【P24-25】 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介  高齢者雇用を進めるためのポイントは、業種や業態によって違いがあります。そこで当機構(JEED)では、産業別団体内に推進委員会を設置し、高齢者雇用に関する実態を把握するとともに、解決すべき課題などを検討して、高齢者雇用を推進するために必要な留意点や好事例を「ガイドライン」として取りまとめています。  わが国では急速な高齢化が進むなか、中長期的に労働力人口の減少が見込まれ、高齢者が社会の支え手として意欲と能力のあるかぎり活躍し続ける「生涯現役社会」の実現が求められています。  2021(令和3)年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行され、各企業には70歳までの就業確保措置を講ずる努力義務が設けられました。高齢者が長年つちかった能力を十分発揮しながら満足感を得て働き続けるためには、賃金・処遇、能力開発、健康・安全対策などの仕組みづくりがますます重要となります。  しかしながら、産業ごとに労働力の高齢化の状況や置かれている経営環境、職務内容、賃金制度、雇用形態などには差異があります。このため、高齢者の就業機会の確保を図るには産業ごとに必要な諸条件を検討する必要があることから、JEEDでは「産業別高齢者雇用推進事業」により産業別団体の取組みを支援しています。 「産業別高齢者雇用推進事業」とは  「産業別高齢者雇用推進事業」は、産業別団体が高齢者の雇用推進のために解決すべき課題について検討し、その結果をもとに高齢者雇用推進にあたっての方策・提言からなる「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を策定し、これを用いて会員企業に普及・啓発することで、高齢者雇用をいっそう効果的に推進することを目的としたものです。  この事業では、毎年1月に高齢者雇用の推進に取り組もうとする全国規模の産業別団体を公募しており、本事業の目的に合致した産業別団体を複数選定し、JEEDと契約(2年以内の委託事業)を締結しています。現在までに建設、製造、情報通信、運輸、サービスなど、多岐にわたる産業のなかで、100業種がこの事業に取り組んでいます。 JEED 委託 産業別団体 「ガイドライン」の策定/普及・啓発 ○○○業 高齢者雇用ガイドライン 会員企業 改善 高齢者の活用・戦力化 ガイドラインの策定  ガイドライン策定への具体的な流れは、産業別団体内に、大学教授などの学識経験者を座長として、団体に所属する会員企業の経営者や人事担当者などで構成される高齢者雇用推進委員会(以下、「委員会」)を設置し、各年度4回程度委員会を開催します。  初年度の委員会では、その産業における高齢者雇用の実態把握を行います。高齢者雇用における課題は何かを検討し、あげられた課題をより明確に把握するため、会員企業へのアンケート調査や先進的な企業へのヒアリング調査を実施します。2年度目は、初年度の調査結果で浮き彫りとなった課題とその解決策を整理し、ガイドラインを策定します。  なお、ガイドラインでは、以下の点をおもな課題として取り上げています。いずれを重視するかは産業ごとに異なり、各産業の実態をふまえた実践的な一冊に仕上げています。 ・制度面に関する改善 ・能力開発に関する改善 ・新職場・職務の創出 ・健康管理・安全衛生 ・作業施設等の改善 ・定年前の準備支援  ガイドラインは高齢者雇用に対する理解を深め、活用してもらえるよう会員企業に配付します。  さらに、普及・啓発活動として会員企業に対し高齢者雇用推進セミナーを開催することで、ガイドラインをより効果的に活用できるようにするとともに企業への浸透をうながしています。  実際にガイドラインを読んだ会員企業へのアンケート調査結果では、9割ほどの会員企業から「ガイドラインは役に立った」または「役に立ちそうだ」との回答があり、「業界における高齢者雇用の動向を知ることができた」、「高齢者雇用の課題や解決方法がわかった」など、好評をいただいています。 業種を超えたガイドラインの活用  JEEDホームページでは、これまでに策定したガイドラインをはじめ、高齢者を雇用するうえで実際に役立つワークシートやチェックリストなどの各種ツールを公開しています。ガイドラインは業種や時代による変化があったとしても、共通して参考となる点も多くありますので、ぜひご覧いただき高齢者雇用の取組みにお役立てください。  次ページより、2024年度に策定した四つのガイドラインを紹介します。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 産業別高齢者雇用推進ガイドライン一覧 (2021〜2023年度に策定したガイドライン) 建設業 とび・土工工事業 高齢者がバトンをつなぐ未来のガイドライン 〜人生100年時代!活躍の場・生きがいを求めて!〜(2022年) 機械土工工事業における高齢者活用推進のためのガイドブック 〜高齢従業員の活躍と若手従業員の定着に向けて〜(2022年) 建設業基礎工事における高齢技能労働者の活躍ガイドライン(2022年) 製造業 鉄リサイクル業 〜その経験、活かせます!ベテランの活躍が鉄リサイクル業の未来を拓く〜(2022年) 歯車製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニアの技を次世代にバトンタッチ、皆が活躍できる職場作り〜(2022年) 情報通信業 組込みシステム業 高齢者雇用推進の手引き(2023年) 運輸業 倉庫業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニア人材の強みを生かす〜(2023年) 医療、福祉 患者等給食業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍で安全・安心な食事の提供を〜(2021年) 保育サービス業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニア人材の強みを保育施設の運営に活かす〜(2021年) 廃食用油リサイクル業における高齢者活躍に向けたガイドライン(2021年) 高齢者も働きやすい介護事業所に向けて 〜在宅介護サービス業高齢者雇用の手引き〜(2023年) サービス業 (他に分類されないもの) 食品リサイクル業 高齢者の活躍に向けたガイドライン(2022年) 職業紹介業における高齢者雇用推進ガイドライン(2023年) 警備業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜社会の安全・安心を支えるため、高齢者の活躍に向けて〜(2023年) ※( )内の数字はガイドライン策定年度を表します 【P26】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 1 2024年版 鞄産業における高齢者雇用推進ガイドブック  わが国では少子高齢化が加速し、労働力不足が急速に進むことが予想されている。2021(令和3)年には70歳までの就業確保措置を講じることが企業の努力義務となり、鞄産業においても、高い能力や豊富な経験を持つ高齢者の活用が、今後の企業経営や業界発展にとって大きな課題となっている。そこで、一般社団法人日本鞄協会では、高齢者が持つ熟練した技術や豊富なノウハウを未来の技術者たちに受け継いでいくことを目的に、技術認定試験や創作技術コンクールの事業を継続して実施してきた。  また、2023年9月には、鞄産業に関連する企業を対象とした大規模な実態調査を初めて実施し、高齢者の雇用状況と業界全体の実態を明らかにするとともに、高齢者の活躍に向けて企業が抱える課題と解決策を取りまとめ、本ガイドブックを作成した。  本ガイドブックでは、高齢者の活躍事例や、高齢者の活躍に向けた課題の解決策を数多く掲載しており、これらの事例から鞄産業にかかわる企業が今後、高齢者の雇用と活躍を推進するためのアイデアを得ることができる。また、鞄産業全体の活性化につながるような人材の活躍・活用事例の共有にも有効である。  「第T章【概要】鞄産業における高齢従業員の活躍に向けて」では、本事業を通じて実施したアンケート調査をもとに、業界における高齢従業員の活躍状況を紹介。あわせて、鞄産業における高齢従業員の活躍に向けた課題と解決策を一覧表に整理しており、本書のあらましとポイントが把握できる章となっている  「第U章 鞄産業における高齢者雇用・活躍の背景と実態」では、調査をもとに、定年・継続雇用制度の状況をグラフを用いて紹介している。そしてヒアリング調査の結果をふまえ、「高齢期でも活躍しやすい」、「高齢の転職者も活躍しやすい」、「短時間・短日数勤務でも働き続けることができる」など、鞄産業は高齢者が長く活躍しやすい産業と特徴づけている。  「第V章 企業が抱える経営課題と高齢従業員の活躍パターン」では、「コスト上昇」や「人件費の増大」といった経営課題について詳解するとともに、その解決・緩和のための高齢従業員の活用・活躍パターンを紹介している。同章では、企業の声や具体的な活躍事例が、「製造」、「卸」、「材料」といった事業ごとに区分けして掲載されており、参考にしやすい。  「第W章 高齢従業員の活躍に向けた課題と解決策」では、高齢従業員を積極的に雇用する際の「肉体的、体力的な衰えがある」、「IT化への対応」、「意欲の減退」という三つの課題について、一覧表に整理して解決策を提示しており、自社の対応を検討する際に状況に合わせて参考にすることができる。 一般社団法人 日本鞄協会 住所 〒111―0052 東京都台東区柳橋2―16―14 ハンドバッグ会館内 TEL 03―3862―3516 HP http://www.kaban.or.jp/ 【P27】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 2 ダイカスト業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 高齢者とともに、働きやすい職場づくり  少子高齢化と人手不足の進展により、安定的な労働力の確保はダイカスト業における重要課題の一つになっている。同業界ではすでに、高齢者のさらなる活用を図るべく、再雇用制度の整備や、定年年齢の引上げなどを進めている企業があることから、業界全体として高齢者の活躍を推進するため、高齢者雇用の実態を把握する調査を実施。この調査を通じて、各社で高齢者は戦力として不可欠な存在になっていること、高齢者が活躍できるための工夫が各社・各現場で積み重ねられていること、それらの取組みにより高齢者の活躍の場が拡がっていることが明らかになった。  そこで各社の工夫を業界全体で共有するべく、ダイカスト業における高齢者の活躍のあり方について検討し、本ガイドラインを取りまとめた。本ガイドラインでは、高齢者とともに、働きやすい職場づくりを推進してくためのポイントを提言している。  「T 高齢者活用に向けた背景」では、日本の労働力人口の減少と高齢化の進行や働き方改革などのトレンドについて詳解している。  「U 高齢者とともに、働きやすい職場づくりを推進していくためのポイント」では、ダイカスト業高齢者雇用推進委員会での検討結果をもとに、業界各社が高齢者とともに働きやすい職場づくりを進めるために取り組むべき課題や方向性を次の4項目にまとめ、取組みを進める手順を提示している。 @5〜10年後の雇用(労働力の確保)状況を見通し、必要な準備を進める A高齢者に期待する「役割」を明らかにするとともに、役割に対する働きぶりを「評価」する B高齢者はじめ従業員が今まで以上に能力を発揮できるよう職場環境を整える C高齢者の技術・技能・経験の伝承を進める  理解しやすいように項目ごとに関連する調査結果を、図を交えて紹介。さらに「役に立つツール」として安全と健康確保のためのチェックリスト、スキルマップシート作成の手順、参考にできる取組み事例なども紹介されている。  「V ダイカスト業における高齢者雇用の現状と課題」では、会員企業および業界で働く高齢従業員を対象に実施したアンケート調査の結果を取りまとめている。これらは高齢者雇用に関する現状と課題をより深く理解するために役立つほか、企業からの回答を、@業界全体、A従業員数59人以下、B従業員数60人以上169人以下、C従業員数170人以上のように区分けし、企業規模による傾向についても把握できるよう工夫している。  「W.参考資料」では、改正高年齢者雇用安定法の概要(2021年度改正)を示し、あわせて、JEEDによる各種支援サービスや連絡先一覧も紹介している。 一般社団法人 日本ダイカスト協会 住所 〒105―0011 東京都港区芝公園3-5-8 機械振興会館502 TEL 03―3434―1885 FAX 03―3434―8829 HP https://www.diecasting.or.jp/index.php 【P28】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 3 計量計測機器製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜はたらくすべての人々のウェルビーイング実現のために〜  計量計測機器は、あらゆる産業の基盤技術として、生産活動の高度化、評価試験、品質管理、取引および証明、ビッグデータなどに活用されてきた。今後も、本業界の各企業が成長し、持続可能な社会に貢献していくためには、少子高齢化や労働力の高齢化に対処し、産業の活力を維持すること、すなわち、高齢者のさらなる活躍が不可欠といえる。  ダイバーシティ経営を推進していくうえでも、個々の特性やニーズが異なる高齢従業員のウェルビーイング(個人が肉体的、精神的、社会的に満たされた状態)の実現が重要であり、本ガイドラインの活用が期待される。  本ガイドラインの策定にあたっては、アンケート調査・ヒアリング調査を実施し、業界特有の課題を洗い出し、分析・検討を実施。その結果をふまえ報告書およびガイドラインを取りまとめた。  「T 計量計測機器製造業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、計量計測機器製造業において、高齢者のさらなる活躍が求められている背景、また、高齢者の活躍を推進するための基本となる考え方を整理。高齢者の積極的な活用が企業の優位性獲得の有力な方策となることを示している。  「U 計量計測機器製造業における高齢者の活躍を推進するための指針」では、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら、競争力を高めるために取り組むべき課題や方向性を六つの指針にまとめて紹介している。指針ごとに関連するアンケート調査やヒアリング調査結果を「企業の意見」、「従業員の意見」、「会員企業の取り組み」として整理して紹介しているほか、他業種の取組み事例もあわせて掲載しており、内容をより深く理解しやすい。  「V アンケート調査結果」では、同業界における高齢者雇用の現状と課題、各社の取組みを多面的に把握するために、2023(令和5)年度に実施したアンケート調査結果を、「計量計測機器製造業における高齢者雇用の現状」、「高齢者の働きぶりについて」、「高齢者雇用のメリットと課題」、「賃金について」、「長く働くために必要な能力・勤務態度について」、「長く働くために今後必要と思われる教育訓練について」、「普段の生活の中で感じている気持ち」の七つの項目に整理し詳細に紹介している。  「W ヒアリング調査結果」では、U章で示した六つの指針に沿って主要なヒアリング意見を紹介している。「企業の意見」、「60歳以上の従業員の意見」、「59歳以下の従業員の意見」と立場別にまとめられ、理解しやすい。  最後に掲載している「X 参考資料」では、高齢者雇用に関する情報一覧が示されており、「高年齢者就業確保措置」、「同一労働同一賃金」の概要のほか、運用上の課題解決に向けて相談できる支援機関や、高齢者雇用に関する制度の情報を得ることができる。 一般社団法人 日本計量機器工業連合会 住所 〒162―0837 東京都新宿区納戸町25―1 TEL 03―3268―2121 FAX 03―3268―2167 HP https://www.keikoren.or.jp 【P29】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン 4 IT検証サービスにおけるシニア人材活用についてのガイドライン  社会・産業のデジタル化が急速に進み、ITサービスがますます高度化・複雑化するなかで、IT検証サービス産業は、ITサービスの品質の確保と実現という欠かせない役割をになっている。現在、同産業では若い人材が活躍しているが、今後、日本の人口減少にともない、新たなIT人材の獲得が困難になったり、現在の若い人材層の高齢化が予想されたりしている。このように、これから増加する可能性があるシニア人材が十分に活躍できるような環境や仕組みを整備することは、IT検証サービス産業全体としての重要な課題といえる。  本ガイドラインは、経営層や人事担当者、現場のマネージャー、また、これからシニア人材として活躍を目ざす人に向けて作成。冒頭のページでは、各々の立場の人がどの章(ページ)を読むべきかを明示している。  「第1章 IT検証サービス産業の現状」では、はじめに日本のITサービス市場全体の動向と、市場を支えるIT人材の将来動向を見渡し、次に、IT検証サービス産業の動向を貴重なデータとともに紹介している。  「第2章 IT検証サービス産業における人材活用の現状」では、「テストエンジニア」の年齢構成やキャリアパスなどについて、アンケート調査結果に基づきその実態を紐解いている。さらに、シニア人材活用に関して、会員企業における定年・継続雇用制度の状況、定年後の賃金水準、シニア人材向けの各種取組みの実態について紹介する。章末には、JEEDの「雇用力評価ツール チェックリスト」を掲載しており、自社の高齢者雇用力も確認可能となっている。  「第3章 IT検証サービス産業におけるシニア人材の活躍事例とメッセージ」では、現在、活躍中の7人のシニアとシニア前世代の人材を取り上げている。個々のキャリアパスや現在の業務内容、テスト・検証業務のやりがい、今後の目標を紹介。多様なキャリア・業務を経験し、それぞれに活躍する7人の事例からは、シニア人材になっても輝けるテスト・検証業務の魅力や可能性を感じとることができる。また、章末では活躍できるシニア人材のポイントを三つにまとめて整理しており、シニア人材となっても活躍し続けたい人の参考になる。  「第4章 シニア人材の活用に向けたポイント」は、第3章までに示したIT検証サービス産業の特性をふまえて、シニア人材活用のポイントをまとめているほか、シニア人材により長く活躍してもらうための、人事制度の設計パターン例を提示。さらに、IT検証サービス産業においてシニア人材の活用を考える重要なポイントとして、具体的に七つの指針を示している。  巻末の「参考資料」では、高年齢者雇用安定法の概要や高齢者雇用にまつわる必要な行政手続き等を紹介するなど、実務担当者にとって有益な情報がまとめられている。 一般社団法人 IT検証産業協会(IVIA) 住所 〒102―0083 東京都千代田区麹町1―6―4 住友不動産半蔵門駅前ビル11F MAIL ivia_office@ivia.or.jp