業の動向を貴重なデータとともに紹介している。  「第2章 IT検証サービス産業における人材活用の現状」では、「テストエンジニア」の年齢構成やキャリアパスなどについて、アンケート調査結果に基づきその実態を紐解いている。さらに、シニア人材活用に関して、会員企業における定年・継続雇用制度の状況、定年後の賃金水準、シニア人材向けの各種取組みの実態について紹介する。章末には、JEEDの「雇用力評価ツール チェックリスト」を掲載しており、自社の高齢者雇用力も確認可能となっている。  「第3章 IT検証サービス産業におけるシニア人材の活躍事例とメッセージ」では、現在、活躍中の7人のシニアとシニア前世代の人材を取り上げている。個々のキャリアパスや現在の業務内容、テスト・検証業務のやりがい、今後の目標を紹介。多様なキャリア・業務を経験し、それぞれに活躍する7人の事例からは、シニア人材になっても輝けるテスト・検証業務の魅力や可能性を感じとることができる。また、章末では活躍できるシニア人材のポイントを三つにまとめて整理しており、シニア人材となっても活躍し続けたい人の参考になる。  「第4章 シニア人材の活用に向けたポイント」は、第3章までに示したIT検証サービス産業の特性をふまえて、シニア人材活用のポイントをまとめているほか、シニア人材により長く活躍してもらうための、人事制度の設計パターン例を提示。さらに、IT検証サービス産業においてシニア人材の活用を考える重要なポイントとして、具体的に七つの指針を示している。  巻末の「参考資料」では、高年齢者雇用安定法の概要や高齢者雇用にまつわる必要な行政手続き等を紹介するなど、実務担当者にとって有益な情報がまとめられている。 一般社団法人 IT検証産業協会(IVIA) 住所 〒102―0083 東京都千代田区麹町1―6―4 住友不動産半蔵門駅前ビル11F MAIL ivia_office@ivia.or.jp 【P30-31】 偉人たちのセカンドキャリア 歴史作家 河合(かわい)敦(あつし) 第4回 生涯現役で朝廷を支えた政治家 吉備(きびの)真備(まきび) 遣唐留学生の経験を経て 地方役人から国政へ  吉備真備は、日本史(日本史探究)の教科書すべてに掲載されている最重要人物です。奈良時代に唐(中国)に渡り、帰国後は朝廷で大きな活躍をした政治家です。  真備は、備中(びっちゅう)国(岡山県)の下級役人(下道国勝(しもつみちのくにかつ))の子として生まれましたが、たいへん優秀だったので遣唐留学生に選ばれ、17年の長きにわたって唐で学びました。最新の学問知識をおさめるだけでなく、帰国の際に貴重な書籍や楽器、武器などを大量に持ち帰ったので、正六位上を与えられ大学寮の大学助につきました。大学寮は中央の官吏養成機関、大学助は大学の副学長のような職です。その後、従五位下に昇進します。従五位以上は貴族に分類されるので、地方役人の子としては異例の出世といえるでしょう。そして以後は、橘(たちばなの)諸兄(もろえ)政権のブレーンとして活躍するようになりました。740(天平12)年、藤ふじ原わらの広ひろ嗣つぐが吉備真備などの排除を求めて九州で反乱を起こしていることからも、真備の政治力がわかります。  翌741年、真備は皇太子・阿倍(あべ)内親王の東宮学士、いわゆる教育係となり、彼女に『礼記』や『漢書』などを講じ、帝王としてのノウハウを伝授しました。跡継ぎの教育を任せるほど、時の聖武(しょうむ)天皇は真備を信頼していたわけです。743年には春宮大夫(とうぐうのだいぶ)(皇太子の家政機関をつかさどる職)になります。こうした功績を評価され、749(天平勝宝(てんぴょうしょうほう)元)年に阿倍内親王が即位して孝謙(こうけん)天皇となると、従四位上に叙されています。 50代で左遷され再び中国へ  ところが、です。それからわずか半年後、真備は九州の国守として左遷されてしまいました。さらに翌年11月、なんと遣唐副使に任命されたのです。17年間も遠く離れた異国の地(唐)で苦学してきたのに、50代後半(当時は老齢)になって、またも唐へ行けというのはあまりにひどい話です。当時の航海はたいへんな危険をともなうもので、途中で遭難して日本にもどって来られない遣唐使船も少なくありませんでした。  しかも、遣唐大使の藤原(ふじわらの)清河(きよかわ)の身分は従四位下。つまり、副使の真備より位階が低かったのです。そういった意味では、屈辱的なあつかいを受けたといえるでしょう。  こうした真備の失脚劇は、藤原(ふじわらの)仲麻呂(なかまろ)の策略だったと考えられています。このころ、政界では橘諸兄が力を失い、光明(こうみょう)皇太后(聖武天皇の皇后)の後ろ盾を得た仲麻呂が台頭してきました。仲麻呂は孝謙天皇が敬愛する真備を危険視し、中央政府から遠ざけたのでしょう。  753年冬、真備は無事に唐の都・長安に入って玄宗(げんそう)皇帝に謁見、翌年どうにか帰国することができました。しかし、その後も厳しい現実が待ちうけていました。  大役を果たしても位階は上がらず、それどころか、帰国してすぐに大宰大弐に任命されたのです。大宰府は博多の近くにある迎賓館兼役所で、大弐はその責任者。つまり、またも九州に飛ばされてしまったわけです。しかも、その在職期間は9年の長きにわたりました。このように、仲麻呂に恐れられた結果、悲惨な晩年をおくることになったのです。  ただ、ちょうどこのころ、日本と新羅(しらぎ)(朝鮮の国家)の関係が悪化し、仲麻呂は新羅征伐を計画するようになります。このとき仲麻呂の命令で遠征計画を立てたのが真備でした。海外事情に精通し、兵法や築城術にくわしかったからです。真備は詳細な遠征計画を立てるとともに、甲冑などの武器製造を開始、同時に新羅軍から九州を防衛するため怡土(いと)城を築城しました。しかし結局、遠征は中止されました。 若いころからの学びを活かし70代まで国政の最前線へ  764(天平宝字(てんぴょうほうじ)8)年、真備は70歳をむかえます。当時としてはたいへんな高齢で、体調も思わしくないので朝廷に辞表を提出しました。引退を考えたのです。しかし、それが受理される前に、造東大寺司(ぞうとうだいじし)に抜擢されて平城京に戻ることになりました。このころ、仲麻呂と孝謙上皇の関係が悪化していたので、おそらく孝謙上皇が敬愛する真備を呼びもどしたのでしょう。けれど、帰洛しても真備はすぐに出仕せず、しばらく療養生活をおくっていたようです。慎重に当時の政治状況を見極めようとしていたのかもしれません。  この間、政変がおこったのです。  孝謙上皇の寵愛する道鏡(どうきょう)に実権をうばわれそうになったので、仲麻呂が挙兵したのです(恵美押勝(えみのおしかつ)の乱)。このとき老齢だったにもかかわらず、真備は己の軍事知識を総動員して乱の平定に動きました。  『続日本紀』には、「大臣(吉備真備)、その(仲麻呂が)必ず走らむ(逃亡する)ことを計りて(予測して)、兵を分けこれ(仲麻呂軍)を遮る。指麾(しき)(指揮)部分、はなはだ籌略(ちゅうりゃく)(謀や計略)あり。賊(仲麻呂軍)ついに謀中(策略)におちいり、旬日にして悉く平ぐ(平定された)」とあります。  つまり、仲麻呂の逃走経路を想定して軍を二手にわけ、挟撃して倒すという作戦を立てたのです。こうして仲麻呂は追い詰められ、敗死しました。  この働きが評価され、真備は従三位に叙され、参議(太政官の議政官)中衛大将(武官の高官)にのぼりました。地方役人出身の真備にとって、異例の栄達でした。さらにその後、大納言に昇進します。いまでいえば閣僚クラスの役職です。  このように、壮年期は橘諸兄政権のもとで政治力をふるった真備ですが、50歳を過ぎてその存在を危険視され、長年不遇の生活をおくることになりました。しかし、それにめげずに腐らず、己の職務を淡々とこなし、ここぞというときにすばやい行動に出て、70歳を過ぎてから再び返り咲いたのです。それが可能だったのは、若いときに獲得した兵学などの知識やスキルのおかげでした。  閣僚となった真備は、朝廷に申請して民の直訴制度を設けます。中壬生門に二本の柱を立て、一本の柱前では役人たちの圧政に対する直訴、もう一本の前では無実の罪を負わされた者の訴えを聞いたといいます。これによって役人の綱紀をただし、民をしいたげることのないようにしたのです。  766(天平神護(てんぴょうじんご)2)年、真備は正二位を与えられ、右大臣となりました。いまでいえば副首相の地位にあたります。すでに72歳になっていましたが、在職中は律令(法律)の改定などに力を注ぎました。その後、老齢ゆえに引退を申し出ますが、なかなか認められず、ようやく許可が出たのは77歳のときのことでした。そしてそれから4年後、真備は81歳で生涯を閉じました。 【P32-35】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第153回 千葉県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 働き続けられる快適な職場を目ざして働き方や作業環境などを不断の努力で改善 企業プロフィール 株式会社八千代商事(千葉県君津(きみつ)市) 創業 1964(昭和39)年 業種 緑化造園管理業、ビルメンテナンス業、食品販売サービス業 社員数 392人(うち正社員数47人) (60歳以上男女内訳) 男性(158人)、女性(135人) (年齢内訳) 60〜64歳 35人(8.9%) 65〜69歳 108人(27.6%) 70歳以上 150人(38.3%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員70歳まで契約社員として継続雇用。70歳以降は状況をふまえて再雇用。現在の最高齢は82歳  首都圏の東側に隣接し、房総半島全域を擁する千葉県。温暖な気候や、変化に富んだ海岸線、緑豊かな房総丘陵(きゅうりょう)などの自然に恵まれています。東京へのアクセスがよく、成田国際空港や東京湾アクアラインなどがあることでも知られています。  産業は、農業、水産業、工業、商業がバランスよく発展し、いずれも全国有数の規模を誇ります。商工業では、化学工業が盛んな京葉臨海地域、複合的な機能を備える幕張新都心、高い技術力を持つものづくり企業や大学などが集まる東葛地域など地域ごとに特色がみられます。  JEED千葉支部高齢・障害者業務課の杉林(すぎばやし)ゆう子課長は、「企業の規模や業種によって高齢者の活用のされ方も異なるため、さまざまな事例についてつねにアンテナを張り、情報収集することが、相談・助言にあたっては大切だと考えています」と県内事業所への高齢者雇用の支援について話します。  同支部で活躍するプランナーの一人、榎本(えのもと)富士男(ふじお)さんは、経営者としてのさまざまな経験と、ファイナンシャルプランナーとしての専門的知見などを活かし、事業主の立場に立った支援活動を行い、信頼を得ています。  今回は、榎本プランナーの案内で、「株式会社八千代商事」を訪れました。 高齢者を意識した快適な職場づくりに注力  株式会社八千代商事は、八幡(やはた)製鐵(せいてつ)株式会社(現在の日本製鉄株式会社)の君津進出にともない、漁場を失った漁民の転業対策として、転業者有志の共同出資によって1964(昭和39)年に設立されました。日本製鉄・君津地区傘下の協力会社として、おもに同構内において各事務所の管理・清掃をはじめ、緑化造園管理、資源回収、食品販売サービスなどをにない、鉄鋼生産業務を支えています。  また、これらの事業でつちかった技や経験を活かし、構外における事業にも進出しており、公共・民間のコンベンション施設、宿泊施設などの設備管理業務なども手がけています。  同社の定年は60歳で、その後70歳まで契約社員として働くことができ、70歳以降は状況をふまえて再雇用することとしています。  社員の9割近くを占めるパート社員には定年制度がなく、半年ごとに行う面談・相談を通じて労働時間などの見直しを行い、契約を更新しています。  同社では以前から多くの高齢者が活躍していることから、快適な職場づくりに注力しており、柔軟な勤務制度をはじめ、資格・キャリアを活かした配置、作業環境の改善、定期的な安全衛生教育、各種表彰制度などの多様な取組みを展開しています。 プランナーの訪問を機に取組みを深化  榎本プランナーは、2024(令和6)年1月に八千代商事を初めて訪問し、高齢者雇用の取組みを聞き、JEEDの高年齢者活躍企業コンテストへの応募を勧奨しました。また、「信頼関係の構築をねらいとして、会社側であたり前のように行っていることが、高齢者が活き活きと働くうえで大事な施策であることに社員に気づいてもらえるよう、伝えていくことが大切です」などの助言を行ったそうです。  同社代表取締役社長の青木(あおき)宏道(ひろみち)さんは、「榎本プランナーの訪問を受けたことで、自社で取り組んできた快適な職場づくりの取組みを客観的に見ることができ、状況を整理することにつながりました」とふり返ります。  「当社は9割がパート社員で高齢化が進んでおり、現在では60歳以上の社員が全体の75%近くになっています。今後も高齢者雇用の取組みや仕組みを強化していく必要性を痛感し、社内でも認識を共有しました」(青木社長)  そして、同社の行動指針に新たに、「高齢者の能力を最大に発揮してもらうことを目ざした心身の健康づくり」という文言を加え、特定保健指導受診率の向上などの取組みを行っています。  また、高齢社員の安全確保のため、「愚直に続けることが大事。だれもが安全に長く働ける環境を重視して、毎月社員と対話し、作業環境の改善や負荷軽減になる新しい機器の導入を検討しています」(青木社長)と不断の努力を続けています。  今回は、清掃、資源回収、ビル設備などの管理の各現場で活躍中の3人の社員とそれぞれの上司にお話を聞きました。 清掃業務に就いたことで、より健康的な日々に  山下(やました)睦子(むつこ)さん(73歳)は、前職を66歳で退職後、ハローワークに通いつつも仕事が決まらないなか、68歳で八千代商事の面接を受けて、すぐに採用が決まったとふり返ります。  初めて清掃業務に就くことに不安もあったそうです。「仕事が身につくまではたいへんでしたが、教えてくれた先輩が年上の方で、がんばれば先輩のようになれるかなと思い、仕事に励みました」とはつらつとした表情で話します。  現在、会社寮の清掃を担当しており、8時30分〜12時の勤務をメインに、月3〜4回は8時30分〜16時30分の勤務を行っています。「寮は3階建ての大きな建物で、3人のチームで、階段を上り下りしながら清掃します。70歳を過ぎてから勤務は月14日間になり、年齢に配慮した働き方にしていただけるのも助かります。何より働けることに感謝しています」と話します。仕事を通して「自分の成長を感じられることや仲間ができることがうれしい」とも話し、「健康に留意し、まずは75歳まで働くことを目標にしています」と抱負を語ってくれました。  上司の三上(みかみ)仁(じん)係長は、「山下さんは、つねに前向きで、作業手順やこの汚れはどうしたら落とせるかと考えたり質問に来たり、そのやり方をみんなにも広めてくれる頼もしい存在です」と話します。 仲間にも恵まれて楽しく元気に勤務  赤池(あかいけ)美津子(みつこ)さん(69歳)は、58歳のときに同社の求人を見て応募し採用されました。現在、日本製鉄・君津地区構内で、資源回収業務に就いています。  入社してから2年間は車両の運転もしましたが、「いまは助手席に座り、おもに車両の誘導や、ごみの回収・積載をしています。前職は事務職でしたので、この仕事を始めた当初は、車両誘導の笛を吹くのもうまくできず、仕事に必要な道具類についても何もわからなかったのですが、ていねいに教えてもらい、少しずつできるようになりました。作業員は16人で、仲間にも恵まれて楽しく元気に働けています」と笑顔で話します。  週5日、8時30分〜16時30分の勤務で、「土・日が休みですし、明るいうちに帰宅できるので家のこともできます。安全第一で、身体が動くうちは勤務を続けたいと思っています」と話してくれました。  上司の善ぜん修一(しゅういち)課長は、「赤池さんは、明るい人柄で職場を和ませてくれますし、よく気がつき、動いてくれる大切な存在です。けがをすることなく、これからも楽しく働いてほしいと思っています」と話します。 技術と経験を活かして愉快に活躍  勤続14年の梨(たかなし)久幸(ひさゆき)さん(74歳)は、前職では電力会社に勤務しており、日本製鉄・君津地区構内で働いていたそうです。60歳で定年退職後、縁あって八千代商事に入社しました。  ボイラー技士2級、電気主任技術者の資格を持ち、資格と経験を活かして、大手ホテルや関連施設などの設備管理、修理を行う、かずさ施設管理課に所属。入社当時から係長をにない、同課のまとめ役としても活躍しています。同社では、契約社員は70歳まで継続雇用という規定がありますが、梨さんは代えがたい存在として評価され、雇用形態も役職も変わらず、いまもフルタイム勤務を続けています。  上司の立花(たちばな)修二(しゅうじ)課長は、「梨係長は、経験と技術に加え、温厚な人柄で、みんなの話を聞き、チームワークを大事にして仕事を進めてくれます。経験がものをいう仕事なので、梨係長のような人がいてくれることがたいへんありがたいです」と話します。  梨さんは、「何でも相談できる関係を立花課長が築いてくれて、こちらこそありがたいです。この課は、私と同様に第二の人生で入社された方がほとんどですから、『安全に、みんなで愉快に仕事をしましょう』と話しています。必ず複数人で仕事にあたること、話し合ってから作業に入ることを大切にしています。うれしいことは、みんなが『会社が楽しい』といってくれることです」と穏やかに話し、「会社が認めてくれるうちは、仕事を続けたいです」と話しました。 安全と健康への対応を重視して  3人のお話を聞いて榎本プランナーは、「みなさんが、さまざまな面での負担を感じることなく働かれているように感じました。同僚や上司の方々と信頼関係ができているという背景があるのだと思います」と感想を述べました。  同社では、制度や仕組みづくりに加え、日ごろから青木社長の考えを社員に伝えるとともに、現場の声に耳を傾け、社員が話しやすい環境づくりにも気を配っているとのこと。  「当社は中途採用者が多く、いまは65歳くらいで入社する人も多くなっています。今後は、安全と健康への対応がより大切になってきます。会社でもつねに気を配りますが、現場の実態や社員の本音が聞き出せるよう、信頼関係の構築を引き続き大切にしていきます」と話す青木社長。最後に、「地域のニーズに応えていくために、信頼される会社を目ざし、そのなかで雇用によって元気な高齢者が増えて、地域貢献につながればよいですね」と話してくれました。 (取材・増山美智子) 榎本富士男 プランナー アドバイザー・プランナー歴:3年 [榎本プランナーから] 「プランナー活動では、訪問する会社のよい点を事前に調査して仮説を立てておき、訪問趣旨を説明したのち、会社の雰囲気やよい点を面談者から聴きだし、共感することを心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆千葉支部高齢・障害者業務課の杉林課長は榎本プランナーについて、「経営者として人事労務管理や賃金改定にたずさわった経験を活かし、2022年から当支部で活躍しています。経営者の視点で事業主に寄り添いつつ、ていねいなヒアリングで課題を洗い出し、解決に向けた提案を行っています。支部が信頼を寄せるプランナーの一人です」と話します。 ◆千葉支部高齢・障害者業務課は、JR稲毛駅または西千葉駅からバスで約30分の千葉職業能力開発促進センター(ポリテクセンター千葉)内にあります。 ◆同県では、13人のプランナー、高年齢者雇用アドバイザーが活動しています。専門的・実務的能力を有するプランナー・アドバイザーがそろい、県内の企業訪問などを通じて、高齢者雇用に関する相談・援助を行っています。2023年度は646件の相談・助言を実施し、217件の制度改善提案を行いました。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●千葉支部高齢・障害者業務課 住所:千葉県千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 電話:043-304-7730 写真のキャプション 千葉県君津市 株式会社八千代商事 本社 青木宏道代表取締役社長 清掃業務に就いて5 年目の山下睦子さん(右)と上司の三上仁係長(左) 日本製鉄・君津地区構内の資源回収を担当している赤池美津子さん(右)と上司の善修一課長(左) 施設の設備点検やメンテナンスをにない、チームをまとめている梨久幸さん(中央)と上司の立花修二課長(左)、梨さんの仕事を学んでいる岸正浩さん(右) 【P36-37】 第102回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  橋本直次郎さん(77歳)は40代で書店を開業して以来、いまも「本の世界」にかかわり続けている。時代の流れのなかでインターネットで古書を販売するスタイルに変わったが、古書を愛してやまない人たちのために現在もフルタイムでパソコンに向かう橋本さんが、生涯現役の醍醐味を語る。 悠山社(ゆうざんしゃ)書店 橋本(はしもと)直次郎(なおじろう)さん 激動の時代を生き抜いて  私は大分県別府(べっぷ)市に生まれました。九州男児という言葉がありますが、私はいたって軟弱な人間です。三人兄弟の次男坊で、高校まで地元で過ごしました。女手一つで育ててくれた母には感謝しています。  高校を卒業すると大学受験のために上京しました。頼る人もいなかったのですが、漠然と東京の大学を目ざしていたように思います。志望の大学に入れず1年浪人生活を送りましたが、東京というところはおもしろくてさまざまなアルバイトをしました。浅草六区にあった劇場でも働きましたが、刺激的な世界を懐かしく思い出します。  結局、東京の大学には進まず、京都大学に入学しました。私が入学したころはちょうど全国の大学で大学紛争の嵐が吹き荒れている真っ最中で、その余波を受けて、京大でも学生運動が本格化していました。同じ時期に京大のなかに「熊野寮」という学生自治寮が設立され、私の大学生活の拠点となりました。いつの間にか自治寮の運動が日々の中心になり、委員長を引き受けました。大学には人より長く在学しましたが、学問に励んだ記憶はほとんどありません。熊野寮には全国からユニークな学生たちが集まって起居をともにしました。いまでも同窓会を続けて交流を深めており、私の原風景はここにあるような気がします。  京都大学熊野寮は知る人ぞ知る男子寮であったが、現在は女子学生や留学生にも門戸が開かれている。1960年代という激動の青春時代を送った橋本さんだが、闘士の面影は見当たらない。「ただの古本屋の親父です」と語る橋本さん。眼鏡の奥の目がやさしい。 縁あって「本の世界」へ  大学を卒業後は、教職に就きました。兵庫県にあった工業高校でした。とてもよい学校だったのですが、教師という職が肌にあわなかったのか1年ほどで辞め、再び上京して新しい職を探し始めました。大学時代の仲間の一人が勤めていた出版社を紹介してもらいましたが、採用に至りませんでした。それでも友人とはありがたいもので、今度は書店を紹介してくれる人がいて、錦糸町にあった書店に店員として勤めることになりました。このころはいまと違って街には書店が数多く存在してとても賑わっていました。私が就職した書店も首都圏に何十軒も店舗を展開しており、書店に勢いのあった時代です。ただ、そのころ書店業界には大学で学生運動をしていた人間が数多く就職しており、従業員も待遇改善などを求めてストライキが頻繁に行われていました。私も、働いている書店でストライキに加わるなどの経緯があって、5年ほどで退職しました。次の職のあてがあって辞めたわけではなく、しばらくは放浪時代が続きます。そういうなかで結婚しましたから、家族には本当に迷惑をかけました。  しかし、人生とはおもしろいもので、困っているときに声をかけてくれる人が必ず現れるものです。錦糸町の書店で知り合った人が古本屋を開業していて、「ノウハウを教えるから古本屋をやってみないか」と誘ってくださったのです。本の世界はまったく無縁ではなかったことと、古本にも多少の興味があったため、仕入れの方法などを教わって、当時住んでいた青梅市に近い福生(ふっさ)市に物件をみつけ、古本屋業の第一歩が始まりました。  古本屋というと、店舗の一番奥のレジの前に陣取り、眼鏡の奥から客の様子をうかがう老齢の店主がいるようなイメージがある。そのことを告げると橋本さんは「だれでも開業できる自由な世界です」と笑い飛ばした。 古書の魅力に触れて  よく、昔はよかったと人はいいますが、私もよき時代のことをときどき思い出します。福生市に古本屋を開いたのは1987(昭和62)年で、私は40歳になっていました。福生市役所に近い利便性のよい地に10坪ほどの店舗を借りました。都内では家賃を払えないため都下を選んだのです。いまの時代、古本屋がどんどん廃業している原因の一つに家賃の高騰があります。古本屋街として残っている地域は土地を持っている強みがあるのだと私は思います。とにもかくにも福生市で古本屋の看板を掲げました。資金もなかったのに家賃をどうやって払っていたのかといまでも不思議でなりません。借金をした記憶はありませんから、自転車操業でなんとか続けてこられたのでしょう。書店名は「悠山社書店」としました。中国の5世紀の詩人陶淵明(とうえんめい)の詩の一節である「悠然トシテ南山(なんざん)ヲ見ル」から取りました。いまのインターネット書店の形態になってからもその名を受け継いでいます。 インターネット書店で生涯現役を  古本屋の看板を掲げた日から本を売りに来る人がいて、どんどん在庫が増えていきました。古本屋に大切なものは「仕入れの眼」だと私は思います。つまり「センス」なのです。経験のなかで眼が肥えていくこともありますが、読書家でなくてもセンスがあれば成功する世界です。開業と同時に東京都古書籍商業協同組合に入りました。組合のなかで知り合ったある書店の店主が、インターネット時代以前に、電話回線を使った通信販売のようなことに着手していることを知り、その仲間に入れてもらいました。その後、すぐにインターネットの時代が到来し、そのネットワークは1年ほどで終わりましたが、高価な値段をつけた新書をまとめて購入する人もいて儲かったことを覚えています。その後、2001(平成13)年に店舗を閉めて、インターネット書店として再スタートしました。  現在、JR青梅線小作(こさく)駅から車で10分ほどの4階建ての倉庫の3階と4階を借り、150坪のフロアに7万冊の在庫を揃えています。社会科学の書籍を中心に、哲学・宗教や自然科学など幅広い分野を扱っています。インターネットサイトを通じ、注文が決まると本を探して発送。基本は後払いです。7万冊の書籍のなかから探し出すのはたいへんかと思われるかもしれませんが、棚番号と個別番号で管理しているので問題ありません。お客さまと対面する楽しみはありませんが、インターネットの場合には不特定多数の国境を越えた無限の人々の眼に触れる楽しみがあります。  気がつけば古本屋の店主として長い道を歩いてきました。朝9時から17時まで毎日働いています。特に趣味もなく、あえていえば古本が趣味でしょうか。  夜寝る前に宮沢賢治の作品の朗読をYouTubeで聞いて、ぐっすり眠った翌朝は、また私の「古本たち」に会いに出かけます。生涯現役の人生は本当に楽しいものです。 【P38-41】 加齢による身体機能の変化と安全・健康対策  高齢従業員が安心・安全に働ける職場環境を整備していくうえでは、加齢による身体機能の変化などによる労働災害の発生や健康上のリスクを無視することはできません。そこで本連載では、加齢により身体機能がどう変化し、どんなリスクが生じるのか、毎回テーマを定め、専門家に解説していただきます。第4回のテーマは「歯・口腔の健康」です。 北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学 教室 准教授 渡邊(わたなべ)裕(ゆたか) 第4回 加齢による“歯・口腔”への影響と対策のポイント 1 加齢による歯・口腔への影響  1990(平成2)年の日本人の平均寿命は男性75.9歳、女性81.9歳で、2023(令和5)年の日本人の平均寿命は男性81.1歳、女性87.1歳となりました※。つまりこの34年で男女とも約5年延伸し、高齢化率も12.1%から29.3%と約2.7倍に急伸したことになります。歯科においても80歳で20本の自分の歯を有する者(8020達成者)は1993年の10.9%から2022年には51.6%と5倍近くに増加しています。平均寿命に相当する85歳以上の高齢者においても、20本以上自分の歯を有する者の割合は、2011(平成23)年17.0%、2016年25.7%、2022年38.1%と急増しており、また、むし歯や歯周病などで歯を失っても、歯科インプラント(人工の歯)で補われることも多くなってきています。つまり日本の高齢者は相当数の歯を有したまま、生涯をまっとうできる時代になりました(図表1)。  2022年に行われた歯科疾患実態調査(厚生労働省)でむし歯をもつ者(治療した歯を含む)の割合は、40歳〜69歳までは97%を超えており、これはむし歯に罹患したことがない者はほとんどいないことを示していますが、裏を返せば、治療すればずっと自分の歯を使っていけるということでもあります。中年期以降は家庭や職場、地域などにおける役割の増加によって生活習慣が不規則になりがちで、歯や口の健康へのリテラシー(健康や医療に関する情報を正しく入手し、理解して活用する能力)も低下する者が散見されるようになり、口の中の環境の悪化も相まってむし歯や歯周病が徐々に進行しやすくなります。  中年期以降で歯を失うおもな原因である歯周病は、歯肉からの出血に始まり、歯が動揺するようになり、やがて噛んだときに痛みを生じるようになるなど重度化するまで症状が出にくいため歯科受診が遅れ、抜歯となってしまうケースも少なくありません。しかし、現在高校卒業後は歯科健診は義務づけられておらず、早期治療や定期健診などの受診行動は、個人の健康認識に委ねられているのが現状です。  高齢期以降では、退職などにより生活環境に大きな変化が生じ、身体機能の低下や疾病の罹患によって、歯や口の健康へのリテラシーがさらに低下し、職場近くの歯科医院で行っていた定期的な歯科受診も中断してしまう者も多くなってきて、さらに口の中の環境は悪化してくるため、むし歯や歯周病が急速に進行しやすくなります。  歯周病と関連する生活習慣病には糖尿病や高血圧症などがあります。生活習慣病とは、食事や運動の習慣、喫煙・飲酒・睡眠といったさまざまな日々の習慣が発症や進行に関与する疾患群です。中年期以降ではこれら生活習慣は悪化しやすく、生活習慣病も発症・重度化する可能性が高くなり、それにともない歯周病も急速に悪化します。  特に糖尿病は歯周病と関連が深く、糖尿病を有する歯周病患者に対する歯周病の治療は糖尿病の重症度の指標の一つであるHbA1cの改善に有効であることが明らかになっています。中年期以降では毎日の口腔清掃の不良、食事をあまり噛まずに飲み込む、喫煙、過度の飲酒等の生活習慣の悪影響が大きいことから、これら生活習慣を改善することで、糖尿病、歯周病ともによい効果が得られることが多くあります。 2 加齢と歯・口腔の病気 (1)むし歯  むし歯は口の中の細菌により歯が溶かされる感染症です。むし歯は口の中の細菌と、食事による糖分や粘着性の食品の摂取とその頻度、歯の質、歯並び、唾液の量や質、健康状態、生活習慣などが複雑に関連し発症します。特に中年期以降になると、歯周病により歯肉が退縮し、露出した歯の根に生じるむし歯が増加します。この根面のむし歯は進行が早く、歯の土台である根が急速に侵されて、歯を失う原因となるため、早期に治療する必要があります(写真1)。また、歯の治療でつめたり、被せたりした修復物と歯の隙間に生じる二次むし歯も増加してきます。これは修復物が多くなり口腔清掃がむずかしくなることと、修復物と歯の隙間が歯に加わる温度差(口の中には熱いものや冷たい飲食物が入るため)や噛む力によって徐々に広がり、細菌が侵入することで生じます。二次むし歯は修復物で隠れた部分で進行するので、初期では見つけにくく、明らかに黒くなったり、欠けたりしたときにはかなり進行していることが多いので、定期的に歯科医院でチェックしてもらい、早期に発見し治療しないと歯を失う可能性が高くなります。 (2)歯周病  歯周病は口の中の細菌により歯肉炎が生じ、歯を支える骨が溶かされる感染症です。加齢とともに、歯の周囲に歯周ポケットが形成され、その中で歯周病原菌が増殖することで歯肉炎が生じます。重症化すると歯肉から出血するようになり、歯を支える骨が高度に溶かされると歯の動揺が生じ、噛むと痛みが生じるようになります。歯周病の直接的原因は歯周病原菌ですが、歯並びの悪さや歯ぎしり、喫煙、服薬内容、生活習慣病などの全身疾患がその発症や重症化に関連しています。  歯周病の予防には、歯周ポケット内の歯周病原菌を毎日の口腔清掃と定期的な歯科治療で除去することが重要です。歯科医院でほかの関連因子の影響を少なくする生活習慣に関する指導を受け、改善することも重要です。特に中年期以降では、歯並びの悪化や歯肉の退縮、治療済みの歯の増加など、口の中は複雑になり、口腔清掃は困難になります。そのため、毎日の口腔清掃で使用する歯ブラシ以外の歯間ブラシやデンタルフロス(糸ようじ)などの補助的清掃用具や歯磨き粉、含嗽剤(がんそうざい)などを歯科医師、歯科衛生士の評価と指導のもと個人個人で最適化していくことが重要です。 (3)歯の破折と咬耗(こうもう)、摩耗  高齢期になると噛む力などによって、歯が破折することが多くなってきます。特に神経を抜いた歯や、被せ物や詰め物など歯の治療を受けた歯は脆く、破折しやすい状態になっています。これは、歯の欠損や移動によって特定の歯だけに噛む力が加わったり、歯はだんだんと摩耗していきますが、金属の詰め物はあまり摩耗しないため、強い力がかかりやすくなるからです(写真2)。  また、加齢により歯は酸蝕、咬耗、摩耗などによって知覚過敏や噛む能力の障害、審美障害が生じることがあります。酸蝕は歯が酸によって化学的に溶解されること、咬耗は歯と歯の接触によりすり減ること、摩耗は歯以外の物理的な力によりすり減ることです。これらは酸性の強い食品の摂取や胃食道逆流症、歯ぎしり、不適切な口腔清掃、習癖などによって生じます。歯がしみる、噛むと痛む、歯が変色してきたなどがあれば、歯科医師に相談しましょう。 (4)口の機能低下  口には食べる、話す、感情を表す、呼吸するなど多くの機能があり、これら機能は生活に欠くことのできない機能です。これら機能には歯や歯の周りの組織、顎の骨や関節、唾液腺、口の内外の筋肉、舌などの多くの組織、神経が協調して働く必要があります。生活環境の変化や、加齢による身体と精神(心)の生理的および病的変化によりこれらは老化し、口の機能は低下します。  歯を失うと食べ物を細かく砕き、すり潰す能力が大きく低下します。食べ物を細かく刻んだり、すり潰したりすればよいと思われるかもしれませんが、噛んだときの食感や風味などを感じることができなくなり、食事の楽しみが損なわれます。また味覚も低下します。味覚は食物が砕かれ、すり潰されるときに食物から溶けだした味物質が唾液と混ざり合い、舌などの表面にある味のセンサーに触れることで感じます。細かく刻んだり、すり潰したりすることで、センサーに触れる味物質のバリエーションは少なくなり(砕き、すり潰す過程での、味の変化を知覚できないなど)、短い時間しか味を感じることができないため、食事の楽しさが大きく損なわれることになります。歯を失わないよう、口の状態にあわせた毎日の口腔清掃と定期的な歯科医院でのチェックを継続していきましょう。  話す機能は肺からの呼気で声帯を振動させて音をつくり、その音が口や鼻へ抜けるときに、下顎の開閉や口唇、舌そして軟口蓋の形を変えることでさまざまな音をつくり出す機能です。高齢期になると、話す機会が激減し、意欲の低下、口の内外の筋肉や神経の機能の低下により、話す機能は低下します。滑舌が悪くなり、何度も聞き返されたりすると、話すことがいやになって、話す機会が減り、さらに話す機能が低下するという悪循環が生じます。また、話すことは、相手に配慮しながら、思考をめぐらせ、記憶を呼び覚まし、次に何を話すか考えるなど、とても頭を使う機能であり、認知機能の維持にもつながります。歯並びが悪かったり、口臭が気になるなどで、話すことを避けたり、あまり口を動かさずに、ぼそぼそと話したりしないよう、毎日の生活のなかで、積極的に話すこと、口をしっかり動かすことを意識することが大切です。高齢期になると脳の老化により感情を表す機能も低下します。これは歯の喪失や口の周りの筋肉や皮膚の老化により動きが乏しくなるからです。できるだけ人と会う機会をつくって楽しい会話を楽しむようにしましょう。  口の機能の低下は、食事や体調に影響を与え、快適な生活を損なうおそれがあります。歯科で、むし歯や歯周病に対する治療を受けるとともに、口の機能の評価とトレーニングを受け、食事や生活の維持改善を続けていくことが重要です。 (5)口腔粘膜疾患 @口腔乾燥症  口腔乾燥症とは自覚的な口腔乾燥感または他覚的な口腔乾燥所見( 唾液の量的減少と唾液の質的変化を含む) を認める症候と定義されており、「唾液分泌量の減少あるいは分泌唾液の質の変化があるもの」と「唾液分泌量の減少と分泌唾液の質的変化のいずれもないもの」に分類されます。前者には、シェーグレン症候群(自己免疫疾患)、唾液腺疾患、精神的ストレスや薬剤の副作用などによるものが、後者には口呼吸や心因性などによるものが含まれます。原因に応じて、薬物療法、口腔保湿剤や唾液腺マッサージなどの対症療法を行います。糖尿病、加齢、放射線治療、口呼吸なども原因となり口や喉が乾く、むし歯の多発、噛んだり飲んだりすることが困難、食塊形成不良(食べ物が口の中でまとまらず、なかなか飲み込めないなど)、味覚異常などが生じ、食事や会話など口の機能を障害します。  口や喉の渇きが気になるようであれば、医師・歯科医師に相談しましょう。 A口腔カンジダ症  カンジダ菌(カビの一種)の感染によって生じる感染症です。高齢者や免疫力が低下した者など、感染防御機能の低下にともない引き起こされます。加齢、ステロイドや免疫抑制剤の使用、がん、抗がん剤による治療、唾液量低下、義歯の清掃不良なども誘因となります。  白い偽膜が粘膜表面に付着するもの(写真3)、口の粘膜が萎縮したり、赤くなったりするもの、口の粘膜が硬く肥厚するもの、ヒリヒリと痛むものなどさまざまな症状があります。治療は口腔清掃の徹底と抗真菌薬を使用します。放置すると治りにくく、くり返すようになるので、早期に治療する必要があります。 ※ 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」 図表1 20本以上自分の歯を有する者の割合の推移 1993年 8020達成者10.9% 85歳以上2.8% 1999年 8020達成者15.3% 85歳以上4.5% 2005年 8020達成者24.1% 85歳以上8.3% 2011年 8020達成者38.3% 85歳以上17.0% 2016年 8020達成者51.2% 85歳以上25.7% 2022年 8020達成者51.6% 85歳以上38.1% 出典:厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」(2023年) 写真のキャプション 写真1 根面のむし歯 ※写真提供:北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 写真2 咬耗 咬耗した歯 ※写真提供:北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 写真3 口腔カンジダ症 白い偽膜 ※写真提供:北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室 【P42-45】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第81回 期待値の高い中途採用者の解雇、高齢者の労災リスク 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 中途採用した人材を、試用期間の終了に合わせて雇用契約を終了してもよいのでしょうか  即戦力として期待して中途採用した社員がいるのですが、期待とは裏腹に活躍が見込めないような状況にあります。試用期間中であることから、試用期間満了時に契約を終了させたいのですが問題ないでしょうか。 A  即戦力として採用した際の説明内容や採用後の処遇によっては、試用期間満了による終了が認められる余地はあります。しかしながら、改善の機会を与えていたことや即戦力として期待されていたことの立証は求められます。 1 解雇規制について  労働契約法第16条は、解雇に関して、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。  @客観的に合理性な理由およびA社会通念上の相当性を欠く場合に解雇を無効とされることになりますが、試用期間の満了も解雇の一種ですので、これらの要件を充足する必要があります。  まず、@客観的に合理的な理由については、解雇の理由が、単なる主観ではなく客観的に裏づけられていることが求められています。近年では、この要件について、解雇事由が将来にわたって継続するものと予測されること(将来予測の原則)および最終的な手段として行使されること(最終手段の原則)の二つの要素を考慮して判断すべきであるという考え方もあります。したがって、試用期間満了による場合であっても、改善の機会を与えることや好転の見込みの有無を判断しなければなりません。  次に、Aの社会通念上の相当性については、本人の反省状況、これまでの勤務態度、違反などの反復継続性、ほかの労働者との均衡、使用者側の対応の不備の有無などに照らして判断すべきとされています。 2 即戦力採用について  即戦力として中途採用したという点が未経験で採用した状況とは異なっています。即戦力として期待された人材については、将来予測の原則から求められる改善の機会などについて、新卒採用と比較すると、その必要性が後退すると考えられています。  しかしながら、労働市場が活性化して、転職も珍しくないような状況ですので、将来予測の原則の後退を認めるほどの事情があるのかという観点から、単に職歴がある中途採用による転職と、即戦力として期待された人材は区別される必要があります。  例えば、会社が英語のビジネス利用に関する経験があり即戦力となる人材として募集し、英語力に秀でた人材で、かつ、期待される能力を過去の職歴においても明記していたことから中途採用したような場合には、今後の改善の機会の確保をする必要性が減退すると考えられます。過去の裁判例では、類似の事案において、期待される職務に関する経験が必要であることを明示して募集し、中途採用された労働者本人も会社に期待されていた能力などを理解していた事例においては、雇用時に予定された能力をまったく有さず、これを改善しようともしない場合は、解雇せざるを得ないと判断された例があります(東京地裁平成14年10月22日判決、ヒロセ電機事件)。  他方で、中途採用時の年俸が高額かつ役職を与えられた状態であった場合であっても、募集時に「経験不問」との記載があり、一定期間稼働して求められる能力や適格性を平均的に達することが求められているに留まるものと判断された例もあります(東京地裁平成12年4月26日判決、プラウドフットジャパン事件・第一審)。  したがって、即戦力として期待されるような人材と認定されるには、募集時に期待される能力を明確にしておくことは必要であり、求人票以外の採用前の説明内容など採用に至った経緯も重要です。  即戦力としての採用について、期待する能力や必要な素質について、どの程度具体的に伝えられていたかによって、改善の機会を与えるべき期間や頻度が左右されることになりますので、採用時の状況や採用に至った経緯を整理する必要があります。 3 改善の機会の与え方や期間について  「改善の見込みがないこと」が解雇を実施するにあたって重要であることは間違いありませんが、その判断は非常に困難です。担当している業務の内容や任されている地位などにも左右されますし、会社の状況によってあくまでもケースバイケースで判断されてしまうため、一定の基準を示すことはむずかしいものです。  とはいえ、何らの指標もないままでは、実務的にどのように判断すればよいのか具体的に検討することすらできませんので、過去の裁判例を参考にしてみましょう。  即戦力と期待された人材ではない中途採用の事例ですが、能力不足や勤務態度不良を理由とした普通解雇が有効とされた事例として、東京地裁平成26年3月14日判決(富士ゼロックス事件・第一審)があります。  中途採用で採用された労働者が、無断で3回の半休を取得したこと、机での居眠り、無断残業、通勤費用の修正、週報の提出遅れ、社用の自転車の私的利用、私用のインターネット閲覧を逐一注意され、これ以上の違反が生じた場合に重大な判断がありうる旨記載した警告書を交付され、それに対して署名押印をした後、会社の命令でほかの支店に異動してさらに改善を求められたが、異動後も遅刻し、ビジネスマナーが守られず、メモを取らないうえ、ミスを多発していたので、再度研修を実施しましたが、改善できず、再度の警告書を交付しました。  違反事由が多岐にわたるうえ、改善の具体的な見通しがつかないことから、会社は、指示事項を文書化し、その後、当該文書に違反した場合に逐一注意し、複数の指示事項違反が生じた後に、原因と対策を検討するようにレポート作成を命じて提出させていました。結局、レポートの内容は根本的な問題点に関する考察に不足があるものでしたが、対象者からは「これ以上は教えてもらわなければわからない」などと話がされ、具体的な訂正指示をしましたが、簡潔なレポートが提出されるに留まったため、最終的に解雇に至りました。なお、入社から解雇に至るまでは、約1年間が経過していました。  ポイントをまとめると、@違反事由に該当する行為が記録化され、注意した旨が残されていたこと、A支店へ異動させて環境を変えて改善の機会を再度与えていること、B警告書や指示事項を文書化するなどの方法で、改善点の特定および明確化を複数回図っていること、C労働者の自己認識を把握するためにレポートを作成させていること、などがあげられます。通常の中途採用であれば、この程度の要素が集約されなければ解雇に至らないということになりますが、即戦力として期待された人材の場合には、Aの改善の機会を複数回与えるという点は必要性が低く、BおよびCの改善点の把握についても自己分析させることで足りるものと思われます。試用期間という短期間をもって解雇することはむずかしいことが多いのですが、試用期間を延長したうえで、延長時に十分な警告を行っておくことで、業務の改善または労働契約の終了に向けた準備が整うことも多いのではないかと思われます。 Q2 高齢労働者が増えてきているので、高齢労働者の労働災害防止対策について知りたい  世代別の労働力人口においても高齢化が進んでおり、自社内でも高齢の労働者が増えているのですが、事故などの防止対策についてこれまでと変えていく必要はあるのでしょうか。 A  65歳以上の高齢者の割合は過去最高の状況となっており、働く高齢者の数も過去最高を更新しています。他方で、仕事中の事故で死亡や4日以上休むけがをした60歳以上の労働者数も過去最多となっており、高齢者向けの安全配慮義務を整備しておく必要性が高まっています。 1 高齢者の勤務と事故の発生状況  2024(令和6)年9月時点において、総務省がまとめた人口推計は、65歳以上の高齢者が3625万人で過去最多となり、総人口に占める高齢者の割合も29.3%に及び過去最高です。また、2023年の労働力調査においては、60歳以上の高齢者の数が914万人と過去最高を更新していたこともふまえると、高齢者全体の増加とともに、労働を継続している高齢者も増加傾向にあるといえるでしょう。  他方で、厚生労働省が公表した、仕事中の事故で死亡や4日以上休むけがをした60歳以上の労働者は、3万9702人となっており、非常に多くの労災事故が生じています。労災事故に占める高齢者の割合も29.3%となっています※。  60歳以上の労働者が増えているとしても、全労働力人口に占める割合は18.7%※であることから、高齢者が労災事故に遭うリスクが高いということはこれらの調査などからも読み取ることができると思われます。30代の労働者と比較すると男性は約2倍、女性は約4倍の労働災害発生率となっており、休業見込み期間も年齢が上がるとともに長期化する傾向があるとも指摘されています。  したがって、高齢の労働者が増加傾向にあるうえ、事故の発生率も高く、事故が発生したときのけがの程度も大きくなるということをふまえて、職場の安全配慮義務に対する見直しなどに取り組む必要があると考えられます。 2 エイジフレンドリーガイドライン  厚生労働省は、令和2年3月16日付で「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称「エイジフレンドリーガイドライン」)を策定しています。  エイジフレンドリーガイドラインが策定された当時も、高齢者雇用の増加と事故発生率の高さ、けがなどの長期化の傾向は、昨年の調査などと比較しても大きな相違はありません。つまりは、エイジフレンドリーガイドラインが定められたものの、これを意識した安全配慮義務や具体的な対策が広がっておらず、高齢者が安心かつ健康に働ける職場づくりが実現できていない環境が残っていることを意味しているように思われます。  エイジフレンドリーガイドラインを策定するのみならず、中小企業事業者向けにエイジフレンドリー補助金も用意されており、高齢者の事故対策に要する費用を補助する制度もあります。こちらは、令和6年度は、予算が不足するほどの状況になり、申請の締切が早まるといった状況になっており、関心が強まってきていることはたしかなように思われます。  あらためて、高齢者向けに安全な職場づくりに目を向けて取り組む必要性が高まっていることを認識していただければと思います。 3 具体的な留意事項  高齢者の労災事故のうち、特に注意が必要と考えられているのは、「墜落・転倒」、「動作の反動・無理な動作」などです。これらの類型では、高齢化するにつれて、労働災害発生率が高くなる傾向にあるうえ、特に転倒による骨折などの発生率は顕著に上昇します。  単純な対策のように思われるかもしれませんが、まずは、転ばない職場、段差のない職場、明るい職場を目ざすということは重要な要素になります。床に置かれているものを整理整頓すること、つまずきの原因になるような場所には目立つような色を付けること、注意をうながすマークなどを記すことなどが考えられるところです。昨年度のエイジフレンドリー補助金にも「転倒・墜落災害防止対策」が対象にされており、つまずき防止対策、滑り防止対策、階段への手すりの設置などが補助対象となる防止対策としてあげられていたところです。  転倒防止については、転ばない職場づくりはもちろんですが、じつは何もないところで転倒するという例も少なくありません。そうなると、どんな対策をしても無駄なのかというとそういうわけではなく、転倒やけがをしにくい身体づくりの運動プログラムの導入などが推奨されています。このことは、腰痛を引き起こすといわれる「動作の反動・無理な動作」に対する対処にもなります。昨年度のエイジフレンドリー補助金においても、「転倒防止や腰痛防止のためのスポーツ・運動指導コース」が用意されているように、運動プログラムを導入することはけがの防止や予防に役立つと考えられています。  高齢者のための職場づくりは将来にわたって安心・安全に働ける職場づくりにつながり、定着率の上昇にも寄与するものと思われますので、一度、高齢者の労災事故防止に目を向けた取組みを行ってみてはいかがでしょうか。 ※ 厚生労働省「令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況」https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099505.pdf 【P46-47】 TOPIC 「更年期の仕事と健康に関する定量調査」 株式会社パーソル総合研究所  加齢によるホルモンバランスの変化により、さまざまな症状があらわれる更年期障害。働く人たちの健康の保持・増進に取り組むことの重要性が年々高まりつつあるなかで、更年期障害に悩む社員のサポートに取り組む企業も増えてきています。そこで今回は、株式会社パーソル総合研究所が、2024(令和6)年に行った「更年期の仕事と健康に関する定量調査」のなかから、一部を抜粋して紹介します。 更年期症状の保有状況【男女/40-50代正社員】  男女ともに40・50代正社員の4割前後が軽度レベル以上の更年期症状を保有している。ただし、症状には個人差が大きい。女性の1割弱が要長期治療レベル、男性の1割弱が重度レベルに分類される。 女性 ※更年期症状スコアによる分類(SMI) 40-50代正社員女性 n=622 (%) 軽度レベル以上 44.5% 要長期治療 8.0% 受診推奨 9.2% 軽度 27.3% なし 55.5% 男性 ※更年期症状スコアによる分類(AMS) 40-50代正社員男性 n=2404 (%) 軽度レベル以上 37.2% 重度 7.1% 中程度 11.9% 軽度 18.2% なし 62.8% 症状が仕事の支障になる程度/1か月あたり日数【男女/軽度以上の症状保有者】  症状が仕事の支障になる日数は、症状レベルが上がるほど多い傾向が見られる。平均すると、女性では、軽度レベルで月に約6日、要長期治療レベルで約11日。男性では、軽度レベルで月に約4日、重度レベルで約9日。ただし、同じ症状レベルであっても個人差が大きい。 女性 1日未満 1日以上3日未満 3日以上5日未満 5日以上10日未満 10日以上20日未満 20日以上 % 軽度(604) 25.8 23.7 17.9 11.1 10.4 11.1 受診推奨(241) 15.8 18.3 20.7 14.9 12.0 18.3 要長期治療 (155) 13.5 11.6 12.9 11.6 22.6 27.7 平均(日) 5.76 8.20 11.17 男性 1日未満 1日以上3日未満 3日以上5日未満 5日以上10日未満 10日以上20日未満 20日以上 % 軽度(249) 28.5 25.3 22.1 8.8 10.4 4.8 中程度(139) 23.0 19.4 21.6 12.2 10.1 13.7 重度(112) 25.9 15.2 16.1 9.8 8.0 25.0 平均(日) 4.19 6.34 8.72 ベース:軽度以上の症状を保有している40-50代の正社員 ※カッコ内はn 症状があるときの生産性【男女/軽度以上の症状保有者】  男女ともに、症状があるときの生産性は、症状レベルにかかわらず平均で50% 前後に低下する。ただし、同じ症状レベルであっても個人差が大きい。 女性 0%(仕事ができない) 1%以上40%未満 40%以上60%未満 60%以上80%未満 80%以上100%未満 100%(生産性低下なし) % 軽度(604) 5.1 17.1 21.7 27.8 22.2 6.1 受診推奨(241) 4.6 23.7 34.4 20.3 12.9 4.1 要長期治療(155) 5.8 23.9 31.0 24.5 12.3 2.6 平均(%) 57.27 49.98 48.43 男性 0%(仕事ができない) 1%以上40%未満 40%以上60%未満 60%以上80%未満 80%以上100%未満 100%(生産性低下なし) % 軽度(249) 4.8 25.3 19.3 29.7 14.5 6.4 中程度(139) 4.3 28.1 26.6 23.0 14.4 3.6 重度(112) 9.8 25.9 30.4 18.8 9.8 5.4 平均(%) 52.84 48.89 46.48 ベース:軽度以上の症状を保有している40-50代の正社員 ※カッコ内はn パフォーマンスや継続就業意向との関係性  症状レベルが高い場合(女性の要長期治療レベル/男性の重度レベル)、ジョブ・パフォーマンス(役割遂行度)や継続就業意向が低い傾向が見られる。 症状レベル別|ジョブ・パフォーマンス (役割遂行度) ※ジョブ・パフォーマンス(役割遂行度):任された役割を果たしている、会社から求められる成果を出しているなど5項目の平均値 5件法 5項目平均値 (pt) 40-50代正社員女性・計 (232) 3.61 軽度 (604) 3.61 受診推奨 (241) 3.55 要長期治療 (155) 3.42 40-50代正社員男性・計 (902) 3.40 軽度 (249) 3.45 中程度 (139) 3.34 重度 (112) 3.06 症状レベル別|継続就業意向 そう思う・計(%) 40-50代正社員女性・計 (232) 51.3 軽度 (604) 46.5 受診推奨 (241) 44.0 要長期治療 (155) 33.5 40-50代正社員男性・計 (902) 44.8 軽度 (249) 46.2 中程度 (139) 36.0 重度 (112) 25.0 ベース:・軽度以上の症状を保有している40-50代正社員:女性1000人、男性500人 ・40-50代正社員・計は、別枠で確保した40-50代正社員(症状を保有していない人を含む)の結果を掲載:女性232人、男性902人 ※カッコ内はn 上司や同僚への相談実態  症状について(症状の状態やケア、治療方法、症状による働き方の調整について)、職場で上司や先輩・同僚に相談をしている女性は症状レベルにかかわらず1〜2割程度、男性は1割前後に留まる。男性と比べると、女性は、職場の先輩・同僚に相談している割合が高い。 ※「症状の状態やケア、治療方法」「症状による働き方の調整」のいずれかについて相談した人 症状レベル別|相談した人の割合 女性 複数回答(%) 相談した人の割合 上司 軽度(604) 9.3 受診推奨(241) 10.8 要長期治療(155) 11.6 職場の先輩・同僚 14.7 14.5 17.4 男性 上司 10.0 11.5 13.4 職場の先輩・同僚 軽度(249) 9.2 中程度(139) 6.5 重度(112) 7.1 ベース:軽度以上の症状を保有している40-50代の正社員 ※カッコ内はn 【P48-49】 いまさら聞けない 人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第55回 「リストラクチャリング」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、リストラクチャリングについて取り上げます。 広義と狭義の意味がある  リストラクチャリングよりも、“リストラ”という略称の方がすっかり定着していますが、リストラというと多くの人がまずイメージするのが人員削減や解雇といった意味だと思います。こちらの意味でも間違ってはいませんが、じつはこれだけでは狭い部分をさしています。  リストラクチャリングは、もともと英語で再構築を意味するRestructuringからきた用語です。定義としては経済財政白書にある平成11(1999)年度年次経済報告のなかで「リストラの背景と実態」に記載されている内容がわかりやすく、「企業が、資本、労働、技術など各種の生産要素の組合せや業務内容を見直して、再編成することを意味している。すなわち、諸資源のより効率的な組合せを作り生産性を上昇させていくという行為を指すものである。この意味では、必ずしも業務規模の縮小や撤退、あるいは雇用削減を意味するものではない。」としています。ここでみられるように、本来のリストラクチャリングには、不採算や収益性が高くない事業から、資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)を成長分野にシフトしていくという広義の意味が含まれています。人員の削減はこれを行ううえでの人員数の適正化にともなうもので、一つの手段という狭義の意味になります。  この用語がいつから使われ始めたかは明確ではないのですが、1980年代には多くのアメリカ企業がリストラクチャリングに取り組んでおり、そのころ日本でも用語としては流入していたようです。1990年代になると、いわゆるバブル経済の崩壊による急速な企業業績の悪化への対応策として、本来の目ざすべき生産性の向上や成長分野へのシフトよりも、会社規模の縮小と人員数の適正化を行う企業が多かったことから、リストラ=人員削減のイメージが一気に広まっていきました。 広義のリストラクチャリングが増えてきた  バブル経済以降も、2008年前後のリーマンショックや2020(令和2)年あたりからの新型コロナウイルス感染症の流行など、国内景気が悪化すると、その喫緊の対応策として狭義のリストラ(人員削減)という選択肢を取る企業はまだ多くあります。このことは、東京商工リサーチが集計している上場企業の早期・希望退職募集数※1の2009年から2024年までの年度別推移をみても、実施した企業数が最も多かったのが2009年、次に多かったのが2020年という状況からもみて取れます。  しかし、インバウンド(訪日外国人観光客)需要等により国内景気が堅調とされる2024年も2020年・2021年に次ぐ早期・希望退職の募集規模で、募集人員数も1万人を超える集計になっています。個別の企業をみると、たしかに業績悪化への対応が理由と思われる会社もありますが、これまでとは異なる傾向もみえてきます。そのうちの一つが募集企業のうち最終利益が黒字の企業が約6割あるという点です。これらの会社にみられる実施理由が、事業内容の見直しです。もう一つが、年齢制限を設けずに募集をする企業が増えてきたという点です。従来は、人件費負担を軽くするために比較的賃金水準の高い中高年層を対象としてきましたが、募集の目的が事業の見直しであれば、年齢や賃金水準の高低よりも事業を遂行できるスキルを有した人材の確保が課題となるため年齢制限は大きな意味をなさなくなります。  これらのことから、近年は事業の再編成という広義のリストラクチャリングが広まってきているといえます。その理由として大きいのは、これまでのビジネスモデルを見直さざるを得ないという点です。製造業の場合は、グローバル競争の激化にともない、日本企業の収益構造では勝てない製造品目や拠点から撤退し収益性の高い部分への集中を進める、小売業の場合には店舗数の拡大により収益を生み出すという手法が人件費や物価等の高騰、人手不足により成り立たなくなったため、旗艦店への店舗の集中やインターネット販売の強化を進めるといった事例があげられます。 事業の再編成は社会の課題でもある  リストラクチャリングという用語を直接は使っていないものの、政府の資料でも事業の再編成については、たびたび言及されています。例えば、2021年6月18日に閣議決定された「成長戦略実行計画」では、製造コストの何倍の価格で販売できているかを示すマークアップ率※2が日本は1.3倍にとどまりG7諸国のなかで最も低く(最も高いのはイタリア2.5倍、次に高いのは米国1.8倍)、新製品や新サービスを投入した製造業の割合は9.9%と先進国のなかでも最も低い(最も高いのはドイツで18.8%、イタリアは17.8%)ことに対して、日本企業が付加価値の高い新製品や新サービスを生み出し、高い売価を確保できる付加価値を創造することで労働生産性の向上を図る必要があると問題提起しています。  また、2024年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」では、社会課題の解決と持続的な経済成長の実現に向け、官民が連携してグリーン、デジタル、科学技術・イノベーション、フロンティアの開拓、経済・エネルギー安全保障等の分野において、長期的視点に立ち、戦略的な投資を速やかに実行し、人材や資本等の資源を成長分野に集中投入していく旨が述べられています。「雇用政策の方向性、雇用維持から成長分野への労働移動の円滑化へとシフトしていく」とのふみ込んだ記載もあり、事業の再編成は個々の企業だけでなく、社会全体で推進していく課題として政府もとらえていることがうかがえます。  ただし、事業の再編成にともなう労働者の生活やキャリアには十分に配慮しておきたいものです。先述の基本方針2024でも賃上げやリスキリングの必要性が述べられていますが、労働移動や従事職務の変更を円滑に行うのであれば、それらは必要不可欠になります。また、企業としてはマルチスキル化の推進や配置転換を図ることで、望まない社外への労働移動を行うことなく、事業再編成を可能なかぎり実現していくという観点も必要かと思います。  次回は、「グローバル人材」について取り上げます。 ※1 「早期退職・希望退職」については、本連載第26回(2022年7月号)参照。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202207/#page=52 ※2 マークアップ率…… 分母をコスト(限界費用)、分子を販売価格とする分数。この値が1のとき、販売価格はちょうど費用を賄う分だけを捻出していることになる 【P50-55】 労務資料 令和6年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課  高年齢者雇用安定法では、高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現を目的に、企業に65歳までの高年齢者雇用確保措置を義務づけています。また、70歳までの就業機会の確保を目的として、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」という雇用による措置や、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」という雇用以外の措置のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるように努めることを企業に義務づけています。  厚生労働省より、こうした高年齢者の雇用等に関する措置の実施状況(2024年6月1日現在)が公表されましたので、その結果をご紹介します。集計対象は、常時雇用する労働者が21人以上の企業23万7052社です(編集部)。 集計結果の主なポイント ※[ ]は対前年差 T 65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況  65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%[変動なし] ・中小企業では99.9%[変動なし]、大企業では100.0%[0.1ポイント増加] ・高年齢者雇用確保措置の措置内容別の内訳は、「継続雇用制度の導入」により実施している企業が67.4%[1.8ポイント減少]、「定年の引上げ」により実施している企業は28.7%[1.8ポイント増加] U 70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況  70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%[2.2ポイント増加] ・中小企業では32.4%[2.1ポイント増加]、大企業では25.5%[2.7ポイント増加] V 企業における定年制の状況  65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は32.6%[1.8ポイント増加] 1 65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況 (1)65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況  高年齢者雇用確保措置(以下「雇用確保措置」注1という。)を実施済みの企業(23万6920社)は、報告した企業全体の99.9%[変動なし]で、中小企業では99.9%注2[変動なし]、大企業では100.0%[0.1ポイント増加]であった。 注1 雇用確保措置  高年齢者雇用安定法第9条第1項に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次に掲げるいずれかの措置を講じなければならない。  @定年制の廃止、A定年の引上げ、B継続雇用制度の導入※ ※ 継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。平成24年度の法改正により、平成25年度以降、制度の適用者は原則として「希望者全員」となった。平成24年度までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた場合、令和7年3月31日までは基準を適用可能(経過措置)。基準を適用できる年齢について、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上となるよう、段階的に引き上げており、令和4年4月1日から令和7年3月31日における基準を適用できる年齢は64歳である。 注2 本集計に係る留意点  本集計は原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、それにより0%となる数値については小数点第2位以下を切り上げ、100%となる数値については、小数点第2位以下を切り捨てとしている数値がある。 (2) 雇用確保措置を実施済みの企業の内訳  雇用確保措置を実施済みの企業(23万6920社)について、雇用確保措置の措置内容別に見ると、定年制の廃止(9247社)は3.9%[変動なし]、定年の引上げ(6万8099社)は28.7%[1.8ポイント増加]、継続雇用制度の導入(15万9574社)は67.4%[1.8ポイント減少]であった。 (3) 継続雇用制度の導入により雇用確保措置を講じている企業の状況  継続雇用制度の導入により雇用確保措置を講じている企業(15万9574社)を対象に、継続雇用制度の内容を見ると、希望者全員を対象とする継続雇用制度を導入している企業は86.2%[1.6ポイント増加]で、中小企業では87.6%[1.5ポイント増加]、大企業では71.1%[3.0ポイント増加]であった。  一方、経過措置に基づき、対象者を限定する基準がある継続雇用制度を導入している企業(経過措置適用企業)は、企業規模計では13.8%[1.6ポイント減少]であったが、大企業に限ると28.9%[3.0ポイント減少]であった。 (参考)経過措置適用企業における基準適用年齢到達者の状況注3  上記1(1)の注1に記載する経過措置に基づく対象者を限定する基準がある企業において、過去1年間(令和5年6月1日から令和6年5月31日)に、基準を適用できる年齢(64歳)に到達した者(4万9584人)のうち、基準に該当し引き続き継続雇用された者は92.5%[0.3ポイント減少]、継続雇用の更新を希望しなかった者は6.5%[0.3ポイント増加]、継続雇用を希望したが基準に該当せずに継続雇用が終了した者は1.1%[0.1ポイント増加]であった。 注3 本集計に係る留意点  本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の積み上げが100%とはならない。 2 70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況注4 (1)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況  高年齢者就業確保措置(以下「就業確保措置」注5という。)を実施済みの企業(7万5643社)は、報告した企業全体の31.9%[2.2ポイント増加]で、中小企業では32.4%[2.1ポイント増加]、大企業では25.5%[2.7ポイント増加]であった。 (2) 就業確保措置を実施済みの企業の内訳  就業確保措置を実施済みの企業(7万5643社)について措置内容別に見ると、報告した企業全体のうち、定年制の廃止(9247社)は3.9%[変動なし]、定年の引上げ(5690社)は2.4%[0.1ポイント増加]、継続雇用制度の導入(6万570社)は25.6%[2.1ポイント増加]、創業支援等措置注6の導入(136社)は0.1%[変動なし]であった。 注4 本集計に係る留意点  本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の積み上げが就業確保措置実施済み企業の割合に一致しない場合がある。 注5 就業確保措置  高年齢者雇用安定法第10条の2に基づき、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主または65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者について、次に掲げるいずれかの措置を講ずることにより、65歳から70歳までの就業を確保するよう努めなければならない。  @定年制の廃止、A定年の引上げ、B継続雇用制度の導入、C業務委託契約を締結する制度の導入、D社会貢献事業に従事できる制度の導入(事業主が自ら実施する社会貢献事業または事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業) 注6 創業支援等措置  注5の就業確保に係る措置のうち、C業務委託契約を締結する制度の導入及びD社会貢献事業に従事できる制度の導入という雇用以外の措置を創業支援等措置という。 3 企業における定年制の状況 報告した企業における定年制の状況について、定年年齢別に見ると次のとおりであった。 ・定年制を廃止している企業(9247社)は3.9%[変動なし] ・定年を60歳とする企業(15万2776社)は64.4%[2.0ポイント減少] ・定年を61〜64歳とする企業(6930社)は2.9%[0.2ポイント増加] ・定年を65歳とする企業(5万9693社)は25.2%[1.7ポイント増加] ・定年を66〜69歳とする企業(2716社)は1.1%[変動なし] ・定年を70歳以上とする企業(5690社)は2.4%[0.1ポイント増加] ★ この集計では従業員21〜300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としている 図表1 雇用確保措置の内訳 定年制の廃止 定年の引上げ 継続雇用制度の導入 全企業 3.9% 28.7% 67.4% 301人以上 0.7% 19.9% 79.4% 21〜300人 4.2% 29.4% 66.4% 図表2 雇用確保措置の実施状況 (社、%) @実施済み A未実施 合計(@+A) 21人以上総計 236,920 (236,815) 132 (191) 237,052 (237,006) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 176,492 (176,239) 59 (90) 176,551 (176,329) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 219,860 (219,798) 132 (189) 219,992 (219,987) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 60,428 (60,576) 73 (101) 60,501 (60,677) 99.9% (99.8%) 0.1% (0.2%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 159,432 (159,222) 59 (88) 159,491 (159,310) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) 301人以上 17,060 (17,017) 0 (2) 17,060 (17,019) 100.0% (99.9%) 0.0% (0.1%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和5年6月1日現在の数値 ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、本表の「31人以上総計」および「31人〜300人」の@については、小数点第2位以下を切り捨て、Aについては、小数点第2位以下を切り上げとしている 図表3 雇用確保措置実施企業における措置内容の内訳 (社、%) @定年制の廃止 A定年の引上げ B継続雇用制度の導入 合計(@+A+B) 21人以上総計 9,247 (9,275) 68,099 (63,772) 159,574 (163,768) 236,920 (236,815) 3.9% (3.9%) 28.7% (26.9%) 67.4% (69.2%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 5,344 (5,406) 48,348 (44,984) 122,800 (125,849) 176,492 (176,239) 3.0% (3.1%) 27.4% (25.5%) 69.6% (71.4%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 9,129 (9,158) 64,711 (60,806) 146,020 (149,834) 219,860 (219,798) 4.2% (4.2%) 29.4% (27.7%) 66.4% (68.2%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 3,903 (3,869) 19,751 (18,788) 36,774 (37,919) 60,428 (60,576) 6.5% (6.4%) 32.7% (31.0%) 60.9% (62.6%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 5,226 (5,289) 44,960 (42,018) 109,246 (111,915) 159,432 (159,222) 3.3% (3.3%) 28.2% (26.4%) 68.5% (70.3%) 100.0% (100.0%) 301人以上 118 (117) 3,388 (2,966) 13,554 (13,934) 17,060 (17,017) 0.7% (0.7%) 19.9% (17.4%) 79.4% (81.9%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和5年6月1日現在の数値 ※「合計」のうち企業数は、図表2の「@実施済み」に対応している ※「A定年の引上げ」は、定年年齢を65歳以上としている企業を、「B継続雇用制度の導入」は、定年年齢は65歳未満だが継続雇用制度の上限年齢を65歳以上としている企業を、それぞれ計上している ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の積み上げが100%とはならない場合がある 図表4 継続雇用制度の内訳 希望者全員を対象とする継続雇用制度 経過措置に基づく基準対象者とする継続雇用制度 全企業 86.2% 13.8% 301人以上 71.1% 28.9% 21〜300人 87.6% 12.4% 図表5 経過措置適用企業における基準適用年齢到達者の状況 継続雇用者(基準に該当し引き続き雇用された者) 92.5% 継続雇用を希望しなかった者 6.5% 基準に該当しない者 1.1% 図表6 就業確保措置の内訳 定年制の廃止 定年の引上げ 継続雇用制度の導入 創業支援等措置の導入 全企業(31.9%) 3.9% 2.4% 25.6% 0.1% 301人以上(25.5%) 0.7% 0.7% 24.0% 0.1% 21〜300人(32.4%) 4.1% 2.5% 25.7% 0.1% 図表7 70歳までの就業確保措置の実施状況 (社、%) @70歳までの就業確保措置実施済み 定年制の廃止 定年の引上げ 継続雇用制度の導入 創業支援等措置の導入 A未実施 合計(@+A) 21人以上総計 75,643 (70,443) 9,247 (9,275) 5,690 (5,361) 60,570 (55,694) 136 (113) 161,409 (166,563) 237,052 (237,006) 31.9% (29.7%) 3.9% (3.9%) 2.4% (2.3%) 25.6% (23.5%) 0.1% (0.1%) 68.1% (70.3%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 54,421 (50,572) 5,344 (5,406) 3,695 (3,507) 45,276 (41,564) 106 (95) 122,130 (125,757) 176,551 (176,329) 30.8% (28.7%) 3.0% (3.1%) 2.1% (2.0%) 25.6% (23.6%) 0.1% (0.1%) 69.2% (71.3%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 71,297 (66,560) 9,129 (9,158) 5,568 (5,255) 56,484 (52,061) 116 (86) 148,695 (153,427) 219,992 (219,987) 32.4% (30.3%) 4.1% (4.2%) 2.5% (2.4%) 25.7% (23.7%) 0.1% (0.1%) 67.6% (69.7%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 21,222 (19,871) 3,903 (3,869) 1,995 (1,854) 15,294 (14,130) 30 (18) 39,279 (40,806) 60,501 (60,677) 35.1% (32.7%) 6.5% (6.4%) 3.3% (3.1%) 25.3% (23.3%) 0.1% (0.1%) 64.9% (67.3%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 50,075 (46,689) 5,226 (5,289) 3,573 (3,401) 41,190 (37,931) 86 (68) 109,416 (112,621) 159,491 (159,310) 31.4% (29.3%) 3.3% (3.3%) 2.2% (2.1%) 25.8% (23.8%) 0.1% (0.1%) 68.6% (70.7%) 100.0% (100.0%) 301人以上 4,346 (3,883) 118 (117) 122 (106) 4,086 (3,633) 20 (27) 12,714 (13,136) 17,060 (17,019) 25.5% (22.8%) 0.7% (0.7%) 0.7% (0.6%) 24.0% (21.3%) 0.1% (0.2%) 74.5% (77.2%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和5年6月1日現在の数値 ※「@70歳までの就業確保措置実施済み」のうち、「定年の引上げ」は70歳以上の定年の定めを設けている企業を、「継続雇用制度の導入」は定年年齢は70歳未満だが継続雇用制度の上限年齢を70歳以上としている企業を、「創業支援等措置の導入」は定年年齢及び継続雇用制度の上限年齢は70歳未満だが創業支援等措置の上限年齢を70歳以上としている企業を、それぞれ計上している ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の積み上げが100%とはならない場合がある ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、本表の「21〜30人」の「創業支援等措置の導入」については、小数点第2位以下を切り上げとしている 図表8 企業における定年制の状況@ 定年制の廃止 60歳定年 61〜64歳定年 65歳定年 66〜69歳定年 70歳以上定年 全企業 3.9% 64.4% 2.9% 25.2% 1.1% 2.4% 301人以上 0.7% 74.3% 5.2% 18.9% 0.3% 0.7% 21〜300人 4.1% 63.7% 2.8% 25.7% 1.2% 2.5% 図表9 企業における定年制の状況A (社、%) 定年制の廃止 定年制あり 60歳未満 60歳 61歳〜64歳 65歳 66〜69歳 70歳以上 65歳以上定年合計(定年制の廃止を含む) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,247 (9,275) 0 (0) 152,776 (157,457) 6,930 (6,502) 59,693 (55,712) 2,716 (2,699) 5,690 (5,361) 77,346 (73,047) 237,052 (237,006) 3.9% (3.9%) 0.0% (0.0%) 64.4% (66.4%) 2.9% (2.7%) 25.2% (23.5%) 1.1% (1.1%) 2.4% (2.3%) 32.6% (30.8%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 5,344 (5,406) 0 (0) 117,116 (120,617) 5,743 (5,322) 42,775 (39,622) 1,878 (1,855) 3,695 (3,507) 53,692 (50,390) 176,551 (176,329) 3.0% (3.1%) 0.0% (0.0%) 66.3% (68.4%) 3.3% (3.0%) 24.2% (22.5%) 1.1% (1.1%) 2.1% (2.0%) 30.4% (28.6%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 9,129 (9,158) 0 (0) 140,101 (144,325) 6,051 (5,698) 56,476 (52,898) 2,667 (2,653) 5,568 (5,255) 73,840 (69,964) 219,992 (219,987) 4.1% (4.2%) 0.0% (0.0%) 63.7% (65.6%) 2.8% (2.6%) 25.7% (24.0%) 1.2% (1.2%) 2.5% (2.4%) 33.6% (31.8%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 3,903 (3,869) 0 (0) 35,660 (36,840) 1,187 (1,180) 16,918 (16,090) 838 (844) 1,995 (1,854) 23,654 (22,657) 60,501 (60,677) 6.5% (6.4%) 0.0% (0.0%) 58.9% (60.7%) 2.0% (1.9%) 28.0% (26.5%) 1.4% (1.4%) 3.3% (3.1%) 39.1% (37.3%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 5,226 (5,289) 0 (0) 104,441 (107,485) 4,864 (4,518) 39,558 (36,808) 1,829 (1,809) 3,573 (3,401) 50,186 (47,307) 159,491 (159,310) 3.3% (3.3%) 0.0% (0.0%) 65.5% (67.5%) 3.0% (2.8%) 24.8% (23.1%) 1.1% (1.1%) 2.2% (2.1%) 31.5% (29.7%) 100.0% (100.0%) 301人以上 118 (117) 0 (0) 12,675 (13,132) 879 (804) 3,217 (2,814) 49 (46) 122 (106) 3,506 (3,083) 17,060 (17,019) 0.7% (0.7%) 0.0% (0.0%) 74.3% (77.2%) 5.2% (4.7%) 18.9% (16.5%) 0.3% (0.3%) 0.7% (0.6%) 20.6% (18.1%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和5年6月1日現在の数値 ※「65歳以上定年」の企業数は、図表3の「@定年制の廃止」と「A定年の引上げ」を合計した数値に対応している ※「報告した全ての企業」の企業数は、図表2の「合計」に対応している ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の積み上げが100%とはならない場合がある 【P56-57】 BOOKS 現代の企業環境に適したマネジャーのスキル向上・能力の再開発に役立つテキスト マネジメントのリスキリング ジョブ・アサインメント技法を習得し、他者を通じて業績を上げる 大久保(おおくぼ)幸夫(ゆきお)著/経団連出版/2750円  働くことをめぐる環境が大きく変化して、マネジメントすることの難易度が格段に上がっているという。本書によると、マネジメントに自信を持っているマネジャーの割合は、4人に1人にすぎないそうだ。そこで、マネジメントスキルの再開発・再教育が企業にとって喫緊の課題になっていると本書の著者は綴り、「マネジメントスキルを習得し、マネジメントが楽しくできるようになれば、企業の生産性は大きく向上し、働く人々のワーク・エンゲージメントも高まる」とその重要性を表現している。  本書は、マネジャーの役割は「他者を通じて業績を上げる」ことであり、日常のマネジメントの行動は「ジョブ・アサインメント(JA)」に集約されるという。そして、四つのプロセスと各八つの行動で構成される32のJAの解説を中核にすえて、マネジメントのポイントをテーマ別に整理し、JAの各項目とつないで詳しく、かつ読みやすい文章で説明している。  マネジメントスキルを高めたいと願うマネジャーの自己啓発書としておすすめできるとともに、マネジメント研修のサブテキストとして、また、多面観察評価後の内省機会における思考の整理にも役立つ内容となっている。 退職した個人と企業がその後良好な関係性を築き、双方が価値を得るには? アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値 鈴木(すずき)仁志(ひとし)・濱田(はまだ)麻里(まり)著/日本能率協会マネジメントセンター/2200円  「アルムナイ(alumni)」は、英語で「卒業生」を意味するが、企業の「退職者」に対しても使われている。近年、急速に注目されるようになった。  終身雇用制が長く定着してきた日本では、転職や独立のための「退職」や「退職者」に対してネガティブな印象を持ちがちだが、働き方の多様化が進み、職業人生が長くなってきた現在、転職や起業、学校に通い学び直すなど、退職を選ぶ理由も多様化し、退職者のなかには、辞めた会社とよい関係を築く人もいる。また、アルムナイとよい関係が築ける企業もあるという。  本書は、アルムナイと企業の関係構築が注目されている理由をはじめ、アルムナイとよい関係を築くうえでの考え方や方法を解説。2人の著者が所属する会社では、アルムナイを貴重な人的資本ととらえる企業に対して、自社のアルムナイと関係を構築するための支援を行っており、本書ではよい関係性を築いたことで得られている双方にとっての価値などの事例も紹介している。また、ミドル・シニア人材の再躍進に向けたプログラムに、アルムナイがかかわるといった取組みも始まっているという。  アルムナイとの関係づくりなどを考えている企業の担当者らにおすすめしたい一冊である。 コミュニケーションなどの「ノンテクニカルスキル」が事故を防止する! 産業現場のノンテクニカルスキル2.0の取り組み ―事故防止教育の新展開 南川(みなみがわ)忠男(ただお)著・堤(つつみ)克一路(かついちろ)著・野田(のだ)誠司(せいじ)著・井上(いのうえ)哲夫(てつお)著/化学工業日報社/4400円  産業現場における事故は、技術的な面(テクニカルスキル)によるものより、ノンテクニカルスキルによるものが増加しており、事故防止を図るうえでも、ノンテクニカルスキルの向上を目ざす教育が強く求められている。  ただ、コミュニケーションやチームワークなどが主要な要素とされるノンテクニカルスキルの教育は、年月を要することや成果がなかなか表れないといった課題が聞かれていた。  本書は、ノンテクニカルスキル教育の成果を向上させるにはどうしたらよいか、課題解決に向けて産学のメンバーで取り組んだ活動から生まれた「ノンテクニカルスキル2.0」という新たな概念の提唱と、その概念に基づく教材の開発の経緯や内容などを詳解している。  本編は3部構成で、第1部では新たな概念を提案した動機とその構成要素について、第2部では開発された教材の開発背景やねらい、内容、活用方法をていねいに記述。第3部は、ノンテクニカルスキル講座の実績や体験教室の実績、コンテンツ提供教室の参加者からのふり返りシートの抜粋などの記録集となっている。  ノンテクニカルスキル教育の手引書ともいえる内容で、幅広い業界での活用が期待される。 毎朝5分手帳に書くだけ!仕事もプライベートも充実する方法 「時間不足」解消! 誰でも目標・夢を達成できる 朝5分だけ段取り手帳術 鈴木(すずき)真理子(まりこ)著/実務教育出版/1760円  現代は、デジタル手帳を使う人も増えているが、本書が伝授する「手帳術」は、紙の手帳が主役である。紙の手帳は、スケジュールを管理するだけでなく、書くことによって段取り力が養われ、目標や夢が実現できる将来の可能性を広げてくれる最強のツールなのだという。  本書は、かぎられた時間をコントロールして、自分の時間を増やすために、手帳を使った段取りのよい仕事の進め方の紹介と、段取り力を磨くための考え方、ハウツーを盛り込んだ一冊。ビジネス書ではあるが、簡潔な文章とたっぷりのイラストで構成され、楽しい気分で読み進めることができる。タイトルの「段取り手帳術」とは、「仕事の予定を書くだけでなく、そのための事前準備も含めて、やることを『見える化』し、優先順位にしたがって1日の戦略的な計画を立てること」。1章から6章までは「仕事編」として、朝5分で、手帳を使って1日の計画を立てる方法を伝授。最終章は「応用編」として、プライベートを含む目標の立て方から、毎日をご機嫌に過ごすためのワザも紹介している。  手帳や時間の使い方に興味がある人をはじめ、定年を迎えて働き方や生活が変化したというシニア世代にも多くのヒントを与えてくれる。 高齢者の「からだ」と「こころ」について楽しく学べる、必携の一冊 イラストでわかる 高齢者のからだ図鑑 kei著・長島(ながしま)佳歩(かほ)著・稲川(いながわ)利光(としみつ)監修/メディカル・ケア・サービス/1980円  年齢を重ねるにつれて、人のからだは変化していく。本書は、高齢者のからだの変化や動作のこと、病気や薬、認知症、こころのケアについて、「からだの仕組み」、「からだの機能」の視点から、理学療法士がわかりやすく解説。また、リハビリテーションや介護にかかわる著書・共著を持つ医師が、監修を担当した。  本文はイラストやマンガで説明したり、ポイントを簡潔にまとめていたりといった工夫がなされ、関心のあるところから気軽に読むことができる。高齢期のことやかかわり方について理解を深めることができ、高齢者と信頼関係を築くうえでも助けになる内容である。  例えば、高齢者の転倒リスクの見きわめには、筋力・感覚・バランス能力の変化だけでなく、飲んでいる薬の影響にも注意が必要だという。さらに、高齢者の転倒が多い場所や状況、リスクを減らすためにすぐできることなども説明している。また、転倒や転落、急変などの緊急時にもスムーズに対応できるよう、知っておきたいこと、準備しておきたいことも紹介している。  はじめて高齢者とかかわる人や医療・福祉などの現場に立つ人、高齢者が働く職場のリーダーらにもおすすめしたい良書である。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「第19回中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」結果を公表  厚生労働省は、同じ集団を対象に毎年実施している「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の第19回調査の結果を公表した。  調査は、2005(平成17)年10月末に50〜59歳だった全国の中高年者世代の男女を対象に実施。第19回調査では、2005年の第1回調査から協力が得られた1万5523人について集計。調査対象者の年齢は、68〜77歳となっている。  就業状況の変化をみると、「正規の職員・従業員」は、第1回は38.7%、第19回は2.4%に減少。「パート・アルバイト」は、第1回17.0%、第19回13.2%、「自営業主、家族従業者」は第1回15.2%、第19回11.5%となっている。  次に、60歳以上の仕事をしている人の割合について、年齢が60〜69歳だった第11回と第19回(68〜77歳)とで比較可能な68〜69歳についてみると、第19回のほうが、男では68歳で4.3ポイント、69歳で7.9ポイント、女では68歳で7.9ポイント、69歳で7.5ポイントとそれぞれ高くなっている。  続いて、就業希望の状況についてみると、第19回(68〜77歳)で、仕事をしていない人の就業希望の状況を性、年齢階級別にみると、男は14.2%、女は10.2%となっており、68・69歳で男は19.1%、女は13.2%と最も高くなっている。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/judan/chukou24 厚生労働省 「第13回 健康寿命をのばそう!アワード」表彰企業等を発表  厚生労働省およびスポーツ庁は、第13回目となる「健康寿命をのばそう!アワード」において、生活習慣病予防分野で21企業・団体・自治体、介護予防・高齢者生活支援分野で13企業・団体・自治体の受賞を決定した。同アワードは、右記の分野に関して優れた取組みを行っている企業などを表彰し、模範となる取組みを普及することにより、健やかで心豊かに生活できる社会の実現を図ることを目的としている。各分野の内容と今回の受賞企業・取組みタイトルなどは次の通り。 ●生活習慣病予防分野  従業員や職員、住民に対して、生活習慣病予防の啓発、健康増進のための優れた取組みをしている企業などから113件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞(飛騨市役所「今日も『まめなかな!』減塩食品・料理の普及活動による食環境整備2019-2024〜地元企業での減塩中華そば開発と導入に至るまで〜」)などを表彰した。 ●介護予防・高齢者生活支援分野  地域包括ケアシステムの構築に向け、地域の実情に応じた優れた取組みを行っている企業などから54件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞(NPO法人JAあづみくらしの助け合いネットワークあんしん「皆の願いを実現する地域協同の取組人と人との支え合いの循環が、あんしんして暮らせる里をつくる」)などを表彰した。  受賞した企業などの取組みは、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできる。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45784.html 厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変更  2025(令和7)年4月1日から、「高年齢雇用継続給付」の支給率が変更される。厚生労働省は、変更について説明するリーフレットを公表した。  「高年齢雇用継続給付」は、高齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的として、60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度。  「雇用保険法等の一部を改正する法律」(2020年法律第14号)の施行により、2025年4月1日以降は、各月に支払われた賃金の10%(変更前15%)を限度とすることとなる。  具体的には、「60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日)」が、 2025年3月31日以前の人  →各月に支払われた賃金の15%(従来の支給率)を限度として支給される。 2025年4月1日以降の人  →各月に支払われた賃金の10%(変更後の支給率)を限度として支給される。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00043.html  リーフレットは、厚生労働省のウェブサイトよりダウンロードできる。 https://www.mhlw.go.jp/content/001328827.pdf 参考:2025年4月1日以降の支給額の計算式 https://www.mhlw.go.jp/content/001328826.pdf 厚生労働省 令和6年「就労条件総合調査」結果を公表  厚生労働省は、2024(令和6)年「就労条件総合調査」の結果を公表した。この調査は、常用労働者30人以上の民営企業から約6500社を対象に、2024年1月1日時点(年間については2023年ないし2022年会計年度)の労働時間制度、賃金制度などについて調査を行ったもの。  調査結果から、労働時間制度についてみると、「何らかの週休2日制」を採用している企業割合は90.9%(前年85.4%)、「完全週休2日制」は56.7%(同53.3%)となっている。  年次有給休暇の1年間の付与日数(繰越分は除く)は、労働者1人平均16.9日(前年17.6日)。そのうち労働者が取得した日数は、11.0日(同10.9日)。取得率は65.3%(同62.1%)となり、1984年以降最も高くなっている。  次に、特別休暇制度についてみると、特別休暇制度がある企業割合は59.9%(前年55.0%)。種類(複数回答)別にみると、「夏季休暇」40.0%(同37.8%)、「病気休暇」27.9%(同21.9%)、「リフレッシュ休暇」14.7%(同12.9%)、「ボランティア休暇」6.5%(同4.4%)、「教育訓練休暇」5.0%(同3.4%)などとなっている。  勤務間インターバル制度の導入状況をみると、「導入している」が5.7%(前年6.0%)、「導入を予定又は検討している」が15.6%(同11.8%)、「導入予定はなく、検討もしていない」が78.5%(同81.5%)となっている。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/24/index.html 厚生労働省 ウェブサイト 「ハローワーク特設サイト」を開設  厚生労働省は2024(令和6)年12月、求職者を対象に、ハローワークの支援サービスをわかりやすく紹介したウェブサイト「ハローワーク特設サイト」を開設した。  ハローワークは、求職と求人のマッチングだけでなく、職業選択や将来のキャリア設計、スキルアップに関する相談にのり、必要なアドバイスを行う国の機関。全国に500カ所以上あり、年間の求職登録者数は約450万人、新規求人数は1000万人を超えている。ニーズに応じた専門窓口のあるハローワークもあり、例えば、主要なハローワーク300カ所では、高齢者への就労支援などを行う「生涯現役支援窓口」を設置している。  また、求人情報などをスマートフォンやパソコンで閲覧することができる「ハローワークインターネットサービス」も開設している。  今回新たに開設した「ハローワーク特設サイト」では、「仕事を探す人のハローから、フォローまで。」をキャッチコピーに、仕事を探している人や就職について悩みのある人が、ハローワークを気軽に利用できるよう、ハローワークで受けられるサービス内容について説明している。具体的には、求人内容に合わせた応募書類の書き方や面接のアドバイス、就職活動に役立つセミナーや職業訓練「ハロートレーニング」の案内などを紹介している。 ◆ハローワーク特設サイト https://www.mhlw.go.jp/hellowork/ ◆ハローワークインターネットサービス https://www.hellowork.mhlw.go.jp/ 内閣府 「国民生活に関する世論調査」結果を公表  内閣府は、「国民生活に関する世論調査」の結果を公表した。調査は、1957(昭和32)年度から原則毎年実施しており、今回で67回目。2024(令和6)年8月から9月にかけて全国の18歳以上、3000人に実施した。有効回収率は61.0%。  調査結果のなかから働く目的についてみると、「お金を得るため」と答えた人の割合が最も高く62.9%、次いで「社会の一員として、務めを果たすため」が10.5%。年齢別にみると、「お金を得るため」がどの年齢層でも最も高く、60〜69歳では63.1%となっている。しかし70歳以上をみると40.4%で、全体(62.9%)より22.5ポイント低く、ほかの年齢層に比べて「生きがいをみつけるため」22.8%や「社会の一員として、務めを果たすため」15.9%の割合が高い。  次に、収入と自由時間についてみると、「自由時間をもっと増やしたい」(「自由時間をもっと増やしたい」と「どちらかといえば自由時間をもっと増やしたい」の合計)が40.1%、「収入をもっと増やしたい」(「どちらかといえば収入をもっと増やしたい」と「収入をもっと増やしたい」の合計)が55.9%となっている。年齢別にみると、60〜69歳では「自由時間をもっと増やしたい」(小計)が43.4%、「収入をもっと増やしたい」(小計)54.4%、70歳以上では「自由時間をもっと増やしたい」(小計)が37.4%、「収入をもっと増やしたい」(小計)が52.0%となっている。 https://survey.gov-online.go.jp/living/202412/r06/r06-life/ 【P60】 次号予告 4月号 特集 高齢社員の「学び直し」を考える リーダーズトーク 日高乃里子さん(大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンター 教授) JEEDメールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 『有料販売終了のお知らせ』 2025年3月31日をもって、本誌の有料販売を終了いたします。 突然のお知らせとなり誠に申し訳ございません。 これまでご購入いただきありがとうございました。 また、本誌はホームページへ掲載しているデジタルブック等からもご覧いただけますので、今後とも引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会理事長 編集後記 ●今号の特集では、2024(令和6)年11月28日に開催された「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の開催レポートをお届けしました。テーマは「ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略」。少子高齢化による労働力人口の減少が進むなか、企業が持続的な成長をしていくためには、ミドルシニア層の活性化と活躍は不可欠です。そのためのキャリア形成支援やリスキリングのポイントについて、有識者による解説のほか、先進企業による事例紹介、パネルディスカッションの模様を掲載しています。  2月号でレポートした10月10日、10月25日開催分とあわせて、シンポジウムの動画のアーカイブ配信も行っていますので、ミドルシニアの活性化に向けた取組みの参考にしていただければ幸いです。 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから▼ 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー3月号 No.544 ●発行日−−令和7年3月1日(第47巻 第3号 通巻544号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918 )8618 ISBN978-4-86788-046-3 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.349 手間を惜しまず伝統の方法で着物を再生 洗張(あらいはり)職人 田川(たがわ)城道(しろみち)さん(76歳) 「工程が多い洗い張りですが、日本の伝統文化である着物のよさを伝えるために、手抜きをせず一枚一枚大切に仕上げています」 着物をほどいて水洗いししわを伸ばしてきれいに  着物を洗濯する伝統的な方法に「洗い張り」がある。その手順は、まず着物をほどき、生地を端縫いして反物の形に戻し、水洗いをする。その後、「伸子(しんし)張り」、「湯のし」などの方法でしわを伸ばしたり、糊入れを行う。最後に縫いあわせをほどき、アイロンをかけて仕上げる。これらの工程を職人が手作業で行う。丸洗い(ドライクリーニング)ではなかなか落ちない汚れも、洗い張りをすることできれいに仕上げることができる。  「大切な着物が色落ちや色移りしないように気をつけながら、汚れをしっかり落とすには、一つひとつ手洗いするしかありません。きれいな生地に戻してから仕立て直すことで、新品同様によみがえります。洗い張りは着物を親から子へと受け継ぐ際などに最適です。新しい着物を買うより安くできることもあり、お客さまに喜ばれます」  そう話すのは、東京都葛飾区で着物の専門店「鹿島屋(かしまや)」を営む田川城道さん。洗い張りの職人として60年近いキャリアを持つ。  「私が役員を務めている『東京きもの染洗協同組合』には、染色、洗い張り、しみ抜きなど着物に関係した業者が加盟しています。私が子どものころ、組合員は約1500人でしたが、現在はわずか50人ほどです。なかでも、当店のように洗い張りを自前で一から十までやる店は、都内でも数軒しかありません」 長年の経験と勘で生地に適した洗い張りを行う  洗い張りは、職人の経験と勘がものをいう仕事だ。着物の生地にはさまざまな種類や柄があり、汚れ具合も異なる。そのため、個々の生地の状態を見きわめ、それに適した対応が求められる。  「水洗いの際は、ササラという竹でできた道具で汚れを落とします。強い汚れは入念にこする必要がありますが、黒い生地だとどうしても擦れて白っぽくなります。もし擦れが出た場合は、ロート油を刷毛で塗る『擦れ張り』という方法で直せます。このように着物の状態をみながら、一つひとつ対応できるのが手作業のよいところです」  洗い終えた生地のしわを伸ばす方法の一つに「伸子張(しんしば)り」がある。竹ひごの両端に針がついた伸子を生地の両端に刺すことで、生地に張りをもたせる方法だ。この伸子を張る間隔や、糊入れに用いるフノリの濃さも、生地によって変える必要がある。田川さんは長年の経験でつちかった指先の感覚で、生地を触って適切な伸子張りの間隔やフノリの濃さを瞬時に判断し、手際よく作業を進めていた。 親から受け継いだ仕事のやり方を守り抜く  鹿島屋を創業した洗張職人の父親の姿をみて、「父の仕事が一番だ」と思いながら育った。  「小学生のころ、作文に『大人になったら人間国宝になる』と書いたことがあります。同じ新小岩の江戸小紋の職人が人間国宝なのに、なぜまじめにやっている父は評価されないのか、と思っていました」  高校を卒業すると家業に就き、下働きから始めて仕事を覚えていった。最盛期には職人を雇い家族総出でもこなしきれないほど忙しかった。そんななか、「洗い張りだけでは満足に稼げない」と一念発起し、40年ほど前に呉服の販売を始めた。そのおかげで、洗い張りの需要が減るなかでも仕事を続けてくることができた。  「『こすい(ずるい)ことはするな。まじめにコツコツやれ』が両親の教えでした。どんなに手間がかかっても、親から受け継いだ仕事のやり方を守り続けています」  その仕事ぶりや業界への貢献が認められ、2021(令和3)年に「卓越した技能者(現代の名工)」の表彰を受け、2024年には「黄綬褒章」を受章した。  織物や染め物と違い、裏方である洗い張りはなくなってしまうのではないかという危機感がある。  「着物が好きで、日本の伝統文化を残したいという熱意のある人がいれば、いくらでも教えます」 有限会社鹿島屋 TEL:03(3651)6166 (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) 写真のキャプション 洗濯した生地に、伸子を張ってしわを伸ばす「伸子張り」。伸子を張る間隔は生地ごとに違い、生地に触れた指先の感覚で瞬時に判断する JR新小岩駅近くの商店街にある「鹿島屋」。戦前に創業した父親が、故郷の茨城県鹿島郡にちなんで名づけた 生地のコシ・ツヤを出すための糊入れに用いる天然のフノリ。乾燥した海藻の状態から溶かして使う 2021年に「卓越した技能者(現代の名工)」の表彰、2024年に「黄綬褒章」を受章した。「国のお墨つきを得た以上、いい加減な仕事はできません」 表生地に糊入れをする。糊の濃さは生地の状態によって変える。胴裏(着物の裏地)の場合は薄塗り。最盛期には胴裏を50反まとめて糊入れしていた。表生地はこの後、湯のしをして幅を整える 生地のしわを伸ばす方法の一つ「湯のし」。生地に蒸気を当てながら幅を整える。着る人の体形に合わせて幅を伸ばすこともある 父親は洗い張り一筋だったが、田川さんは洗い張りに加え呉服の販売を始め、需要が減少するなかで商売を軌道に乗せた。反物を巻くのもお手のものだ 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  世の中には略語や通称、俗称があふれています。よく使っている言葉でも正式名称は何というかが、わからなくなっている場合も多いのではないでしょうか。そこで今回は、知っているように感じたり、思い出せそうな気がしたりする言葉を問題にあげました。楽しく思い出すことで、脳が活性化します。 第93回 正式名称思い出しクイズ 次の略語や通称の正式名称を思い出し、空欄を埋めてみてください。 目標 10分 @スマホ(フォ)⇒ スマ□トフォ□ Aクレカ⇒ クレ□□トカ□□ Bボールペン⇒ ボール□イ□□ペン Cシャーペン⇒ シャー□ペン□ル Dフリーター⇒ フリー□ル□□ター Eワイシャツ⇒ □ワイトシャツ Fレジ⇒ キ□□□□レジ□□□ Gブログ⇒ □ェブログ Hキザ⇒ 気ざ□り Iカラオケ⇒ 空□オ□ケ□□ラ Jなるはや⇒ なる□くはや□ Kサックス⇒ サク□フ□□ LCD⇒ コ□□□□・ディスク MOK⇒ オール・□レ□□ NNG⇒ ノー・□ッ□ 「楽しさ」や「やる気」に強くかかわる線条体(せんじょうたい)  脳のトレーニングに必須なのは「楽しさ」です。解いて楽しい、悩んで楽しい、線条体が発火しやすい、そういった脳トレに挑戦しましょう。  線条体とは、脳の奥、大脳基底核という古い脳の一部です。線条体は運動の開始や維持にかかわる神経核で、この発火(神経細胞が大きな電位を発すること)によって、行動が開始されたり、持続したりします。  また、線条体の腹側(底側)には、側坐核という快感の中枢があります。腹側被蓋から始まるドーパミン神経(いわゆる報酬系)が側坐核にアクセスし、前頭葉などに広がっていきます。線条体で行動と快感が結びつけられているのです。  ○○をしたらよいことが起きた、○○をしたらよいことが起きた…が続くと、この線条体は予測的に発火するようになります。「○○をすればよいことが起きる!」という「予感」が生じるのです。そして、この予感が「やる気」の正体だと考えられています。  線条体が発火すると、ドーパミンが海馬に働いて記憶の効率を高め、前頭葉に働いてスキルアップを早めます。「やる気」が仕事でも学習でも脳トレでもその効率をアップする鍵になるのです。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 @スマートフォン Aクレジットカード Bボールポイントペン Cシャープペンシル Dフリーアルバイター Eホワイトシャツ Fキャッシュレジスター Gウェブログ H気ざわり(障り) I空のオーケストラ Jなるべくはやく(早く) Kサクソフォン Lコンパクト・ディスク Mオール・コレクト  解説:all correctの表記ゆれといわれている Nノー・グッド 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2025年3月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価503円(本体458円+税) 令和6年度 「高年齢者活躍企業フォーラム」 「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」 アーカイブ配信のご案内  10月に開催した「高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)」、10月〜11月にオンライン配信で開催した「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の模様をアーカイブ配信しています。  基調講演や先進企業の最新事例発表など、お手元の端末(パソコン、スマートフォン等)でいつでもご覧いただけます。 視聴方法 JEEDホームページのトップページより STEP.01 機構について STEP.02 広報活動 (組織紹介動画・メルマガ・啓発誌・各種資料等) STEP.03 YouTube動画(JEED CHANNEL) STEP.04 「高齢者雇用(イベント・啓発活動)」の欄からご視聴ください ※事前申込不要(すぐにご覧いただけます) 以下の内容を配信中です 2024年10月4日(金)開催 高年齢者活躍企業フォーラム ●表彰式 ●事例発表 ●基調講演 ●トークセッション 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム ●基調講演等 ●事例発表 ●事例発表者とコーディネーターによるパネルディスカッション 2024年10月10日(木)開催 「ジョブ型」人事から考える 〜シニア人材の戦力化 2024年10月25日(金)開催 役職定年見直し企業から学ぶシニア人材の戦力化 2024年11月28日(木)開催 ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp JEEDのYouTube 公式チャンネルはこちら https://youtube.com/@jeedchannel2135 JEED CHANNEL 検索 2025 3 令和7年3月1日発行(毎月1回1日発行) 第47巻第3号通巻544号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)〈発売元〉株式会社労働調査会